<憑依>1億円を送りつけるお嬢様②~転落~(完)

お金持ちのお嬢様に憑依して、
1億円を無関係の人々に提供ー、
その人生が狂っていくのを楽しむ悪趣味な男ー。

しかし、そんな彼にも”ある出来事”が降りかかるー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「クククククククー」
お金持ちのお嬢様・莉愛は今日も
”1億円”を、下々の人間に提供しては、
悦に浸っていたー。

”どうしようー…どうしよう…どうしよう…
 何なのこれ… あぁ…どうしよう”

一人暮らしの男が、パニックに陥っているー。

彼はー、莉愛に憑依している男の”同級生”だった男だー。
昔から小心者で神経質、
とにかく”石橋を叩いて渡る”ー、
いや、石橋を壊すまで叩いて結局渡らないぐらいに
慎重な男で、とにかく臆病だったー。

そんな彼ー、新之助(しんのすけ)に1億円を
送付した莉愛は、
協力者に大金を払い、新之助の部屋の中に設置させた
監視カメラで、新之助の反応を見て楽しんでいたー。

”あぁ…警察に持って行っても、僕が何かしたって疑われそうだしー”

”本物のお金じゃないかもしれないしー、
 使って僕が逮捕されちゃったりしたらー?”

”ーーー…どうしようー。なんか悪い人達のお金かもー”

ひらすらパニック状態の新之助。

それを見て、ゲラゲラと笑う莉愛ー。
莉愛のかつての優しい笑みはそこには存在せずー、
感じの悪いお金持ちのお嬢様になり果ててしまっているー。

「ーお嬢様ー
 例の方の口座に1億円を振り込んでもよろしいでしょうか?」
執事の言葉に、莉愛はクスッと笑うと「えぇ…お願いねー」と、
そう言葉を口にしたー。」

また次のターゲットに1億円を送る準備を整え、
莉愛は笑みを浮かべるー。

次のターゲットはSNSで物乞い行為を繰り返している女だー。
急に1億円の支援を受けたら、どんな反応をするだろうかー。
それを想像するだけで、楽しみで仕方がない

がーー

「お嬢様ー…
 このようなこと、いつまで続けられるおつもりですか?」

不安そうにそう言葉を口にする執事ー。

「ーーーふふーわたしが飽きるまでよー。
 決まっているでしょ?」
莉愛が邪悪な笑みを浮かべるー。

しかし、執事は戸惑いながら言葉を続けたー。

「失礼ながらお嬢様ー
 最近のお嬢様は、どこか変ですー。」

執事がそう食い下がると、
莉愛は「人は、変わるものよ」と、
少し苛立ちを込めた声で言い放つー。

執事は、そんな言葉に、
「ーーまるで、何かに取り憑かれたように、変わってしまわれたー」
と、そう言葉を付け加えると、
莉愛の方を悲しそうに見つめたー。

この執事は、莉愛が小さい頃から莉愛の世話をしているー。

莉愛お嬢様のためなら何でもするー
そう思いながら、莉愛に仕えてきたー。
そんな彼から見ると、最近の莉愛は”おかしい”としか思えなかったー。

「ー本当に、莉愛お嬢様ですかー?」
執事は、不安に思っていた言葉を口にしたー。

勿論、目の前にいるのは”莉愛お嬢様”だとは思うー。
しかし、そんな言葉を口にせずにはいられないほど、
最近の莉愛の様子はおかしかったー。

「ーどこからどう見ても、わたしはお金持ちのお嬢様の莉愛ー」
莉愛はそれだけ言うと、
「ーーそうだー」と、笑みを浮かべる。

「ーあなたにも、1億円差し上げますわ」
莉愛はそれだけ言うと、驚く執事のほうを見つめながら笑うー。

「ーな…、わ、私は、そのようなー」
執事がそう戸惑うのを見て、
莉愛は「ーいらないの?欲しいでしょ?1億円ー」と、
そう言い放つと、
「ーだから、これからもわたしのために尽くしてね?
 この先、わたしがどんな風になったとしてもー」と、
クスクスと笑うー。

”この執事は有能だからなー。1億払ってでも味方につけておく価値はあるー”

