本来であれば、双子として生まれるはずだった二人ー。
しかし、姉だけが生き延び、弟は身体を失った状態で
精神だけが姉に憑依した状態となってしまっていたー。
そんな二人の生活は続くー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーえ~ホントですか~?
先輩もそんなことあるんですね~!」
生徒会の”書記”として、生徒会活動をしている梨花は、
1学年上の、現在2年生の男子生徒・久島(ひさじま)先輩と
楽しそうに話していたー。
久島先輩は、現在”生徒会副会長”を務めているー。
「ーはははー
みんなからは勝手に”完璧”みたいなイメージを
持たれちゃってるみたいだけど、
俺も結構ドジだからなぁ…
それで、妹に散々説教されてさ~」
どうやら、妹が買っておいたデザートを
言われたにも関わらず、うっかり忘れて食べてしまって
怒られたエピソードを話しているようだー。
「ーーーーえ~意外です~!
でも、先輩も人間だったんだな~、ってちょっと安心しました!」
梨花がそんな風に言うと、久島先輩は照れ臭そうに笑ったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”ーー姉さんー”
夜ー
部屋でのんびりとしていると梨花の中にいる双子の弟”瑛太”が
そんな言葉を口にしたー。
「ーん?どうしたの~?」
梨花が、近付いてきた期末テストの勉強をしながら
そう言葉を返すと、
”ー姉さん、久島先輩のことどう思ってる?”
とー、瑛太はそんな言葉を口にするー。
「ーーえ?久島先輩ー?
いい人だよねー。頼りになるしー」
梨花が笑いながらそう答えるー。
そんな言葉に、瑛太はもやっとしながら、
”それだけ?”と、そう言葉を口にするー。
「ーーえ?どういうことー?
それ以上に何かあるの?」
梨花が不思議そうに首を傾げると、
”瑛太”は”あ、ううんーなんでもない”と、
そんな言葉を口にするー。
「ーーあははー…あ、そうだー
国語の勉強はもう十分だから、瑛太も勉強する?
数学の試験、初日でしょ?」
梨花がそう言うと、”瑛太”は”ーーうん。じゃあそうする”と、
そう言葉を口にして、身体の主導権を”交代”してもらうー。
”ーファイトファイト!”
奥に引っ込んだ梨花が、梨花の身体を使って勉強し始めた
瑛太にそんなエールを送るー。
けれどー
梨花になった瑛太は、少しだけ表情を曇らせながら
鏡を見つめるー。
「ーーーーー」
”僕のせい”なのだろうかー。
”姉さん”はきっと、久島先輩のことが好きだー。
でも、告白しようとしないし、聞いても”好きな人はいない”の一点張りー。
”恋愛感情がほとんどない”とも、姉さんは言っているー。
「ーーーーーー」
改めて”梨花”の姿を鏡で見つめる瑛太ー。
”生まれてからずっと、この身体で過ごしているけどー
この身体は僕のものじゃない”と、
改めて実感させられるー。
”僕が、姉さんのジャマをしてるのかなー”
そんな風に思うー。
それとーーー
”ちょっとだけ”嫉妬もあるー。
”姉さん”が、男子と親しくしていると、
どうしても少しモヤモヤするー。
もちろん、それは仕方のないことだし、
”姉さん”は何も悪くないとは分かっているー。
でも、なんだか少し嫉妬してしまうー。
「ーー僕は、ダメだなー」
梨花の口でボソッと呟くー。
「ーあ、そうだー姉さんー
”ちょっと”一人にしてくれるかなー?
梨花の身体でそう言葉を口にする瑛太ー。
”ーー何か悩みごと?”
