”ある条件”で女体化することができるー。
そんな能力を持つ男は、
普段は男として生活しながら、
裏では女体化して、アイドル・愛梨として活動していたー。
だがー、ある日ー…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーお前、本当に女に興味ねぇよな~」
大学の昼休みー。
食堂でラーメンを食べていると、
大盛のカツ丼を乗せたトレーを手に、
友人の高島 啓二(たかしま けいじ)が、
笑いながら声を掛けて来たー。
「ーーーーははは、何だよいきなり」
ラーメンを食べる手を止めて
呆れ顔でそう答えた、湯沢 亮太(ゆざわ りょうた)ー。
「ーーいや、ほら、さっきもさ、安西(あんざい)さんに
声を掛けられてたのにー
なんか、そっけないっていうかー
俺ならこう、ニヤニヤが止まらないのにー」
啓二がそんな言葉を口にすると、
亮太は「いやぁ、相手が男でも女でも別に対応変える必要ないしさ」
と、笑いながら言葉を口にするー。
”安西さん”とは、大学内でもトップクラスに可愛い人気者で、
さっき、亮太はその”安西さん”に声を掛けられたのだが、
全く照れる様子もなく、普通に塩対応だったように、
啓二からすれば見えたために、啓二は驚いていたー。
「ーーー…っていうかお前、彼女も作らないよなー
誰かが可愛いとか、そんな話もしないしー」
啓二がカツ丼を食べながら不思議そうに言うー。
「ーまぁなぁ」
ラーメンのスープを飲みながら、亮太はあまり興味なさそうに
そう言葉を口にするー。
「もしかしてアレか?異性が苦手ってやつ?」
「いや、別にー。苦手じゃないー。」
亮太はそこまで言うと、ラーメンのスープを飲み終えて、
そのままひと息つくー。
そのまま啓二と少し雑談を交わして立ち上がると、
亮太は、ラーメンの器を返却口に返しながら
少しだけ笑ったー
”まぁー……興味ないって言うのはー…間違いじゃないかもなー
だってーー”
「ーーみんな!今日も来てくれてありがと~~~!」
”俺”が
一番、可愛いからーーー。
夜ー
亮太は、ライブハウスのような場所で
アイドルのような衣装を着て、マイクを手に可愛らしいポーズをとっていたー。
決して、女装してアイドルになりきっているわけではないー。
彼はーーー
”ある条件”で、女体化することが出来るー
そんな、力の持ち主だったー。
普段は”男子大学生”として普通に過ごしながらー
裏では”美少女アイドル”として活動しているー。
「ーー今日は愛梨(あいり)の新曲を披露しちゃいま~す!」
可愛らしく”女体化した亮太”がそう言い放つと、
集まっているファンたちが嬉しそうに歓声を上げるー。
新曲を歌い出す愛梨ー。
完全に、”可愛い”を意識したー
美少女的な仕草をしながら、
普段は男であることを全く感じさせない”女体化した亮太”ー
女体化している時は”愛梨”と名乗り、
こうして、アイドル活動をしているー。
全国デビューしているわけではなくー、
地下アイドル…というか、そんな感じの”地域のアイドル”的
存在でしかないもののー、
流石に”女体化した自分”が全国デビューしてしまうと、
自分の時間を確保することができなくなってしまうし、
これ以上有名になるつもりはなく、
小規模な活動を行いながら、ある程度の収入源にもしていたー。
ライブを終えて、控室に戻ると、
女体化した亮太ー、愛梨は笑みを浮かべたー
「ー女に興味がないんじゃなくてー
わたしが一番可愛いんだもんー」
クスッと笑う愛梨ー。
普段の姿の時は男としてー、
女体化している時は女としてー、
その”使い分け”も今では無意識のうちに出来るようになったー。
愛梨のときにうっかり男言葉を口にしてしまうことはないし、
亮太のときに、うっかり美少女アイドル的な振る舞いをしてしまうこともないー。
亮太は完璧に”二つの自分”を、
使い分けていたー。
「ーーーよいしょっとー」
女体化したまま自分の家に帰宅すると、
