<他者変身>妹の変身指令②~疑問~

妹から”キモいから変身薬で他の姿に変身して生活して”と
言われてしまった兄ー。

戸惑いの中、今度こそ妹の言う通りにすることにー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー俺が、家の中では変身した状態で生活してりゃいいんだなー?」
兄の貞治は面倒臭そうに、
ボサボサの髪を掻きむしりながらそう言葉を口にするー。

何事にも興味がなく、無趣味ー。
自分の容姿にも無頓着な兄・貞治のことを
妹の円花は不満そうに見つめるー。

「ーキモッー…」
ボサボサの髪を掻きむしっている兄を見て、
そう呟く妹の円花ー。

円花は、自分の部屋から、自分が通っている高校の
集合写真を持ってきて、それを兄の貞治に
見せている最中だったー。

「ーーじゃあ、高柳(たかやなぎ)くんって人に変身してー」
集合写真に写っているイケメンっぽい男子を指差す円花ー。

「ーーーーー」
貞治は、その”高柳くん”とやらを見つめながら
少しだけ考えるような表情を浮かべると、
「ー実は、こいつのこと好きとか?」と、貞治はそう言葉を口にしたー。

「ーはぁ!?ち、違うし!
 お兄ちゃんキモいから、一番キモいと程遠そうな男子を選んだだけ!
 ってか、高柳くん、彼女いるし!」

円花が不満そうに言うー。

「ほ~…じゃ、アレか?
 その”高柳くん”ってやつに彼女がいて、自分の手には届かないから、
 俺を”高柳くん”に変身させて、その代わりにーー

 ぐぼぉっ!?」

日頃から、キモいキモい言われている仕返しを
ちょっとしてやろうかと、そんな揶揄う言葉を口にしていた
貞治は、円花から腹に拳を叩きつけられて、
その場に蹲るー。

「ーーバカ!発想がキモい!
 わたしにもちゃんと好きな人いるし!!」

円花がうんざりした様子で言うと、
「ーとにかく、変身して!」と、不満そうに変身薬が入ったペットボトルを
手渡したー。

「ーさっきも言ったけど、そのジュース、高いんだから
 一口だけ飲んでよね」

円花のその言葉に、「はいはい」と言いながら
集合写真の”高柳くん”とやらを見つめつつー、
その姿に変身するイメージを、頭の中で浮かべていくー。

そしてーーー
身体が変化していくのを感じたーーー

「ーーって…こら~~~~~~~~~~!!!」
その直後、円花が不満の声を上げるー。

「ーえっ!?」
何で円花が怒っているのか分からず、困惑する貞治ー。

が、その”声”で、すぐにその理由は分かったー

「あ、あれー?声がー、女ー?
 え?”高柳くん”って、イケメン系の女の子ー?」
戸惑いながら、変身した貞治が言うと、
円花は「そんなわけないでしょ!!!」と、そう叫ぶと、
集合写真の”高柳くん”の隣に写っている女子を指差しながら叫んだー。

「ーなんで、”美咲(みさき)”ちゃんに変身してるのよ!!!」
円花の怒りの言葉に、
”美咲”という子に変身してしまった貞治は
「えっ!?えっ!?」と、身体を見下ろすー。

胸の膨らみや、長い髪が見えるー。

「ーーー…」
がーー、何事にも無関心な貞治は、
特にそれ以上の反応は示さず、
「…ん?変身する相手間違ったってこと?」と、
そう言葉を口にしたー。

「ーこの変態!キモッ!キモッ!キモッ!キモッ!」
円花がそう連呼するー。

がー、美咲の姿になった貞治はため息をつきながら、
「いやいやー、俺、好き好んで女子に変身したりしないからー」と、
そう言葉を口にするー。

「ーだって考えて見ろよー。女子に変身すると、
 普段、慣れないことが多いから面倒だろ?
 トイレとかもそうだしー
 これも邪魔だし」

胸を指差しながら、美咲の姿になった貞治がそう言い放つー。

おまけに、美咲という子は
年の割に”大きい”気がして、貞治からすれば
さらに邪魔にしか感じなかったー。

「ーーっっー」
円花も、”お兄ちゃん”の性格はよく理解しているからか、
兄が本気でそう言っているのだと認めざるを得ず、
不満そうな表情のまま、口を開くー。

「ーーじ、じゃあ、なんで美咲に変身してるのよー
 よりによって、わたしの友達にー」
不満そうな円花ー。

美咲の姿をした貞治は
「いやーだってー…」と、集合写真を指差すー。

集合写真ではー
”美咲”は、円花が変身相手として指定した
”高柳くん”の隣に写っているー。

集合写真で”近く”に写りすぎているせいか、
”相手を見つめながら変身するイメージを浮かべる”という
変身薬の効果を発揮する際に、”違うほう”に、”誤”変身
してしまったのだー。

