<皮>染め上げるその日まで③~依頼完了~(完)

皮にして乗っ取った相手を
”汚染”するまでの1ヵ月ー。

乗っ取った身体の家族にバレないように
生活を続けるその男の先に待つ未来はー…?

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架純を皮にして乗っ取ってから
間もなく1か月ー。

架純は、妹の奈美と楽しそうに談笑していたー。

何度か危ない場面もあったものの、
こうして1か月間、家族に”極端に怪しまれることなく”
やってくることが出来たー。

妹の奈美にボンテージ姿を見られてしまった時の他にも、
お風呂で喘いでいたのを母親に聞かれそうになってしまった時やー、
ご飯中に変な妄想をして、興奮してしまった時ー、
記憶の読み取りが不明瞭な部分があって、変な受け答えをしてしまった時などなどー、
ヒヤッとする場面は多数あったー。

ただー…
これは、今回に限ったことではないー。
今までにも、色々な依頼を受けては来たが、
”怪しまれる”ような行動をしてしまう場面は多数あったー。

しかし、
一般人は”人が着ぐるみのように着られて、乗っ取られている”などという
考えにたどり着くことは、普通はないー。
あまりにも非現実的すぎるからだー。

だから、”少しおかしい”と思った程度では、
”お前は誰だ!?”と、いうことにはならないのだー。

「ーーも~やめてよお姉ちゃん~」
奈美が笑いながら言うー。

「ーふふふ…だって奈美、可愛いんだもんー」
激しく興奮している架純の身体ー。
しかし、それをギリギリのところで抑えながら、
奈美のツインテールの髪を触るー。

いつもー、
”汚染”の依頼の時には、1か月が近付くと、
竜則は大胆になるー。

”少し怪しまれても”
もう、手遅れだからだー。
既に、架純は汚染されているー。
正気に戻った時には、依頼人の希望通りー
”親を困らせる悪い女”に変わり果てているー。
もう、元には戻らないのだー。

「ーーーーー」
奈美の首筋をペロリと舐めたくなってしまう衝動を抑えながら
架純は、奈美の耳元で囁くー

「お姉ちゃんー…奈美になりたいなー♡」
とー。

「ーえッ…えぇっ!?」
奈美が困惑の表情で、架純のほうを見るー

「ーな~んちゃって」
笑う架純ー。

「ーも~!急に変なこと言ってドキドキさせちゃだめ~!」
奈美が笑いながら言うと、架純は「ごめんごめん~」と、
そのまま奈美から離れるー。

そして、暫く雑談を続けたあと、
自分の部屋に向かって歩き出した架純は、
不気味な笑みを浮かべていたー。

「ー”依頼”が終わったら、奈美ちゃんになるからねー」
とー。

”この依頼”が終わったら、
今度はプライベートで、奈美の身体を楽しむのだー。

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架純を乗っ取ってから1か月が経過したー。

毎晩のように、家族に対する憎しみの言葉を口にしたりー、
”真面目にやるのがバカらしい”と、言葉を刻み付けたりー、
そして、”依頼人”の希望通り、依頼人たちを崇拝するようなことも
何度も口にして、それを刻み付けておいたー

「ーー明日からは、新しい架純ちゃんになるんだー」
架純はそう呟くと、翌朝の土曜日、”依頼人”と会う約束をしているため、
その準備を始めるー。

最後に、依頼人に依頼の完了を報告してー、
この仕事は終了だー。

仕事が終わったら、少し休んで、架純の妹・奈美を乗っ取ろうと思うー。

奈美の身体でどのぐらいの期間、遊ぶかどうかは
まだ決めていないが、当面、あのかわいいボディを着て
お楽しみの日々を送ろうと、竜則は考えているー。

そして、翌朝ー。

例のサングラスの女と合流すると、
架純の身体のまま「依頼は完了しました」と、
サングラスの女に告げたー。

元いじめっ子の女・美姫と麻紀が控えるその場所で、
架純は後払いの500万円を確認させると、
今日はバニーガール姿の麻紀が「確かに確認しました」と、
架純に告げるー。

「ーーご苦労」
架純の身体で、麻紀にキスをすると、
「女同士のキスって興奮するよなー」と、麻紀に対して言い放つー

「はいーとてもー」
嬉しそうな麻紀を見て、架純は満足そうに頷くと、
「ーでは、この女を解放しますよー。
 まぁ、安心してくださいー。
 さっきも伝えた通り、もう、そちらの言いなりですし、
 何も指示しなくても、家で親を困らせるために動くはずです
と、サングラスの女に言い放ったー。