そのまま亮太は”元の姿”に戻るー。
「ーーーーー…」
ぎゅっとそれを握りしめー、
男の姿に戻ったことを確認すると、ため息をつくー。
「ーーーーーー」
妹から貰ったこの、不思議な石ー。
それを握りながら念じることで、亮太は女体化することが出来るー。
「ーーーー莉々(りり)ー」
妹・莉々から貰った石を手にしながら、そう小さく呟くと、
亮太は「さて、明日の大学の支度でもするか」と、
その石を置いて、そのまま明日の準備をし始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
別に何か悪意をあって、”こういうこと”をしているわけではないー。
亮太が女体化して”愛梨”と名乗り、
アイドル活動をしている理由はいくつかあるがー、
決して誰かを騙してどん底に突き落とそうだとか、
そんな目的ではないー。
もちろん、女体化している最中は
生物学的に完全に女になっているとは言えー、
自分は男でありー、
ファンたちを騙している!と言われれば
”その通りです”と、答えざるを得ないー。
だが、そういう活動をしているのには理由があるー。
亮太は、昼間は男子大学生として、
夜はアイドルとして活動するー…
そんな日々を続けていたー。
だが、ある日ー
「ーみんな~!今日はよろしくね~!」
今日は、ファン向けの握手会ー。
愛梨が、ファンたちと順番に握手をしていくー
”女体化してると、キモいおっさんが来たりすると
結構気になるんだよなー…
実は心まで女体化してたりすんのかなー?”
そんなことを思う女体化した亮太ー。
普段は、別におじさんを見て何か感じたりすることはないのだが、
女体化して、愛梨として活動している最中は、
何だか妙に気になるし、清潔感のないおじさんがやってきたりすると
内心”うわっ!”と思ったりするー。
単に、女体化している時の方が”人と接する”から気になるだけかもしれないし、
女体化していることによって、心境にも何らかの変化が生まれているのかもしれないがー、
いずれにしても、男の時とは感じ方が色々違う気がするー
「あ、いつも本当にありがとうございます~♡」
常連の男性ファンと嬉しそうに握手をする愛梨ー。
自分も”男”だからこそ、
ファンの気持ちも分からないでもないー。
だからこそ、アイドルとして亮太は
しっかりとファンに”夢”を与えようと心がけているー。
「(ーーーーん?)」
ふと、並んでいるファンのほうを見ると、
その中に”見覚えのある顔”がいて、
愛梨は”えっ!?”と、声を上げそうになったー。
そうー
大学の親友、啓二が列に並んでいたのだー
しかも、顔を少し赤らめながら
ドキドキとした様子でー
”う、うえっ!?啓二!?
な、なんでここにー!?”
愛梨は、他のファンと握手をして
いつものようにスマイルを浮かべながら
ちょっとした雑談にも応じつつー、
列に並んでいる啓二のほうを見つめるー。
”ま、まさかあいつー”
”愛梨”として握手を続けながら
亮太はとても嫌な予感を覚えるー。
”まさか、啓二のやつに気付かれたんじゃー?”
そんな、予感だー。
啓二がアイドル好きだとは聞いたことないし、
ましてや”愛梨”ー
つまり、”俺自身”のファンだとは聞いたことがないー。
いったい、どうしてここにー?
そんな風に思っているうちに、啓二の順番が回って来るー。
啓二と目が合い、
愛梨はにこっと、戸惑いながらも微笑んで見せるー
するとー
啓二は愛梨の顔のほうをじっとみたあとにー、
静かに口を開いたー
「あ、あのー
い、今まで配信とかグッズの通販しか買ったことなかったんですけどー
ず、ずっと、ずっとファンでしたー」
啓二は顔を真っ赤にしながらそう言い放つー。
「ーーえ??あ、あ、~あ~…そ、そうなんだー!
あ、ありがとう~!とっても嬉しい」
女体化している亮太=愛梨は、そんなことを言いながら
啓二と握手をするー
”おいおいおいおいー啓二のやつ、まさか俺のファンだったのかー!?”
