生徒会活動で知り合った
”いつもクールな先輩”ー。
そんな彼女に、彼は憧れを抱くも、
ある日、入れ替わってしまい、
彼女の”本当の姿”を知ることになってしまうー。
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「ーー急なお願いだったのにー、ごめんね。ありがとう」
クールな雰囲気の漂う先輩・森宮 結花(もりみや ゆか)が、
穏やかな口調で、お礼の言葉を口にするー。
そんな結花に対して
「いえ、お役に立てて良かったですー」と、
そんな言葉を口にしたのは、結花の後輩で今年から高校生になった、
小野 正隆(おの まさたか)ー。
少し前から、生徒会書記として、活動を続けているー。
「ーーううんー。小野くんはいつもよく頑張ってくれてるし、
とても助かってるー」
結花のそんな言葉に、正隆は少し照れくさそうにしながら、
「ーいえー…生徒会もクラスのやつに押し付けられただけですしー」
俺なんか、全然ー」と、
そう言葉を口にすると、結花は「ふふー。そうなんだー?」と、
少し面白そうに笑ったー。
結花は、しっかり者で、少しカッコイイ感じもするような
クールな先輩だー。
見た目も”美人”という感じだし、それでいて、いつもクールに
何でもこなすその姿から、男女問わず慕われているー。
正隆も、そんな”森宮先輩”を慕う男子生徒の一人で
生徒会の書記になってから、結花と接するうちに、
すっかりとファンになってしまったー
そんな感じだー。
今日も、結花から突然頼まれた”今度の文化祭の話し合いに使う書類作り”を
頼まれて、それをこなしたところだったー。
「ーーーえへへー…あ、ごめんなさいー
こんな変な理由でー」
生徒会書記になった理由が”クラスメイトに押し付けられたから”だから、
という理由であることを、少し申し訳なさそうにしながら、
そう言葉を口にするー
「ー別に、謝ることはないでしょ。
理由はどうあれ、小野くんはしっかり頑張ってるんだし」
結花のそんな言葉に、
正隆は嬉しそうに「は、はいー」と返事をすると、
「先輩は、どうして副会長になったんですかー?」と、そう言葉を口にするー。
「ーわたし?
わたしは、少しでもみんなが良い学校生活を送れればと思ってー。
あとはー、そうー…。
何でも経験しておくと、将来、社会に出た時に
この経験が生きると思って、ねー」
結花がそんな言葉を口にすると、
正隆は「うわぁ…さすが先輩ー…俺なんかとは比べ物になりませんねー」と、
憧れの眼差しを向けると、
「あ、すみませんー。色々話してしまってー」と、そう言葉を口にするー。
「ーーううん。わたしは生徒会室を片付けてから帰るからー、
ーお疲れ様ー」
結花のそんな言葉に、正隆は頭を下げながら立ち去っていくと、
一人、生徒会室に残された結花が
大きくため息をついたー
「ーーは~~~どうしよう~~」
クールな雰囲気が急に消え失せて、声の雰囲気まで変わるー。
「ーーわたしってば、バカバカバカバカ!」
頭をぽかぽかと叩く結花ー。
急に正隆にプリント作りを頼んでしまったのはー、
”結花がうっかりと忘れていた”からー。
しかも、慌てて家で作ろうとしたら、
文化祭の案内を作るのに必要な下書きのようなものを
学校に置いてきてしまったことを思い出し、
家の中で一人悲鳴を上げて、
仕方がなく、後輩の正隆にお願いしたのだー。
「ーーー…はぁ~…
我ながら寒気がするー」
さらに、結花は生徒会室の片づけをしながら、
そう言葉を口にするー。
結花が生徒会副会長になった理由はー、
正隆に語ったような理由ではないー。
結花も、小さい頃から結花のことを知る友達に
”副会長”を押し付けられたのだー。
同じクラスの亜輝菜(あきな)は、結花のことを
小さい頃から知る幼馴染で
”結花の本当の姿”も知っているー
結花はー、
見た目や顔立ちから、どうしてもクールなイメージを抱かれがちで、
人前ではボロを出さないように、口数を少し少な目
穏やかな雰囲気を保っていることで、
完全に”クールで何でもできるお姉さん”的なイメージを周囲から
抱かれているー。
が、本当の結花は、全然違うー
「いたっ!」
机に躓いて、生徒会室に転倒する結花ー。
「いたたたたたた…」
本当の彼女は、とにかく”ドジ”だったー。
「ーわたし、全然クールじゃないし!!!」
自分で自分にツッコミを入れるかのようにそう叫ぶと、
「も~~~…わたしに副会長なんて無理だよ~
こんなそそっかしくてドタバタしてて、
ミスばっかするわたしになんて~」
と、一人、そうボソボソと言葉を口にしていると、
突然、生徒会室の扉が開いたー
「ーー!!! あら、小野くんじゃないー」
結花は、突然、いつものクールな雰囲気に戻ると、
戻って来た正隆にそんな言葉を口にするー。
正隆は「えー…あ、すみませんー忘れ物をしてー」と、
照れくさそうに言うと、生徒会室に置いたままの筆記用具を回収するー
「ふふー…気を付けてね」
穏やかにそう言い放つ結花ー
「はい!ありがとうございます」
正隆が、そんな言葉を口にして、今度こそ立ち去っていくとー、
結花はまた「は~~~~」と、大きくため息をついたー。
人のことは言えないー。
いやーーー
”小野くんより、遥かに酷い忘れ物してるのにー
お姉さんぶっちゃってー
わたしのバカ!”
