海から”謎の触手”が出現したー。
その触手型寄生生命体に囚われた人間は、
触手の”宿主”にされてしまい、支配されてしまうー。
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「ーーねぇ、あそこー」
一緒に歩いていた彼女の平坂 杏奈(ひらさか あんな)が、
不思議そうな表情を浮かべながら、海辺の方を指差すー。
彼氏の田原 照樹(たはら てるき)は、
杏奈が指さした方向を見つめたー。
大学生カップルの二人は、
今日は休みを利用して、二人で旅行にやってきていたー。
就職も迫っている中ー、
こうしてのんびり機会もしばらくないかもしれない、と
二人で企画した旅行だー。
杏奈が行きたがっていたところを回って、
満足して宿泊予定の旅館を目指していたところー、
歩いている道から見える海辺に、苦しそうに蹲っている人を
見かけたのだー。
「ー泳ぐって季節でもないのになぁ」
照樹はそれだけ呟くと、
「怪我でもしてるのかな?」と、杏奈は心配そうに呟いたー。
「一応、声をかけてみるかー」
そう呟きながら、照樹は浜辺に降りるための階段を降りて、
蹲っている人物の方に近付いていくー。
するとー、蹲っていたOLらしき女が
「助けて……」と、そんな声を口にしたー。
「ーーやっぱり、何かあったのかも」
照樹と一緒に浜辺に降りてきた杏奈が、OLの方に向かって走り出すー。
照樹もその後に続き、苦しそうにしているOLに近付いていくー。
杏奈は「どうかしましたか?」と、心配そうにそのOLに声を掛けると、
OLは「やっぱり聞いていた通りー」と、クスクスと笑ったー。
「ーー?」
杏奈が首を傾げるー。
そんなやり取りを聞きながら、OLの方を見た照樹は、
OLの服が”不自然に”膨らんでいることに気付くー。
胸の膨らみとか、そういうものではないー。
なんだか、”服の下に蛇でもいるかのような”
そんな、不自然な膨らみ方だー
「ーー!?」
女のスカートから、”謎の物体”が、一瞬見えたことに気付く照樹ー。
蛇のようなー、”何か”がOLの足に巻き付いていたー。
「ーー?」
照樹は、さらに異変に気付くー。
海が”不自然に”波打っているー。
「ー杏奈!何かおかしい!一旦離れろ!」
危険を感じた照樹がそう叫ぶと、杏奈が「えっー!?」と、
振り向きながら声を発するー。
その直後のことだったー。
海から”何か”が、音を立てて出現したー。
「ーー!?!?!?」
照樹も杏奈も驚くー。
蹲っていたOLは邪悪な笑みを浮かべているー。
「ーーわたしの仲間の”宿主”になぁれ」
とー、呟きながらー。
「ーひっ!?!?」
海から飛び出してきたのはー、謎の”触手”ー
「ーー杏奈!」
照樹がそう叫ぶと、
杏奈の腕に触手が巻き付いて、杏奈を捕らえようとするー。
「ーちょっと!?な、なにこれ!?」
杏奈が驚いて、そのまま逃げようとするも、
海からさらに飛び出してきた触手が、杏奈の足に巻き付いて、
杏奈は転倒してしまうー。
「ーーー杏奈!」
照樹が駆け寄ろうとするー。
しかし、蹲っていたOLが照樹の”邪魔”をするー。
「ーおっとっとー。邪魔しちゃダメよ?」
クスクスと笑うOLー
「あ、あんた、何のつもりだー」
照樹がそう言いながら、言葉を口にすると、
OLは、笑みを浮かべながらー、
突然、スカートの中に隠れていた”触手”のようなものを
伸ばすと、ニヤリと笑ったー。
「ーー人間の身体が欲しいのー
この女みたいにー」
と、そう呟きながらー。
「ーー!?!?」
照樹は、目の前にいるOLが、”自分たちをおびき寄せるために蹲っていた”
ことに気付くー。
「ーーた、助けて照樹!」
触手に捕まれた杏奈が、声を上げるー。
「ーあ、あぁ、もちろんー!今助けるからー!」
照樹がそう叫びながら、OLを払いのけると、
そのまま杏奈のいる方に向かうー。
しかしーーー
「ーー邪魔しちゃ、だ~め」
OLの耳から伸びてきた糸のような細い触手に囲まれて、
