ある日、突然女体化してしまった親友を元気づけようと、
彼は、親友に対して、ひたすら褒めるような言葉を投げかけていくー。
がー、やがて女体化した親友は、
”かわいい”に目覚めていき…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーそういや、駅前の映画館の改装工事終わったみたいだから
今度、何か映画見に行こうぜ」
達也がそんな言葉を口にするー。
相変わらず、女体化したままの正彦は
その言葉に「あ、そういえば、半年ぐらい改装工事してたよな」と、
そう言葉を口にするー。
女体化した直後は落ち込んでいた正彦も最近は
すっかり元気を取り戻したー。
当初、落ち込んでいる状態の正彦を見た達也は、
正彦を何とか少しでも元気づけてあげようと、
ポジティブな言葉を毎日のようにかけ続けて、
励まして来たー。
その結果ー、今は”俺って可愛くね?”などと言うほどに、
女体化した正彦は元気になり、女子としての生活を
楽しみ始めているー。
「ーーへへ じゃあ、今度の土曜日にー」
女体化した正彦はそう言うと、嬉しそうに笑うー。
”俺にできるのは、このぐらいだからなー”
親友の達也は、そんなことを思いながら
自分の座席に戻るー。
”女体化した親友”を男に戻してあげることはできないー。
かと言って、その気持ちを100%理解することも難しいー。
自分にできることはせめて、”前向きな言葉を掛け続けたり”
映画に誘ったりして息抜きをさせてあげたりー、
そんなことをすることぐらいだー。
そしてー
約束の日がやってくるー。
待ち合せ場所に先にやってきた達也は、
後から姿を現した正彦を見て、驚きの表情を浮かべたー
「ーーえぇ!?滅茶苦茶可愛いじゃんー」
達也の言葉に、正彦は「えへへー」と、嬉しそうに笑うー。
女体化した正彦は、まるでアイドルのような可愛らしい格好で
姿を現したー。
最初は、学校の制服でさえ”こんな服、着たくないのに”と、
かなり落ち込んだ様子だったのに、
今や自分から可愛い服を着るようになったー。
「ーーーえへへー 俺、可愛いだろ?」
女体化した正彦がニヤニヤしながら言うー。
達也は少し照れながら
「お…俺は、お前のこと今まで通り”親友”として見てるからー」と、
そう言葉を口にすると、
正彦はニヤニヤしながら「わたしのこと、可愛いと思う?」と、
女子みたいな口調で、言葉を口にするー
その言動にドキッとしながらも
「か、かわいいよ!可愛いけど、でも、俺は親友だから」と、
そう言葉を口にして、目を逸らすー。
「ーはははー、そんなにドキドキすんなってー」
正彦は笑いながら、達也の肩を叩くー。
やがてー、映画館に入り、ポップコーンを購入して
映画を見始めるー。
がー、ポップコーンをほとんど食べなかった正彦を見て、
達也は少し不安そうに「体調でも悪いのか?」と、
正彦に対してそう尋ねたー。
いつも、正彦と映画館に行くと
あっという間にポップコーンがなくなってしまい、
取り合いになるほどだったのに、今日はほとんど食べなかったのだー。
「ーーん?なんで?」
女体化した正彦が首を傾げるー。
達也はポップコーンのことを口にすると、正彦は
「あぁ、ダイエットしてるからー」と、笑いながら自分の身体を触るー。
「ーだ、ダイエットー?べ、別に太ってないだろ?」
達也が苦笑いすると、正彦は「でも、もっと可愛くなりたいからさ!」と、笑ったー。
映画の帰りに、二人でショッピングモールに足を運ぶー。
がー、いつもだったら一緒にカード屋だったり、食べ物屋だったり、
そういったものを嬉しそうに見て回るはずの正彦がー、
アクセサリー売り場で嬉しそうに「これかわいい」「似合うかも!」などと
話し始めて、達也は”親友が遠くに行ってしまうような気がして”
少し、不安を感じ始めていたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
クラスでもー、妹の純恋からも
”かわいい”と連日言われるようになり、
”自分の可愛さ”に目覚めた正彦は、
服装から、髪型、アクセサリーまで、おしゃれに夢中になったー
さらに可愛くなっていく正彦ー。
やがて、女子たちからも女子として扱われるようになり、
最初とは別人のような”美少女”なオーラを溢れさせる子に
変貌していったー。
そしてーー
「ーねぇねぇ、聞いて聞いて!
