<憑依>マキオ②~根源~(完)

分裂し、伝染する憑依ー。

嫌われ者の彼は、
自らの魂を分裂させ、他人に憑依ー
次第に”自分”を増やしていくー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーくくくくーー昨日は最高だったよなぁ」

「ーね~♡」

彼女の絵里と、その親友の啓子が
イチャイチャしながら廊下を歩いているー。

「ーーー」
絵里の彼氏・悠平は不安そうにそんな様子を見つめるー。

絵里と啓子は元々仲良しだったが
なんだか今日は様子がおかしい気がするー。

いつもとは違うー。
なんだか、そんな感じがするー。

「ーーやっぱり、アイツが絵里に何かしたに違いないー」
悠平は、そんな風に思いつつ、
教室に戻ると、奥脇 牧夫の方に向かって歩いていくー。

「ーー絵里に何をしたー?」
悠平が今一度そう問いかけるー。

少し前までは”どちらかと言うと大人しいタイプ”で、
物静かな感じだった牧夫。
しかし、最近になって”力を手に入れた”などと言い始めー、
その行動には目に余るものがあるー。

「ーーへへへ…俺は別に何も~」
ニヤニヤしながらそう言い放つ牧夫ー。

「ふざけるな…!絵里を元に戻せ!」
悠平がそう叫ぶと、
クラスメイトの一人、気の強い女子生徒の凛が、
「ー八つ当たりはよくないんじゃない?」と、
そんな言葉を悠平にかけてきたー。

「ー!?」
悠平が振り返ると、そこには不気味な笑みを浮かべた凛の
姿があったー。

凛は、牧夫のことを”キモい”と言っていた女子生徒だー。

「ーー絵里が、牧夫くんと付き合いだしたのはー
 あんたに魅力がないからでしょ?
 それを牧夫くんのせいにするのは、おかしいんじゃない?」

凛の言葉に、悠平は戸惑うー。

ニヤニヤと笑みを浮かべる牧夫ー。

”こいつは昨日、俺が”マキオ”にしてやったー”
牧夫は、凛の方を見ながら笑うー。

凛を追い詰めー、
凛に”これから何が起きるか”を伝えてー、
そして、凛にキスをして分裂した”マキオ”を憑依させたー。

”あんたになるぐらいなら、死んだ方がマシよ!”などと言っていた
凛も、今じゃこの通りだー。

「ーーーくそっ!」
悠平が戸惑いながら座席に戻るー。

凛はニヤニヤしながら、
「ーこういう気が強い女の身体になれるなんてー
 へへへー…ゾクゾクするぜー」と、
牧夫に対して言い放つー。

「へへーだろ?」
牧夫はそう言うと、悠平の方を見つめながら
静かに言葉を口にしたー。

”アイツー…ムカつくなー”
とー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー何か用かー?」

放課後ー。
絵里が、乱れた制服姿のままやってくると、
牧夫は笑みを浮かべたー。

「おいおい、何してたんだよ?」
牧夫が言うと、悠平の彼女であった絵里は、
「ーん~…?”お友達”と楽しい時間をな」と、
クスクスと笑ったー。

「ーへへーその顔でそういうセリフ言われると
 こっちまで興奮するぜー」
牧夫はそう言いながら、
「ーーアイツ、生意気だからさー
 思い知らせてやろうと思ってー」と、
牧夫が悠平の名を口にするー。

