<憑依>1億円を送りつけるお嬢様①~悪趣味~

お金持ちのお嬢様に憑依して
大金を無関係の人に送り付け、
”金”で人生が壊れていく様を見て、悦に浸る男ー。

そんな、悪趣味な憑依人の物語ー。

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「ーーわたし、わたし、どうしたらいいですか?」
涙目で、助けを求めて来る女ー。

そんな女を見て、この屋敷に住むお金持ちのお嬢様・
高坂 莉愛(こうさか りあ)は、
笑みを浮かべながら言葉を口にしたー。

「ー知りませんわー。そんなことー」
とー。

「ーーそ、そんなー、た、助けて下さいー
 も、もう一度ー…」
涙目の女は、少し前までは”ごく普通の女子大生”だったー。

しかしー、”1億円”を手にしたことで、彼女の人生は
変わってしまったー。
1億円を手にして、有頂天になった彼女は豪遊を繰り返し、
性格も豹変ー、周囲の友達を失った挙句、
金目当ての悪い男に捕まり、今やその人生は滅茶苦茶だったー。

「ーーふふふふふふふふふー」
莉愛は笑みを浮かべるー。

「ーーいい…その顔ーー
 ”金”で人生が狂った顔ー。
 いいーー

 ほんっとうに、そういう顔を見ると興奮しちゃいますわ!
 ふふふふふふふふふっ」

莉愛はそう言い放つと、呆然とする女子大生に対して
「ーーあなたの人生がどうなろうと、わたしの知ったことでは
 ありませんわ」と、無情にもその子を追い払おうとするー。

「ーそ、そんな!助けて下さい!お願いします!」
悲痛な叫び声を上げる女子大生ー。

だが、その子はそのまま屋敷から追い出されてしまうー。

「ふふー」
あの女子大生が手にした”1億円”は、
莉愛自身が送り付けたものだー。

莉愛は、”1億円”を庶民に送り、
”いきなり大金を手にした人間”が壊れるのを見て、悦に浸っている
悪趣味なお嬢様だー。

”金”は恐ろしいー。
人間をいとも簡単に狂わせるー。

自分の努力の結果、”少しずつ”収入が上がったり、
そういった”お金の増え方”であれば、まだいいー。

しかし、”ある日1億円という大金を渡されたら”
大抵の人は壊れるー。

人間、”急激な変化”には耐えられないのだー。

宝くじに当選した人間の人生は時として壊れるー。
それと、同じことだー。

何の前触れもなく、何の自分自身の努力もなく、
”1億円”を手にした人間の多くは壊れて来たー。

そして、莉愛はそんな人たちを見て、
”とても楽しそうに”しているー。

「ーー次は、この人に1億円を渡しますわー」
莉愛は、クスクスと笑いながら、
ごく普通の主婦・和江(かずえ)の写真を見つめるー。

次のターゲットは、和江ー。
夫が病気で休職中で、生活に困っているこの主婦に
”1億円”を渡すのだー。

「ーーーでは、莉愛お嬢さまー。
 準備を整えておきます」
執事のそんな言葉に、莉愛は「よろしくね」と、そう微笑むと、
笑みを浮かべたー。

執事が立ち去っていき、部屋には莉愛一人ー。

莉愛は、突然、男のような座り方でイスに座ると、
片手で胸を揉みながら、
ゲラゲラと笑ったー。

「ーあ~~ぁ…お金持ちのお嬢様として人生壊すのー、
 楽しすぎだろー。
 貴族の遊びって感じがして、たまらねぇー」

莉愛はーーー
数年前に”男”に憑依されていたー。

一般人に1億円を渡し、その人生が壊れる様子を観察し、悦に浸るー。

そんな”悪趣味”な、趣味は元々の莉愛の趣味ではないー。
男に憑依された莉愛の、”邪悪なる趣味”ー。

「ーーお金で狂ってくやつを見るのは、本当に楽しんだよなーひひひ」
莉愛は涎を垂らしそうになりながら、
興奮した様子で笑みを浮かべながら、そんな言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーわ、わたしにー…?」

