憑依で他人の身体を奪い、楽しむ男…
そんな男に目を付けられて、憑依されてしまった麻奈美は、
その男の”好み”に勝手に変えられてしまう…
そして…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
”ちょ、ちょっと!何してるの!?”
麻奈美の意識が叫ぶー。
「ー何って?髪を染めてるんだよー
見て分からないか?」
麻奈美がニヤニヤしながら言うー。
淡嶋 陣に憑依されてしまった麻奈美。
しかし、理由は分からないものの、
麻奈美の意識まで封じ込めることはできず、
こうして麻奈美の意識が、麻奈美を乗っ取った陣に
語り掛けることが出来る状態ー。
とは言えー…
どんなに叫んでも、その声は外には届かないし、
陣が麻奈美の身体で”すること”を勝手に
止めることはできず、
”ただ、憑依された自分を眺めていること”しか、できない状態に等しいー。
「ー女ってさー」
麻奈美が、自分の姿を鏡で見つめながら笑うー。
「ーホント、髪型もそうだし、メイクもそうだし、服装もそうだしー、
男よりも、すっげぇ大変身できて、楽しいよなー」
麻奈美のそんな言葉に、
麻奈美の意識は”わ、わたしの身体で勝手なことしないで!”と、叫ぶー。
「ーははは、無駄無駄。お前だけなんでこうやって意識が
残ったのかは分からないけど、どうせ何もできやしないんだからー、
”新しい大沼 麻奈美”に生まれ変わる姿をじっくり楽しみなよ」
麻奈美はそう言うと、「さて、と」と、
勝手に麻奈美の服をチェックし始めるー
「ははは~清楚な感じの服しか持ってねぇのか~
もっとこうー、せっかく綺麗な足してるんだから、
見せ付けてやれよー」
麻奈美はなおもニヤニヤしながらそう呟くー
”わ、わたしの趣味には合わないの!
なんか恥ずかしいし!”
麻奈美の意識のそんな言葉に、
「ーよぅし、じゃあ、このエロい足を見せ付ける格好をするとするか」と、
ネットで勝手に服を注文し始めるー
”な、なんでそうなるの!?”
「ー本人が絶対しないことをさせちゃうー。
それが、憑依の醍醐味だろ?」
麻奈美のそんな言葉に、
麻奈美の意識は”憑依の醍醐味なんて知らないし!っていうかわたしの身体返してよ!”と、
必死に叫ぶー。
「ーー嫌だねー。
でも、ほら、お前のおかけであの友達ー…幸恵ちゃんだったっけー?
あの子は助かったんだからさー」
麻奈美はそう言いながら、次々と服をネットの注文カゴに入れているー。
”ゆ…幸恵の身体でも変なことしたのー!?”
麻奈美の意識が、困惑しながらそう言い放つー。
「いいやー別に。
幸恵ちゃんに憑依したのは、お前に憑依する前日だしー、
あの女実家暮らしだったから、それで、より俺好みのお前に
引っ越ししようと思ってさ」
麻奈美の身体で、陣がそう言うと、
「あぁ、まぁ、憑依した日の夜、幸恵ちゃんの身体でイったりはしたけどー」
と、笑いながら呟くー
”~~~~~~最低…”
麻奈美の意識が心底軽蔑するかのように言うと、
「ーまぁまぁ、幸恵ちゃんは今頃、正気に戻ってるはずだし、
お前のおかげなんだからー、誇りに思えよ」
陣は、麻奈美の身体でニヤニヤしながらそう言葉を口にしたー。
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それから1週間ー
「ーへへへへ…すげぇ…まるで別人だぜー」
鏡の前で嬉しそうにポーズを決める麻奈美ー。
髪型も、髪の色も、メイクの雰囲気も、
服装も、何もかもが違うー。
まるで別人にしか見えないそんな麻奈美の姿に、
麻奈美に憑依した陣は興奮していたー。
”ーーな、なにこれ…!こんなのわたしじゃないよ!”
麻奈美の意識は、憑依されてから1週間が経過しても、
諦めることなく、連日、頭の中から言葉をかけ続けていたー。
「ーへへへ それがいいんじゃねぇかー
ほら、こういう短いスカートだと、お前の美脚も映えるだろー?」
麻奈美が得意気に、自分の足を触りながら言うと、
”ー映えなくていいの!早くわたしの身体を返して!”と、
これで何度目だか分からない言葉を口にするー。
「ーーーーー」
そんな麻奈美本人の意識を無視して、
自信に満ち溢れた表情で、自分の美貌を堪能する麻奈美ー
”ちょっと!いい加減にしてよ!!返してってば!”