「ーーむむ」
円花は、納得せざるを得ない、というような表情を浮かべるー。

「ーー集合写真じゃなくて、この”高柳くん”単体の写真とかないのかよー?
 そうしないとまた違う子に変身できちまうかもしれないし」
美咲の姿をしたまま、貞治がそう言うと、
円花は「た、高柳くん単体の写真なんてあるわけないでしょ!」と、
そう言葉を口にしたー。

「ーーっていうか、美咲の姿でそういうだらしない座り方しないで!」
円花が不満そうに声を上げるー。

それを聞いた美咲姿の貞治は「じゃあもう変身解除していいー?」と、
そう言葉を口にするー。

円花は「さっさと解除して!」と、そう言い放つとー、
美咲姿の貞治は目を閉じて、自分の姿を思い浮かべるという
変身解除の条件を満たして、元の姿に戻ったー。

「ーーー…ーーー…」
円花は不満そうに”キモッ”と、小さく呟くと、
1階から、母親の声が聞こえて来たー。

どうやら、ご飯が出来たようだー。

「ーあ、そうそうー
 お母さんとかお父さんの前では変身した姿
 見せないようにしてねー
 変身薬のこと説明するの面倒だし、
 ”そんなもん飲んで大丈夫か”とか、
 ”どこで買ったんだ?”とか始まると面倒だからー」

円花はそれだけ言うと、
そのまま階段を下りていくー。

「ーーーー」
貞治は、少しだけ首を傾げながら
円花の後に続いて階段を下り始めるー。

”ってか、円花のやつ、何のために俺を変身させようとするんだろうなー?
 キモいキモい言うなら、俺の部屋に来なけりゃいいだけだしー”

貞治はそんな風に思うー。

貞治自身、帰宅後はトイレとかお風呂とか、ご飯以外、
積極的に部屋から出ることはないー。
妹の円花に嫌われていることもよく理解しているため、
円花の部屋に自分から入ることも絶対にないー。

が、円花の言う通り
”両親の前では変身している状態を見せないようにする”となると、
ご飯の時も、お風呂の時も
変身したままでは過ごせないー。

と、なると、円花からしてみれば”ほとんど意味がない”はずなのだー。
部屋に来なければ、円花と貞治が顔を合わせることはないし、
ご飯、お風呂、トイレなど、部屋から出る”円花と遭遇するかもしれないタイミング”
では、”両親に見られる可能性もある”ために変身をすることができないからだー。

「ーーなんか、企んでんのか?」
そう思いつつも、貞治は”まぁ、どうでもいいかー”と、
そのままご飯に向かうのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

円花がまた部屋にやって来たー。

「またかよー」
特にやることがなく、暇そうにベッドに寝転んでいた貞治が
そう言葉を口にすると、
円花は「キモッ」と言いながら、スマホの画面を表示したー。

昨日の”高柳くん”とやらとは別の男子が映っているー。

「ーこれ、友達の彼氏の”久留米(くるめ)くん”ー。」

どうやら、友達から送られてきた”友達の彼氏”の写真らしくー
「これなら”誤変身”しなくて済むでしょ?」と、
不満そうにしながら、円花はそう言葉を口にしたー。

「ーま、まぁなー」
貞治はそれだけ言葉を口にすると、
円花の方をじっと見つめるー。

「ーーー…何か、企んでないかー?」
とー、思わずそう言葉を口にする貞治ー。

「ーーーは?」
円花が表情を歪めるー。

「ーー…いや、だってさー…
 円花は、俺のことキモいから変身させようとしてるんだろ?」
貞治がそう呟くー。

「ーそうだけどー?
 あんたがキモいのは周知の事実でしょ?」
円花がうんざりとした様子でそう呟くー。

「ーっ…い、一応円花以外からキモいって言われたことは
 ないんだけどなー」
貞治が表情を歪めながら言うと、
円花は、視線を少しだけ逸らすー。

「ー…でもさ、母さんや父さんの前では変身してるところ
 見せるなって言ってたよなー?
 そうなるとさー、この部屋から出てる時は、変身したまま出るわけにはいかないよな?」

貞治がそう指摘すると、
円花は「それはそうでしょ。お母さんたちに見られたらややこしくなるしー」
と、ため息をつきながら言うー。

が、そう言われた貞治は、言葉を返すー。

「それじゃ、俺のこと変身させる意味、あまりなくね?」

とー。

貞治の言葉に、円花は「ど、どういうことよー?」と、
少し気まずそうに言うー。

「ーいやー…俺、部屋からトイレとか風呂とか、ご飯とか
 用のある時以外、積極的に出るタイプじゃないじゃん?