昨日、芸能事務所からスカウトされちゃった!」
嬉しそうに笑う女体化した正彦ー。
正彦が可愛くなればなるほどー
正彦の心が”女子”になればなるほどー
正彦との距離が生まれていくことに、達也も気づいていたー。
女体化から数か月ー。
達也は、正彦と喋る機会が激減しー、
今や”雲の上の存在”のキラキラした女子に、正彦は変わってしまっていたー。
そのままー
距離が生まれ、高校卒業まで接点があまりなくなりー、
女体化した正彦とは、疎遠になってしまったー。
達也は、少しだけ後悔していたー。
正彦が女体化した当初、正彦を何とか元気づけようと、
達也は過剰とも言えるぐらいに、連日”かわいい”とか、そんな
ポジティブな言葉を投げ続けたー。
その結果がー、これだー。
正彦は”自分の可愛さ”に目覚めて別人のようになってしまいー、
だんだん、話す機会も無くなって行ったー。
ついには、文化祭の最中に「正彦」と呼んだら、
「ーーその呼び方されると、周囲から変な目で見られるでしょ」などと
怒られてしまい、達也は謝ることしかできなかったー。
「ーーわたしの足、引っ張らないでよね」
正彦にそう言われた達也は「ご、ごめんー」と、謝罪するー。
女体化して、可愛いに目覚めー、いつしか振る舞いもどんどん女子に
なっていった正彦ー。
行政的な手続きが終わり、戸籍上も女になり、
名前も”麻美(まみ)”に変わってからは、
それがエスカレートしていったー。
それまで、正彦と呼んでも何も言われなかったのに、
急に「その名で呼ばないで」と言われたり、
ついには、達也と話す時も”俺”とか言わなくなったー。
正彦は、もういないんだー。
そう思いながら高校を卒業した達也は、
そんな悲しい出来事も忘れ、大学生活を満喫していたー。
やがてー…
”麻美”がアイドルデビューしたことを知るー。
”こんなに可愛いわたしなら、売れると思う”などと、
女体化した正彦は自信満々だったと、
今でも接点のある高校時代の友人から聞かされた達也ー。
”正彦”の思う通りだったのだろうかー。
いや、”男受けする自分”を、自分が元男だったからこそ、
よく理解しているからだろうかー。
瞬く間に人気アイドルの階段を駆け上がり、
今では正彦は”完全に雲の上の存在”になってしまっていたー。
”最近、元気かー?”と、だけ一度LINEを送ってみたものの、
既読無視されてしまったー。
「ーーはは…もう、正彦のやつ、俺なんかに用もないんだよなー」
達也は少し寂しそうにそんな言葉を口にすると、
アイドルとなって、キラキラしている正彦を見て、
今一度、寂しそうに微笑んだー。
”褒めすぎた”のだろうかー。
可愛い、可愛い、言い続けて、その気になってしまったのだろうかー。
いや、もしかしたら達也が何もしなくても、
女体化した正彦はいずれ、この道にたどり着いたのかもしれないー。
そう思いつつ、達也は、女体化した正彦のことを忘れ、
自分の大学生活に集中するのだったー
がーーー
その1年後ー
「ーー本当に、申し訳ありませんでしたー」
”人気アイドル・麻美は”男”だったー!?”
そんな記事が、週刊誌に掲載されたー。
戸籍上も女になり、名前も麻美になっていた
正彦は、”自分の女体化の奇病のこと”を隠して
アイドル活動をしていたー。
がー、それが暴かれ、大問題になっていたのだー。
もちろん、それを問題としない人もいるー。
しかし、世界で数例しかない病気で女体化したことや、
元男であることに強い拒否反応を示すファンも多く、
正彦は大炎上ー、アイドル引退の危機に追い込まれていたー。
「ーーーーー…」
そんな、謝罪会見の様子を自宅のテレビで
見つめながら、少しだけ笑みを浮かべていたのはー……
正彦の妹・純恋だったー。
女体化直後、正彦を”お姉ちゃん”と呼んだり、
可愛い服を着せたりして楽しんでいた純恋ー。
しかし、次第に”わたしより可愛い”兄に嫉妬を覚えるようになっていき
アイドルとして人気絶頂の兄を蹴落とすために、
純恋自身が、週刊誌に”正彦”のことを情報提供したのだー
「ーーー”お姉ちゃん”は、元々男のくせにー」
純恋は嫉妬に満ちた言葉を口にすると、
謝罪会見をしている女体化した兄・正彦をテレビの画面で見つめながら
「いい気味ー」と、静かにそう呟いたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
女体化した正彦は、全てを失ったー。
世間は”世界でも数例しか症例のない病気で女体化した”正彦の
ことを受け入れなかったー。
中には”元男なんてもっと最高じゃん!”なんてファンも
いたものの、全体的に否定的な声が圧倒的に多く、
元々は女体化した正彦=麻美になど全く興味がなかった人たちも、
”麻美”を徹底的に叩き始めたー。
結果的に、引退危機を通り越してついに引退ー。
ネット上にはあることないこと、色々な情報が飛び交いー、
大学にもいられなくなって、自分の住んでいる家に
一人、引き籠るようになってしまったー。
兄・正彦の正体を嫉妬の感情からバラした純恋自身にも
その影響は及んだー。
”兄”のことを学校で色々言われるようになり、
純恋は学校での立場を失ったー。
純恋はここまで影響が大きくなるとは思っておらず、
自ら”自滅”を招いたー
”全部全部、あんたのせい!”