麻奈美の意識の叫びを無視して、
茶色に染まった自分の髪をペロリと舐める麻奈美ー
「ーーははは、うるせぇなぁ~…」
麻奈美はそう呟きながら、
「あ、そうだー」と、言葉を口にするー
「お前さ、お兄ちゃんいるんだったよな?」
麻奈美のそんな言葉に、
”いるけど… お兄ちゃんに変なことしないで”と、
麻奈美の意識はそう言葉を口にするー。
麻奈美には2歳年上の兄、雅人がいるー。
雅人も同じく大学生で、別の場所で一人暮らしをしていて、
時々、連絡を取り合ったり、行き来したりすることもある間柄だー。
「ーへへへーお前のお兄ちゃんにも”新しい麻奈美”を見せてやるかー」
麻奈美のそんな言葉に、
麻奈美本人の意識は”ふ、ふざけないで!絶対にやめて”と、
繰り返し叫ぶー
「へへ…”他の女”のフリしてお兄ちゃんを誘惑したらー、
お兄ちゃん、どんな反応するかなぁ?」
麻奈美がニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべるー。
”大変身”を遂げた麻奈美が、兄の雅人に会いに行ってー、
果たして雅人は”目の前にいるのが麻奈美だと”気づけるのかどうかー。
そんな妄想をしながら、麻奈美はニヤニヤが止まらない、という様子で
鏡を見つめるー
「ーーーへへ、じゃあ、そうだー。
俺と”ゲーム”をしないかー?」
麻奈美がニヤニヤしたままそう言い放つ。
”げ、ゲーム…?”
麻奈美の意識が困惑の言葉を口にするー
「今までいろんなやつの身体を乗っ取って来たからさー、
単にエロいことしたり、本人がやらないようなことをしたりするのはさ、
もうー、なんていうか、飽きてはないんだけど、
慣れちまってるわけよー。
でも、お前は俺が今まで憑依してきた中で初めて
”こうやって俺と会話”することが出来てるー。
滅茶苦茶貴重な経験だー。
だから、せっかくだし、お前でしかできない”遊び”をしようと思ってさ」
麻奈美がそう言うと、
麻奈美の意識は”ーー何をさせるつもりなの!?”と
怒りの言葉を口にするー。
「ーー”お前の身体”を大変身させて、俺はお前のお兄ちゃんに会いに行くー。
でーー…お前のお兄ちゃんが”俺が麻奈美”だと気付けたら、
お前の勝ちー
逆に気付かなかったら、俺の勝ちー。」
そこまで言うと麻奈美は言葉を付け加えたー
「お前が勝ったら、お前の身体を返してやるー。
俺は”乗り換え”できるし、別にお前に拘る必要もないからなー」
その言葉に、
麻奈美の意識は微かに希望を感じながら
”ーーほ、本当?”と、聞き返すー。
「あぁ、約束は守るー。嘘はつかねぇよー。
さっきも言った通り、俺はいくらでも乗り換えできるから、
嘘ついてまで、お前の身体に居座る理由もねぇ」
麻奈美の声でそう言い放つと、
麻奈美の意識は”でも…それは、また他の誰かが巻き込まれるってことだよねー…?”と、
不安そうに呟くー
「ククー まぁ、それはそうだがー
それはお前の気にすることじゃない
俺を止めるにしても、自分の身体を取り戻さなくちゃ、何もできねぇだろ?」
そう言われた麻奈美の意識は”それはそうだけどー…”と、呟いてから
ふと、ある不安が浮かぶー
”ーーー…ゲームってことは、わたしが負けたら、…何かあるってことだよね?”
