<入れ替わり>クラスのアイドルは思ったより面倒臭い①~憎しみ~

自分勝手な性格で周囲から嫌われている男子生徒ー。

彼はクラスのアイドル的存在の女子のことを妬み、
その身体を”入れ替わり”で奪ってしまうー。

しかし…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー~~~~~」
男子高校生の福川 清太郎(ふくかわ せいたろう)は、
不満そうな顔でとある生徒の方を見つめていたー。
少しいじわるそうな顔つきをした、ぽっちゃり体型の男子生徒だー。

その相手はー
桐谷 彩菜(きりたに あやな)ー。
容姿に恵まれ、性格面も完璧ー。
何でもできて、クラスのみんなから慕われているー、
そんなアイドル的存在だったー。

がー、清太郎はそんな彩菜の方を
”気に入らない”という表情で見つめながら
「ケッ」と、そう言葉を口にするー。

「ーおいおいどうしたんだよー。福川ー」
そんな清太郎に気付いて、清太郎の”数少ない”友人である
大森 正樹(おおもり まさき)が声を掛けて来るー。

「ーーーー別にー」
清太郎が不機嫌そうにそう返すと、
正樹は「へへー…隠すなってー。桐谷さんの方、じっと見つめてたじゃねぇか」と、
揶揄うような口調でそう言葉を口にするー。

「ーー見てねぇしー」
清太郎はそう言うと、正樹は少しだけ笑いながら口を開くー。

「へへー嘘つくなよー。お前のことぐらい、俺には分かるぜー?
 何せ、幼馴染なんだからよー」
正樹はそれだけ言うと、
清太郎の返事を待たず、一人で不満そうに
「ーあ~どうせ腐れ縁みたいな幼馴染がいるんだったら、
 可愛い子が良かったなぁ」と、独り言を呟くー。

「ー可愛くなくて悪かったな」
清太郎が、そう返すと、
正樹は苦笑いしながら「で?へへー桐谷さんのこと、好きなんだろ?」と、
再び揶揄うような言葉を口にし始めるー。

しかし、清太郎は「違ぇよー。”逆”だよー」と、
不満そうにそう呟くー。

「逆?
 桐谷さんがお前のこと、好きなのか?」
正樹の言葉に「んなわけないだろ」と、清太郎はそれだけ言うと、
「ー俺、ああいうやつ、大っ嫌いなんだよー」と、
嫌悪感を隠そうともせずに、彩菜の方を見つめるー。

「ーーへーー…???
 いや、マジかよー?桐谷さんのこと嫌いなやつなんていねぇと思ってたよー」
正樹は戸惑いながら言うー。

容姿にも恵まれていてー、
性格もとても良い感じでー、
何でもできて、誰にでも優しいー。

そんな、桐谷 彩菜のことを嫌いな人間がいるなんてー、と、
正樹は戸惑っていたー。

「ーいや、嫌いだねー。
 ああいう、人生イージーモードのやつ見てると、滅茶苦茶にしてやりたくなるよなー。
 ああいつやつは、自分で努力しなくても適当にニコニコしてりゃ
 友達も集まって来るし、周囲も助けてくれるしー。

 見ててすげぇムカつくよなー
 なんも努力なんかしてないくせに、まるでアイドルみたいな扱いを
 受けちゃってさー」

清太郎がそう言うと、
正樹は戸惑いながら「お…お前さー…考え方がねじ曲がりすぎだろー…」と、
困惑の言葉を口にするー。

「ーーは?俺なんか、努力しても
 友達もロクにいねぇし、困ってたってみんなシカトだぜ?
 あ~~~いいよなぁ恵まれてるやつは」

清太郎がそれだけ言うと、
正樹は「いやーー言いたくないけどさー。それはお前ー、性格の問題ー」と、
さらに戸惑いの表情を浮かべながら、そう指摘するー。

清太郎は、常に不貞腐れているようなそんな性格の持ち主で、
”面倒臭いやつ”でもあるー。
だからこそ、クラスでも友達がほとんどいないような
”孤立状態”であるのも事実だー。

「ーーー…はぁ?俺だってあのぐらい可愛けりゃ友達だらけだろうし、
 あんなやつより、もっと人気者になってるさー。

 運が良かっただけの癖にいつも楽しそうにニコニコしやがって」

清太郎が不満そうに言うと、彩菜の方を再び不満そうに見つめるー。

「ーーいやいやいや、お前、そりゃー…」
幼馴染で数少ない友人の正樹が、さすがに戸惑った様子で
それだけ言葉を吐き出すと、
「ー何も苦労してねぇから、いつも楽しそうにしてるんだろうなークソが」と、
清太郎はそんな言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー。