そう内心で言葉を口にすると、
”わたしなんか、今日下着忘れちゃってノーブラなのに…”
と、心の中でため息をついたー。
本来の彼女は、とてもドジで、そそっかしくて、
奇妙な言動も繰り返すー、そんな子ー。
しかし、兄の学(まなぶ)から
”結花は黙ってれば、クールな感じに見えるのになぁ”と、
言われてから、ボロを出さないように、余計なことを
喋らず、クールな振る舞いを続けているー。
「ーーーって、あっ…!」
考え事をしながら歩いていた結花は”生徒会室の鍵、閉め忘れちゃった!”と、
慌ててそのまま引き返すのだったー
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そんな、結花のー”本当の姿”を知らず、
”森宮先輩”に憧れている正隆は、
今日は、生徒会の一員として、文化祭の会場準備の手伝いをしていたー。
「ーうん。お願い」
クールな雰囲気で結花が、後輩に的確な指示を出していくー
”慌てたりしなければ、頭の回転は速い”結花は、
余計な行動をしたり、色々おしゃべりしたりしなければ、
本当に頼れるお姉さん的存在に見えるー。
「ーあ、先輩!俺の作業も終わりましたー!
次はどうすれば?」
正隆が、次の作業を確認するために結花に話しかけると、
結花は「あー、小野くんはー… 次はあっちの看板の設置を手伝ってあげてー」と、
的確な判断を下していくー。
「ー分かりました!」
正隆は、嬉しそうにそう返事をすると走り去っていくー。
がーーーー
そんな様子を不満そうに見つめる子の姿があったー。
「ーーみんな、あの子ばっかり…」
生徒会会長の、花園 愛(はなぞの あい)ー。
彼女は”お金持ちのお嬢様”でとても、ワガママな性格ー。
けれど、その見た目と、男子に色目を使って
会長の座を手に入れた人物ー。
しかし、そんな愛と、立派な振る舞い…に見える結花には
明確な”差”が出来ていたー。
後輩たちのほとんどが、いつもいつも”副会長”である結花に
判断を仰ぐのだー。
「ーーー許せませんわー…」
愛は悔しそうにそう呟くと、イライラした様子で
一人、結花のほうを見つめたー。
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その日の帰りー。
帰りの作業を終えて、生徒会室から出て来た
副会長の結花と正隆は、少し雑談をしながら、
廊下を歩いていたー。
普段は、正隆が先に帰ることが多いものの、
今日は手伝いが長引いて、結局一番最後ー、
結花と共に生徒会室を出ることになり、
喋りながら、廊下を歩いているー。
「ーーーふふ…小野くんはよく頑張ってると思うよー」
結花は、”ボロ”を出さないように、
穏やかな振る舞いを続けるー。
「ーーありがとうございますー」
正隆は照れくさそうに頭を下げるー。
正隆は、結花のことが”好き”だー。
結花はそれに全く気付いていないものの、
こうして、”少し話せるだけ”でも嬉しかったー。
”ーー…いざ、雑談するとなると、
ボロが出ちゃいそうで、何を話していいか困っちゃうなぁ…
でもでも、わたしが沈黙してると、小野くん、
気にすると思うしー”
”表向きの顔”とは裏腹に、結花はそんなことを考えるー。
”ーー先輩に嫌われるような話をしたり、反応しないように気を付けないとー…
いやー、でも先輩、さっきからなんかたまに黙ってるような気がするし、
ホントはさっさと一人で帰りたいのかもー?”