「ーーそうか」
サングラスの女は満足そうにそう言い放つと、
架純の”皮”を、竜則は脱ぎ始めたー。

脱ぎ捨てた架純の皮に手をかざしー、
架純を元に戻すー。

「ーーえ……」
周囲を見渡す架純ー。

「ーーー」
サングラスの女は、そんな架純を見つめると、
「ーー胸を揉め」と、いきなり命令を下したー

「え…?あ、はい!すぐにー」
すっかり、”汚染”されている架純は、
何の疑いもなく、サングラスの女、竜則、麻紀、美姫の前で
胸を揉み始めるー。

「ーこの場で、イってみせろ」
サングラスの女がそう言うと、架純は
自分の身体を激しく弄び始め、その場で気持ちよさそうに
喘ぎ始めるー。

そんな光景を見つめながら、サングラスの女は
「確かに。汚染を確認したー」と、頷くと、
竜則のほうを見つめたー。

「ーーそれで、あなたのこと、教えてくれる約束ではー?」
竜則が笑いながらそう言うと、
サングラスの女は少しだけ笑ったー。

「ーーーーーー」
片方の目だけ不気味に赤く染まっている女ー。

サングラスを外したその女は、
「ー身体を乗っ取る方法には、色々あるー」と、だけ呟くー。

「ーーー…へぇ、じゃあ、あなたは、”中身”は別人ということですかね?」
竜則が笑いながら言うと、
サングラスの女は、自分の赤い目を指差したー。

「ーーこれが”俺の目”ー」
サングラスの女はそう言うと、
「ー自分の目をこの女に移植して、この身体を乗っ取ったー」と、だけ
説明したー。

「ーへぇぇ…そんなこともできるんですね」
竜則は感心した様子で言うと、
「ーまぁ、”皮にした相手を乗っ取る方が”手っ取り早いだろうし、
 便利ではあるだろうー」と、
サングラスの女は、再びサングラスをかけると言葉を口にするー。

確かに、自分の目玉をこの女に移植したということは、
少なくとも、この女を乗っ取っている男の”元の身体”は既に
無事ではなさそうな感じがするし、
移植するときの苦痛もそれなりにあっただろうー。

そして、竜則のように”好きなように身体を乗り換える”と、
いうことは、なかなか難しそうだー。

多少、興味はあったものの、
それ以上の詮索はやめておいた方が良さそうだと判断した竜則は
営業モードに戻って、
「ーーーご利用ありがとうございましたー」
と、丁寧な言葉を口にする。

そんな言葉に、
サングラスの女は「あぁ」と、だけ答えて、
イったばかりの架純を呼ぶと、
「ーーでは、この女は貰っていくぞー」と、
そのまま事務所の外へと出て行ったー。

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「ククククー」

サングラスの女が所属する”組織”の目的はー、
”架純の父親が経営している会社”にあるー。

こうして、経営者や有力者の子を汚染することで、
そういった人間を意のままに支配したり、
会社を譲るように差し向けたりするのだー。

”子”は、最愛の存在であり、最大の弱点となるー。

「ーーでは、我らのためにお前には働いてもらうぞー」
サングラスの女がそう言うと、架純は「もちろんですー」と
嬉しそうに頷いたー

正気に戻った架純ー
けれどもう、その架純は、元の架純ではないー。

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1週間後ー。

竜則は、”元いじめっ子”の側近・美姫と
キスをしながら、笑みを浮かべるー。

「ーどけ」
急にキスに飽きたのか、美姫を雑に押しのけると、
竜則は「そろそろ、奈美ちゃんを乗っ取りに行くか」と、
笑みを浮かべるー。

架純を着ている間に入った”簡単な依頼”も
片付け終えた竜則は、
架純を乗っ取っている時に気に入った、妹の奈美を
乗っ取りに行くことを決意するー。

”今頃、奈美ちゃんも悲しんでるかもなぁ…
 あのグラサンの女が何をするつもりかは知らねぇけど、
 架純ちゃんは、悪いことばっかりしてるだろうしー”

