クラスのアイドルと入れ替わった男子生徒ー。
しかし、次第に”面倒に感じること”が彼の中で増えていき、
彼は不満も抱き始めてー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーくそっ…なんだよこれー…」
彩菜(清太郎)は、不満そうに表情を歪めながら
スマホを操作していたー。
入れ替わってから、さらに数日が経過して、
彩菜(清太郎)は、入れ替わった当初のような
”喜び”よりも”不満”が勝り始めていたー。
「ーーーあ~~~…くそっ……マジかー…」
彩菜(清太郎)のスマホには”生理”についての
解説が表示されているー。
「ーくっそーー……定期的にこれがあるとか、あり得ねぇ…」
彩菜と入れ替わった清太郎は、初めての経験に
戸惑い、もがき苦しんでいたー。
男子としてそのまま生きていれば、
決して知ることのなかったはずの苦痛ー。
少なくとも、恋人が出来たりして
そのことに直面することはあったとしても、
自分自身で体験することは絶対になかったであろう苦痛ー。
「ーー…はぁ…くそっー…こいつ……彼氏いないとか言ってたくせにー」
しかも、十分な知識がない清太郎は、
何か勘違いしたような言葉を口にすると、
清太郎(彩菜)に対して、不満そうにメッセージを送ったー。
”ーおいっ!なんでお前の身体、生理が来るんだ!?”と、
不満そうにメッセージを送るー。
”ーえ?何言ってるのー?”
清太郎(彩菜)から戸惑いのメッセージが返って来るー。
根本的な部分を勘違いしている彩菜(清太郎)は
なおも怒りのメッセージを送るー。
そう、清太郎は”男の人と関係を持たないと、生理は来ない”と
思い込んでいるのだー。
そもそも、仮に彩菜がそういう経験をしていたとしても、
清太郎には関係のないことー。
しかし、清太郎は怒り狂っていたー。
”清純派なクラスのアイドルみたいなツラしやがって、
裏ではやることやってやがったのか!”
話がかみ合わない二人ー。
やがて、彩菜(清太郎)は「もういい!」と、叫ぶと
そのまま「あ~~ふざけやがって!」と、苛立ちの表情を浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー~~~~」
学校では、
”話しかけるな”オーラを出しながら
不満そうな表情を浮かべている彩菜(清太郎)ー
髪もだんだん傷んで来て、
最近は何だか、”いい香り”もしなくなったー。
「ーおい!何で入れ替わった途端、なんつーか、いい匂いしなくなったんだよ!」
不満そうに叫ぶ彩菜(清太郎)ー
呼び出された清太郎(彩菜)は、困惑の表情を浮かべながら
「あ、あのー…”女子”は勝手にいい匂いが身体からするとでも思ってるのー?」と、
そう言葉を口にするー
「ーーっっ……!」
彩菜(清太郎)は「で、でも、何でこんな…ーー!」と、そう叫ぶー。
彩菜(清太郎)は次第に”お風呂”も面倒臭くなって雑に洗うようになったし、
何も考えずにだらしない生活をし始めたことでー、
色々な輝きが失われ始めていたー。
「髪も!!なんか、手触りも悪いし!
お前、俺に何かしただろ!」
彩菜(清太郎)が怒りの形相で叫ぶと、
清太郎(彩菜)は呆れたような表情で言葉を口にしたー。
「ーーーーわたしは、別に何もー」
そして、さらに言葉を口にするー。
「ーー今、そうなってるのは、
福川くんが”何もしない”からでしょー?」
とー。
「ーな、な、何もってー…」
彩菜(清太郎)が表情を歪めるー。
「ーーーーく、くそっー!
ーーお、お前みたいに何も苦労せずに
可愛いからってチヤホヤされてきたやつはいいよな!!
くそっ!俺はお前の身体を手に入れても
こんな目に遭うのかよ!」
彩菜(清太郎)はそう言葉を口にしながら
不満そうに立ち去っていくー。
清太郎(彩菜)はそんな、彩菜(清太郎)の後ろ姿を
見つめながら「ーだから…そういうことじゃないんだってばー…」と、
そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
彩菜(清太郎)は、みるみるうちに成績が下がり始めたー
「くそっー何でー…
”こいつ”の身体なら成績だってー…」
彩菜(清太郎)は、
彩菜が成績優秀なのも、何の努力もせずにそうなっていると、
そう思い込んでいて、
”俺が桐谷 彩菜になったのに、どうして!?”と、
不満を抱いていたー。
”家庭教師にも教えてもらってるのにー、何故ー?”