「ーへへー何をするつもりだよー?」
絵里はそう言いながら、自分の胸を揉み始めるー。

「ーー…”その身体”なら、
 アイツの家の中にも入れるだろー?」
悠平がそう言うと、
絵里は「へぇー…アイツの家族も”俺”にしてやろってことか?」と、笑うー。

「ーそうそうー。アイツの両親をさ、”マキオ”にしてやろうぜ」
牧夫が笑うと、絵里は邪悪な笑みを浮かべたー。

「ーこの女の記憶によるとさー、
 アイツ、”お姉ちゃん”がいるらしいぜ?」
ニヤニヤと笑う絵里ー。

”乗っ取った身体の記憶”も、マキオはそのまま引き出すことができるー。
そのため、本人になりすますことも、マキオにその気があれば
不可能な話ではないー。

絵里の記憶を得られるのは、絵里に憑依したマキオだけで、
他の”マキオ”たちはその記憶は共有できないものの、
こうして情報交換することは出来るー。

「ーへぇ…じゃあ、お姉ちゃんを”俺”にするのも面白いかもな」
牧夫はそう言葉を口にすると、絵里は「任せろ」と、静かに
笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

「ーーー久留米先輩ー…?」
悠平が戸惑いながら、部活の先輩である
久留米先輩の方を見つめるー。

久留米先輩の態度も”豹変”したのだー。
3年生の教室は地獄絵図ー。

「へへへへへ!俺もやっぱ好き放題やった方が楽しいと思ってさぁ~!」

久留米先輩も”マキオ”になってしまったー。
もちろん、悠平はそのことをまだ、理解できていないー。

「せ、先輩までー…いったい、何がー!?」
戸惑いながら、悠平が廊下を歩くー。

職員室の周辺でも、何か問題が起きているようで、
先生の一人が、突然奇行に走ったとかなんとか、
そんな話が聞こえて来たー。

「ーー…何が起きてるんだー…!?」
そんな言葉を口にしながら、教室に向かおうとすると、
突然、背後から声がしたー。

「悠平ー」
その言葉に、悠平が振り返ると、
そこには彼女である絵里の姿があったー。

「え、絵里ー…?」
また”おかしなこと”を言いだすのではないかと不安を感じる悠平ー。

だがー、絵里は言ったー。

「今日の放課後ー、悠平の家に言っていい?
 大事な相談があるのー…

 ーー”アイツ”のことー」

牧夫のことを、アイツと言い放つ絵里ー。

「ーー…!」
悠平は、表情を変えると、
「やっぱり、何か言われたのか?脅されたのかー?」と、
そう言葉を口にするー。

絵里は「ココじゃ言えないー」と、そう言葉を口にすると、
「放課後ー、悠平の家で」と、それだけ言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後ー。

絵里が家の中にやってくるー。

「ーー絵里…
 大丈夫かー?」
悠平が心配そうに言うと、絵里は「うん」と頷くー。

悠平の部屋の方に向かっていく絵里ー。

絵里は、悠平に見えないようにニヤリと笑みを浮かべると、
悠平の姉・優奈の姿を探すー。

「ーー…お姉ちゃんは?」
絵里がそう言葉を口にすると、
悠平は「あぁ、姉さんなら部屋にいるけどー」と、
そんな言葉を返すー。

「ーふふー
 ちょっと、久しぶりに挨拶してくるねー」

絵里は穏やかに笑いながら、
悠平を先に悠平の部屋に入らせて、
そのまま悠平の姉・優奈の部屋へと向かうー。

「ーー…あら、絵里ちゃんーこんにちは!」
部屋をノックして、中に入って来た絵里に気付き、
悠平の姉・優奈がそう言葉を口にするー。

絵里はニヤリと笑うと、
「ーー優奈さんも、”俺”になりましょ?」と、
不気味な言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー…遅いなー…」
先に自分の部屋で絵里を待っていた悠平は、
絵里が来るのが遅いことに気付きー、
そう言葉を口にするー。

心配になって、姉・優奈の部屋に向かう悠平ー。

がーーー
その時だったー

”な、何をするの!?”

