とある目的を果たすためー、
彼はその場所にやってきていたー。
そう、その目的とは…
”意中のプロゴルファーに憑依すること”だったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーくっそ~…僕を馬鹿にしやがってー」
巨体の男が、家の中で怒りの形相を浮かべているー。
彼の名は、大林 庄五郎(おおばやし しょうごろう)ー
彼は、ゴルフが趣味だったー。
自分でする方も、観戦する方も、だー。
だがー、
彼は”人の迷惑を考えない自分勝手な男”だったー。
30代後半になった今でも、小さい頃からのその性格は
変わらず、ついにー、プロゴルフの試合から”出禁”になってしまったー。
その出禁になった理由がー、
”女子プロゴルファーに迷惑行為を繰り返したこと”ー。
彼はー
最近人気の若手プロ女子ゴルファー、水神 姫梨(みずがみ ひめり)の
大ファンだったー。
しかし、庄五郎の”好き”は暴走し、
やがて、姫梨に連絡先を聞こうとしたり、
試合後の姫梨を尾行しようとしたり、
挙句の果てには、姫梨の家族を名乗って勝手に会場に侵入しようとしたり、
度を越した迷惑行為が目立つようになっていったー。
その結果ー、
彼は”出禁”となったのだー。
「ーーくっそ~~~…あいつ、
僕が今まで応援してやったからこそ、好成績を残せていたくせに、
その恩を忘れてこんな仕打ちをするなんてー」
出禁になってから既に2カ月ー。
庄五郎は毎日のように”水神 姫梨”への不平不満を
吐き出していたー。
”今まで好成績だったのは、自分のおかげ”だと、
心の底から思い込んでいる庄五郎は、
姫梨に裏切られたと、本当にそう思い込んでいて、
”出禁”は、あまりにも理不尽だと、そう感じていたー。
そんな、ある日ー。
”ーー水神 姫梨をお前の物にする方法がある”
自宅に届いた差出人不明の荷物ー
その中に、そんな手紙が入っていたー
「ーーーなんだこれー…」
庄五郎は表情を歪めるー。
「ー姫梨ちゃんを、僕のものにー?
ふざけやがってー
そんなこと、できるものかー。」
すぐに、庄五郎は悪戯だと思って
怒りの形相を浮かべるー。
だが、その手紙を破り捨てる直前ー、
庄五郎は、その手紙の下の方に書かれている文章を見てー、
破り捨てようとしていた手を止めたー
”お前が決断し、それを使う日ー。
その日こそ、お前が水神 姫梨そのものになる日だー”
と、
そう、書かれていたー
「ーーーーー」
そんな文章に、手紙を破り捨てるのをやめて、
しっかりと手紙を読み直す庄五郎ー。
そこにはー
”お前の魂を、同封した”憑依玉”の中に吹き込みー、
それを水神 姫梨に投げつければ、お前は水神 姫梨に
なることができる”と、そう書かれていたのだー
「ーーーー…マジかー」
そう思いながら、同封されていた
”透明なスーパーボール”のようなものを見つめるー。
「これが憑依玉ってか?」
庄五郎は「へっ!」と鼻で笑いながら、
「どうせ、悪戯だろ?」と、同封されていた手紙に
書かれていた通り、それに息を吐きかけてみるー。
するとー…
「ーー!?!?!?」
透明のスーパーボールのようなものの中に、
何かが浮かび上がってくるー
「な、な、なんだこれはー!?」
庄五郎は、思わずそう叫びながら、
透明なスーパーボールのようなものに浮かび上がってきたものを
見つめー、思わず「グロッ」と、叫んだー。
そうー
そこには、”自分の顔”が浮かび上がってきたのだー
自分の顔が嫌いな庄五郎は、
「しかしグロイな…僕の顔が浮かび上がったスーパーボールとか…」と、
呟きながらも
「いやー… え…??? まさかこれ…ホントに憑依できるのかー?」と、
ハッとしながら一人、興奮し始めるー。
「ーー……」
そして、しばらく考えるー。
”息を吹きかけただけで”自分の顔が浮かび上がるボール…
確かに、これはただのスーパーボールなどではなく、
”憑依玉”なのかもしれないー
そう思った庄五郎はニヤリと笑みを浮かべるー。
水神 姫梨は憎いがー、
今でも、水神 姫梨のことは好きでもあるー。
そんな水神姫梨に自分自身がなれるのだとしたらー
