<皮>お前がそいつになれ①~告白~

いじめを受けていた気弱な男子高校生ー。

しかし、ある日、いじめっ子に呼び出された彼は、
”皮にされたクラスの美少女”の姿を目撃するー。

しかも、いじめっ子は言ったー
”お前がそれを着て、お前がそいつになれー”

とー…。

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高校2年生の坂山 翔太(さかやま しょうた)は、
いじめを受けていたー。

きっかけは分からないー。
しかし、元々気弱な性格の翔太は
小さい頃から、こういう目に遭うことは多かったー

”何も悪いことなんてしてないのに”
そう、思いながらも逆らうことができないー。

昔から、そうだったー。

「ーーへへへ、今日はこの3つ、よろしくな」
いじめっ子の中心人物ー、お調子者の男子生徒・柴田 龍介(しばた りゅうすけ)が
そう言いながら、何かメモ用紙を渡してくる。

そこには、
”こーら”
”かるぴす”
”うーろんちゃ”
などと、書かれていたー。

「ーーー」
その紙を黙って受け取る翔太。

翔太は毎日のように、昼休みにこうして”お使い”をさせられているー。
お使いと言えば聞こえはいいが、要するに、使い走りだー。

しかも、お金を払ってもらえる時もあれば、
払ってもらえないこともあるー。

「ーーーー」
その紙を見つめながら”なんでひらがななんだろうー?”と、
少し首を傾げる翔太。

だが、そんな翔太の考えを見越したのか
いじめっ子の一人、眼鏡をかけた頭の良さそうな男子生徒・森嶋 拓斗(もりしま たくと)が
言葉を発したー

「ー君みたいなバカには、ひらがなで書いた方が、
 読みやすいと思ってね」
とー。

拓斗はクラス3位の成績を誇る男子生徒だ。
しかし、他者を見下すような性格で、頭は良くても
心は腐っているー

ーと、少なくとも翔太はそう思っている。

「ーははははっ!やるじゃん!」
龍介が嬉しそうに笑うー。

「ーーーほら、早く行きなよー。
 俺たち、喉乾いちゃって仕方ないしー」

いじめっ子の最後の一人、イケメン男子の沢村 圭吾(さわむら けいご)が、
そう言うとー、
翔太は逆らうこともできないまま、そのまま自動販売機に向かったー。

「そういえば、柴田、今日だったよな?」
圭吾が笑いながら言うと、
龍介は「おぅ!ま、絶対失敗なんてしねぇから、明日を楽しみにしてろよ」と、
そんな風に答えるー。

いじめっ子のリーダー格・龍介は、
今日、クラスの子に告白しようとしていたー。

相手は、クラスの美少女・水野 加奈(みずの かな)ー。

加奈は物静かで優しい性格ー。
成績もクラス一を誇り、物静かながら、女子の友達も多い。

そんな子だー。

「ーーーへへへへへー」
龍介は自信満々の表情で、そんな加奈のほうを見つめたー。

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放課後ー

「ー水野さんー
 俺と付き合ってくれ!
 絶対にー、水野さんのこと、大事にするから!」

龍介は、友人たちに宣言した通り、
加奈に告白したー。

だがーーー

加奈は珍しく険しい表情を浮かべながら
龍介のほうを見つめたー。

「ごめんなさいー」
そう、言葉を添えながらー

「ーーえっ…!?
 あ…き、急で驚かせちゃったかなー?
 べ、別に返事は今じゃなくてもいいからさー
 ゆっくり考えてくれればー」

龍介は”既に返事されている”にも関わらず
そんな言葉を口にするー

根拠もなく”俺なら絶対に成功する”と
告白の成功を信じて疑わなかった龍介からすれば
”振られた”ことを素直に受け止めることができなかったー

「ーーごめん。返事は”今”してるのー」
加奈が珍しく少し強い口調で言い放つ。

加奈は物静かとは言え、気弱な性格ではないー。
言うことはしっかり言うタイプー。

龍介は、そんな加奈に対して
「ど、どうしてー?」と、泣きそうになりながら言葉を口にしたー。

すると、加奈は言い放ったー。

「ーーー坂山くんのこと、いじめてるよね?」
加奈の言葉に、龍介は「え…い、いやぁ、あれはー」と、
困惑しながら言葉を返すー

「ーわたし、そういうことする人、嫌いだからー。」

バッサリと加奈に言われてしまったー。

呆然としてその場に座り込んでしまう龍介ー

「ーーー」
加奈は、そんな龍介に「ーわたし、もう行くね」とだけ答えて
そのまま立ち去っていくー。

加奈は、翔太がいじめを受けていることを知っていたー。
しかし、以前、翔太に声をかけた際には
”僕になんか関わらない方がいいよ”と言われてしまったし、
翔太自身、奥手な性格で加奈のような可愛い子に声を
かけられても、どう反応していいか分からないのが実情でー、
そんな、薄い反応をしてしまっていたー。

その結果、加奈はいじめのことを心配しながらも
直接どうにかすることは出来ず、
担任の先生に何度か相談をしていたー。

結局、担任も事なかれ主義な感じの人物であるため、
いじめの件は解決することなく、今に至っているというのが実情だー。

だが、そんな状況を苦々しく思っていた加奈は、
今日ー、バッサリと”いじめをするような人は好きじゃない”と、
龍介に言い放ったのだったー。

一人残された龍介はしばらくの間、座り込んでいたものの、
「あいつのせいだー」と、呟き始めるー。

「ーあいつのせいで、俺は水野さんに嫌われたー」
ギリギリと歯ぎしりをする龍介。

完全なる、逆怨みー。

龍介は”加奈に振られたのは翔太のせい”だと
歪んだ考えにたどり着き、怒りの形相を浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー、
龍介は、拓斗と圭吾の二人から
散々笑われて、ますます翔太に対する憎しみを
募らせていったー。