清太郎は、自宅でスマホをいじりながら
ネットを眺めていたー。

特に、何か目的があったわけではないー。
ただ、漠然とネットを見つめながら、時間を潰していたー。

がー…その時だったー

「ーーあ?」
清太郎は変な声を出すと、スマホの画面を凝視するー。

そこには、男子と女子のシルエットのようなものが表示され、
二人の間には「⇔」が描かれた広告が表示されていたー。

「ーーー”気軽に身体を交換”ーー???
 はぁ?なんだこれ?」
清太郎は、そう呟きながら、興味本位でその広告を選択すると、
その中身を読み始めたー。

そこにはーーー
”自分と相手の身体を入れ替える煙玉”の説明が書かれていたー。

「ーーーーーすげぇ」
しばらくそれを見つめていた清太郎は、
やがてそう言葉を口にすると、静かに笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それから、さらに数日が経過したー。

清太郎の手にはー
”自分と相手の身体を入れ替える煙玉”が
手にされていたー。

「へへへへへへー…」
邪悪な笑みを浮かべる清太郎ー。

清太郎は数日前、この”自分と相手の身体を入れ替える煙玉”を見つけー、
それを注文し、手に入れていたー。

そして今日ー。
清太郎は”邪悪な計画”を企てていたー。

それはー、
クラスのアイドル的存在である女子・彩菜の身体を奪うことー。

自分と相手の身体を入れ替えるこの煙玉を使いー、
”彩菜の身体を奪う”ー。
そんな、悪事を企てていたー。

今日はちょうど、”生徒会”の話し合いが行われるー。
生徒会長でもある彩菜は、生徒会の話し合い後に
生徒会室の戸締りをするため、”ひとり”になるー。

そのことを、以前何度かその姿を見かけて知っていた清太郎は、
そのタイミングを利用しようと、そう考えていたー。

「ーーー今日から、俺が学園のアイドルだぜー」
ニヤッと笑う清太郎ー。

生徒会の話し合いが終わり、生徒会室から
生徒会のメンバーがひとり、また一人と出てきて
帰路につき始めるー。

その様子を物陰から見つめながら、清太郎は
生徒会のメンバーが外に出て来る度に、
人数をひとり、またひとりと頭の中でカウントするー。

”よしー”
清太郎は、いよいよ生徒会室に残ったのが
生徒会長でもある彩菜だけになったことを確信すると、
周囲を見渡しながら、生徒会室の中へと入っていくー。

「ーーあれ…?福川くんー?」
彩菜は、クラスメイトの多くから嫌われている
清太郎の姿を見ても、嫌そうな顔ひとつせずに、
不思議そうな表情で、清太郎の方を見つめたー。

「ーどうかしたの?生徒会の話し合いなら終わったよ」
優しく微笑む彩菜ー。

生徒会メンバーの誰かと待ち合わせでもしていると
思われたのだろうかー。

が、清太郎はニヤリと笑うと、
「ー桐谷さんはいいよなー」と、突然、そんな言葉を口にしたー。

「ーーえ…?」
戸惑った様子で首を傾げる彩菜ー。

がー清太郎は有無を言わさず、
”身体を入れ替える煙玉”を手にすると、
「ーー俺にも”学園のアイドル様”の楽しい日常ー
 少し味合わせてくれよ!」と、そう言葉を口にしながら、
煙玉を床に叩きつけたー。

「ーーど、どういうー…? えっ…?こ、この煙はー!?」
清太郎の言葉の意味が分からず、
困惑の言葉を口にすると同時に、生徒会室内に
広がり始めた謎の”煙”を見つめる彩菜ー。

「ーーへへへへへー…
 今日から俺が、みんなの人気者だー

 普通に過ごしてるだけで、みんなからチヤホヤされるお前に、
 俺みたいな底辺の苦しみを教えてやるぜ!」

清太郎はそれだけ言うと、
嬉しそうに煙を吸い始めるー。

「ーー!!」
彩菜は、”何の煙”だか、分からずに動揺しながらも、
すぐにハンカチを取り出して、口と鼻を塞ぐと、
そのまま姿勢を低くして生徒会室から脱出しようとし始めるー。