梨花の意識が少しだけ心配そうに言葉を口にするー。
「ーん~…いや、そのー」
”瑛太”が梨花の身体でそう呟くと、
”あ~、わかった~!じゃ、わたしは休んでるからーごゆっくり”と、
梨花の意識は笑いながら、
”気配”が消えたー。
”中”にいる状態の時に、”休眠”状態になると
相手の気配が消えるー。
身体の主導権を握っていない状態では、
睡眠とはまた違う、”休眠”状態になることが出来て、
その間は”身体は起きているけど、意識は寝ている状態”になるー。
お互いに、一人になりたいときは相手に相談した上で
休眠する約束もしているー。
身体は一つでも、二人とも難しい年頃ー。
どうしても”一人になりたい”と感じる時はあるー。
「ーーーーーー」
梨花の意識が一時的に眠ったことを感覚で察すると、
瑛太は梨花の身体で一人、お楽しみを始めるー。
このことは、”梨花”も知っていてー、
梨花自身も、自分の身体で欲を満たすことは全くないわけではないためー、
二人とも承知の上ー。
男なのに、女の身体でしか快感を味わうことができないー。
そのことにも、心に言い表せないような複雑な感情を抱きながら、
瑛太は、梨花の身体で自分のモヤモヤした感情を吹き飛ばすかのように、
気持ち良さそうな表情を浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”あ、瑛太ー。それは”B”じゃなくて”A”だよー”
期末試験ー。
英語のテストの最中に、記号問題の解答を「B」と書いた
梨花の身体を使っている瑛太に対してー、
梨花の意識が中からそう言葉を口にするー。
表に出ている瑛太は、試験中かつ人前であるために
梨花のその言葉に返事はせずに、
問題を見直して”確かに姉さんの言う通りー”と、
問題の解答をB⇒Aに修正するー。
やがて、試験が終わると
人がいない場所で、瑛太は、梨花の口で言葉を発したー。
「助かったよ姉さんー
でも、なんかカンニングしてるみたいで気が引けるなぁ」
苦笑いする梨花の身体ー。
”ーあはは…二人で協力してるだけだし、
大丈夫大丈夫ー”
梨花と瑛太はいつも”二人分の知識”で試験に臨んでいるー。
もちろん、メインは”その教科をいつも担当している側”で
試験を受けているものの、
さっきのように、確実に答えが分かるときはお互いに助言しているー。
「ーーははー…
でも、”僕がいなくなったら”ー、姉さん一人でー」
梨花の身体で、瑛太がそう言葉を口にすると、
”何言ってるの?”と、不満そうに梨花の意識が言葉を口にするー。
「え?あぁ、いや、たとえ話だけどー、
ほら、もしも僕が消えたりしたら、姉さん一人だからー、
姉さんだけで頑張らないといけなくなるなぁ、って
そう思っただけだよー」
梨花の口で、瑛太が慌ててそう言い直すと、
梨花の意識は”不吉なこと言わないでよー”と、
それだけ呟くー
「ごめんーー」
瑛太が、そんな謝罪の言葉を口にするー。
「ーー…」
少し沈黙してから、気を取り直した様子で
「ーじゃ、次は姉さん、社会科だからよろしく!」と、
そう言葉を口にすると、身体の主導権を姉の梨花に返して、
そのまま瑛太は”ちょっと疲れたから、僕は試験が始まるまで休んでるよ”と、
そう言うと、その気配を消したー。
「ーーー瑛太」
梨花はそれだけ呟くと、そのまま教室に向かって歩き始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
時は流れー、
”2年生”になった二人ー。
梨花は、相変わらず久島先輩と仲良さそうに
しているものの、やっぱり付き合う素振りは見せないー。
「ーーーって、今日は何で僕がー?」
梨花の身体でおしゃれをしながら戸惑う瑛太ー。
”え~?瑛太もたまには歌いたいでしょ?
いつも、遊びに行くとき、瑛太、遠慮ばかりしてるからー”
梨花の意識にそんなことを言われる瑛太ー。
「ーーえぇ、で、でも、ほらー、僕、男だから
女子で遊びに行くのとかー」
恥ずかしそうに梨花の身体で言う瑛太ー。
”そう?瑛太だって、高校入る前までは
普通にわたしと同じように遊んでたじゃん”
梨花がそう呟くー。
そうー、
”友達と遊ぶ時”も、二人は
その時によって表に出ている”精神”は異なっているー。
だが、高校生になってからは、
女子だけで遊ぶような場面では
瑛太は表に出て来なくなったー。
「ーいやぁ…なんか申し訳なくてさー
みんなを騙してるような気がしてー」
梨花の身体で瑛太は言うー。
高校生になって、異性を意識するようになってしまった瑛太は、
女子同士で遊びに行く時も、なんだかドキドキしてしまって、
気まずい感じになって、それ以降、友達と遊びに行くのは
全部、姉の梨花に任せるようになっていたー。
がー、本当は瑛太も”友達と遊びたい”という気持ちはあって、
それを見抜いた梨花が気を遣って、
今日は瑛太に”遊び”を任せようとしていたー。
”女子として振る舞うの、つらい?”