莉愛に屋敷に招待されたごく普通の主婦・和江は
戸惑いの表情を浮かべながら、
莉愛の方を見つめたー。

「えぇ。あなたに1億円ー、差し上げますわ
 
 もちろんー、悪いお金ではなく、
 わたしのお父様がちゃんと働いて稼いだお金よー。」

まるで女王のように高圧的な態度の莉愛ー。
元々は、おしとやかなお嬢様だったものの、
既にその面影はないー。

「ーーで、でも、どうしてわたしにー?」
和江が戸惑いながら言うー。
怪しいと思うのは当然だろうー。

「ーー慈善事業ですわー。
 生活に困っている人をこうして救いたいの。
 お金の力でー。

 もちろん、全ての人を助けることはできないけれどー、
 ほんの少しの人数だったとしても、
 わたしたちのお金で、助かる人がいればうれしいー。

 それだけですわ」

莉愛が、笑みを浮かべながらそう言葉を口にするー。

「ーーーー…」
主婦・和江は戸惑いながら、
「ーー後から、返済を求められたりはしませんか?」
と、不安そうにそう言葉を口にするー。

莉愛は「大丈夫よ」と、告げると、
一切の返済を求めない旨や、完全に無条件で寄与すること、
税金の類も全てこちらで処理することを約束する書面を用意して、
それを、和江に手渡したー

「今、この場でわたしがサインしますー
 これで信用して頂けるかしら?」

クスクスと笑う莉愛ー。

和江は、なおも不安そうにしながらも、
病気で休職中の夫がいて、生活が苦しい状況の和江は、
「ー分かりました。ありがとうございますー」と、
そう言葉を口にするー。

莉愛は、返済を求めないことなどを約束する
誓約書にその場でサインをするー。

和江は一瞬
”莉愛のようなお嬢様にしては汚い字”だと思ったものの、
それは口にしなかったー。
見た目と字が釣り合わない人間なんて、たくさんいるー。
何となく違和感を抱いたものの、気にしすぎだと
自分で自分の気持ちを封じ込めるー。

「ーーーそれでは、1億円はあなたのものですわ」
莉愛はそう言い放つと、
心の中で邪悪な笑みを浮かべたー。

”さァ、見せてくれー…お前の人生が金で狂っていく様をー”
とー

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数日後ー。

1億円を手にした主婦・和江は、
病気療養中の夫・達也(たつや)には、
そのことは伝えず、お金を管理していたー。

「ーーお金の心配はしないでー。わたしが何とかするから」
和江がそう言うと、
達也は「でもー」と、戸惑うー。

「ー大丈夫。わたしがパートの時間を増やして、
 働けば何とかなるからー」
和江はそう言いながらも
”パートの時間”を増やすことなく、
莉愛から貰ったお金を生活費に補填しながらの
生活をスタートさせていたー。

がー…
やがてー…

「ーーー…今まで、お世話になりましたー」
”働かなくても”1億円が手元にあるという安心感から、
和江は、夫の達也には内緒で、パートをやめ、
日中は”パートに行っているフリ”をしながら、
遊び歩く日々を送っていたー。

「ーーあ、これもかわいいー。買っちゃおうかなー」
金遣いが次第に荒くなっていく和江ー。

しかし、ある日ー、
夫の達也は、和江がパートをやめていることに気付き、
和江にそのことを確認してきたー

「ーーも~心配性なんだからー。大丈夫。
 生活費はちゃんと確保できてるから」
そう言い放つ和江ー。

「ーーせ、生活費って、パートも辞めたのに、どこから?」
達也がそう言葉を口にすると、
和江は少しだけ不愉快そうに「ーそんなこと、気にしなくてもいいでしょ?」と、
そう返事をしたー。

次第に”夫が邪魔”だと思い始める和江ー。
”1億円あれば、達也なんていらないー”
そんな考えにたどり着いた和江は、達也に対し、離婚を切り出すー。

「ーり、離婚?どうして?」
病気療養も終わり、間もなく仕事復帰する予定になっていた達也ー。
しかし、そんな達也に、和江は離婚を切り出したー。

突然莫大なお金を手に入れて、価値観に急激な変化が生じーー
好きだったはずの達也のことも”邪魔”だと思い始めていたー。

もし、”わたしの1億円”のことに気付かれたら、
”わたしの1億円”を彼にも分けないといけなくなっちゃうー…。

和江は、そんなことを思い出していたー。

「ーーとにかく、わたし、離婚したいのー…!
 色々疲れちゃって」

和江がそんな言葉を口にすると、達也はそのまま
表情を歪めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーふふふふふー
 あの女ー、ついに夫に離婚を切り出したかー」

莉愛は報告を受けて嬉しそうに笑うー。

1億円を渡した相手の人生がどのように壊れていくかー。
莉愛は、お金にものを言わせて、協力者に情報を探らせて
相手の状況を調べたり、
時間がある時には自らその状況を観察しに行ったりしながら、
”相手の人生が壊れていく様子”を楽しんでいるー。