正隆も、そんな風に考えながら口を開こうとした
その時だったー。
背後から、”音”がしたー。
正隆が振り返ると同時に、結花も背後を振り返るー。
するとそこには、
結花めがけて、バスケットボールが間近に迫っていたー。
「ーあ、危ない!」
正隆が慌てて、結花の手を引っ張るー。
がー、ボールが先輩に当たらないようにと、
咄嗟に腕を引っ張ったために、ボールは回避できたものの、
そのまま勢い余って、
結花を引っ張った正隆も、引っ張られた結花も、
階段からそのまま転がり落ちてしまうー。
「きゃっ!?」
「ぐえっ!?」
転落したまま、そのまま意識を失った様子の二人ー
「ーチッ…何なのよー。
ボールを当てようとしただけなのにー…
勝手に転がり落ちて…
これで大けがでもしてたら、わたしが悪者じゃないー。
冗談じゃないわ」
結花めがけてボールを物陰から投げつけた生徒会長の愛は、
想定外の結果になったことに、
表情を歪めながら、そのまま転倒した二人に声を掛けないまま、
立ち去って行ったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー…ぅ」
身体を起こし、周囲を見渡すとそこは保健室だったー。
いつの間にか、保健室に運び込まれたということだろうかー。
”そ…そうだ…小野くんはー!?”
そんなことを思いながら、結花は立ち上がると、
カーテンで隠れている隣のベッドがあるスペースの方に
入っていきー、
そして、驚きの声をあげたー
「ふっふええええええええ!?!?わ、わた、わたしが、寝てるー!?」
保健室の隣のベッドには”結花”自身が寝ていたのだー。
驚いて尻餅をついてしまう結花ー。
その口からは”男”の声が出ているものの、
慌てている結花は、そんなことにも気付かず、
困惑の表情を浮かべるー。
「ーわたしがここにいるのに、わたしが寝てるままってことはー…」
結花は、そう呟くとー、
「ーわ、わ、わ、わたし、死んじゃって幽霊にー!?」
とー、青ざめた様子で叫んだー。
実際にはー…
そうでなないー。
階段から転落したはずみで、結花と正隆の身体が
入れ替わってしまったー…
そのため、今、結花は”正隆”の身体になっている状態ー。
しかし、慌てている正隆(結花)は、まだそのことに気付かず、
自分の口から”男の声”が出ていることにも気付かずー、
目の前で、まだ目を覚ましていない結花(正隆)を見て、
”わたしが目の前で寝てる?”と、自分は死んで幽霊になってしまったのだと、
半分パニックになりながら、そう判断していたー。
その時だったー。
他の先生と相談するため、一時的に保健室を離れていた
保健室の先生が、保健室に戻って来るー。
ちょうど、正隆(結花)が、今立っている場所は、
保健室の入口から死角になっていて、
保健室の先生は、正隆(結花)が目を覚ましたことには
まだ気づいていない状態ー。
「ーーー!」
”誰かが入って来た”ということに気付いた正隆(結花)は、
少し表情を歪めながらも
”わ、わたしが幽霊になっちゃったこと、誰かに伝えなくちゃー”と、
パニック気味に、頭の中でそう考えるー。
”そ、そうだー。幽霊って確かー、
そのー…生きてる人に取り憑いたりできたよねー?”
漫画とか、アニメとか、そういう世界の話でしかないのに、
そんなことを考えた正隆(結花)は、
バッと飛び出すー。
”あ、保健室の先生ー…”
保健室に入って来たのがー、
”美人のお姉さん”という感じの保健室の先生であることを確認すると、
正隆(結花)は「ーー身体、借りますー!ごめんなさいー!」と、
叫びながら、保健室の先生に突進していくー
「ーーえっ!?小野くんー!?」
保健室の先生が、正隆(結花)の言葉に驚いて声を上げるー
「ーーーえっ!?幽霊なのに、見えてるのー!?えっ!?」
正隆(結花)は、そう叫ぶも、既に時遅くー、
保健室の先生と正面衝突してしまったー。
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やがてー…
結花(正隆)も目を覚まし、
「お、俺が先輩にー!?」と、顔を真っ赤にしながら
状況を把握するー。
正隆(結花)も、
”そういえば、声がずっと小野くんのだったのに、何で気付かなかったんだろう”と、
内心で苦笑いしながらも、ようやく状況を把握しー、
二人は、保健室の先生に事情を説明するのだったー。
②へ続く
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今月最初のお話は入れ替わりモノデス~!
これから、クールな先輩の本当の姿を
知っていくことに…なっちゃうかもですネ~!
続きはまた明日デス!
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