<皮>救出した妹の様子がおかしい②~影響~(完)

”皮”にされて乗っ取られていた妹…

何とか、妹を救出することに成功したものの、
”乗っ取られていた間”に、男の影響を受けて
妹は変態になってしまっていたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーそ…そんな…」
妹の瑠美に、事情を説明するー。

丸山義夫の”影響”を受けてしまったとは言え、
瑠美は、瑠美としての自我は取り戻しているー。

驚きながらも、その言葉を聞いて、
瑠美はショックを受けた様子だったー

「ーーーーお兄ちゃん…聞こえてたんだー…」
てっきり、自分の部屋でしている”お楽しみ”が、
兄の部屋まで聞こえていたとは思っていなかったのか
瑠美は恥ずかしそうにそう言うと、
「ーーーどうしても……そういう気持ちが抑えられなくてー」と、
困惑した様子で呟くー

「ーまた”皮”にされたい、とか、そんなことも思っちゃうしー
 自分の身体を見るだけで興奮しちゃうしー……

 そのー…変だって、わたしも分かってるんだけどー…」

瑠美は、そう言うと、自分の胸に視線を落として、
ニヤニヤと笑みを浮かべ始めるー

「ーーー…瑠美ー」
和馬は悲しそうにそんな瑠美の姿を見つめると
「で、でも大丈夫だからー」と、瑠美を安心させようと言葉を
口にするー。

「ーわ、わたしー…元に戻れるの?」
自分の胸を片手で触りながら、不安そうにそう呟く瑠美ー。

「ーーあぁー
 でもー…そのためにはー」

和馬は少しだけ戸惑ってから
”人を皮にする注射器”で、もう一度瑠美を皮にしてー、
あの変態男ではなく、ちゃんとした人が瑠美を”着る”必要がある、
ということを説明したー。

「ーーー…わ、わたしをもう一度、皮にー?」
瑠美が不安そうに言うー。

一度、乗っ取られていた瑠美にとっては、
そんなこと、急に言われても怖いだろうー。
確かに、それは分かるー。

しかしー、元に戻すためには
それしか方法がー。

そんなことを思っていると、瑠美が顔を上げたー

「ーホントに、わたしを皮にしてくれるの!?」
と、嬉しそうにー。

「ーーーー」
少し、予想外だったー。
だが、今の”丸山義夫”に汚染されたーとも言える状態の
瑠美にとっては”嬉しいこと”らしいー。

「ーーー…瑠美ー、
 必ず、元に戻してやるからなー」

そう呟くと、和馬は瑠美から同意を得た上でー、
瑠美を”皮”にしたー。

説明書によれば、目安として”1時間以上”着たままだと
着用者の影響が出てしまうことがあるらしいー。

「ーーーーーーー」
瑠美の皮を着た和馬は、
ふと、瑠美の髪が手にあたり、ドキッとするー。

和馬は、別にモテない感じではないもののー、
同性の友達が多いタイプで、彼女はいないー。
仲の良い女友達どまりで、正直なところ、女性慣れしていない一面もありー、
髪が触れたことで、急に妙にドキドキしてしまったのだー

「ーーー……う…思ったより…こうー…変な気持ちだなー」
”主観視点”で、自分の”胸”を見下ろすー。

瑠美になったことで、そんな経験を始めてすることになった
和馬はドキドキしながら、深呼吸をするー

「平常心ー、平常心ー」
すぅ、と息を吐き出すー。

がーー
”瑠美の声”が、自分の口から出ているという現実に、
またドキドキしてしまい、顔を赤らめるー。

「ーーー……」
鏡が目に入りー、顔を真っ赤にしている瑠美の姿が
目に入ると、和馬はつい「お兄ちゃん…」と、瑠美の身体で言葉を口にしたー。

瑠美に何でも言わせることができるー
瑠美に何でもさせることができるー。

”お兄ちゃん、大好きー”とか、言ってみたいなー
と、いう欲望がこみあげて来るー

けれど、兄としてそれを自制心で抑え込むと、
深呼吸をして、”何も悪いことはせず”に、1時間を過ごしたー。

そして、約束通り”瑠美”を脱ぐー。

”なるほどー…
 手に入れる人間が少しでもアレならー
 悪用されるよなー、これはー”

人を皮にする注射器を見つめながら、
そう呟くと、もう一度それを注射することで、
瑠美を元に戻しー、瑠美が目を覚ますのを待ったー。

1分もしないうちに、瑠美が意識を取り戻しー、
和馬のほうを見つめると、
「ーーお兄ちゃんー」と、言葉を口にしたー

「い、一応、1時間経ったけどー… 
 ど、どうかなー?」
和馬がそう言うと、瑠美はさっきまでのようなー
”下心的な感情”が、自分の中から消えているような気がして、
少しだけホッとした様子を見せるー。

