<入れ替わり>ターゲットは”元”自分(後編)

裏社会で暗躍するヒットマンの男と
入れ替わってしまった女子大生ー。

その5年後ー
彼女は”元自分”を始末する仕事を行おうとしていたー…。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「仕事だよー」
銃を取り出すイプシロン(皐月)ー

皐月(イプシロン)は一瞬驚いたような表情を浮かべると、
「ーーふふふー…まぁ、落ち着きなってー」と、
両手を上げながら笑うー。

「ーーーーー」
イプシロン(皐月)は表情を変えることなく、
皐月(イプシロン)の方を見つめるー

「この身体は元々、お前の身体ーー
 撃てば、もう2度と元には戻れなくなるんだよ?」
ニヤニヤと笑う皐月(イプシロン)ー

「確かに5年も経過してー、
 もう”女子大生”じゃなくなっちゃったけどさー
 
 それでもまだ、”この身体”は若いしー
 十分”女”としても楽しめるー。

 殺しちゃうには、もったいないと思わないー?」

皐月(イプシロン)は笑うー。

「ーそれにー
 ”わたし”が死ねば、”お父さんとお母さん”も悲しむよー?

 二人とも、”娘の中身が入れ替わってる”なんて
 知らないんだからー

 ね?」

皐月(イプシロン)はそう言うと、
イプシロン(皐月)は「そんなことは、どうでもいい」と、
言葉を吐き出したー。

「どうでもー…?
 ふふー強がるのはやめた方がいいよ?

 お前に”わたし”が撃てないことは分かってるんだからー。

 だってーーー
 ”撃ったら”もう、2度と元に戻るチャンスもなくなるんだしー
 そんなの、嫌でしょ?」

皐月(イプシロン)はそこまで言うと、両手を下ろして笑ったー。

「ーー”元に戻りたい”なら、力を貸してあげてもいいよー
 ただー条件があーーー

その言葉が終わる前にーー
銃声が響き渡ったー。

笑みを浮かべていた皐月(イプシロン)は、顔を赤くしながら
自分の身体を見つめるー。

自分の腹部から、血が流れているー。

可愛らしい洋服が赤く染まり、そこから血がしたり落ちるー。

「ーーは…???? は????????
 な、なにしてんのーー???
 この身体は、お前のーー!」
皐月(イプシロン)がそう叫ぶと、
イプシロン(皐月)は「”どうでもいい”と言ったはずだ」と、
そう言い放つー。

「ーーこ、この身体は、お前のなんだよーー!?!?
 う…、撃ったら、自分の身体、死んじゃうんだよ!?」
皐月(イプシロン)は慌てた様子で言うと、
「ー別に構わないー。今の”自分”の身体はこれなんだから」と、
銃で自分の腕をトントンと叩いてみせるー。

「ーーー…ーーーーひっ…!?」
皐月(イプシロン)は思わず尻餅ついてしまうー。

その尻餅のおかげで、2発目の銃弾が逸れて
皐月(イプシロン)は命拾いをするー。

「ーー…ま、待って…!
 お、お前の身体ー…お前の身体、本当に死ぬぞ!」
皐月(イプシロン)が叫ぶー。

「だからー…言ったはずだー。
 今の”自分の身体”はこれー。

 ”それ”は、俺の身体じゃなくて、お前の身体だー」

イプシロン(皐月)は冷たい口調で言うー。

いくらー見た目が、”元の自分”とは全然違う雰囲気に
なっていたとしても、
やはり面影はあるし、
”わたしの身体”であるということは分かってしまうー。

けれど、イプシロン(皐月)は、
5年が経過した今、今更元に戻ってもー
もうー”どのみち人生は滅茶苦茶”だということは理解していたし、
仮に戻ったとしても
今の”皐月”は、殺し屋を差し向けられるほどに
裏社会の組織からも目をつけられている存在ー。

