”相手を皮にして着続けること”で、
その相手の精神を汚染することができる男ー。
しかし、完全に相手を汚染するには”1か月の間、続けてその人間を着続ける”
必要があったー。
そんな男に、今回舞い込んだ仕事とはー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーねぇねぇお姉ちゃんー
わたし、友達から”生徒会副会長やりなよ~”って
言われてるんだけど、どうすればいいかな~?」
今年、高校に入学したばかりの川松 奈美(かわまつ なみ)が、
1歳年上の姉・架純(かすみ)に向かってそんな言葉を口にするー。
「ーえ~?生徒会?」
架純がそう言うと、
奈美は「お姉ちゃん、去年生徒会の副会長やってたよね?
だから、どんな仕事するのかな~って思って」と、笑いながら言うー。
そんな、”ツインテールの妹”の髪を、姉の架純は
少しだけ凝視してから、
「ー副会長は~…大丈夫大丈夫、会長と比べてそんなに大したことしないし!」と、
笑いながら答えるー。
「ーお姉ちゃんの”大したことない”は、あんまりアテにならないからなぁ~…」
奈美が、苦笑いするー。
姉の架純は”何でもできてしまうタイプの優等生”
優しく、気配りのできる性格ではあるものの、
”何でもできてしまう”故に、悪気なく”簡単だよ~”とか言ってしまうことがあり、
妹の奈美も、そんな姉の言葉を真に受けて大変な目に遭ってしまったことがあるー。
「え~~ 大丈夫だってば~!副会長はホントに対してすごいことしないから!」
架純が今一度そう繰り返すと、
奈美は少し考えてから「じゃあ、信じる…」と、少し不安そうに言葉を口にしたー。
二人の父親は、とある企業の社長ー。
だが、本人は気取るようなこともなく、庶民的な生活を続けるタイプで、
そんな父親の影響を受けてか、架純や奈美も
”お金持ちのお嬢様”的な性格にはならずー、
”どこにでもいるような普通の子”のような感じの子だー。
けれどーーー
「ーーまぁ、でも頑張ってみる!」
妹の奈美が、姉・架純の話を聞き終えると、
そんな言葉を口にして、そのまま自分の部屋に向かっていくー。
「ーーーーーー」
架純は、そんな奈美の後ろ姿を見つめながら
静かに笑みを浮かべたー
「ーー危ない危ないー
妹が可愛すぎるとー、
”俺”興奮しちゃうじゃないかー」
口元から垂れそうになった涎を綺麗な指でふき取ると、
「ー我慢我慢ー」と、架純は興奮した様子でそう呟いたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1週間前ー。
ある男が、サングラスをかけた黒服の女と対面していたー。
男の左右には、側近かのように、
二人の女性が佇んでいるー。
その彼の名前はー、
田浦 竜則(たうら たつのり)ー
彼は”人を皮にして、まるで着ぐるみのように着ることで”
乗っ取る力を持っていたー。
どうして、そんな力に目覚めたのかー。
それは、具体的には分からないー。
いや、思い当たることはあるー。
良い意味でも、悪い意味でも”奇跡”というべきだろうかー。
彼は小さい頃から、いじめを受け続けて来たー。
”大人になれば”こういうことはないー。
そう思いながら耐え続けて来たー。
”耐える”
竜則は、小さい頃から、それだけはとても得意だったー。
だがー、
現実は違ったー。
大人になっても”いじめ”は無くならなかったのだー。
”大人は立派な人たち”
そう思っていた子供の頃の幻想は、打ち砕かれたー。
大人は所詮、身体が大きくなっただけの子供なのだー。
人間とは、そういうものー。
必死に勉強して、いじめっ子どもを見返してやろうと就職した
一流企業。
しかし、そこも学校と同じだったー。
普通に”いじめ”が存在し、
竜則はいじめを受けたー。
会社に居られなくなり、実家とも縁を切られて、
生きる希望を失った竜則は、
あらゆる薬を口の中に含んで、それを一気に飲み込むことで、
命を絶とうとしたー。
そこでー、
”奇跡”が起きたのだー。
一命を取り留めた竜則は、自分の右腕が不思議に光っていることに気付いたー。
