とある現場を目撃してしまったことで、
執拗に命を狙われるようになってしまった男ー。
彼は、偶然見つけた女体化薬で、
女体化して逃亡を図っていたもののー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・
♪~~~
学生時代の親友・鮫島 拓斗の元で
身を隠していた女体化した祐樹ー。
しかし、そこに”来客”がやってきたー。
「ここで待ってろー。
あれだったら…どこか隠れとけ」
拓斗はそう言うと、そのままインターホンの方に向かっていくー。
「ーーさ、鮫島ー!気を付けろよ」
女体化した祐樹のその言葉に
「へへ、もちろんー」とだけ言葉を口にするとー、
拓斗はそのまま”来客”を確認したー
”お届け物です”
その言葉に、拓斗は少しだけ表情を歪めるー。
が、すぐに「お待ちください」とだけ答えると、
拓斗は不安そうな表情を浮かべている祐樹を見て
「何か届いたみたいだー」と、それだけ答えたー。
”ーー…”
祐樹は不安そうにしながら、念のため、奥の物陰に身を隠すー。
「ーーー鮫島 拓斗さんですね」
玄関から拓斗が顔を出すと、
ダンボールを持った男がそう言葉を口にしたー。
拓斗は「あ、はいー」と言いながら
警戒しつつ伝票を確認するー。
すると、途端に安堵の表情を浮かべて
荷物を受け取り、「ご苦労様でした~」と、それだけ言葉を口にして
玄関の扉を閉めたー。
「ーはは、悪い悪いー
祐樹ー、これは大丈夫だー」
拓斗がそう言いながら、ダンボールを手に笑うー。
物陰に身を隠していた女体化した祐樹が
恐る恐る顔を外に出すと、
拓斗は笑ったー。
「これ、ネットで半月前に注文したけど、
入荷次第発送のやつでさー
今になってやっと届いたんだよー」
と、嬉しそうにダンボールを手にするー。
「ーーな、なんだよー…
てっきり、奴らが来たのかとー」
女体化した祐樹が言うと、
拓斗は「へへー。びびらせて悪かったなー」と、
そう言葉を口にするー。
「それに、もしそいつらが来ても
ちゃんと”お姫様”のことは守ってやるから」
拓斗が冗談めいた口調で言うと、
女体化した祐樹は「ひ、姫じゃねぇよ」と、
照れ臭そうに言葉を口にしたー。
拓斗が届いたダンボールの開封をし始めて、
中身を覗くと笑みを浮かべるー。
その時だったー
玄関の扉が突然開くー。
「ーえっ?」
拓斗が振り返ると、そこには、さっき荷物を持ってきた
宅配便の男がいたー。
そしてーー
宅配便の男がドサッと倒れ込みー
その背後から、黒いコートの女が姿を現したー。
大きな目のアイドルのような可愛らしさの女ー。
がー、その手には銃が握られていて、
拓斗の家に荷物を届けた配達員の男と、
このアパートの階段ですれ違って射殺ー、
そのまま、この家にやってきたのだー。
「ーーーおい!なんだお前!人の家に勝手にー」
拓斗が、黒いコートの女に向かっていくー。
がー
プシュッ、とほとんど音のしない銃から銃弾が放たれて
拓斗がその場に倒れ込むー
「さ、さ、さ、鮫島!!!」
祐樹が悲痛な叫びをあげると、
アイドルのような顔立ちの黒コートの女が笑みを浮かべたー。
”ーーくそっ、こいつー、また違うやつだー”
祐樹は表情を歪めるー。
ネットカフェにやってきたときの女とまた違う女だー
あの女はもうちょっと、気の強そうな顔だったー。
これで、少なくとも”4人”から狙われていることになるー。
「ーーーククククーようやく見つけたぞー」
アイドルのような顔立ちの黒コートの女はそう言うと、
笑みを浮かべながら、足で倒れた拓斗をどかすと、
銃を向けて来るー。
「ーー…な、な、な、何のことですかー…?」
女体化している祐樹は、咄嗟にそう言葉を口にしたー。
”女体化している以上”、
俺が奥寺 祐樹だとはそう簡単にはバレないはずだー、とー。
「ーーククーとぼけても無駄だ」
アイドルのような顔立ちの黒コートの女は
それだけ言葉を口にすると、さらに続けるー。
「ーここに来るまで遠回りしたよー」
可愛い声なのに、どこか狂気を感じさせる声で、
説明をし始めるアイドルのような顔立ちの黒コートの女ー。