梨花が心配そうに呟くー。
「ーあぁ、いや、それはないよー。
だって僕も小さい頃からずっとそうだしー…
むしろ、今急に男の身体を与えられたら
絶対、男として振る舞うことはできないと思うー」
梨花の身体で瑛太は笑うー。
精神的には”男”で、
思春期に突入してからは、さらにそういう想いが
強まったものの、
それでも、”男の身体で過ごした経験”はないために、
女の身体で過ごすほうが、瑛太にとっても”当たり前”だったー。
「ー僕、男の身体でトイレとか済ませる自信、ないよ?」
梨花の身体でそう言い放つと、梨花の意識は笑うー。
”あははーーー確かに難しそうだよね~!”
そう言葉を口にしながら
”せっかくだから今日はみんなと楽しんで来て”と、
そう言葉を口にすると、
梨花の身体のまま、瑛太は「ーーうん。姉さんがそう言うなら」と、
そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
友達三人と合流して、カラオケにやってきた
瑛太は、梨花の身体で楽しそうに
友達と一緒に歌を歌っていたー。
”二人”は中で眠っている時以外は相手の行動も知っているし、
当然、瑛太が表に出ている時も、よくクラスの女子とは話すし、
梨花の友達は、瑛太の友達でもあるー。
そのため、会話に困ったりはしないー。
心底楽しそうにカラオケでのひと時を過ごす瑛太ー。
友達からのスキンシップに少しドキドキしながらも、
瑛太は梨花の身体で、存分に高校生らしいひと時を
過ごしたのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ねぇねぇ、梨花ー
久島先輩、今年で卒業でしょ?
告白とかしないの?」
梨花の友達の一人・菜緒(なお)がそんな言葉を口にするー。
梨花は少し恥ずかしそうにしながら
「え~…あははー 寂しい気持ちはあるけどー
そういうのじゃないしー」と、そう呟くー
”ーーーーー”
梨花の中にいる瑛太は、そんな梨花の反応を見ながら
少しだけ暗い気持ちになるー。
2年生の2学期終盤ー。
相変わらず梨花は、久島先輩と仲良さそうにしているものの、
やっぱり告白をする気配はなくー、
久島先輩は先日、生徒会副会長を引退ー。
間もなく卒業に向かっていく段階になっているー。
瑛太は”やっぱり僕がいるから、姉さんは気を遣っているんだー”と、
そんな風に感じるー。
中身は”二人”でも、身体はひとつ。
梨花が久島先輩と付き合えば、当然、瑛太も久島先輩と付き合うことになるー。
そもそも、瑛太の恋愛対象は”女”であって、
梨花の身体で恋愛をすれば、女子同士の恋愛になってしまうし、
”梨花”が誰かと付き合えば、
瑛太は必然的に”男”と恋愛をすることになってしまうー。
そのことを察知してなのか、梨花は一向に
久島先輩に告白する様子を見せずー、
告白することなく”終わり”にしようしているようだったー。
そのことに、負い目を感じている瑛太ー。
お互いに”好きな人が出来たら相談する”と、前に約束はしているー。
しかし、やっぱり言いづらいのかもしれないー。
そしてーーー
「ーねぇねぇ、梨花って大学とかどうするのー?」
友達の菜緒と、”進路”の話題になるー。
まだ2年生で少し気は早いが、
少しずつ意識する段階にはなりつつあるー。
そんな言葉に、梨花は「う~ん、わたしはまだ決まってないかなぁ~」と、
苦笑いしているー。
そんな光景を見て、瑛太は改めて思うー。
このままだと、”僕”が、姉さんの進路のジャマをしてしまうかもしれないー、と。
梨花の性格上、
きっと、”行きたいところ”があっても瑛太のことも考えて
気を遣うー。
そうなれば、やっぱりーー
”姉さん”の人生を邪魔してしまうー。
そう思いながら、瑛太は少しだけ寂しそうに表情を歪めるー。
そうこうしているうちに、友達と話し終えて一人になった梨花が
「ーあ、5時間目は英語だから、瑛太、よろしくね~!」と、
そんな言葉を口にして、瑛太に身体の主導権を渡すー。
「ーー!」
梨花の身体を動かせるようになった瑛太は、
表情を少し曇らせると、
”僕はーーーー”と、心の中である決断をするのだったー。
③へ続く
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次回が最終回デス~!☆
同じ身体を共有している状態の二人…
二人がどんな未来に向かっていくのか、
明日の最終回でチェックしてくださいネ~!☆!

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