そして、今日もー。

”お嬢様ーお客様がいらっしゃいました”
執事の言葉に、莉愛は笑みを浮かべながら
「今、行きますわー」と、そう返事をすると、
自分の髪を触りながら、ご機嫌そうに”来客”の元に向かったー。

やってきたのはー、
梶岡 史郎(かじおか しろう)ー。
ニートだ。

「ーーーー俺に用ってのはー?」
Hなゲームを遊ぶのが趣味で、部屋に引きこもっている史郎
彼は、お風呂にも1週間に1回ぐらいしか入らないようで、
異様な体臭を放っているー。
その上、スナック菓子が大好きで、不規則な生活をしているせいか、
不健康な感じで太っている状態だー。

そんな彼を、莉愛は呼んだーー
”1億円”を渡すためにー。

”ーこいつ、臭ぇなー
 お嬢様に憑依してから、特にこういう奴、気になるようになったよな”

莉愛は内心でそう思いながらも、

「ーーいかにもニートって感じですわね」
と、小馬鹿にするような笑みを浮かべたー。

がー、史郎は
「そっちだって、金持ってるだけのニートだろ?」と、
反論してくるー。

カチンと来る莉愛ー。

確かに、図星だったー。
”憑依したあと”は大学にも行かず、父親の金を使って
豪遊ー、そして1億円を一般人に渡してその人生が壊れていく様子を見ては
楽しんでいるー。

「ーーーあらー?無礼なニートだこと」
怒りを抑えながら、莉愛はそう言うと、
「ーで、俺を呼んだ理由はー?」と、史郎は偉そうに
そう言葉を口にするー。

莉愛は罵ってその帰らせようかとも一瞬考えたものの、
すぐに、”いや、こいつの人生がもっと壊れるのを見たい”と、
「ーあなたに、1億円差し上げますわー」
と、不気味な笑みを浮かべたー。

こういうやつが1億円を手にすれば
確実におかしくなるー。

莉愛は、そう思いながら心の中で邪悪な笑みを浮かべると、
そのまま、驚く史郎に対して1億円を渡す手続きを始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーー和江…!
 そのお金、どこからー!?」

一方、
和江・達也の夫婦は修羅場を迎えていたー。

急に離婚を焦る妻・和江の様子がおかしいと気付いた達也は、
和江のことをこっそりと調べー
”謎の大金”を持っていることに気付いたのだー。

そして、今、達也は和江が大金を移動しようとしている現場を
突き止め、そう言葉を口にしていたー。

「ーーこ、こ、これはー」
表情を歪める和江ー。

「何で和江がそんなにお金をー!?
 そ、そのお金ー悪いお金じゃないだろうな!?」

達也の言葉に、和江は「これはわたしのお金よ!」と反論するー

「答えになってない!」
達也がそう叫ぶと、和江は「うるさい!いいから離婚して!」と、
声を上げながら、そのまま鞄に詰めたお金を持って立ち去ろうとするー。

「おい!待ってくれ!和江!」
達也が和江の腕を掴むー。

がーー、和江は”わたしの1億円”が奪われると思ったのか、
机の上に置かれていた花瓶を掴むと、
そのまま達也の頭に叩きつけたー

「がーー…!?」
達也が強い衝撃を感じて倒れ込み、倒れたはずみに
戸棚に頭を打ち付けるー。

「ーー…え…」
思った以上に派手に転倒した達也を見て、
不安を感じた和江は、達也に駆け寄ると、
頭から血を流しているのに気づいて、悲鳴を上げたー。

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「あ~~~あ 思ったより派手に人生が壊れたなー」

莉愛は、ニュースで”和江が夫を殺した”事を知り、
ゲラゲラと笑うー。

がー

「ー例のニートは?」
莉愛が執事に確認すると、
執事は「ーーはっ…投資を始めていて、お金は派手には使っていないようです」と、
そう返事をしたー。

史郎の方は”失敗”だー。

時々、1億円を提供しても”つまらない”使い方しかせず、
人生を壊さずに、そのまま生活していく者もいるー。

「ーー…あ~あ、つまんないー」
莉愛は、ボソッとそう呟くと、
「まぁ、金を渡す相手はいくらでもいるしー」と、
次に1億円を渡す相手を考えながら、不気味な笑みを浮かべたー。

②へ続く

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コメント

お金持ちのお嬢様に憑依して、
大金を人に渡し、その反応を楽しむという
悪趣味な憑依のお話デス~!☆

この先どうなっていくのかも
ぜひ見届けて下さいネ~!

今日もありがとうございました~!☆

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