元に戻れば”殺される”だけかもしれないー。

それなら、一応は”居場所”のある”イプシロン”として
このまま人生を送り続けた方がー、
”皐月”によっても有意義な選択なのだー。

「ーーー死ね」
イプシロン(皐月)はあえて感情を出さないようにして、
銃を皐月(イプシロン)に向けるー。

少しでも”揺らぎ”を見せればそれに付け込まれると思ったからー。
少しでも”迷い”を抱けば”元自分”を殺せなくなってしまうと
そう、思ったからー。

だからこそー。
銃を握りしめてー、最後の銃弾をーー

「ーーうあああああああああ!!」
皐月(イプシロン)が腹部から血を流して突進してくるー。

「ーーー!」
イプシロン(皐月)に向かってきた皐月(イプシロン)に向かって
銃を放つー。

がー、”皐月の身体”になったとは言えー、
腹部を撃たれたとは言えー、
”中身”は殺し屋のイプシロンー。

銃弾を交わすと、
体術のようなものを、叩きこんできたー。

「ークソが!!まさか自分の身体を平気で殺そうとするとは思わなかったぜー!
 誰に…誰に頼まれて、わたしを殺しに来た!?」

皐月(イプシロン)は苦しそうにしながら言うー。

イプシロン(皐月)は、思わぬ反撃に一瞬、驚きながらも、
「ーー”殺し屋”は依頼人の情報を漏らさないー」と、
まだ冷静を装って、そう返したー。

「ーーふざけやがってー…!」
皐月(イプシロン)がそう言いながら、イプシロン(皐月)を
グーで殴ろうとするー。

がーー

「ーーー”その身体”ーー、”力”全然なかったからー
 そんなことしても、無駄だー」

イプシロン(皐月)が皐月(イプシロン)の腕を掴むー。

皐月(イプシロン)は「くそっ!」と、悔しそうに声を上げるも
腕力の差が思った以上に大きく、
どうすることもできないまま突き飛ばされてしまうー。

「ーーぐ……」
皐月(イプシロン)が悔しそうにしながら、
イプシロン(皐月)を見上げるー。

「ーーく、くく…くくくくくー…
 いいのか?本当にいいのかー?
 これは、お前の身体だぞー!」
どうすることもできなくなった皐月(イプシロン)は
開き直った様子でそう言葉を口にすると、
イプシロン(皐月)は、表情を少しだけ変えるー。

最初に銃撃した腹部からの出血が大きくなっているー。

このままでは皐月(イプシロン)はどのみち死ぬだろうー。

「ーー…構わない」
イプシロン(皐月)はあっさりとそう言うと、
皐月(イプシロン)は狂ったように笑い始めたー

「そうかそうかそうかー
 だったら最後に教えてやるよ!
  
 お前のこの身体、すっげぇ気持ち良かったー!

 お前の身体になってから男遊びを繰り返してさぁ、
 お前の彼氏だった男ー

 え~っと、名前、なんだったっけー?
 そいつに”浮気”を問い詰められた時に
 開き直った態度を取った時のアイツの顔ー

 ホントに、最高だったよー

 それに、親友の女とレズった時も最高だったー

 ”皐月、どうしちゃったの!?”とか、言っちゃってさー

 ひひひひひひひっ!」

皐月(イプシロン)が嬉しそうに
”入れ替わっていた5年間”のことを話し始めるー。

「ーーそれにー、お前の親もー…
 ”娘”がこんな風になってー、
 戸惑ってたなぁー

 母親は泣いてたっけー

 まぁ、それもそうかー
 娘が大学を中退して、夜の街で遊び歩くような女に
 なっちまったんだからー

 そりゃまぁ、動揺もするよなー」

ニヤッと笑う皐月(イプシロン)ー

イプシロン(皐月)は、そんな皐月(イプシロン)の言葉を
黙って聞きながら、”元自分”を睨みつけるー。

「ーーでもさぁ、お前のこの身体さー
 男には困らなかったぜー?
 少し俺は甘い声を出せばどんな男でも落とせたしー、
 この身体になって、腕力はなくなったけど
 ”女”を武器になんでもできたー