「ふへへへへへへー」
庄五郎は下品な笑みを浮かべると、
”そういえば、来週、大会があったなー”と、
不気味な笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌週ー。
水神 姫梨ら、若手のプロゴルファーたちが
その場に集結していたー。
今日、このゴルフ場では、若手を中心とした大会が
行われるー
その場にやってきた姫梨は、いつものように
笑みを振りまきながら、関係者たちに
挨拶をしていたー。
明るく、ファンサービスも欠かさない水神 姫梨ー。
若手ではトップ…と、いうほどの成績ではなかったものの、
そのい”注目度”はNo1と言えたー。
姫梨の注目度が高い理由がー
とにかく明るく、人に愛想を振りまくのが得意ー、
しかも容姿も可愛いこと…。
そのため、
”ゴルフ以外の部分”での人気も高く、
アイドル的な人気も併せ持っているのだー。
「今日はよろしくね!亜美菜(あみな)ちゃん!」
姫梨が、同じ大会に出場する、同じく若手のプロゴルファー・白崎 亜美菜(しらさき あみな)に、
そう挨拶をすると、
亜美菜は「あー、水神さんー。よろしくお願いしますー」と、ぺこりと頭を下げたー。
白崎 亜美菜は、水神 姫梨と同年齢の女子プロゴルファーで、
大人しい性格の美少女…という感じの風貌の持ち主。
ただし、人前に出るのが苦手なのか、
口数が少なく、試合以外で公の場に立つことを極端に苦手としているー。
しかしー、成績自体はそんな姫梨と互角ーいいや、互角以上の力を持っていて
ランキング上でも、大抵の場合、水神 姫梨よりも”上”にいるー。
「ーー今日は、負けないからね!」
そんな風に笑う姫梨に向かって、ぺこりと頭を下げた亜美菜ー。
そんなーーーー
ゴルフ場の外では、遠目に見えている姫梨の姿を見つめながら、
庄五郎が笑みを浮かべていたー。
「ククククー…今日から僕が水神 姫梨だー」
そう言いながら、持参した憑依玉を手にするー。
”憑依玉”を相手に接触させれば、
その人間に憑依できるのだというー。
ただし、注意点として、憑依玉を相手にぶつけた途端、
憑依玉自体を受信装置のような役割として使い、
自分の魂全てを相手に憑依させるため
”自分の身体はそのまま抜け殻になって、その場に倒れ込む”と、
そう書かれていたー。
「ーへへへへ…僕は、こんな僕の身体に未練はないからなー」
当然、庄五郎は、その注意点を理解した上で、
姫梨への憑依を画策しているー。
「ーーーしかし、距離があるなー」
ゴルフの試合から出禁を喰らっている庄五郎は、
残念ながら、このまま会場の中に入ることはできないー。
がー…
もちろん、それも計算して、あるものを持って来たー。
それは”ゴルフクラブ”だー。
庄五郎は、ゴルフがそれなりにうまいー。
この距離から、憑依玉をショットしー、
姫梨に憑依玉を当てるー。
そして、憑依するつもりなのだー。
ゴルフでは、1回でホールに球が入ると、
ホールインワンとなるー。
「ーークククー 水神 姫梨
お前にホールインワンしてやるぜ!」
庄五郎はそう叫ぶと、
笑みを浮かべながら、ゴルフ場の外のスペースで、一人、憑依玉を地面に置き、
ゴルフクラブを手にして構えたー。
もちろん、周囲の通行人から”やべぇ奴”扱いされていることは
伝わってくるものの、
どうせこの身体はもう捨てるのだから、と、
彼は全くそれを気に留めることなく、
そのまま、憑依玉をゴルフクラブで思いっきり、姫梨のいる方向に向かって
放ったー
「ーナイスショット!」
そう叫びながら、満足そうにドヤ顔をする庄五郎ー。
そして、数秒後ー、
庄五郎は、自分の意識が遠のいていくのを感じたー。
そうー
憑依玉が相手に当たれば、自分の身体から残る魂が全て抜けて
その身体に憑依するのだー
「ーぐふふふふ…僕のパラダイスがはじまるんだー」
庄五郎はそう呟きながら、その場に倒れ込んだー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーぁ」
ビクッと震えて、周囲を見渡すー。