純恋は、電話で正彦にそう言い放ったー。
”あんたが急に女になんかなるから!”
女体化のことを責められ、正彦は実家に帰ることもできず、
そのまま部屋に引き籠る日々を送り続けたー。
がーーー
そんなある日ー。
インターホンが鳴るー。
自暴自棄になって不規則な生活を送っていた正彦は、
すっかりその美貌も失われて、
疲れ果てた表情を浮かべていたー。
同じ人間とは思えないほどの、別人のような姿。
「ーーー」
どうせまた、イタズラだろうー。
そう思いながら、「はいー」と返事をすると、
思わぬ人物の声が聞こえて来たー
”ーーー俺だよ。達也ー。
久しぶりー”
やってきたのは、高校時代の親友・達也だったー
「ーーー」
女体化した正彦は、自虐的な笑みを浮かべると、
「ははーお前も俺を笑いに来たのかー…笑えよ」と、
すっかり自信を無くして、そう呟いたー。
”ーーいや、違うよー
親友が落ち込んでるのを、励ましに来たんだー”
達也はそう言いながら笑うー。
「ーーー……ーー」
その言葉に、正彦は少しだけ表情を曇らせながら
「ーー…でも俺ー、お前にも酷いことー」と、
自分の可愛さに酔って、有頂天になっていた頃の自分を
思い出しながら言うー。
しかし、達也は恨み言は一切言わなかったー
”ーお前がそうなっちゃったのには、俺にも原因があるからー…
お前を元気づけようとして、ついお前のこと褒めまくっちゃってー
お前を勘違いさせちまったー。
だからーー俺にも責任があるからさー”
達也はそう言うと、”とにかく、お土産も買って来たからー”と、
中に入れてほしい、と、そう言葉を口にしたー。
達也を招き入れる女体化した正彦ー。
かなりやつれた様子の正彦を見て、達也は驚きながら
部屋を見渡すー。
部屋の中も、かなり荒れ果てているー。
「ーーあ~~あ……こりゃ大変だな」
達也はそう言いながらも、コンビニで買ってきたお土産を
色々袋から出しながら、最近の近況報告をしたり、雑談をしたり、
色々な言葉を口にするー。
「ーーーーー」
女体化した正彦は、そんな達也と色々話をしながらー、
ふと、涙をこぼしたー。
「ーーなんで…こんな俺に優しくしてくれるんだー?
病気で女になっちまってー
調子に乗って、お前にも冷たく当たってー…
挙句の果てに妹に裏切られてこんなザマになった俺をー…」
正彦はそう言いながら、達也を見つめると、
達也は少しだけ笑ったー。
「なんでーって…?」
達也はそう言いながら、コンビニで買ってきたジュースを一口飲むと、
何の裏もない純粋な笑顔を浮かべたー
「だって俺たち、親友だろー?」
とー。
「ーーーー…」
女体化した正彦は、多くのものを失ったー。
仲良しだったはずの妹から嫉妬の感情を抱かれて亀裂が入りー、
多くの男友達は、”女”として正彦を見るようになり、距離が生まれたー。
女子たちと親しくなっても、それは一時的な繋がりだったし、
芸能界では”友”と呼べるような存在はいなかったー。
がー
達也だけは違ったー。
女体化しても、変わらず親友としてー、
あんなに酷い振る舞いをしたのに、それでも親友としてー。
こうして、今日も親友として駆け付けてくれたー
「ーーーー…ーー…そうだったなー…」
女体化した正彦は目に涙を浮かべながら頷くー。
「ーーははは、泣くなよー
色々辛いこともあったんだろ?
話ならいくらでも聞いてやるよー」
達也はそう言うと、女体化した正彦の色々な話を聞き始めたー。
その後ー、
達也からの誘いで、二人は”親友同士”、
同居生活を始めたー
”お前のことは、男とか女とかじゃなくて”親友”として見てるからー
何も心配しなくていいさー”
と、笑う達也の言葉の通り、
同居を始めても達也は、正彦を変な目で見ることは一切せず、
”親友”として接し続けたー。
やがてー、正彦も立ち直り、大学には復帰しなかったものの、
今は、”世界で数例存在するこの病気”を伝える活動をしつつ、
働いているー。
”性別が変わっても、変わらず接してくれる存在ー”
達也のような、正真正銘の親友がいたことに
心の底から感謝しながら、女体化した正彦は今日も、
「ただいまー」と、親友の待つ家に帰宅するのだったー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
褒めすぎからの暴走からの転落…
でも、最後には何とか居場所を見つけることが
できる結末でした~!☆
もしも親友がいなかったらルートを考えると…
怖いですネ~笑
お読み下さりありがとうございました~!☆
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