<他者変身>妹の変身指令①~困惑~

”お兄ちゃんキモいから、この薬を飲んで変身して”

ある日ー、
妹から、突然そんな言葉を投げかけられた兄ー。

強引な性格の妹を前に、彼は無理矢理変身させられてしまうー。

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大学から帰宅した
村山 貞治(むらやま さだはる)は、
面倒臭そうにあくびをすると、
そのまま荷物の片づけをして、
ベッドに座り込んだー。

「ふぁ~~~~…」
あくびをする貞治ー。

貞治はーー
”無趣味”だったー。

何事にも無頓着で、
趣味は”寝ること”ー。

容姿にも無頓着なせいかー、
いつも髪もボサボサしているし、
無精髭が生えていることも多いーーー

そんな、性格である故かーー
彼はーー

「ーーうわっ!キモッー!」
妹のー、村山 円花(むらやま まどか)から
いつも”キモッ!”と、そう言われ続けていたー。

「ーーー…ーーはぁー
 だったら勝手に部屋に入って来るなよなー」

ため息をつきながら、呆れ顔で言葉を口にする貞治ー。

「ーー…うわ~~…相変わらず部屋も汚いしー、
 そもそも、何そのボサボサの髪ー。
 それに、髭も!」

円花の口から次々と飛び出す文句ー。

その言葉に、貞治は今一度ため息を吐き出すと、
「ーーなんでその”キモい兄”の部屋にわざわざ入って来るんだよー…
 別に同じ部屋を使ってるわけじゃないんだしー」
と、そう言葉を続けるー。

何故か、兄・貞治の部屋に入って来て
”キモッ!キモッ!”と言葉を繰り返す円花ー。

同じ部屋を使っているならまだしも、
別々の部屋を使っているんだしー、
兄・貞治の方から妹・円花の部屋にお邪魔することは滅多にないー。

無趣味・無頓着な性格故に、
自分の部屋から出ることもあまりないし、
キモいなら、わざわざ貞治の部屋に入って来なければ、
それで済む話なのだー。

「ーー”キモい”けど”嫌い”とは言ってないしー。
 そういう思い込みも、”キモい”ー」

円花がうんざりした様子で言うー。

「ーはぁ…よく分からん」
そう言葉を口にしながら、貞治はそのままベッドに寝転ぶー

すると、円花は「ーちょっと!可愛い妹が入って来たのに
無視して寝るつもり!?」と、声を上げるー。

「ーーはぁ?」
ベッドから身体だけ起こして、首を傾げる貞治ー。

「ー誰が可愛いって?」
貞治がそう言うと、円花は自分を指差すー。

「ーーーはぁーー…妄想は夢の中でしろよな」
貞治はそれだけ言うと、またベッドに寝転んでしまうー。

「ーちょちょちょちょちょっと!!!!
 話があるんだけどー!」
円花が不満そうに声を上げるー。

「ーーー…なんだよー」
貞治は、再び面倒臭そうに起き上がるー。

円花はーー
世間一般的に言えば”可愛い”部類に十分に入る見た目だー。

が、貞治は別にそうは思っておらずー…
いや、そもそも貞治は誰も見ても”可愛い”とか
”カッコいい”とか、そんな感想も出て来ないぐらいに
冷めている性格だー。

「ーーーどうしても言いたいことがあってー」
円花がそう言うと、貞治は「なに?」と、話を聞く姿勢を取るー。

「ーキモッ!」
ニヤッとしながら円花がそう言うと、
貞治は「おやすみ」と、もう円花の話を聞くつもりはない、と
言わんばかりにそのまま寝転んだー

「あ~~~!!!ちょっと待って!!待って!
 今のは冗談だからー!

 あ、キモいのは本当だけど、
 話はちゃんと別にあるから!!」

円花が慌てた様子で言うー。

が、貞治は寝たふりを続けて反応しないー

「も~~~!そういう反応もキモい~~!」
円花はそう言うと、
貞治の頬をぺしぺしと叩きながら
「起きろ~~~!!!」と、言葉を口にし始めるー。

「ーキモッキモッ!キモッキモッ!」
何度も耳元でそう囁く円花ー

「あ~~~!!うるせ~~!寝れないじゃないかよ!」
寝たふりをしていた貞治がうんざりした様子で起き上がると、
円花は「ホントに、大事な話があるの!」と、そんな風に声を上げたー。

「ーー…んだよー…また”キモッ!”とか言ったら
 今度こそ寝るからなー」

「ーーーそういう反応、キモッー」

円花がそう言うと、貞治は寝ようとする仕草をし始めるー。

がー、円花はすぐに言葉を口にしたー。

「お兄ちゃんさー、キモいから、
 この薬飲んで、変身して!」
とー。

「ーーーーーーー」
寝ようとしていた貞治は、目をぱちぱちとしながら
表情を歪めるー。

「ーーーーなんだって?」
”意味不明”と言いたげな貞治の表情ー。

そんな貞治を見て、円花は言葉を続けるー。

「ーこれ、”変身薬”って薬なんだけど、
 これを飲むと、”変身したい相手”の姿に変身できるの!