「ーさ、さっきまでみたいにー
 エッチな気持ちにはならなくなったかもー」

瑠美はそう言うと、
突然、和馬に抱き着いて来たー

「お兄ちゃん、本当にありがとう!!」
とー。

嬉しそうにー

「ーうわっ!?き、急に…な、なんだよ!?」
困惑する和馬ー

確かに、妹の瑠美とは”仲良し”ではあるものの、
急に抱き着かれたりするほどではないー。

いきなりの大胆の行動に、戸惑いの表情を見せる和馬ー

「お兄ちゃん!大好き!本当にありがとう!」
瑠美はそう言うと、躊躇わずに和馬にキスをしようとしたー

「わ~~~!わ~~~!待て!待て!」
キスを阻止した和馬がそう叫ぶと、
「ちょ、ちょっと待て!瑠美!ま、まだ変じゃないか?」と、
慌ててそう声を上げるー。

「ーーへ、ヘンー?」
戸惑う瑠美ー。

「いや、だって今、俺にき、キスをしようとー」
戸惑いながらそんな言葉を吐き出す和馬に対して、
瑠美は少しだけ笑いながら
「だって、お兄ちゃんのこと、すっごく好きな気持ちで溢れてるんだもん!」と、笑ったー

「ーーーー!!!」
和馬はその言葉でハッとしたー

”やべぇ…瑠美を皮にしている間に俺が変な妄想してたからだー…”
そんなことを心の中で後悔しながら、
瑠美のほうを見ると、瑠美は自分の身体を見つめながら
ドキドキした様子で赤面していたー

”やべぇ…あれも俺の影響だー”
和馬はそう思いながら、
「る、瑠美ー、ごめんー今度、俺の影響が出ちゃってるみたいでー」と、
事情を説明すると、
瑠美は「ーそ、そ、そうかなー…?で、でも確かに変な気分ー」と、
戸惑いながら言葉を口にしたー。

丸山義夫から受け取った説明書を今一度確認する和馬ー

”ー何度も繰り返し着用すると、
 ”皮”が着用者本人と同じ言動・性格になるなど、不具合が出る可能性があります”

そんな一文を見て、
「俺がまた瑠美を着ると、危険だなー」と、表情を歪めたー。

仕方がなく、和馬は親友の博一に相談して、
博一に家に来てもらったー

「ーーはははー、なんだよー
 それで、妹が今度は”お兄ちゃん大好き”になっちまったのかー?」

玄関先で”おじゃまします”と言葉を口にしながら、
そう笑う博一。

「わ、笑うなよー」
恥ずかしそうにしながら、和馬が”まぁ、その通りなんだけどー”と
言葉を口にすると、
”同じ人間が何度も着ると、そのものになっちゃうみたいなことが
 書いてあったから、これ以上瑠美を着ることが出来なくて”と、
補足したー

「なるほどなぁ、で、俺の出番ってわけかー。
 まぁ、いいけどさ」

博一は、共に丸山義夫を追いつめたこともあって
事情も知っているし、
良くも悪くも下心のようなものは普段からまるで感じないー。

”彼女は、今のところはいいかなぁ”などと言っており、
イケメンで結構おしゃれなのだが、告白されても
断っていて、誰かと付き合う素振りもないー。

前に、同じ大学に通う男子が、Hな話を振って来た時にも、
「俺、別に男が好きってわけじゃないけどー
 エロイやつとか見ても、全然何も感じないんだよなぁ~」
などと言っていたー。

つまり、恋愛感情とか、そういうものがないタイプなのかもしれないー

前に”エロ動画とか見るなら天気予報見た方が俺は面白いね”などとも
言っていたし、瑠美が”変”になる心配は薄いと言えたー

”まさか、天気予報好きになったりはしないと思うしなー”

そう思いながら、
瑠美の部屋に入ると、博一は「お邪魔しますー」と言いながら
「あぁ、瑠美ちゃんー。学園祭で一度会ったきりかな?」と、言葉を口にして、
軽く挨拶を交わしたー。