 どうせ、今回、”わたし”の命を奪って来いって命令したやつらもー
 わたしの美貌に嫉妬してるだけのつまんねぇ男に決まってるー」

皐月(イプシロン)はそこまで言葉を続けると、
さらに「あぁ、そうそうー。お前の後輩の女だけどさー」と、
大学の後輩のことを口にし始めたー。

がーーー
その直後のことだったー。

銃声が再び響いたー。

皐月(イプシロン)は驚いた表情を浮かべるー。

話の途中で、話を最後まで聞かずに、
イプシロン(皐月)は、元自分の身体を
容赦なく銃撃したのだー。

「ーーーぁ………?
 お…お前ーー」
皐月(イプシロン)が青ざめながら声を発すると、
イプシロン(皐月)は言ったー。

「ーーそんな話、興味ない」
とー。

皐月(イプシロン)はその場に倒れ込むと、
苦しそうにしながら顔を上げたー。

「ー”元自分”をこんなにあっさり殺そうとするなんてー…
 あ、あくまめー…!」
と、そう言葉を口にしながらー。

「ーー悪魔?」
イプシロン(皐月)はその言葉に反応すると、
皐月(イプシロン)を睨みつけたー。

「ーー”今の俺”がこうなったのはー
 ”お前のせい”だー」

イプシロン(皐月)は、少しだけ感情を見せるー。

「訳も分からないまま、急に身体を入れ替えられてー
 訳も分からないまま、裏社会で生きるしかない状況にされてー
 訳も分からないまま、生きるために人を殺して来たー

 そんな状況にしたのは、お前だー」

そう言い放つと、
皐月(イプシロン)は苦しそうにしながら、
「ーーククーーー…すっかり、お前も殺し屋ってわけだー」と、
そう言葉を口にしたー。

”こう生きるしかなかった”
5年間ー、元の自分に戻ることもできず、
殺し屋として生き続けるしかなかったー。

最初は泣いたりもしたー。
でも、感情を捨てなければ狂ってしまいそうだった‐。

やがて、イプシロンになってしまった皐月は、
”感情を押し殺して”自分は殺し屋だと自分に言い聞かせ続けー、
冷徹な殺し屋・イプシロンそのものと言えるような
そんな状態になっていたー。

「ーーー…~~~…く……」
皐月(イプシロン)の身体から力が抜けていくー。

「ーー俺はもう、何にも興味はないー。
 元の自分の身体にもー
 入れ替わってからのお前の話にもー」

改めて、イプシロン(皐月)はそう宣言するとー、
冷たい視線を皐月(イプシロン)の方に向けて
そのまま倒れ込んだままの皐月(イプシロン)に向かって
何度も、何度も発砲したー。

もう、皐月(イプシロン)は死んでいるのに
それでも発砲を続けるイプシロン(皐月)ー

やがて、銃弾が尽きると、
イプシロン(皐月)は無表情のまま
”かつての自分の身体”を見つめるー。

そしてーー
立ち去っていくイプシロン(皐月)ー

が、その目には少しだけ涙が浮かんでいたー。

感情は全て捨てたはずなのにー、
”元自分”を見たらーーー

”この男”に使われている元自分の無様な姿を見たら
色々な感情が溢れそうになったー。

がー、イプシロン(皐月)はすぐに目元を拭きとると、
「ーもう、俺はー”皐月”じゃないー」と、
それだけ言葉を口にして、
そのままゆっくりと夜の闇へと消えて行ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーへへーさすがはダンナー
 依頼した女を、始末してくれたようですねー」

翌日ー。
”皐月”の始末を依頼してきた猫背の男が
”イプシロン”のアジトを訪れてそう言葉を口にすると、
イプシロン(皐月)は、椅子に座って本を読みながら
「当たり前だー」と、そう言葉を口にしたー。

「ーへへ…ダンナの完璧な仕事には
 いつも頭が下がるばかりですぜー」

猫背の男はそれだけ言うと、
「これは、後払いの追加報酬です」と
持って来たアタッシュケースをイプシロン(皐月)に差し出したー。

「ボスも、ダンナの仕事ぶりはとても気に入ってましてねー。
 これからもよろしくお願いしますぜー。ダンナー」

猫背の男の言葉に
イプシロン(皐月)は「あぁ、こちらこそよろしく頼むー」と
それだけ返事をすると、そのまま読んでいた本の方に視線を移したー。

「ーーー…しかしー」
猫背の男がふと言葉を口にするー

「ダンナの読む本ってまるでー
 なんかJKとかJDみたいですよねぇ」

ニヤニヤしながら”イプシロン”のアジトにある
少女漫画の数々や、BL系の本を見つめるー

BLモノを読んでいた最中の
イプシロン(皐月)は「悪いか?」と、そう言葉を口にすると、
「いやいや、めっそうもないー。ただ、ギャップを感じただけですぜー」と、
申し訳なさそうに猫背の男が言うー。

「ー俺も、今度こういうの読んでみようかなぁ」
猫背の男がそう言葉を口にしながら立ち去って行こうとするとー、
「待て」と、イプシロン(皐月)が声をかけるー

「ーはい?」
猫背の男が振り返るー。

すると、イプシロン(皐月)は、漫画を1冊、
猫背の男の方に投げつけたー。

「ーおっとー」
猫背の男がそれをキャッチすると、
イプシロン(皐月)は「ーーその漫画は入門に丁度いいー。興味があれば読むといい」と
それだけ言葉を口にしたー。

「ーへへへーダンナ、意外と優しいですよねぇ」
猫背の男がそれだけ言うと、「じゃ、読ませていただきやすー」と、
言いながらそのまま立ち去って行ったー。

「ーーー」
一人残されたイプシロン(皐月)は少しだけ寂しそうに笑うー

”こうして、本や漫画を読んでいるときだけはーー
 かつての自分だった時と同じ気持ちになれるからー”

そう思いながら、イプシロン(皐月)は、
本の続きを読み始めると、静かに息を吐き出したー

おわり

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コメント

随分前に思いついてネタストックに入れておいたまま
実際には書いていなかった作品デス~~!!

ようやく日の目を見ることができました…★!

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