そこはー
ゴルフ場の中ー
「ーーう…うへへ…やったー」
思わずニヤリと笑みを浮かべるー。
その声は”可愛らしい”声ー。
散々聞き飽きた、自分の声ではなく、
女子プロゴルファーの声が自分の口から
発されていたー。
そのことに、とてつもない興奮を感じながら
下を見つめると、
スカートと綺麗な生足が見えたー
「うへっー
へへへへっ…えへへへへへへへへ」
思わずニヤニヤしてしまうー。
こんなに綺麗な足が”自分の足”になるなんてー。
そう思っただけで、この場で欲望に狂ってしまいそうになるー。
がー、あまりニヤニヤしていたせいか、
周囲からは変な風に見えたのだろうー。
「ーーーどうしたの?」
と、声を掛けられて振り返ると、
そこにはーーー
「ーーぶわっ!?!? み、水神姫梨!?!?」
思わず、そう叫んでしまったー。
そうー
背後から声を掛けて来たのはー、
”憑依”する相手だったはずの水神姫梨だったのだー。
「ーーえっ…??」
姫梨は、突然呼び捨てで呼ばれたことや、
その驚きように、困惑の表情を浮かべながら、
「ー亜美菜ちゃん、大丈夫?」と、言葉を口にしたー
「ーーー亜美菜?」
”亜美菜”と呼ばれて庄五郎は、自分の身体を見下ろすー。
「ーー僕が、亜美菜?」
そう言いながら自分を指差すと、
水神姫梨は困惑の表情を浮かべながら
「ぼ、僕ー?」と、戸惑いを見せるー。
「ーーあ、亜美菜ちゃん、さっきから一人でニヤニヤしてたから、
どうしたのかなってー」
そう言いながら、心配そうな表情を浮かべると、
亜美菜は「ーーあ、あはっ!あははは な、な、なんでもないわよ!」と、
不自然な口調とポーズをしながらそう答えたー。
「ちょ、ちょっと急用を思い出したので、これで失礼しまぁ~す!」
慌てて、そう言い放ち、ゴルフクラブを手にしたまま
そのままダッシュすると、
これから大会が行われるはずだったゴルフ場を飛び出して、
そのまま近くの商業施設に駆け込んだー
”くそっ!僕のボール、水神姫梨じゃなくて、
白崎 亜美菜に当たっちまったみたいだー”
そうー
庄五郎が放ったショットは、
水神 姫梨ではなく、
近くにいた、同年代の女子プロゴルファー 白崎 亜美菜に
当たってしまい、
庄五郎は姫梨ではなく、亜美菜に憑依してしまったのだー
”ーーあれ、白崎 亜美菜じゃない?”
”ほんとだーなんでここに?”
”あの子、今日の大会に出てなかったっけ?”
商業施設内に、亜美菜が突然姿を現したことで、
ちょっとしたどよめきが起きるー
「ーー(へへーまぁいいかー。この子も可愛いしー
可愛い子なら、誰だっていいやー)」
亜美菜に憑依した庄五郎はそんなことを思いながら、
女子トイレに向かって歩くー
「あ!あの!サインをください!」
白崎 亜美菜のファンだろうかー。
小さな子が、親と一緒に近付いてきて、サインを求めて来るー。
「ーあ~ごめん!ちょっと邪魔!」
亜美菜の身体を早く楽しみたい庄五郎は、その子を振り払って、
そのまま無視して進むー。
背後でその子の泣き声が聞こえたものの、
”今の亜美菜”にはそんなことはお構いなしー
そのまま女子トイレにニヤニヤしながら入るとー、
「ーはぁぁ…大会前に大会を棄権させてこんなところに来ちゃうなんてー…」と、
興奮した様子で、そのまま個室へと飛び込んでいくのだったー。
②へ続く
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コメント
コロナに調子も、金曜日(土曜日は予約投稿なので影響なしデス!)までより
調子がよくなってきました~!
完成時間も、また金曜日までに比べると早く完成できるようになってきましたし、
あと1歩ですネ~!
完全に治れば、またいつも通りの時間(いつもはもうちょっと早い時間ですネ)に
更新できるようになるので、
もう数日ぐらいは、若干更新時間がいつもより遅いかもしれませんが、
のんびりと待っててくださるとうれしいデス~!
今日もありがとうございました~!
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