 それに、円花の部屋にも自分からは行かないしー
 寝てばっかだしー」

貞治はそこまで言うと、さらに続けるー。

「円花が、俺の部屋に来なけりゃ、
 キモい俺の顔を見ることもないだろうしー、
 
 部屋の外じゃ変身NGなら、
 俺に変身薬を飲ませに、こうして部屋に来るよりも、
 俺のことなんて放っておいた方が
 キモい俺と会わなくて済むだろ?」

とー。

「ーーーっっっ…」
円花は露骨に表情を変えると、
「ーー…き、キモッ! なにそれー?
 探偵気取り????
 キモッ!キモッ!」と、声を上げるー。

「おいっ!キモキモ言って誤魔化すよなよー…!
 なんか企んでるんだろ?」
貞治が指摘するー。

「こうやって毎日のように俺の部屋に来るはめになってまで
 何で俺を変身させようとするー?

 キモいなら、部屋にいる俺のことなんて放っておいた方が
 会う時間も減るのにー!

 何か企んでるとしか思えない!」

貞治はそう言うと、
円花は「あ~~~あ~~~~~~うるさい!キモッ!」と、
そう叫びながら、
「部屋が隣だから顔を合わせてなくても、あんたのオーラを感じるの!
 キモオーラ!!
 だから、変身させてそのキモオーラを消すの!」
と、声を上げるー。

「ーーはぁ~~…ま、いいやー
 で、何だっけ?久留米くんとかいう奴に変身すればいいんだっけ?」

晩御飯の時間までさっさと昼寝したい貞治はそう言うと、
「そ、そうよ!早く変身して!」と、
円花はうんざりした様子で変身薬を貞治に向かって押し付けたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その日以降もー、
貞治は、妹の円花から”変身”するように連日言われ続けてー、
相手にするのも面倒であったために、
事務的に変身する日々を続けていたー。

「ーー今日はこの子!」

「ーーほい」

「ーー今日は、こっちの子!」
「ーーへい」

「ー今日は、別のクラスの男子だけど、この子」
「ーあい」

完全に変身が事務的になった貞治ー。

特に何も言わずにさっさと変身して、
円花を部屋から追い出し、昼寝をするー。

無趣味な貞治にとって、
他人の姿に変身する、なんてこともどうでもよかったしー、
只々、日頃の平穏ー。
それだけが、彼の望みだったー。

がー…
そんな日が続いたある日ー。

「ーーー今日は、この子にー」
円花はそう言いながら、スマホを手に
何故か、女子の写真を見せて来たー。

「ーーは?」
貞治が困惑の表情を浮かべるー。

最初に女子に誤変身してしまった時に、
円花は激怒したのを覚えているー。

それなのに何故女子の写真を持って来たのだろうかー。

「ーーなんで女子なんだよ?
 っていうかさー、いつも思うんだけど、
 毎日同じやつで良くね?
 
 別に俺を変身させて、何かさせたいわけじゃないみたいだし、
 わざわざ毎日変身相手変える必要ない気がするんだけど」

貞治が言うと、
円花は「ーーキモッ」と、言葉を発してから、
「とにかく、今日はこの子」と、そう言葉を口にするー。

「ーー…まぁ、俺は男子でも女子でもいいけどさー…
 寝るだけだし」

貞治のその言葉に、円花は不満そうにしながら、
「さっさと変身して」と、変身薬を差し出すー。

それを飲んで、円花のクラスメイトの女子の一人に変身した貞治は、
全くその身体に興味を示すこともなく
「じゃ、俺は昼寝するからーおやすみ」と、そのまま寝始めるー。

「ーーーー」
その様子を見つめながら、円花は部屋の外に出ると、
少しだけ何かを呟いて、そのまま立ち去って行ったー…。

③へ続く

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コメント

次回が最終回デス~!☆

お兄ちゃんを変身させる目的…
何かあるのか、何もないのかは、
明日の最終回を見て下さいネ~☆!

今日もありがとうございました~!

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