そう思いながら、竜則は「留守を頼むぞ」と、
美姫・麻紀の二人に命令すると、
二人は丁寧に頭を下げるー。

そのまま自分の隠れ家から出た竜則は、
1週間ぶりに”1か月過ごした我が家”に向かって
歩き始めるー。

「ーーククク…
 確か今日は両親とも不在だったからなー」
竜則は笑みを浮かべるー。

架純を染め終えたら妹の奈美を乗っ取ることは
既に決めていたー。
そのため、両親の仕事の日程を予め確認しておいたのだー

家の合鍵も架純を乗っ取っている間に、勝手に作っておいたしー、
これで中に入り、奈美を乗っ取ることが出来るー。

「ーーー…ただいま」
奈美は、少し元気が無さそうな感じにも見えたが、
案外、1週間前までと変わらない様子だー。

ただ、少し元気がないようにも見えるー
あの様子だと、姉の架純には”異変”が起きているのだろうー。

だが、そんなことはどうでもいいー。
今度は、自分があのツインテールの妹・奈美になり、
”自分自身で染め上げたお姉ちゃん”と、一緒に暮らすのだからー。

鍵を開けて、中に入るー。

帰宅したばかりの奈美の方に歩いていくと、
竜則は笑みを浮かべたー。

奈美もすぐに竜則に気付いて振り返るー

「えっ…だ、だ、誰!?」
奈美のそんな言葉に、ニヤッと笑みを浮かべながら、
竜則は奈美に手をかざそうとしたーー

がーー
その時だったー。

背後から突然腕を掴まれて、
投げ飛ばされる竜則ー。

「ーー!?!?!?!?!?」
竜則の身体が、リビングのソファーに叩きつけられて
竜則は驚きの表情を浮かべるー。

慌てて”自分を投げ飛ばした相手”のほうを見ると、
そこには、竜則自身が”染め上げた”姉・架純の姿があったー。

「ーーーーー…なっー」
竜則は、よろよろと立ち上がると、
架純のほうを見つめたー。

「ーーへへっ…随分と歪んじまったじゃないかー」
”不良少女”のような見た目になってしまった架純を見ながら
興奮する竜則ー。

しかし、架純は言い放ったー

「奈美に手を出すやつは、許さないからー」
とー。

強い殺意に満ちた目ー。

竜則は表情を歪めながら、架純のほうを見るー。

奈美は悲鳴を上げながら2階の方に逃げ込んでいくー。

”チッー…
 まさか架純ちゃんにジャマされるとはー”

仮に奈美を乗っ取るところを見られたとしても、
竜則は、架純を乗っ取っていた1か月間で、
架純に”非現実的なことは信じない”ように、
意思を染め上げておいたため、
何とでも誤魔化すことができる自信があったー。

だが、こんな風に、邪魔をされるとは思わなかったー

「ーーー奈美はわたしの可愛い可愛い妹ー…
 奈美は、わたしだけのものー」

架純がクスクス笑いながら言うー。

「ーー!」
その言葉に、竜則は表情を引きつらせるー。

(チッー…奈美ちゃんのこと、可愛いとか思いすぎて、
 この女にも影響を与えちまったかー)

着ている間、強く念じたことや、強く想像したことが、
その本人にも強い影響を与えるー。

それを利用して、乗っ取った相手を染め上げるー。

がー…
意図せず、染まってしまうことが時々あるー。

架純を乗っ取っている間、妹の奈美をあまりにも可愛がりすぎたことで、
架純は妹の奈美を”狂気的にまで愛する”ようになってしまっていたー。

「ーーーへへっー…まぁ、いいやー
 こうなったら、力づくでー」

竜則は笑いながら、架純のほうを見つめると、
架純は「ー奈美を怖がらせるならー殺すから」と、冷たく言い放ったー

”悪いことが大好き”
”人を傷つけることが大好き”
”真面目にやるなんてばからしいー”

竜則から、色々な悪意を植え付けられていた架純は
容赦なく、そんな言葉を口にすると、キッチンの包丁を手に、
竜則に襲い掛かって来たー。

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1階から争う音が聞こえるー。
奈美は、自分の部屋で泣きながら蹲って震えていたー。

だがー
やがて、1階から争う音は無くなるー。

「ーーーーー」
奈美が震えながら部屋の入口のほうを見つめるー。

”誰か”が階段を上って来る音ー。

震える奈美ー。

そしてーー
奈美の部屋の扉が開いたーー

そこには、血まみれの包丁を手にした架純ー。

「ーーお…お…お、お姉ちゃんー…?」
震えながらそう呟く奈美ー。

架純は、笑みを浮かべながら
「奈美のことは、わたしがず~~~っと、守ってあげるからねー」と、
静かに言葉を口にするー。

「ーーあ、あ、あの人はー?」
奈美が涙目で言うと、
架純は「殺しちゃった♡」と、クスクス笑いながら言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーふん」

サングラスの女は、”架純”が、人を殺めたことを知るー。

「ーー予定とは違うが、これで父親の会社は大混乱に陥るだろうー。
 となれば、買収するのはたやすいー」

サングラスの女はそう呟きながら、
静かに笑みを浮かべると、
竜則の死にはまるで興味がなさそうに、
その場所を後にしたー。

おわり

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コメント

皮にした人間を、時間をかけて染め上げていくお話でした~★

側近にされてしまっていた元いじめっ子二人が、
このあとどうなってしまうのか、
書き終えたあと、私自身も少し気になっちゃいました~笑

今日もお読み下さり感謝デス!★!

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