出産の際に命を落とした妻の魂を
生まれたばかりの娘に憑依させて、
蘇生させてしまった夫ー。
次第に娘の身体で成長していく妻ー。
しかしー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーただいまー」
娘・葵の身体で、
ランドセルを背負いながら学校から帰宅した妻・恵美は
不満そうに言葉を口にするー。
「ーー……」
夫の昌義は気まずそうにしながらも
「お、お疲れー」と、そう言葉を口にすると、
「ーが、学校の調子はどうだー?」と、
それだけ言葉を口にするー。
「ー本当だったら”葵”の人生だったのにー」
葵が不満そうにそう言葉を口にするー。
何年経過しても、”娘”の身体に憑依ー、と言う形で
この世に戻された恵美は、不満を抱き続けていたー。
「ーーーーー…わ、分かってるよー…」
昌義はそれだけ言葉を口にすると、
葵は「宿題、やるからー」と、それだけ言葉を口にして
子供部屋に入っていくー。
葵になった恵美はー、
学校では”天才”扱いをされていたー。
恵美本人としては”抑えている”つもりではあるものの、
中身は”大人”ー
低学年の授業は、かなり簡単にこなせてしまうし、
振る舞いも、どうしても大人のようになってしまうー。
そのため、クラスメイトたちから
とても信頼されているしー、
先生たちからも”どうしてそんなことできるの!?”と、
よく驚かれてしまっているー。
「ーーーー…」
けれどー、葵になった恵美には、
普段から、あまり笑顔がなかったー。
鏡で”葵”の顔を見るたびに、
”わたしは、娘の人生を奪っているー”と、
そう思い知らされるー。
そのたびに、罪悪感が膨らんでいきー、
どうすることもできない焦りに襲われるー。
早く、葵に人生を返してあげたいー
でも、どうすることもできないー。
だからと言って、自分で命を投げ出すことも
できないこの状況に、強く苛立っていたー。
もちろん、夫である昌義の気持ちも分かる部分はあるー。
でもーー
”残されたのがわたしのほう”だったらー、
少なくとも”娘の恵美に憑依させて生き返らせる”なんてことは
しなかったと思うー。
そう思うからこそ、恵美は余計に苛立ち、
”なんでこんなことしたの?”と、いう不満を消せずにいたー。
「ーーーーーー」
家でも、口数は少ないー。
昌義は、今も恵美のことが大好きで、
なんとか、葵に憑依した恵美の信頼を取り戻そうと
あれこれしていたものの、
葵に憑依した恵美は、”どうしても”娘を犠牲にした夫の
やり方が許せなかったー。
けれどー……
夫・昌義の言う通り、”離婚”のようなこともできないー。
”少女”の身体では、一人暮らしをすることは
”能力的”には出来ても、
世の中のしくみ的に難しいー
働くことのできない年齢だし、
アパートの契約も一人じゃ絶対にできないし、
一人で暮らすことは現状、不可能だー。
だからこそー、一緒に暮らすしかなかったー。
”父”と”娘”の関係としてー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
やがてー、”葵”は中学生になったー。
みるみる可愛らしくなっていく葵ー。
そんな葵のことをほめる言葉を口にするも、
やはり、葵に憑依した恵美は不満そうだったー。
「ーー可愛いって言われるたびにー、
”この子の人生を奪ってる”って思って辛くなるから、やめて」
葵はそれだけ言うと、昌義は「ご、ごめんー」と、
そう言葉を口にするー。
「ーーー」
学校に向かう準備をしながら、葵はため息をつくー。
学校でも”可愛い”と言われたりするたびに、
”本当だったら、葵が褒められるはずだったのに”と、思ってしまうー。
母である自分が、娘の身体でのうのうともう一度青春を堪能しているー。
そんな、自分自身にも、恵美は苛立ちを感じていたー。
でもーー
”葵”のためにも、しっかりと身なりを整えてー、
そして、ちゃんとおしゃれもしてー、
いつ”葵”が戻って来てもいいようにー、
葵に憑依した恵美は”可愛く”あり続けたー。
「ーーただいま~~」
ある日ー
帰りが遅くなった葵が帰宅すると、
昌義は心配そうに「あ、葵ー…こんな時間まで、どこにー!?」と、
戸惑うー。
葵は表情を歪めながら「友達と、カラオケだけどー?」と、
そう言葉を口にするー。
がー
昌義は、なおも心配そうにー、
「ーと、友達って男かー?」とか、
「夜遅くなると心配だからー」とか、そんな言葉を繰り返すー
「ーちょっと!」
そんな言葉を、遮る葵ー。
「ーわたし、身体は”娘”だけど、あなたの”妻”なんだからねー?