「ーお前の会社に乗り込んで、お前の緊急連絡先を見つけて、
お前の実家に乗り込んでー、
お前の実家で”お前と親しかった人間”を聞き出して、
当てずっぽうで、お前と親しい人間の場所を順番に
訪れて、ここが3件目だー。ようやく、見つけたー」
女は、笑みを浮かべながらそう言い放つー。
その言葉に、女体化した祐樹は反応するー
「ーーお、俺の…実家にも行ったのかー!?」
青ざめながらそう叫ぶ祐樹ー。
「あぁ、言ったさー。
そのあとにお前の幼馴染の家とー、
高校時代の”元カノ”の家にもなー。
で、ここが”知り合い巡り”3軒目ってわけだー」
女の言葉に、祐樹は震えるー。
この”黒コートのやつら”のことだー
実家や、幼馴染や元カノの家に足を踏み入れたということは、
それはつまりー…
「ーく、くそっ!なんてことをー!」
祐樹はそう叫ぶと、続けて
「ーな、何で俺が奥寺祐樹だとー…」と、そう言葉を口にするー。
するとー…
首のあたりにある”ほくろ”を、女は指さしたー。
「ー!?」
女体化した祐樹も、特に意識をしていなかったそのほくろを見て、
祐樹は表情を歪めるー。
「ー”例の薬”を使った時にできる”作用”の一つだー。
お前、女体化薬を飲んだんだろうー?」
女が笑みを浮かべながら言うー。
逃亡した祐樹の足取りを分析する中、
祐樹が廃病院に逃げ込んだことに気付いた黒コートの者たちは、
祐樹が”女体化薬を飲んで逃亡している可能性”も視野に探し続けていたー。
そのため、女体化した祐樹をこうして見つけることができたのだー。
「ーく、くそっ…お前たちの目的は一体なんだー…!
俺があの日、お前の仲間が人殺しをするのを見たからかー!?
でも、俺一人を殺すために、お前たちは何人の人を殺してる!?
逆に口封じどころか目立つじゃないか!」
女体化した祐樹が慣れない声で必死に叫ぶー。
「クククククー”お前たち”かー」
アイドルのような顔立ちの黒コートの女は、そう言いながら
笑みを浮かべると、注射器を取り出したー。
そしてー、
それを自分に打ち込むー。
すると、女の身体がみるみると変化してーー
そのまま、不愛想な雰囲気の男の姿に変貌したー。
「ーーお前があの廃病院で拾ったものと同系統の薬だー。
俺はこれを使って、男体化と女体化を繰り返して
警察に追われないようにしているー」
アイドルのような顔立ちの女から”男体化”した男は
そう言葉を口にしながら笑うー。
「これは面白くてなー…
女体化する度に、男体化する度に顔が変わるんだー
見てろよー?」
不愛想な雰囲気の黒コートの男は、そう呟くと
そのまま自分に注射器を打ち込むー。
今度は女体化して、大人しくて真面目そうな可愛い顔立ちの女へと
変化したー。
「ーーーーー!」
祐樹は表情を歪めるー。
目の前にいる”女”の首筋にも、同じほくろがあるー。
”自分自身もそうだから”この黒コートの人物は、
祐樹が女体化していることも視野に、
探し続けていたのだろうー。
そしてーー
「ーまさかお前ー…”ずっと同じやつ”なのかー!?」
祐樹が声を上げるー。
最初に祐樹に殺しを目撃されて
アパートに乗り込んで来た黒コートの男もー、
ネットカフェに乗り込んで来た黒コートの女も、
デパートですれ違って、会社に乗り込んだ細目の黒コートの男も、
そして、今、ここに来たアイドルのような顔立ちの黒コートの女もー…
全員”同一”人物ー。
「ーそうー女体化と男体化を繰り返して、その都度顔が変わっていただけ」
優等生風の女の顔で黒コートの人物は笑うー。
だからー、ニュースでも”身元不明”で報じられていたのだー。
”顔”が変わっていて、”本来は存在しない”容姿になっているからー。
「ーー…どうしてそこまでして、俺をー!」
女体化したままの祐樹が叫ぶー。
黒コートの女は笑いながら、
「ー俺は”殺し”を”俺だけの芸術”として考えていてねー。
見た人間は絶対に生かさないことにしているんだー。
”俺だけの芸術”は俺だけのものー。
それを知る人間は、一人でいいー」と、そう説明したー。
「ーーくそっー」
祐樹は表情を歪めるー。
相手は、常人には理解できる美学を持つサイコパスだと、