彩菜(清太郎)は、家庭教師が来ている際にも
最近は”可愛い”ことを利用して、家庭教師の谷本を誘惑したり、
揶揄ったりばかりしていて、まともに勉強していないー。
”一生懸命勉強していた彩菜”とは違って、
成績が落ちるのは当然なのだー。
「ーーぐぬぬぬぬー」
体重計に乗った彩菜(清太郎)は体重が数キロ増えたことを
確認すると歯軋りをするー
「マジかよー…あれしか食ってねぇのに太るとかー……
普段、どんな喰い方してるんだよー…?」
彩菜(清太郎)は、少しぽっちゃりした感じが
見た目でも分かるようになったことに焦りを覚え始めるー。
”こんなはずじゃないー”
”こんなはずじゃなかった”
と、何度も何度も、そう考えるー
「ーくそっ…これ以上喰う量を減らしたら、俺ー」
彩菜(清太郎)は”満足できねぇ”と、呟くー。
彩菜の体形は、本人が努力しているからこそー。
何も考えずに好きなだけ食べれば、その体形は意地できない。
清太郎としては”減らした”つもりでも、
それでも彩菜の身体には多すぎるのだー。
しかし、食べ盛りの清太郎からすれば”それ”では満足できないー。
「ーあぁ、くそっ!!くせぇな…!
どうすりゃ、女子のいい香りが出るんだよー」
彩菜(清太郎)は髪がボサボサになるまで掻きむしるー
「ーーくそっ!くそっ!くそっ!くそっ!!くそっ!!!」
彩菜(清太郎)は、思い知らされたー
クラスのアイドル的存在ー
そんな、桐谷 彩菜が、どんなに努力をしていたか、をー。
そしてー、”自分自身”が桐谷 彩菜にならなければ見えてこなかったことも
色々見えて来たー。
みんなにチヤホヤされているだけだと思っていたけれどー、
”可愛い”故に、少しでも振る舞いを間違えれば
”調子に乗ってる”と言い出す子がいるー。
男子からの変な視線を時々感じることがあるー。
何でもできて当たり前だと思われていて、
質問攻めされるし、
相談を受けた時にもそのハードルは高く、
微妙な返事をすれば、嫌そうな顔をされるー。
勉強も”出来て当たり前”だと思われていてプレッシャーになるー。
全然、桐谷 彩菜は、
”外から見ている”桐谷 彩菜のキラキラした人生ではなかったー。
キラキラは、努力の上に存在しているー。
彩菜(清太郎)はそれをイヤでも理解せざるを得なかったー。
「ーーくそっー」
そう言葉を口にしながら、胸を揉み始める彩菜(清太郎)ーーー
がーーー
「ーーあぁぁぁぁっ!くそ!!!」
彩菜(清太郎)は、ベッドを思いっきり叩くと、
欲望を満たそうとしていたのも途中でやめて、
そのままベッドに飛び込んだー。
”飽きて”しまったのだー。
女としての快感にもー。
最初は新鮮だったー。
けれど、毎日のようにしていたら、飽きてしまったー。
”他人の身体を乗っ取った”という感覚も
やがては消えていき、”自分の身体”という感触になっていき、
新鮮味は薄れていくー。
最初は、足を見るだけで興奮したのに、
今は何も思わないー。
それは、そうなのかもしれないー。
女子が、自分の足を見るたびに興奮などしていたら、
日常生活はままならないだろうし、恐らく、
一部の痴女を覗いて、普段の生活の中で自分の身体に
常にドキドキしているかと言えば、
そうではないのだろうー。
新鮮味を失い、”面倒”という気持ちばかりになってしまった
彩菜(清太郎)は大きくため息を吐き出すと、
”もういい”と、そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
入れ替わる時に使った煙玉を再び準備し、
彩菜(清太郎)は清太郎(彩菜)を、
校舎裏の池の前に呼び出したー。
ここなら、ほとんど生徒は来ないし、見られる心配は低いー。
「ーーー…桐谷のこと、何も分かってなかったー」
彩菜(清太郎)は後悔したかのような表情を浮かべながら
そう言葉を口にすると、
清太郎(彩菜)は、少しだけ表情を歪めるー。
「ーーー可愛いからっていつも勝手にチヤホヤされて、
調子に乗りやがって、ってそう思ってたけどー…
ーーー色々、あるんだなー」
彩菜(清太郎)のその言葉に、清太郎(彩菜)は
「ーーーーうん」と、それだけ言葉を口にしたー。
「ーーー…ーーー」
彩菜(清太郎)は、自分の過ちを認めざるを得なかったー。
自ら身体を奪い、自ら”彩菜”としての大変なことー
自分が、ずっと男子で居続けていたら、気付かないことも
たくさん経験してしまったのだからー
それでも、自分本位な性格からか、
謝罪の言葉を口にするまでに、10秒ぐらい