莉愛は、心の中でそう思いながら
執事を見つめるー。

だがーーー

「ーーー申し訳ございませんー」
執事はぺこりと頭を下げたー。

「ーー今日で、お暇をいただきますー」
執事は、それだけ言うと、その場を立ち去ろうとするー。

「ーーは…? え?やめるってこと!?
 1億円は?!」

莉愛は思わず声を上げるー。

がー、執事の彼からしてみれば
”執事にまで1億円を払おうとするお嬢様の姿”は耐えがたいものだったー。
1億円などいらないー。

お金をあげるなどと、
そんなことを言い出すお嬢様の姿に、彼はもう耐えられなかったー。

「ーーーだ、だったら、わたしのこと好きにしても構わないわ!
 だからー、これからもわたしを支えて頂戴!」

莉愛がそう声を上げるー。

しかし、執事の決心は変わらなかったー。

「ーー申し訳ありませんー
 今のお嬢様のことは、どうしてもーー…
 どうしても、好きになれませんー。

 お嬢様がどんなになろうと、尽くすのが執事の役目かもしれませんー。
 ですがー、私にはこれ以上耐えられそうにありませんー。

 どうかお嬢様ーお元気で」

執事は振り絞るようにして、
それだけ言い放つと、
そのまま立ち去ろうとするー。

「ーーち、ちょっと待てってば!
 おいっ!」

莉愛に憑依している男は、ついつい焦りから
そんな乱暴な言葉を口にしてしまうー。

”莉愛”としての生活が快適だったのは、
この執事のおかげでもあるー。

”それ”を失うとなればー、
彼にとっても大きなダメージになる。

「ーーー…おい!待って!
 おいっ!待てよ!!!」

莉愛が後を追いかけるようにして部屋を飛び出すー。

それでも、彼の決心はもはや変わらなかったー

「ーう、裏切者!
 わたしの財力を使って、お前を地獄まで追いつめてやるからな!!!」

莉愛本人が絶対に言わないであろう言葉を口にしながら、
立ち去っていく執事に捨て台詞を吐き捨てるー。

だがー、もはや彼の心が変わることはなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それからも、莉愛は”1億円”を送りつけたり、渡したりを
繰り返して、人生が変わっていく様子を楽しんでいたー。

メイドの一人に1億円を渡すと、
メイドは嬉しそうに豪遊を始めー、
やがて借金まみれになったー。
急に上がった生活レベルを、
1億円を使い果たした後でも元に戻すことができずに、
破滅の道を進んだのだー。

近くの中学に通う男子にも1億円を渡したー。
その結果、その子はスマホのゲームに狂ったように課金をはじめ、
1億円を使い果たしてもそれが止まらず、
親の金を勝手に使い始めて、
完全に家庭ごと崩壊してしまったー。
その様子を観察しながら、莉愛はゲラゲラと笑うー。

現在も”5人”の様子を観察しながら、
莉愛は楽しそうに生活を送っていたー。

しかし、ある日のことだったー。

「ーー…お父様、お話ってー?」
普段は仕事でほとんど留守の、莉愛の父親が帰宅しー、
莉愛を呼び出したー。

莉愛は不思議そうにしながら部屋に入ってくると、
莉愛の父親はため息をつきながら
莉愛にとって”信じられない言葉”を口にしたー。

「ーーーすまないー。パパの会社はーー
 もう、ダメだー」

「ーーえ?」
莉愛が表情を歪めるー。

莉愛の父親の会社は、まもなく経営破綻するー。
そんな話を聞かされたのだー

「ーど、ど、どういうこと!?」
莉愛が思わず声を上げると、
莉愛の父親は言ったー。

急激なコストの上昇や、
主要取引先の倒産など、
不運が重なり、少し前から急激に業績が悪化、
もう支えきれないのだとー。

「ーーこの家も…売ることになるだろうー…
 それにー」

莉愛の父親はそう言葉を口にするー。

だが、呆然とする莉愛には、
その続きの言葉は、もはや耳にも入らなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

莉愛の父親の会社は、多大な借金を抱えたまま
経営破綻したー。
しかも、莉愛の父親自身にも莫大な借金が
出来ていたことが判明、
会社倒産後に、莉愛の父親は自ら命を絶ってしまい、
莉愛は借金取りに追われながら逃げる生活を
送っていたー。