そんな確認をする麻奈美の意識ー
”勝てば身体を返す”
と言うのだから、当然、負けた場合何か条件があると考えるのが普通だ。
「ククー。まぁなー。
お前のお兄ちゃんが、目の前にいるのが妹だと気付かなかった場合ー…
俺は、お前の身体でお兄ちゃんを誘惑して、そのままホテルに行くー
クククククー
お兄ちゃんと楽しませてもらうことにするぜー
妹相手に気付かずにヤッちまうなんてー、たまんねぇだろ?」
麻奈美を乗っ取っている陣の、そんな悪魔のような言葉に、
麻奈美の意識は”だ、ダメ!絶対ダメ!”と、叫ぶー。
がー、否定の言葉を頭の中に響かせることはできても、
身体を動かすことはできないし、当然言葉を外に発することもできないー。
「ーへへへー
大丈夫だって、お前のお兄ちゃんが、”気づけば”いいんだからー。」
麻奈美はそれだけ言うと、ニヤニヤしたまま、
「ーうん!じゃあそのゲーム、やろっ!」と、麻奈美のフリをした口調で
そう言い放つー
”ちょっと!ねぇ!やめてってば!”
麻奈美の意識は、必死に陣の行動をやめさせようとするー。
しかし、陣はそれを無視して、麻奈美の身体をさらに”アレンジ”
し始めると、
「ーお兄ちゃん、わたしだって気付くかなぁ~」と、
笑みを浮かべ始めたー。
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数日後ー
髪の色も、髪型も、メイクの雰囲気も、服装も、
声の出し方も、何もかもを変えた麻奈美が、
兄の雅人に会うために、雅人が住んでいる家の近くに
やってきえちたー。
マスクをしている麻奈美の姿は、
もはや”普段の麻奈美を知る人間”でも、
見た目だけでは、麻奈美であると判別することは困難だー。
「ーークククー、お前のお兄ちゃん、気付くかなぁ?」
麻奈美がそう言うと、
麻奈美の意識は、返事をせずに、
ひたすらに祈っていたー
”お兄ちゃん、お願いだから気付いてー”
とー。
兄の雅人の
バイトの日程を予め調べて置いた麻奈美は、土曜日の今日ー、
バイト帰りの雅人に接触して、雅人と話をするつもりだったー。
雅人が”目の前にいるのが妹の麻奈美”だと気付いた場合、
その時点で、麻奈美に憑依している陣の負けー。
そのまま麻奈美の身体を解放する、という約束だー。
だがー、兄の雅人は気付かなかった場合、
麻奈美に憑依している陣は、そのまま麻奈美の身体で、
雅人を誘惑して、兄妹の欲望の時間を始めようと
画策していたー。
全ての命運は、兄・雅人が握っている状態と言ってもいいー。
”お兄ちゃんなら、絶対気付いてくれるー”
麻奈美の意識は、兄の雅人のことを、そう信じながら、
”お兄ちゃんがわたしだって気付いたら、すぐにわたしから出て行って”
と、陣に対して強い言葉を投げかけるー。
「ーへへへ…分かってる分かってるー。そういう約束は
守るから心配すんなってー
まぁ、俺は負ける気はないからなー
見ろよ、この姿ー
新しい麻奈美って感じがして興奮するだろ?」
麻奈美は、変わり果てた自分に酔いしれながら、
バイト帰りの兄・雅人を待つー。
そして、待つこと数分ー
ついに、兄の雅人が改札から姿を現すのが見えたー。
一見すると優しそうに見えるものの、
それ故に、人に騙されやすそうなお人好しなタイプに見える感じの雅人ー。
その見た目の印象通りで、
よく、お人好しすぎる故に、小さなことで騙されたりしていることは
よくあるー、雅人はそんなお兄ちゃんだったー。
麻奈美はニヤッと笑みを浮かべると、
雅人に向かって歩き始めるー。
「安心しろー。お前のお兄ちゃんがこの身体が”麻奈美”だって気付ければ、
すぐにお前の身体を返してやるー」
麻奈美に憑依した陣は、そんな風に言葉を口にすると、
「でも」と、言葉をさらに続けるー。
「ーお前のお兄ちゃんが気付かなきゃ、この身体は返さないー」
とー。
”ーーー…お兄ちゃんー”
麻奈美には、もう兄の雅人がすぐに自分であると
気付いてくれることを祈ることしかできなかったー。
「ーーあの!」
”変わり果てた様子の麻奈美”が、兄の雅人に声を掛けるー。
立ち止まって振り返った雅人ー
”お願い、お兄ちゃんー!”
心の中でそう願う麻奈美ー。
だがー、麻奈美の姿を見つめると、
雅人は「あ、はいー…俺ですか?」と、
明らかに他人行儀な反応を見せるのだったー…
③へ続く
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次回が最終回デス~!
果たして、大変身してしまった妹に
お兄ちゃんは気づけるのでしょうか~?
その答えは、明日デス!
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