”クククー…お前も”俺”になるんだー
 ”マキオ”に、なー”

優奈と絵里の声が聞こえるー。

”ーど、どういう意味ー!?”
優奈がそう言葉を口にすると、
”ー俺さぁ、自分の魂を分裂させて他人に憑依できるようになったんだよねー。
 こうして、女だろうがなんだろうが、俺のものにできるんだー”
と、絵里の言葉が聞こえて来たー。

「ーーー!!!!」
悠平は表情を歪めるー

”さぁ、お前もマキオになれー”
絵里の言葉が続くー。

悠平は咄嗟に部屋の扉を開くー。

がー、絵里は今、まさに姉の優奈にキスをする瞬間だったー。

「や…やめろおおおお!」
悠平が叫ぶーーー

がー、それと同時に、絵里は優奈にキスをしてしまったー。

優奈がビクッと震えて、
やがてーー、邪悪な笑みを浮かべたー。

「ーーーあ~~~~…悠平ー
 聞いちゃったんだねぇ…」
キスをしていた絵里がニヤリと笑いながら振り返るー。

そして、横にいた悠平の姉・優奈の方を見つめると、
優奈もニヤリと笑ってから悠平に向かって言い放ったー。

「残念~~~!
 お姉ちゃんも、”マキオ”になっちゃったぁ~!
 あはははははっ!」

もう隠す必要がないと思ったのか、
姉の優奈が狂ったように笑いだすー。

「ーふふ…バカなやつー。
 こんな簡単に騙されるなんてー」
絵里も、邪悪な笑みを浮かべながら
悠平を見下すような視線で見つめるー。

「ーーー…ーー…ま、マキオってー…や、やっぱアイツにー…!」
悠平がそう言うと、
「ーククク…教えてやるよー」と、彼女の絵里が
偉そうな態度で壁に寄りかかりながら笑うー。

「ー周囲の奴らから馬鹿にされる日々を送っていた俺は”力”を手に入れたんだー」
絵里は、絵里として振る舞う気も全くなしにそう言い放つと、
「ー自分の魂を分裂させて、相手に憑依させる力をー」と、笑みを浮かべたー。

「ーこうして、俺の分離した魂を憑依させることで、
 誰だって”俺”にすることができるー」
絵里の言葉に、悠平は呆然としながら
”そ、それで、学校のやつらがどんどんおかしくなってー…”と、
心の中でそう呟くー。

「ーーお前も今ここで、”マキオ”にしてやりたいところだけどー
 残念ながら魂の分裂は1日1回が限度なんでなー。
 少しずつ、ジワジワと広げていく必要があるから、
 ここでお前を”お姉ちゃん”と同じにしてやることはできないー」

優奈は笑うー。

”絵里”は今日、既に”マキオ”を分裂させてたった今、優奈に憑依させたため
今日はこれ以上、憑依を広げられないー。
優奈は”今日”マキオになったため、分裂するには明日を待たないといけないー。

しかし、明日になれば”絵里”と”優奈”
そして、その他の”マキオ”たちが、それぞれ一人ずつ、誰かを”マキオ”に
することができるー。

こうして、どんどん”マキオ”は広がっていくのだー

「ーー絵里…姉さん…!正気に戻ってくれ!」
悠平が叫ぶー。

がー、絵里は胸を揉みながら
「無駄だーお前の彼女は身も心も”俺”なんだからー」と、
ゲラゲラと笑ったー。

悠平は怒りの形相で家を飛び出すと、
学校の方に引き返していくー。

”奥脇 牧夫ーあいつは確か、
 ボードゲーム研究部に所属してたはずー
 今日もまだ学校にいるかもしれない”