 お兄ちゃん、キモいでしょ?
 だから、家にいる間だけでも、他の人の姿に
 変身しててほしいな~って」

円花のその言葉に、貞治は心底、困惑したような
表情を浮かべながら
「いやーーまったく意味が分かんねぇー」と、
そう言葉を口にするー。

が、円花はどこから手に入れたのかも分からない
オレンジ色の液体が入ったペットボトルのような容器を
手にすると、「これがその変身薬ー」と、
そう言葉を口にするー。

「ーこれを飲んで、変身して」
円花が、”拒否権はない”と言わんばかりにそう宣言するー。

しかし、貞治も
「いやいや、嫌だよー面倒臭いー。
 そんなよく分かんねぇ薬も飲みたくないしー」
と、そう言葉を口にするー。

「ーーーー…」
その反応に、円花は不満そうに頬を膨らませると、
「キモッ!キモッ!キモッ!キモッ!」と、その場で騒ぎ始めたー。

「ーーあ~~!うるさいな!
 早く自分の部屋に戻れって」

貞治がそう叫ぶと、
円花はなおも「キモッ!キモッ!キモッ~~!」と、言葉を続けたー

「なんだよーーこのキモキモ星人めー!
 それしか言えないのかー!」

貞治はうんざりした様子で叫ぶー。

がー、円花は
「わたしを部屋から追い出す方法、一つだけあるよー」と、
ニヤニヤしながら変身薬を掲げるー。

「これを飲んで、変身してくれたらー、
 わたし、黙って部屋の外に出てくから!

 だからー、ほら、飲んでー?」

ニヤニヤする円花ー

「ーー面倒臭いこと、嫌いでしょ?
 これを飲んでくれれば、わたしも大人しくするからー
 その方が、時間も無駄せずに済むんじゃない?」

円花のその言葉に、
貞治は「ぐぬぬ…」と、声を上げるー。

がー、円花の言う通りでもあったー。
流石に、兄に毒を盛るような妹じゃないー、ということは
信じているし、
大方、”クソまずいジュース”でも、飲ませて
反応を楽しもうとしているのだろうと、
貞治はそう思ったものの、
その反応を見せてやれば、円花も満足して
自分の部屋に帰ってくれる気がするー。

「ーわかったわかったー飲んでやるよ」
そう言葉を口にすると、円花は「それ、高いんだから一口だけ飲んでね!」と、
そう言葉を口にしたー。

「ーどうせクソまずいジュースを飲ませて
 キモッ!とか言うんだろー?」
貞治がそう言葉を口にしながら
その”変身薬”と円花が説明しているものを口にすると、
”あれ?意外とうまいじゃんー”と、
心の中でそう言葉を口にしたー。

「ーーはい!準備オッケー!

 そしたらお兄ちゃん、
 相手のことを見つめながら、その姿に変身するイメージを
 頭の中で浮かべる感じで変身できるようになったからー!

 今、部屋から写真持ってくるから、
 その子の姿に変身してね!」

円花がそう説明しながら笑うー

”え?マジで俺、変身できるようになったのか?”
そう戸惑う貞治ー。

円花が自分の部屋に、貞治を変身させたい相手の写真を
取りに行こうとしたその時だったー

「うぉぉぉ!?マジかー!?」
円花の背後から”円花”の声が聞こえたー。

振り返る円花ー

そこにはーー
”妹の円花に変身した貞治”の姿があったー

「ーはああああああああああああああああああ!?!?!?
 ちょっと!なに、わたしの姿に変身してるの!?

 はっ!?えっ!?キモッ!キモキモキモキモ!」

円花が不満を爆発させながら、
そんな言葉を口にしてー、
部屋の中に引き返してくるー。

「えっ…?だ、だって今、変身しろってー」
円花の姿になった貞治が困惑しながら言うー。

「ーわたしに変身しろなんて言ってない~!!」
円花が怒りの形相でそう言葉を口にすると、
「ー大体、妹の姿に変身するとか、キモッ!
 下心丸出しじゃんー!」
と、さらに言葉を付け加えたー。

「ーいやー別に俺、お前に興味ないけどー…」
円花の姿に変身した貞治が言うー。

”興味がない”とあっさり言われたことに
逆に腹を立てたのか、
「はぁ?」と、不満そうに声を上げるー。

「ーいや、ホントにー。円花に興味なんてあるわけないだろー?
 マジで何も感じないって言うかー…
 まぁー、そんな感じ」

円花の姿に変身した貞治のその言葉に、
円花はムッとしながら、
「ーーとかいいつつ、ホントはわたしの姿に変身して
 ドキドキしてるんでしょー?
 わたしの”声”で勝手に喋ってドキドキしてるんでしょ?」と、
疑いの目を、兄の貞治に向けるー。