自分の中で葛藤するも、
ようやく、
「ー俺が悪かった」
と、そう言葉を口にしてから、”入れ替わりの力を持つ煙玉”を手にしたー。
購入した際に元々2セット入っていて、
入れ替わる前にもう1セットは、学校のロッカーの中に入れておいたため、
これを使えば、元に戻ることはできるのだー。
「ーー……ーーーそういえば、これってどういう仕組みなの?」
清太郎(彩菜)が不思議そうにしながら、煙玉の方に手を伸ばすー。
「ーー…それは、分かんねぇー。
俺が作ったわけじゃねぇからー」
彩菜(清太郎)が、そう言葉を口にすると、
清太郎(彩菜)は、不思議そうにそれを眺めるー。
そしてーーー
「ーーえっ!?!?」
彩菜(清太郎)が声を上げるー。
清太郎(彩菜)が、突然、
近くにあった池に煙玉を投げつけたのだー。
「ーーーえっ…??えっ???」
煙玉が池の中に沈んでいくー。
「ーーー…えっ!?」
彩菜(清太郎)は、清太郎(彩菜)の行動の意味が分からず、
困惑するー。
「ーわたしねー
なりたくて、”そういう風”になったんじゃないのー
家の中も窮屈だし、
みんなに頼りにされて、何でもできるみたいに思われるのも窮屈だしー。
でも、”この身体”になってからは
家でも学校でもすっごく気楽でー。
だからー、その身体はあげるー。」
清太郎(彩菜)はそう言い放ったー。
「ーーは……????
え…???????
い、いやー、う、嘘だろー?
お、俺の身体なんかで、この先ずっと生きるつもりかー!?」
彩菜(清太郎)がそう言うと、清太郎(彩菜)は「うん」と、微笑むー。
「ーーー…」
池に沈んだ煙玉は、もう使えないー。
呆然としながら、彩菜(清太郎)が清太郎(彩菜)の方を見つめるー。
”外からキラキラして見える女子は、みんな自分のことが大好きに違いない”
”男子の身体と入れ替えられることを喜ぶやつなんていないだろうし、
謝って元に戻ろうと言えば、絶対にすぐに元に戻ってくれる”
とにかく、色々なことを思いこんでいた彩菜(清太郎)は、
呆然としながら
「ま、ま、待ってくれ!やっぱ俺には”桐谷 彩菜”として
生きるのは無理だ!!
許してくれ!身体を俺に返してくれ!」と、叫ぶー。
がー、
清太郎(彩菜)は少しだけ笑うと、
「じゃあねーー”桐谷さん”ー」
と、そう言葉を口にして、立ち去っていくー。
入れ替わった直後ー、
彩菜になった清太郎に、”じゃあねー福川くん”と
言われた仕返しだー。
残された彩菜(清太郎)は
「い…いやだー…!待ってくれ!!返してくれ!」と、
そんな風に叫ぶのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数年後ー
「ーーーーーー」
”彩菜”として生きていくことを
受け入れざるを得ない状況になってしまった清太郎は、
”せめて”と、必死に努力して生活習慣や食生活を改善ー、
入れ替わった直後、一時的にぽっちゃりしてしまった
彩菜の身体を元通りにして、見た目だけは維持したー。
がー、女子の世界は清太郎には難しすぎたー。
”性格面”まで、完全に彩菜と同じにすることは出来ずにー
また、陰険な友達とのやり取りに疲れ果てて、
友達との縁を切ったー。
そのまま大学を卒業ー。
大学生になった現在も彩菜(清太郎)は、
窮屈な人生を送っていたー。
彩菜の両親は教育熱心で、相変わらず自由はないし、
女子同士の友情が苦手で、彩菜(清太郎)は
大学でも基本はひとりー。
今は、告白されて振った先輩が半分ストーカー化していて、
日々、悩んでいるー。
”破滅”の人生ー…
と、いうほどではないものの、
彩菜(清太郎)は、今でも”俺の身体に戻りたい”と
苦しむ日々を送っていたー。
「ーーーーはぁ」
大学からの帰路につきながら、ため息をつく彩菜(清太郎)ー
「面倒くせぇ」
彩菜(清太郎)は、いつものようにそう呟くと、
つまらなそうに、家に向かって歩き出すのだったー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
理想の身体を手に入れたものの、
外から見ていたのとは違って、
苦しむことになってしまう…
そんなお話でした~!★!
でも、入れ替わった清太郎くんの性格が
違っていれば、手に入れた身体を楽しく使うことも
できちゃいそうな気もしますネ~笑
お読み下さりありがとうございました~★★
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