”マキオ”になってしまった絵里を、優奈を救うには、
本体を追いつめるしかないー。

悠平はそう思いー、
学校へと引き返したー。

「ーーーー奥脇!!!」
悠平は、校舎内で牧夫の姿を見つけると、
「ーあ?」と、牧夫は表情を歪めたー。

「ーーーお前…!姉さんと絵里を元に戻せ!
 いや、他のみんなも!」
悠平が牧夫をすぐ近くの教室の中に連れ込むと、
壁際に叩きつけてそう叫んだー。

「ーへへーそっかー、”絵里”は成功したのかー」
ニヤニヤ笑う牧夫ー。

”他のマキオ”たちとテレパシーで会話できるわけではないため
牧夫自身はまだ”絵里”が、悠平の姉への憑依を成功させたのかどうかは
耳に入っていない状態だったー。

「ーふざけるな!!!絵里を!!姉さんを!!
 みんなを元に戻せ!」
悠平が叫ぶー。

にやりと笑う牧夫ー。

元々は大人しい性格だった牧夫ー。
それが、”力”とやらを手に入れておかしくなったのだろうー。

悠平はそう思いながら、牧夫に向かって叫ぶー。

”みんなを元に戻せ!”
とー。

「ーーへへへへ…」
牧夫はニヤニヤしながら笑うー。

「ーーお前さぁーー
 追いつめる相手、間違えてるよ」
牧夫の言葉に、悠平は表情を歪めるー。

「ーなんだって?」
悠平がそう声を上げると、
牧夫は続けたー。

「ー確かにさぁ、”本体”なら、みんなを元に戻せるかもしれないって
 考えるのは分かるさー。

 でもさぁ、俺にそんな”権限”ないんだよなぁ」

牧夫の言葉に、
悠平はさらに表情を歪めると
「何を言ってるんだ!お前のせいだろ!!早く元に戻せ!」と、
そう叫んだー。

しかしーーー
その時だったー。

背後からガッと掴まれた悠平は
驚いて振り返るー。

そこにはーー
見知らぬ生徒ー、恐らく1学年上の三年生の生徒がいたー。

かなりの巨体で、
ふーふー、と息を吐き出しながら
悠平を睨みつけるその男ー

「ーーえ…」
悠平が戸惑っていると、その男は言ったー。

「ーー俺が”マキオ”だよ」
とー。

「ーー!?」
悠平は目を見開くー

それと同時に”マキオ”が、悠平にキスをするー。

”マキオ”とはー
悠平のクラスメイトの”奥脇 牧夫”ではないー。

先輩にあたる3年生の生徒ー、
”大門 マキオ”のことだー。

奥脇 牧夫はただ”名前”が同じなだけで、
大門 マキオの分裂体に憑依された哀れな被害者の一人ー。

「ーーーーーーー…ぁ」
マキオにキスをされた悠平は、そのまま下品な笑みを浮かべると、
「ーーんだよ…俺は男の身体かよ」と、不満そうに言葉を口にしたー。

悠平も”マキオ”になってしまったー。

それを見て”牧夫”は、
「ーこいつ、たまたま俺と名前が同じだったから、勘違いしたんだろうけどー」
と、ケラケラと笑うー。

マキオは、そんな牧夫と悠平を見つめながら「ふん」と笑うと、
「ーー俺を馬鹿にした奴らと、この学校の奴らを全員”俺”にしてやる」と、
そう言葉を口にしながら、静かに立ち去って行ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

「ーなぁなぁ、”俺たち”の身体、元々は恋人同士だったんだからさ、
 今日、その身体で遊ばせろよ」

”マキオ”になってしまった悠平がそう言うと、
同じく”マキオ”になってしまった彼女の絵里は
ニヤリと笑いながら
「仕方ねぇなー…”わたし”の身体で遊ばせてやるよー」と、
邪悪な言葉を口にしたー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

これからもマキオは伝染でしていくのデス…!

①の冒頭で憑依されてしまったのが、
奥脇 牧夫くんですネ~笑

冒頭の”マキオ”の説明では
最初から嫌われていると書かれているのに、
”牧夫”のほうは、”元々はどちらかと言うと大人しい性格だった”と
説明されていて、食い違いがあるのも、
”奥脇 牧夫”と”マキオ”が別人であるヒントになっていました~~!☆!

お読み下さりありがとうございました~~!

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憑依<マキオ>

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