照樹は身動きを封じられてしまうー。
「ーて、照樹!」
杏奈が叫ぶー。
がー、そんな杏奈の近くには、
海から顔を出した”触手”が、迫っていたー。
触手は、杏奈を見定めるように、杏奈の眼前でしばらく蠢くと、
そのまま、杏奈の口の中に突入していくー。
「ーうぐっ…!?」
意外と太い触手が、強引に口から、喉の奥へと飛び込んでいくー。
「がっ…」
杏奈は嘔吐しそうになりながらも、触手が中に入り込んでいく速度の方が
早く、苦しそうに白目を剥きながら震え始めるー。
やがて、触手が”自ら”杏奈に入り込む分だけを”分離”させるかのように
切断すると、残る触手は海に戻っていきー、
杏奈はその場に倒れ込んでもがき始めたー
「あ、杏奈!!!」
OLの耳から飛び出した触手に囚われたままの照樹は、
必死に叫んだー。
だがーー
苦しんでいた杏奈は、やがて苦しむのをやめて、
ゆっくりと立ち上がると、
「ーこれが、人間の身体ー」と、ニヤニヤ笑いながら、
自分の胸を揉み始めたー。
「ーーんふっ…♡ すごい…」
杏奈が嬉しそうに笑うー。
耳から”触手”を出すと、
杏奈はその触手で自分の胸を触りながら、
自由に動かせる両手を嬉しそうに動かしつつ、
OLのほうを見つめたー。
OLは笑みを浮かべながら頷くと、
照樹の拘束を解くー。
「ーーあ…杏奈…」
呆然としたまま照樹が言うと、
「ーわたしはもう、杏奈じゃないー」と、
杏奈はクスクスと笑いながら、照樹を見つめたー。
同じ顔ー。
同じ声ー。
でも、いつもの杏奈とは違う、不気味な笑みー。
「ーーー…ふふふ 人間の身体を、どんどん増やしていくのー」
杏奈はそれだけ言うと、自分の耳から出している状態の触手を
その舌でペロリと舐めながら笑うー。
「ーーーお…お前ら…一体ー…?」
照樹が震えながら言うと、
杏奈はクスッと笑いながら海の方を指差したー。
「ー人間に分かるように説明するならー、
”深海”からやってきた未知の寄生生物ってところかなー?」
杏奈を乗っ取った”触手”のような形をした
寄生生命体は、杏奈の脳から記憶を読み取り、
”人間”に分かりやすいように説明したー。
「深海からー!?」
照樹の言葉に、杏奈は「そう」と答えると、
「人間の身体ってさ、入れ物として最適なんだよねぇ」と、
笑みを浮かべながら笑うー。
「ーー…ぐ… あ、杏奈ーめ、目を覚ましてくれ!」
照樹が必死にそう言葉を口にするー。
しかし、杏奈は「人間の脳なんて単純だからー」と、
自分の頭をつんつんとつつきながら
「こんな風に簡単に支配できちゃう!」と、嬉しそうに
乗っ取られたことを誇って見せたー。
「ーーく……ゆ、許せないー」
そう言いながら杏奈の方を見つめる照樹ー。
だがー、横にいたOLの女が口を挟んだー。
「ーいいのかな?こんなところにいてー」
とー。
「なに?」
照樹がそう言葉を口にすると、海から再び、触手が飛び出してきているのが
見えたー。
「ーーふふふふふ ここにいたら、お前もー」
杏奈から”お前”と言われて、照樹はショックを受けながらも、
そのまま後ずさるー。
”ここにいたら、俺までー…”
照樹は心の中でそう呟きながらも、
杏奈の方を見つめるー。
杏奈をこのまま置いていくようなことはしたくはないー。
けれどー…
ここで自分まで触手に乗っ取られてしまったら
誰が、杏奈を助けるのかー。
冷静にそう判断した照樹は
「杏奈ー…必ず助けるから…ごめん!」と、
そう言葉を口にしながら、触手を振り払って逃げ出すー。
海から離れて、階段を上り、元々歩いていた通りに戻ると、
触手はもう追ってはこなかったー。
「ーーな、なんとかしないとー…」
照樹は、そう思いながら
ひとまず、予約してあった旅館がすぐ近くであったことを思い出すと、
旅館に入ってから、警察に連絡して助けを求めようと、
そう考え、旅館に向かって走り出すのだったー。
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「ーーすみませんー!