兄・和馬の大学の学園祭に、瑠美が遊びに来た時にー
一度だけ、博一は瑠美と会っているー。

「ーーよろしくお願いします」
瑠美がそう言うと、今度は”もう一度皮にされること”に対して
少し怯えた様子を見せるー。

和馬が瑠美を着たことによって、
”和馬”の影響を強く受けてしまった瑠美ー。

だが、その一方で、瑠美を皮にした”丸山義夫”の影響は
薄れたようで、
今は”皮にされることに興奮する”ような感じは
なくなっていたのだったー。

「ーー大丈夫。俺も見てるし、
 こいつ、Hなこととか何にも興味ないから」

和馬が冗談めいた口調でそう言うと、
「はははー」と、笑いながら博一は、
瑠香のほうを見つめたー。

「ー1時間、適当にここで喋ってるだけだしー、
 お兄ちゃんが見張っててくれるからー、安心して」

博一がそう言うと、瑠美は少し不安そうにしながらも頷くー

「ーー…じゃあ…ごめんな」
何となく、人の妹に注射器を打ち込むことを申し訳なく思いながら、
瑠美を”皮”にすると、
博一は瑠美の皮を着て、そのまま瑠美となったー。

「ーーしかし…すごいなー…
 どうなってんだ?この注射器」

瑠美を着た博一は、そう言いながら注射器を手に持ち、
見つめるー。

「ー完全に、瑠美ちゃんの声になってるしー、
 身体も完全に瑠美ちゃんだしー…

 着ぐるみを着てるっていうかー
 完全にその物になってる感じだよなー?」

瑠美がそう言うと、
和馬は少し照れくさそうに「そ、そうだなー」と、頷くー

「ははは、お前、妹の身体で変なことしたんじゃないだろうな?」
瑠美の声で、そう言い放つ博一に対して、
和馬は「し、し、してないし!」と、慌てて声を上げるー。

「ーーへへへへ~なんか怪しいリアクションだなぁ~?」
瑠美の揶揄うような口調に、
「お、お前が特殊すぎるんだよ!何も、そういう感じはないのか?!」と
和馬が顔を赤らめながら言うと、
瑠美は「ん~~~別に…俺は何もドキドキとかしないなぁ」と、笑ったー。

1時間が経過しー、
博一が瑠美の皮に脱ぐー。

結局、終始怪しいことをする様子はなく、
平和的な1時間だったー。

脱いだ瑠美にもう一度注射器を打ち、
瑠美を元に戻すー。

「ーーーあ…」
意識を取り戻した瑠美が、和馬と博一を見つめると、
和馬は優しく「ーー…大丈夫か?」と心配する言葉を投げかけたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

丸山義夫の影響を受けて”変態”になっていた瑠美ー。
兄である和馬の影響を受けて”度を越したお兄ちゃん好き”になっていた瑠美ー。

しかし、博一が瑠美を着たことで、
二人の影響は抜けー、
瑠美のおかしな行動は無くなり、
平穏な日々が取り戻されつつあったー。

がーーー

日が経つにつれてー、
兄・和馬は”また別の”違和感を感じ始めていたー。

瑠美が、どんどんおしゃれになっていきーー

やがてーーー

「ーわたし…可愛すぎでしょ♡」
鏡の前で、瑠美がそんな言葉を口にしながら、自分を抱きしめるー。

「ーーお、おいー…る、瑠美ー?」
戸惑う和馬ー。

そんな和馬に対して、瑠美は
「ーわたし、すっごく可愛いよねー…あ~…宝石みたい!」と
言いながら、再び鏡を見つめると、
「わたしってば、今日も世界一♪」と、
嬉しそうに、モデルのようなポーズを繰り返したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー

大学で博一の姿を見つけると、
和馬は博一を呼んで、廊下の物陰まで連れて来ると
言葉を口にしたー

「なぁ…深田、お前…”自分のこと大好き”だったりするー?」
和馬のそんな言葉に、
博一は「えっ!?」と、少し驚いた様子を浮かべながらー
「ま…まぁ、自分でカッコイイとは思うしー、
 自分のこと、いいやつだとは思うけどー」と、戸惑いながら言葉を口にしたー

「あぁ…それでかー」
和馬は深々とため息をつくー。

”わたし、可愛すぎでしょ”

瑠美があんなになってしまった理由ー
それは、今度は”博一の影響”を受けてしまったのだろうー。

「ーーーーははー」
苦笑いする和馬ー

”瑠美を元に戻す道のりは、遠そうだなー…”

そんな言葉を呟き、
和馬は嘆くようにして、自虐的な笑みを浮かべたー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

瑠美ちゃんを完全に元に戻すのは難しそうですネ~!

もう一人瑠美ちゃんがいればどうにかなりそうですケド、
いないので…☆笑

お読み下さりありがとうございました~~!!

コメント