祐樹はそう判断したー。
「さて、話は終わりだー」
優等生風の顔立ちの黒コートの女が笑みを浮かべるー。
「ー最後に教えてやろうー
俺は”闇の百面相”の異名を持つヒットマンー…楠本 豪(くすもと ごう)だー」
黒コートの殺し屋ー豪がそう名乗ると、
祐樹に向かって銃を向けたー。
「ーーく、くそおおおおおお!!」
祐樹が必死に暴れるー。
それを振り払う豪ー
机に腰を打ち付けて、机を背に、追い込まれる祐樹ー。
「ーーククーそう暴れるなー
女体化した状態でも、お前に倒されるほど、俺は脆くはないぞ」
優等生風の女の姿のまま、豪が銃を祐樹に再び向けるー。
机を背に、追い込まれた祐樹は震えながら諦めかけるー。
がー、その時だったー。
”「これ、ネットで半月前に注文したけど、
入荷次第発送のやつでさー
今になってやっと届いたんだよー」”
背後の机ー
すぐ背中には、
殺された親友・拓雄がそう言いながら置いた
ダンボールが置かれているー。
それを開封した直後に殺された拓雄ー。
その”中身”は知らないー。
祐樹は、”その中身”に最後の希望を託すことにしたー。
「うああああああああああああ!」
中身も分からないダンボールを手にすると、
意外な重さに驚きつつも、
祐樹はそれを殺し屋・豪に向かって投げつけるー。
「ーーー!」
投げつけられたダンボールから”中身”が飛び出すー。
豪が少しだけ驚いたような表情を浮かべると同時にー
ダンボールの中から、親友・拓雄が購入した”モノ”が
飛び出したー。
「ーーー!!!!」
祐樹も、殺し屋の豪も驚くー。
拓雄が購入したものはー、
拓雄が筋トレ用にと購入した重いダンベルだったー。
それがーー
豪の頭上で、ダンボール箱から零れ落ちるー。
「ーーーな…」
豪がそう言葉を口にすると同時にー、
ダンボール箱から飛び出たそれが、
豪の頭部に直撃ー、
咄嗟に放った銃弾は天井に穴を開けただけで
祐樹には命中しなかったー。
物凄い勢いで、かなりの重量を持つダンベルが
頭部に直撃した豪はその場に倒れ込むー。
「ーーーはぁ…はぁ…はぁ…」
女体化した祐樹は荒い息をしながら、
倒れている親友・拓雄を見つめると、
「ー鮫島ー巻き込んで、本当にすまないー」と
それだけ言葉を口にすると、
倒れ込んでいる黒コートの殺し屋・豪に向かって近付いて行くー。
豪は、意識を失っているー。
女体化した祐樹は、震えながら
そんな豪を見つめると、落ちていた銃を拾って
それを豪に向けたー。
”こんな危険なやつー、生かしておいちゃいけないー”
祐樹はそう思ったー。
アパートで2人、ネットカフェでも、会社でも、さらには
祐樹の実家や知り合いの家でも命を奪っているであろう
この危険人物ー
こいつを生かしておけば、また多くの人命が失われるー。
そう思った祐樹は、意識を失っている豪に、
豪が持っていた銃を向けると、そのまま豪の息の根を止めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
結局ーー
祐樹の実家の両親は、豪によって命を奪われていたー
祐樹の幼馴染も、祐樹の元カノも同様だったー。
元カノは結婚していて、子供がいたものの、
夫も子供も全て殺されていたらしいー。
”俺のせいでー…”
祐樹は、そんな自責の念に駆られて、
豪の息の根を止めたあと、
男体化する注射器を打って、男に戻ったあと、
そのまま姿を消したー。
祐樹は今もどこかで、
”女体化と男体化”を繰り返しながら、
身を隠しながら、生きているー。
もう、2度と”表”で今までのような平凡な人生を送ることはできないー。
それでも、祐樹は生きる道を選んで、
名前も、自分の元々の姿も捨ててー、
今日もどこかで生きているー。
が、彼の足取りを知る人間はいない。
ーどこにも。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最終回でした~!☆
狙われていた彼だけは無事に
逃げきることはできましたが、
色々失ってしまいましたネ~…!
お読み下さりありがとうございました~!
コメント