ちゃんと分かってるー?」
葵が不満そうに言うー。
「ーーそ、そ…それは、分かってるけどー…
で、でもー」
昌義がそう言うと、
葵は「そういうの、やめてー。わたしは大人なのー。子供扱いしないで」と、
不満そうにそのまま部屋に戻って行ってしまったー。
時は流れー
高校受験の時期が近付くー。
葵に憑依している妻・恵美は
元々成績優秀だったこともあってか、
中学でも”圧倒的な成績”を叩き出し、
やはり、友達からも先生からも信頼されていたー。
一方で、中学時代に入ってからは
恵美自身”もう、元には戻れない”と思い始めたのだろうかー、
”もう一度”青春を謳歌し始めて
小学時代の時のように”周囲を必要以上に関わろうとしない”振る舞いではなく、
毎日楽しそうに中学生活を送っていたー。
がーーー
そんなある日のことだったー
「め、恵美!!!
な、なんだこれは!?」
”葵”のスマホを勝手に見てしまった昌義は、
”葵”が、同級生の男子とやり取りしているメッセージを見てしまい、
声を上げていたー
「な、なにってー…?仲良しな男子だけどー…?」
葵がそう言葉を口にすると、
昌義は「め、恵美ー…ま、まさか浮気してるのかー?」と、
不安そうに言うー。
「う、浮気ー???な、何言ってるのー…?
この年になれば、恋愛だってするでしょー…?」
葵の言葉に、昌義は「れ、れ、恋愛ー…や、やっぱり浮気じゃないか!」と、叫ぶー。
が、葵は表情を歪めると言ったー。
「ーー…昌義ー…
じゃあ、あなたは”葵”に一生恋愛もせずに、独身でいろって言うのー?」
とー。
「ーー…い、いや、だってー葵は、恵美だしー…」
昌義がそう言うと、葵は「ーわたしは恵美だけど、身体は恵美じゃないのー」と、
そう言い放つー。
「ー…ーー”あなたのせい”で、わたしは葵の人生を奪っちゃったー…
最初は、葵に身体を返せると思ったけどー…
でも、もうー15年以上この状態ー…
たぶん、もう葵に身体を返せないー
わたしは永遠に葵の人生を奪った泥棒のままー
だからー…
せめて、わたしは葵の身体で精一杯生きて、精いっぱい幸せにならないといけないって
そう思ったのー。
わたしは”葵”として生きるって決めたのー」
葵がそう言うと、昌義は戸惑いながら、
「だ、だからってー…」と、反論しようとするー。
「ーーーわたしは!!!
恵美だけど、恵美じゃないの!!
身体はわたしのものじゃないんだから!」
声を上げる葵ー。
「こんなことになったのは誰のせい!?
葵を殺したのはー、わたしを泥棒にしたのは、誰のせいなの!?」
すっかり、昌義に対する信頼を失っている妻・恵美は
悲しそうにそう叫ぶと、
「ーもう、わたしを妻として見ないでー。キモいー」
と、そう言葉を口にして、そのまま部屋に籠ってしまったー。
成長するにつれて、葵に憑依した恵美は、
今も”昌義”が、自分のことを”妻”として見て来ることに
嫌悪感を抱き始めていたー。
その日以降ー、
”もう、わたしは”葵”だからー”と、
葵に憑依した恵美は、”恵美”としての振る舞いを一切見せなくなってしまったー。
ギクシャクした関係のまま、
昌義と”葵”の日々は続くー。
やがてー、
葵に憑依した恵美は中学を卒業し、高校生になったー。
だがー、
葵に憑依した恵美からは、ますます嫌悪の感情を向けられるようになり、
昌義もまた、葵に憑依した恵美を過剰に心配しー、
束縛しようとするような素振りを見せて、
その関係はますます悪化していくー。
さらに…
葵に憑依した”恵美”は夢を見るようになったー。
「ーー”泥棒”ーわたしの身体を返してー」
”もう一人の葵”が、葵に憑依した恵美の前に姿を現すー。
同じ姿をしているけど、”わたし”ではない葵ー。
”憑依されていなかった場合の葵”が、夢の中で姿を現しー、
連日、母である恵美のことを責め始めるようになったのだー。
「ーー許さないー…自分だけ楽しそうに生活してー
許さないー!」
「ーー酷いー…酷い!酷い!酷い!酷い!」
”憑依されていなかった場合の葵”ーー
本来の葵が、夢に出現して、怒りの言葉を口にするー
「ーごめんなさいー…許してー…許してー」
葵の姿で、謝罪を繰り返す恵美ー。
もちろんーーー
これは、”ただの夢”ー
葵本人の意識は、0歳の頃に憑依されたことによって、
自我が芽生えないまま心の奥底に封じ込められてー
事実上、既に消滅しているような状態ー。
”葵本来の意識”など、もう存在しないー。
しかしー、
”わたしは、昌義のせいで、泥棒になってしまったー”と、
常に心の中で葵に対する罪悪感を抱いていた恵美はー
そんな”夢”を見るようになってしまったー。
全ては自分の罪悪感に苛まれた心が作り出した幻ー。