そんな彩菜を見て清太郎は、彩菜にタックルを仕掛けると、
彩菜は悲鳴を上げて吹き飛ばされ、机に激突するー。

「ーへへへ…逃がさねぇー
 今日から俺が学園のアイドルになるんだー!
 へへっ…へっ…」

ニヤニヤしながら、そう言葉を発していた清太郎は、
突然意識が遠のいていくのを感じ、そのまま、その場で意識を失うー。

「ーー…え…」
それを見て、恐怖を覚える彩菜ー。

しかし、タックルされた際にハンカチもどこかへ
飛ばされてしまった彩菜も、次第に意識が薄れて
そのままその場に倒れ込んでしまったー。

・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーーー…」

「ーーーーーーーーーーーー!!!」

彩菜が目を覚ますー。

先程まで、この教室を包み込んでいた”煙”はすっかりと
消えていて、
二人がいた生徒会室は、すっかりと何事もなかったかのように
静まり返っていたー。

ゆっくりと立ち上がる彩菜ー。

彩菜は自分の手を見つめるとニヤリと笑みを浮かべたー。

「ーへへ…へへへへへー
 本当に俺が…本当に俺が桐谷になってやがるー」

邪悪な笑みを浮かべる彩菜ー。

”入れ替わり”に成功したー。

清太郎は、クラスの人気者であり、
アイドル的存在の彩菜の身体を手に入れてしまったー

「へへへーへへへへへっ…ははははははははっ♡」
彩菜の顔を歪めー、彩菜が絶対にしないような笑い方をし始める
彩菜になった清太郎ー。

「ーーぅ…」
そうこうしているうちに、”清太郎になってしまった彩菜”も
目を覚ますー。

自分よりもはるかに大きな身体の
ぽっちゃりとした清太郎の身体になってしまった彩菜は、
すぐにその違和感に気付くと、
目の前で”自分”が笑っているのに気づき、
立ち上がる前に、呆然として
笑っている彩菜(清太郎)の方を見つめたー。

「ーーへへへへー…
 そんな顔してどうしたの~~~????
 福川くんーーー?」

彩菜(清太郎)は”あえて”、清太郎になった彩菜を
”福川くん”ー
つまり、清太郎の名前で呼んだー。

清太郎(彩菜)は困惑した表情を浮かべながら
「こ…これは…ど、どういうことー?」と、
そう言葉を振り絞るー。

「ーーーへへへへー
 どういうことも何もねぇよー」
彩菜(清太郎)は、勝ち誇った表情で
そう言葉を口にすると、
「この身体は俺のものになったんだよー!
 ははははははははっ!!」と、
嬉しそうに、勝利宣言をするー。

「ーそ……そ、そんなー…」
清太郎(彩菜)が心底ショックを受けたような
表情を浮かべながら青ざめるー。

「ーーーー」
そんな様子を見つめながら
ふと、彩菜(清太郎)は、倒れたまま、顔を上げて
呆然としている清太郎(彩菜)の方を見て、
「ーねぇ、スカートの中、覗かないでくれる?」と、
クスクス笑いながら、そう言葉を発するー。

「ーー…ーーの、覗くも何もーその身体はわたしのー…」
清太郎(彩菜)がそこまで言いかけると、
彩菜(清太郎)は笑いながら言ったー。

「ーーもうこの身体は俺のものー。
 クラスのアイドルは俺だー。

 お前みたいに、可愛い見た目に生まれて
 何の苦労もせずに、周囲からチヤホヤされてたようなやつに、
 俺の苦労をー、俺の地獄を分からせてやる!」

彩菜(清太郎)は憎しみに満ちた目で
それだけ言い放つと、
「ー今日から俺は桐谷 彩菜だ!ひはははははは♡」と、
嬉しそうに叫んだー

「ーま、待って!」
清太郎(彩菜)が、生徒会室から立ち去ろうとする
彩菜(清太郎)を呼び止めようとするー。

がー
彩菜(清太郎)は不愉快そうに振り返ると、
言葉を口にしたー。

「ーー今の俺はー
 お前のことを
 ”わたしを襲った変態”に仕立て上げることもできるんだよー?」

彩菜(清太郎)の、悪意に満ちた表情を見つめながら
清太郎(彩菜)は困惑の表情を浮かべるー。

「ーーくくーー…
 この身体があれば、俺は何だってできるんだー…!
 くくくくー…」

彩菜(清太郎)はそれだけ言うと、
「ーじゃあねー。”福川”くんー」と、
清太郎(彩菜)を清太郎の名前で呼ぶと、
そのまま立ち去って行くー

「ーーー…そんなー」
一人残された清太郎(彩菜)は、呆然とした表情を浮かべながら
自分の身体になってしまった清太郎の手を見つめることしかできなかったー…。

②へ続く

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クラスで孤立気味の子が、
クラスで人気の子の身体を入れ替わりで奪うお話ですネ~!★!

入れ替わり後の日常(?)は、明日以降が本番デス~!!

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