女体化した自分と握手をしている啓二の顔を見るー。
啓二の顔は、心底”推し”と握手できていることを喜ぶようなー、
大学では見たこともない顔だったー。
「ーーこれからも応援してます!頑張ってください!」
目をキラキラさせながら言う啓二ー。
「う、うんー、あ、ありがと~」
少し引いたような笑顔をついつい浮かべてしまう愛梨ー。
啓二の順番が終わって、他のファンと握手をしながらも、
女体化した亮太=愛梨は、しばらく戸惑いが止まらなかったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
お昼の時間になった大学内で、
亮太は啓二の姿を探していたー。
そして、啓二を見つけると「よ」と、声を掛けるー。
「お~湯沢!」
亮太を見て、手を上げる啓二ー。
「ー今日も元気そうだな」
「ーはは、俺はいつも元気だぜ」
そんな日常的な会話を交わしながら、
亮太はタイミングを見て、言葉を口にするー。
「そういえばさー、お前、最近、
アイドルにはまってる?」
「ーーえ」
亮太が突然、そんな言葉を口にしたことで、啓二は驚いた表情を浮かべるー
「はは、いやいやいや、別にアイドルにはまるのはいいんだけどさー、
なんか、ローカル系っていうのか?あんま有名じゃない
マイナーな子にはまってるみたいじゃないか」
亮太の言葉に、啓二は「な、な、な、なんでそれを!?」と、
表情を歪めるー。
「ーいや、昨日、偶然、高校時代の友達と会った帰りに
お前の姿を見かけて、声かけようと思ったら
小さいライブ会場に入って行っちゃったからさー」
亮太が言うと、
啓二は「ぐ…!まさか見られてたとは!」と、悔しそうに笑いながら言うー。
「ーー…まぁ、別に隠す必要もねぇけどさー
俺、愛梨ちゃんって子を最近応援してるんだよ」
啓二は、それほど”隠す気”はなかったのか、
すぐに、素直にそのことを打ち明けるー。
「ーははー、まぁ、確かに入口のポスター見た感じでは可愛かったなー」
”女体化した自分”のことを他人としてそんな風に
言い放つのは、何だかとても変な気分だー。
しかしー…、
まさか”あれは俺なんだよ”とは、口が滑っても言えないー。
「ーーその子、やめといたほうがいいー」
亮太は、そんな言葉を口にするー
「え…」
少し表情を歪める啓二ー。
「いや、どんな子なのかと思って検索したら、
あんまりいい噂がなかったしー、
それにー、その愛梨ちゃんって子、名前聞いたことあると思ったら
高校時代の同級生の知り合いでさー…
あんまり、その…
いい子じゃないって言うかー」
亮太がそんなことを口にするー。
「ーーーはははは」
だが、啓二は笑うと、
「心配してくれて、ありがとな」と、亮太の肩をポンポンと叩くー。
「ーまぁ、大丈夫さ。俺だってやべぇと感じたら自分で
判断することぐらいできるし、
アイドルに全財産使ったりするほど、愚かじゃないからさ」
啓二のそんな笑みに
亮太は「そ、そっかー。でも…その子じゃなくて他の子の方がいいと思うぞ」とだけ言うと
「忠告どうも」と、啓二は笑ったー。
昼の時間が終わり、啓二と別れる亮太ー。
”ーーーなんか…俺に金を使わせるの悪いよなー…
かと言って、実は俺なんだ、とは言えないしー”
亮太は、女体化した自分=”愛梨”から、啓二を遠ざけようとしていたー。
その理由は簡単ー。
単に”親友を騙しているような気がして、申し訳ない”という理由だー。
金を使わせてるのもそうだし、
相手が親友だと知らずに、好きと思わせてるのも申し訳ないー。
とは言え、”女体化できる”という秘密は教えるわけにはいかないー。
亮太が”愛梨”として活動しているのには、
とある理由もあるー。
「(あ~あ、困ったな…よりによって何でアイツがファンなんだ…)」
亮太は戸惑いの表情を浮かべながらー、
”なんとか、しないとな”と、一人、難しい顔をしたまま呟いたー。
②へ続く
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コメント
女体化できる力を利用して、
こっそりアイドルとしても活動している男子大学生…!
どうなってしまうのかは、明日の続きを
見て下さいネ~!
今日もお読み下さりありがとうございました~!
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