”葵本来の意識”なんてないのにー、
自分が作り出した幻に、夢の中で責め続けられる日々を送りー、
葵に憑依した恵美は、ますます苛立ちを覚えていたー。
「ーーー恵美ー……
”先生”からまた連絡がー」
高校生になった葵に憑依した恵美は
次第に、素行不良になり始めたー。
「ーーうるさい!!”恵美”って呼ばないで!」
葵が怒りを露わにして部屋に戻っていくー。
高校に入ってからの”葵”は、髪を染めて、
ガラの悪そうな男たちと夜に遊びに行くようになってしまったー。
そうでもしていないと、罪悪感に飲み込まれて
おかしくなってしまいそうだったー。
そしてー”どうせわたしは悪者だからー”と、
葵に憑依した恵美は、すっかり自暴自棄になってしまっていたー。
そんな日々が続きー、
葵はまた、この日も夜になると派手な格好で
出かけて行こうとするー。
夜にー
”ひとり”だと怖いからー。
また、”夢”で”葵”に責められるからー
そうでもしないと狂ってしまいそうだったー
「ーー恵美!!」
昌義が葵の手を掴むー。
がー、葵はその手を振り払うと、
「ーうるさい!この人殺し!」と、
”葵”に、勝手に憑依させたことを、そう表現したー。
「ーー…恵美!俺はー…俺はどう言われてもいいからー
頼むからー…もっと自分のことを大事にしてくれー
せっかく、せっかく生き返ったのに、これじゃー」
昌義がそう言い放つー。
「ーー”葵”のことー、大事にしなかった”あんた”には言われたくない」
葵が怒りの形相で昌義を睨むー。
優しかった妻は変わってしまったー。
いやー
”俺が、変えてしまったのかー”
昌義はそう思いながら歯ぎしりをするー。
「ーーーーーーー」
昌義は何も言えずに葵の手を離すと、
「ふん!」と、葵は不満そうにしながら
そのまま外へと出かけていくー。
すっかりと荒れてしまった葵の生活に、
昌義は口出しすることもできないまま、
娘が、妻が壊れていくのを見ていることしかできなくなってしまったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そんな生活が続いたある日ーー
「ーーめぐーーー…いや、葵ー」
昌義が警察署に駆け付けると、
不貞腐れた表情の葵が、そっぽを向いたー。
夜間に外を歩いていて、
しかも、同年代の子と喧嘩をしたらしく、
葵は警察の世話になってしまったのだー。
「ーー葵っ…!何でこんなことをー…!」
昌義がそう言うと、
顔に痣のある葵が「ーうるさい!父親ヅラするな!」と、
声を荒げるー。
「ーーーー葵っ…!」
昌義は、”こんなに君のことを愛しているのに、どうして分かってくれないんだ”と、
苛立ちを覚えながらも
周囲に謝罪をしながら、ひとまず葵を引き取って帰宅するー。
家で、葵に対して苦言を口にする昌義ー。
しかし、葵は「ふん」と言う様子で聞く耳を持たないー。
「ーーーもう、夜に外出はさせないからな!!!」
昌義がそう言うと、葵は「うざい!」と、それだけ言葉を口にして、
そのまま部屋の中へと引き籠ってしまうー。
「ーーくそっー…」
一人になった昌義は頭を抱えるー
「くそっー…くそっ!くそっ!!!くそっ!!!」
昌義は思い通りに行かないこの状況に頭を抱えながら、
一人、そう呟き続けたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”ーわたしの身体を、返してー”
”返してー 返してーーー”
「ーーひっ……やめて……来ないでええええええええ!!」
悲鳴を上げながら目を覚ます葵ー。
葵は冷や汗をかきながら、荒い息を吐き出すとー、
それが夢であったことを理解するー
が、身体の震えは止まらず、
目から涙をこぼしながらガクガクと震えるー
「め、恵美ー!?」
悲鳴を聞いた昌義が慌てて駆け付けて来るー。
そんな昌義を見て、葵はガクガクと震えながら
言葉を口にしたー
「ーー死んだわたしを生き返らせてー
こんなに苦しい思いをさせてーー
あなたは、それで満足なのー…?」
とー。
その言葉に、昌義は呆然としながら、
「俺は……俺はー」と、
答えを口にすることもできずに、ただただ、その場に立ち尽くしたー…
③へ続く
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コメント
次回が最終回デス~!☆
このままバッドエンド直行…?
それとも逆転ハッピーエンド…?
どうなるのかはぜひ、明日の更新で見届けて下さいネ~!!
今日もありがとうございました~!

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