「ーーくそっ!くそっ!くそっ!
 どうしてこんなことにー!」
ボロボロの格好のまま身を隠す莉愛ー。

男の使った憑依薬は一度憑依すると
その身体から抜け出すことはできないー。

そういった理由もあって
”一生困らないであろう”お嬢様に憑依したー。

がー、まさかこんなことになるなんてー

「ーあのクソ野郎ー…
 まさか娘を残して自殺するなんてー」

鬼のような形相で、恨みの言葉を口にする莉愛。

まさか、こんなことになるなんて
夢にも思わなかったー。

しかし、こうなってしまった以上、
どうにかするしかないー。

「ーーークソッ…また憑依薬を手に入れれば
 別の身体に移動できるかー?」

莉愛はそう思いながら、表情を歪めるー。

しかしー、既に憑依薬を購入したサイトは閉鎖されていて
見つけ出すのは困難だったー。

しかも、”乗っ取った身体で憑依薬を服用した場合”
どうなるのか正直、彼自身にも分からなかったー。

リスクが高すぎるー。

「ーーー…こいつの身体を使ってーー」
莉愛は、自分の身体を使って金を稼ぐ道を選ぼうとするー。

がー、その時だったー。

「いたいたー」
背後から、男の声がしたー。

莉愛は借金取りに見つかったと思い、
慌てて逃げようとするも、
時すでに遅く、その声の主に腕を掴まれてしまったー

「ーへへへ…逃げるなってー」
莉愛が驚いて振り返ると、
そこには見知らぬ男がいたー。

「ーだ、誰?」
莉愛がそう言うと、
「親が破産して、借金まみれで逃げるだけの身に
 なったって言うのに、まだプライドだけは高いみたいだな」と、
男はそう言葉を口にしたー

”な、何だコイツー?俺が憑依する前のこの女の知り合いか?”
莉愛はそんなことを思いながら、男を見つめると、
「ーお前がバカにしていたニートだよ」と、そう言葉を口にしたー。

「ーーえ…」
莉愛は表情を歪めるー。

「あんたから、1億円貰った”無礼なニート”って言えば分かるか?」
と、男は言葉を続けるー

「ーーー…!」
莉愛はその相手のことを思い出すー。

”1億円”を与えた相手の一人、
ニートの梶岡 史郎ー。

1億円を与えたあと、投資に金を回して
予想以上に堅実な使い方をしているという報告を執事から受け、
”つまんねーニートだな”と思いつつ、そのまま興味を失い、
それ以降、どうなったのかを把握していなかったー。

が、史郎は1億円を元手に、投資を中心に
莫大な金を稼ぐことに成功ー、
今や、”元々の莉愛”より、金持ちになっていたー。

一瞬、誰だか分からなかったのは
お金を与えた時1回しか直接会ってないことー、
そして、金を手に入れたからか、多少痩せて、
清潔感も身に着けていたためだったー。

「ーーな、何の用ー?」
莉愛が震えながら言うと、
史郎は、笑みを浮かべながら
「ーーあんた、親が破産して借金まみれだって聞いたからなー。
 助けてやろうと思ってー」と、ニヤニヤと言葉を口にしたー

「ーーた、助けるー?」
莉愛がそう言い放つと、史郎は「あぁーー借金も全部俺が返してやる」と、
笑いながら言うー。

かつて、自分を見下していたお嬢様を逆に見下すことに
快感を覚えながら、史郎は「俺に”お願いします 助けて下さい”って言うことが
できたら、な?」と、意地悪っぽく笑いながら言うー。

「ーーーぐ…ぐぐぐ…」
莉愛は悔しそうに表情を浮かべるー。

「ーーそれができたら、借金は俺が全額返済して、
 お前を”メイド”として雇ってやるー。
 もちろん、ちゃんと生活も保証するー
 どうだー?」

史郎はそう言うと、
「俺を見下していたお金持ちのお嬢様が、
 俺のメイドになるんだー。 ふへへー 最高だろ?」と、
ニヤニヤと言葉を口にしたー。

莉愛はなおも悔しそうにしていたものの、
やがてーー

その場に土下座しながら
「お願いしますー助けて下さいー」と、
そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーふへ…ふへへへへへへ…♡」

1か月後ー。
莉愛は、史郎の屋敷のメイドとして働いていたー。

夜に史郎に呼び出されては、色々させられるけれど、
それ以外は自由だし、
史郎を前に、女としての快感を味わうのもなんだか癖になってきたー。

「ーーふへへへへ…まさか俺がメイドになっちゃうなんてー」
ニヤニヤする莉愛ー。

そんな莉愛を、偶然屋敷の中を歩いていた”元ニート”の史郎が
見つけると、
「お、ちょうどいいところにいたな」と、笑みを浮かべながら
突然、札束を莉愛の近くに向かって放り投げたー。

莉愛は慌ててお金を拾い始めるー。
メイド服を着た莉愛が、地面に這いつくばって夢中になって
拾っている姿を見ながら、
史郎は笑うー。

「ははははー!拾え拾え!
 お嬢様の堕ちた姿は最高のおかずだぜ!」

そう叫ぶ史郎ー。

莉愛は、そんな言葉も耳に入らないぐらい、夢中になって
お金を拾い続けるー。

自分の快楽のために1億円を与えていたお嬢様は、
今や、与えられる立場となり、
もはや、かつての栄光は見る影もなかったー…

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

見下していた相手に保護される結末でした~!☆
(後半に登場した元ニートの人は①の後半に出ていますネ~!)

でも、メイドとして仕えるのを別に苦にして無さそうなので
ハッピー(?)エンドかもですネ~笑

お読み下さりありがとうございました~!☆!

コメント