そうー…
”人を皮にする力”を手に入れたのだー。
最初、すぐにはその力には気付けなかったけれど、
やがて、”自分には人を皮にする力がある”と気づいた。
それから数か月ー、
いじめっ子たちを探し出し、皮にして、そのままゴミ箱に捨てるなどして、
そのほとんどを葬り去ったー。
その時点ではまだ”皮にした相手を着ることができる”などとは
夢にも思っておらずー、
ただ単に”人を皮に出来るだけの力”だと、竜則は思っていたー。
だからー、いじめっ子たちを皮にして、
そのままゴミ箱に捨てたり、ハサミで布を切るかのように
切断して、そのまま処分したりして、
復讐を進めていたー。
がー、いじめっ子たちが残りわずかになった段階でー、
彼は気づいたー。
高校時代ー、陰険な嫌がらせを繰り返していた凛(りん)という
女を、皮にした際、ふと、その皮をまるで着ぐるみのように
開くことが出来ることに気付いたのだー。
そしてーー
”ーこれを着たらどうなるんだろうな?”と、
興味本位で凛を着て見たところー…
凛そのものになって、”乗っ取る”ことができることに気付いたー。
”人を皮にして、着ることで乗っ取ることが出来る力”
その時に、自分の力はそういう力だと気付いたー。
そこから何年も、自分の欲望のために人を皮にして、乗っ取り、
色々な人間として生活してきた結果ー、
”皮にした人間は、元に戻すことができる”ことにも気づいたー。
さらにはー
元に戻した人間の反応を見ている限り、
”着ている時間が長ければ長いほど、その相手本人の思考・思想を染め上げることができる”ことー、
”約1か月間、着続けることで、相手を完全に自分の思い通りの思考に
作り替えることができること”にも気づいたー。
そして現在ー。
彼は”その力”で、ビジネスを始めていたー。
生きていくためには、”金”も必要だー。
そのための、ビジネスだー。
「ーーーこの娘を、染めて欲しい」
サングラスの女が言うと、
竜則は、笑いながら言葉を口にする。
「ーどのように?
限界はありますが、言いなりにすることもできますし、
狂人にすることもできますよ」
受け取った写真を確認しながら、そう呟く竜則ー。
写真には、友達と楽しそうに下校している
美少女の姿が写っているー。
「ーーー”親が悲しむような子に”染めて欲しい」
サングラスの女のそんな言葉に、
竜則は「なるほど」と、笑うー。
「ーーでは、先だって説明しておいた通り、
染め上げるのには1か月ほどの時間を有しますので、
前払いで500万、後払いで500万ー。
ご用意できますか?」
その言葉に、サングラスの女はアタッシュケースを手に
「ここに、前払いの500万は用意してある」と、
言葉を口にしたー。
だがー、
それを手渡す素振りを見せないー
「ーー?」
竜則が少しだけ表情を歪めるー。
すると、女は言ったー。
「ー疑うわけではないのだがー、
その力、本当かー?」
とー。
「ーはは、思いっきり疑ってるじゃないですか」
竜則は少し呆れ顔で言うと、両側に立っていた女のうちの一人ー、
チャイナドレス姿の女に手をかざすと、
目の前でその女を”皮”にしてみせたー。
サングラスの女は、サングラスのせいで、
驚いているのか、無表情なのかは、
イマイチよく分からないー。
が、竜則は目の前でチャイナドレスの女を着て見せると、
「これで、満足ですか?」と、
その女の声で言葉を口にしたー。
「ーーーー…よかろう」
サングラスの女は頷くと、アタッシュケースを
チャイナドレスの女の皮を着たままの竜則に渡すー。
「ー確認しろ」
竜則が可愛らしい声でそう言うと、
もう一人の側近らしき、メイド服姿の女が
現金を確認し始めるー。
「ーちなみにこの側近二人はー、
俺を学生時代、いじめていた女どもなんですけどねー」
チャイナドレス姿の女を着たまま、竜則が笑うと、
相手のサングラスの女は「ほぅ」と、興味深そうに頷くー。
「ー何か月も着続けて、”俺のしもべ”として
染め上げた結果が、これです」
竜則は、現金を数えるメイド姿の女のほうを
指差しながら笑うー。