2名で予約していた田原ですがー」
旅館に入った照樹は、
そう言葉を口にしながら、受付に向かうー。
しかし、受付のスタッフたちが、
何やら困惑した様子で話をしていたー。
ここに来るまでに警察に通報しようとしたものの、
何故か警察に電話が通じず、
旅館に助けを求めようとした照樹ー。
が、旅館の受付のスタッフたちは、
既に何か問題が起きているのか、
「少々お待ちくださいー」と、そんな反応を見せた。
困惑する照樹ー。
困惑しながら
ふと、照樹はロビーにあったテレビの方に視線を向けたー。
「ーー!?!?!?!?」
”各地の海に謎の生命体が出現”
ちょうど、そんなニュースが報じられていて、
テレビには、さっき照樹が見た”謎の触手”が映し出されていたー。
映像は、さっき杏奈が乗っ取られた海岸沿いとは別の海岸沿いー。
報道によれば、各地に謎の触手が出現しているとのことだったー。
「ーーこ、これー…」
照樹が、呆然としながら、
その映像を見つめるー。
「ーー…お客様 お待たせいたしましたー」
そうこうしているうちに、旅館のスタッフが近付いてくるー。
「ーす、すみません、これってー」
照樹が、テレビを指差しながら言うと、
スタッフは「今、状況を確認している最中ですー」と、
そんな言葉を口にするー。
そうこうしているうちに、受付に詰め寄る
スーツ姿の男の姿が目に入るー。
「ーーーどうにか、どうにかして下さい!」
パニック気味にそう叫んでいる男ー。
どうやら、男は出張中の会社員のようで、
一緒に出張に来ていた女性社員が海辺で”謎の触手”に
捕まったのだと、そんなようなことを叫んでいたー。
そんな会話を聞きながら、ふと照樹は
”杏奈を騙した女”が、OLのような姿をしていたことを思い出すー。
「ーーあ、あのー!」
照樹がその男に声を掛けると、
照樹は、ついさっき、自分の彼女もその”触手”に捕まり、
乗っ取られてしまったことを説明しー、
会社員の男から、話を聞き始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーそうですかー」
照樹は表情を歪めるー。
やはり、さっき海岸にいた”OL”は、この男の同期のようだー。
「ー申し遅れましたー。私はこういうものですー」
渡された名刺には、電子部品メーカーの名前が刻まれていて、
そこに”綿野 雄平(わたの ゆうへい)”と書かれているー。
「ーー地方の取引先との商談で、私を含めた5人で
こちらに来ていてー
ちょうど商談を終えて、今日こちらに宿泊ー、
明日には戻る予定でしたー」
雄平はそう言うと、
「ーーただ」と、この旅館に向かっている途中、
海沿いに足を運んだ際に、突然海から飛び出してきた
謎の”触手”に、後輩である女性社員・谷尾 夏帆(たにお かほ)が、
捕まって、乗っ取られてしまったのだというー。
「ーーーーその谷尾さんって人ー…」
照樹が、海辺にいたOLの特徴を思い出しながら言うと、
雄平は「ーーー間違いないです」と、
その人物が夏帆だろう、と、そう言葉を口にしたー。
「ーーーくそっ」
照樹は思わず、一人でそう呟くー。
海から飛び出してきたあの触手のような生命体は何なのかー。
人間を乗っ取って、何をしようとしているのかー。
乗っ取られてしまった杏奈や夏帆は、無事なのかー。
色々な不安に駆られながら、テレビの方を今一度見つめるー。
どうやら、全国の海岸沿いで目撃されているらしく、
杏奈や夏帆のように”乗っ取られている人間”も、
多数いるようだー。
照樹は、雄平との話を終えると、
そのまま旅館の外に一旦出て、海の方を見つめるー。
「ーーー杏奈…」
杏奈の姿は見えないー。
だが、触手に支配されてしまった杏奈は、
今もどこかで、自分の意思とは関係なく、
その身体を使われているー。
どうにか、しなくてはいけないー。
気持ちだけが焦っていく中ー、
照樹は、ようやく警察に連絡をつけると、
”同様の通報が多数あって対応中”だと言われてしまったー。
「ーー…くそっ…一体、何がどうなって」
照樹は焦りの表情を浮かべながら、
そう言葉を口にして、
一度旅館の方に戻って情報収集をしようとしたその時だったー。
♪~~
スマホが鳴るー。
「ーー!」
照樹は、スマホを確認すると、
そこには彼女である”杏奈”の名前が表示されていたー…。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
謎の触手型寄生生命体に乗っ取られてしまうお話デス~!
彼女を助けることはできるのかどうか、
ぜひ、結末も見届けて下さいネ~!
お読み下さりありがとうございました~!☆!
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