「ーいや、全然ー…
 円花に興奮する要素なんて、あるかー?」

円花に変身した貞治が、真顔でそう言葉を返してくるー。

”魅力0”と言われたような気がして
円花は「ぐぬぬ…」と言わんばかりの表情をしていると、
「ーーそれより、元に戻るにはどうすれば?」と、
円花の姿をした貞治が言うー。

本当に、円花の姿には興味がないらしく
ドキドキする素振りもなければ、
身体を気にする素振りもないー。
只々、”面倒臭い”オーラが漂っているー。

「ーーーなんかムカつくー」
ボソッと呟く円花ー。

が、円花の姿をした貞治にはその言葉は聞こえなかったようで
特に反応は示さなかったー。

円花はため息を吐き出すと、
「元に戻るためには、頭の中で自分の姿を思い浮かべながら
 目を閉じるだけー」と、そう言葉を口にするー。

「10秒ぐらいそうしてると、元に戻るから
 かわいい妹の姿から、元のキモいお兄ちゃんの姿に戻るってわけ」

円花がそう言うと、
「可愛い妹なんてどこにいるんだー?」と、円花の姿の貞治は
少しだけ笑うー。

「ーー」
円花は不満そうに自分を指差すー。

がー、円花姿のままの貞治は
「別に、普通じゃねー…?こういう感じの子、どこにでもいるだろ?」と、
そう言いながら目を閉じたー。

「ーーー」
何の躊躇もなく、円花の姿から、元の自分の姿に戻った貞治は
「ーで、もう、いい?俺、一回寝たいんだけどー?」と、
そのままベッドに横たわるー。

「ーはぁ???お兄ちゃん、ホント寝てばっかりじゃん!キモッ!
 そのまま永眠した方がいいんじゃないの?」

円花が不満そうに言い放つー。

貞治は、満足そうに横たわると、
「ははー残念だったなー。俺はまだ永眠しないよ」と、
それだけ言い放つと、円花のことを無視するかのように
寝息を立て始めたー。

ぶすっとした表情を浮かべる円花ー。

そしてーー

「ーって、まだ話は終わってない~~~!」
円花は、寝息を立て始めた貞治の布団を取り上げたー。

「ーうわっ!?なんだよ!?もう朝かー?!」
一瞬のうちに、本当に寝ていたのか貞治がそんな声を上げると、
「まだ1分も経ってないし!ホントにキモッ!」と、円花が叫ぶー。

「ーーー…ーーあ、そうー」
貞治はそれだけ言うと、
「ーわたしが部屋から、変身相手の写真取って来るから、
 その姿で過ごして!ってさっき言ったよねー?
 それなのに、勝手にわたしの姿に変身するから!」
と、円花は不満を露わにするー。

「あ~…そういやそういう話だったなー。
 で、誰に変身すりゃいいんだ?
 その相手の写真、早く持ってきてくれよー。

 何でもいいから一旦、晩御飯まで寝たいんだよー」

貞治の言葉に、円花はむすっとしながら
「取って来ればいいんでしょ!」と、何故か
キレ気味に言葉を口にして、部屋の方に引き返していくー。

「ーはぁ…なんだありゃ」
貞治はそう言葉を口にすると、
そのまま面倒臭そうにーー…
寝落ちしたー。

変身対象の写真を部屋に取りに行っていた円花は
戻ってくると「って、また寝てる!?!?!」と、
困惑の表情を浮かべるー。

「ーーーーー」
円花は、また貞治を叩き起こそうかと思ったものの、
「ーはぁーキモッー今はもういいやー」と、
そう言葉を口にして、そのまま兄の貞治を起こすことなく、
自分の部屋の方へと戻って行ったー。

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夜ー

「ーーーあ」
貞治は、予想より長く寝てしまったことに気付き、
起き上がるー。

部屋から出ると、廊下で妹の円花が
待ち伏せしていたー。

「ーーやっと起きたー。
 いつまで妹を待たせるのー?」

不満そうにしながら、妹の円花が変身薬を手に
「今度こそ、ちゃんと変身して貰うからー」と、
そう言葉を口にするー。

「ーーー…いや、別に待ってなくていいしー」
貞治はそう言いつつも、
妹・円花の強引な勢いに押されて
今度こそ、円花の指定する相手に変身することになってしまったー。

②へ続く

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コメント

ひたすら気持ち悪がられているお兄ちゃんが、
妹に無理矢理変身させられるお話ですネ~!

続きはまた明日デス~!

今日もありがとうございました~!

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