「ーーーですので、ご依頼に関してもご安心くださいー」
”親が悲しむように染め上げて欲しい”
そんな依頼を確かに受けた竜則は、チャイナドレス姿の女を脱ぐと、
依頼人であるサングラスの女のほうを見つめたー。
「ーところで、一つ興味本位でお聞きしますがー、
”人の身体を乗っ取る”ってことをしているとー
どうしても、あなたのような女性を見ると、”乗っ取られているのではないか”
ってー、思ってしまうのですがー」
竜則が、笑いながらそう呟くー。
サングラスの女は、先ほどから、男のような口調で喋っているー。
それに、サングラスをかけていて、ハッキリとは分からないが、
見た目と中身が”違う”ような、そんな感じを覚えるー。
「ーーーーー…」
サングラスの女は、足を組んで座ったまま
少しだけクスッと笑うと、
立ち上がって、竜則のほうを見つめたー。
「ーーどう、思う?」
サングラスを外した女の目は、片方だけ不気味に赤く染まっているー。
その顔立ちはとても優しそうな印象を受けるー。
「ーーー普通には、見えませんねー」
竜則が笑いながら言うと、
「ー成功したら、教えてやろうー」と、女は少し笑いながらそう呟くと、
そのまま再びサングラスをかけて立ち去って行ったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そしてー
翌日、竜則は”架純”を皮にするべく、その機会を伺っていたー。
手袋をはめた自分の右腕を見つめながら
架純が友達と分かれるのを待つー。
”憑依”みたいなことが出来れば、
こんな風に機会を伺う必要もないのだがー、
竜則の力は”人を皮にする力”ー。
それ故に、皮にする瞬間や、
”着る”瞬間を見られるわけにはいかないー。
「ーーよし。友達と別れたな」
架純が一人になったことを確認すると、
竜則は架純に近付いていくー。
「ーあの、落としましたよ」
竜則が背後から声を掛けると、
架純は「え?」と、不思議そうに振り返るー。
「ーこれ」
竜則はそう言いながら握りこぶしを作った手を近づけるー
「ーーあ… えっと、すみませんー」
何を落としたのか分からず困惑する架純ー
その直後、竜則は光る手を開いて、その場で架純を”皮”にしたー。
それから1週間が経過したのが”現在”の状況だー
「ん~~妹が可愛すぎると、興奮しちゃって困るよなぁ」
竜則に着られている架純がニヤニヤと笑うー。
架純の身体が妹の奈美に興奮しているのが、
ゾクゾクと伝わってくるー。
本来の架純は、恐らく妹に興奮したりはしないだろうがー、
今の架純は竜則のもの。
竜則の意識に従って、身体も反応を示すー。
「ーーさてさて、この子を”親が悲しむような子”に染め上げるために、
色々しておかないとなー」
部屋に戻った架純は、
親への憎しみの言葉や、真面目にやることがバカらしい、というような言葉を
口にしていくー。
他にも色々と架純の”ゆがみ”に繋がるような言葉を
繰り返し口にして、
満足そうに笑うー。
「ーこの子を歪めてどうするのかは知らんがー…
俺からすりゃ、楽しめてお金ももらえてー、
何も悪いことはないからなー」
架純はそう呟いて笑みを浮かべるー。
竜則は、変わったー
もう弱い自分はいないー。
いじめを受けていた頃の自分はいないー。
この力を手に入れて、今ではヤバい依頼も受けられるような
したたかな人間になったー。
やはり、力こそ正義ー。
架純は、笑みを浮かべながら鏡のほうを見つめると、
「ーあと4週間ー君のことをじっくりと染めてあげるからなー」と、
低い声で、けれども興奮を隠しきれない様子で囁いたー。
②へ続く
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コメント
皮にした状態で、家族にバレないように過ごすお話デス~!
異変を察知されないように、着られている子が染まるまでの
約1か月を過ごす…
意外と大変な気もしますネ~!
続きはまた明日デス~~!!
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