そしてー、
その数日後ー
龍介は恐ろしいものを見つけてしまった。

それがー
”人を皮にすることができる”
特殊な針だったー。

「ーー……」
ネットを眺めていた際に、偶然そんなアイテムを見つけた龍介は
ニヤリと笑みを浮かべてー
恐ろしいことを思いついてしまったー

”水野さん”を俺のものにする方法ー
そして、”あいつのせいで”水野さんに嫌われてしまったのだから、
あいつに責任を取らせるー

そんな、恐ろしいことをー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

翌日ー。

「ーー放課後、いつもの教室に来いー」

いつも、”いじめ”をしている空き教室に
翔太を呼び出す龍介ー。

しかし、今日は眼鏡の拓斗、イケメンの圭吾の二人には
声をかけず、翔太に対しても
”必ず一人で来るんだぞ”と、念を押したー。

笑みを浮かべる龍介ー。

”あとは”ー

そう思いながら、龍介は加奈に対しても声をかけるー

「水野さんー今日の放課後、少し話があるんだー」
と、龍介を呼び出した部屋とは別の部屋に
加奈を呼び出そうとするー。

だがー

「ーごめん。わたし、忙しいからー
 それに、この前の話なら、答えは変わらないから」

加奈はそれだけ言うと、友達に声を掛けられて
いつものように優しい笑顔を浮かべながら
龍介のことはそれ以上相手にすることなく、
立ち去ってしまったー

「チッー」
舌打ちする龍介ー

ならば、仕方がないー。
そう考えた龍介は、ニヤリと笑みを浮かべたー。

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放課後ー

「ーー水野さん、どうしちゃったんだろうー?」
「突然、早退するなんてー」

クラスメイトたちがそんなことを口走っているー。

昼休みまで元気そうだった加奈が、突然姿を消したのだー。
先生によれば”体調が悪いので早退します”と、職員室に言いに来たとの
ことだったが、あまりに急だったため加奈の友人たちは
みんな、心配していたー

”ククククー”
龍介は笑みを浮かべるー。

当初の”計画”とは少し違ってしまいー
少し”不自然”な感じにはなってしまったが、
まぁ、どうにでもなるだろうー。

あとは、”アイツ”に責任を取らせるだけだー。

帰りの学活が終わり、
そのまま龍介は”いつも翔太をいじめている教室”で
翔太を待ち構えるー。

そしてー、
いつものように、怯えた表情で翔太がやってきたー。

翔太は、不安そうに教室を見渡すー。

普段なら、圭吾と拓斗の二人も一緒なのに、
今日は龍介しかいないことを、
かなり不安に思っている様子だったー

「へへへ…安心しろってー
 今日は圭吾も拓斗もここにはいねぇ。 
 俺と、お前だけだー」

笑いながらそう言い放つ龍介ー。

「え…?」
翔太は、意外そうに龍介のほうを見つめるー。

これまで、呼び出されるときは決まって
龍介だけではなく、圭吾と拓斗の二人も
ここにいたからだー。

「ー今日は、お前に着てほしいものがある」
まるで、友達に言うかのような口調で
軽くそう言い放つと、龍介は物陰に隠していた何かを
取り出して、それを床に放り投げたー

「え………」
翔太はそれを見て、表情を歪めるー。

クラスの女子生徒・加奈に
”そっくり”のペラペラの着ぐるみのような物体が
教室の床に横たわっているー。

見るからに”本人”ではなく、”着ぐるみ”のようなー
そんな感じだが
ペラペラながら、顔や雰囲気は本人そのものだったー。

”こんなに本物そっくりの、まるで脱皮された皮のようなもの”を
どこから持ってきたのかー

翔太が戸惑いの表情を浮かべていると、
その反応を見て、龍介はニヤリと笑みを浮かべる。

「ーそれを、着ろ」
そう、”命令口調”で言い放ちながらー。

「ーーえ…?ど、どういう…?」
翔太はさらに戸惑う。

まるで、意味が分からないー。

「ーーそいつを着て、お前がそいつになれ」
龍介はさらに”命令”を続けるー

「ど…どういう意味…?い、意味がわからー…」

「いいから着ろって言ってんだよ!」
龍介が翔太の言葉を遮りながら言うー。

「ーお前のせいで俺はそいつー…
 水野さんに嫌われたんだー

 くそっー
 お前さえいなければー
 お前さえいなければ、俺は今頃
 水野さんの彼氏になることができていたのにー」

何の根拠もない言葉ー。

しかし、龍介は本気で翔太を憎んでいた。

「ーー俺はお前のせいで振られたんだ!
 だから責任を取ってもらうー。

 お前がそいつになって、俺と付き合うんだー
 俺の言う通り、水野加奈を演じるんだー」

その言葉に、翔太は
「え…ま、待ってー…こ、これはー」と、
床に横たわる加奈の皮を指さしながら
”これって、本物の水野さん!?”と確認するー。

しかし、龍介は答えなかったー

「お前が水野さんになるんだー」
それだけ言い放つ龍介ー。

翔太はたまらず断ろうとしたー。

だが、龍介は翔太に対して、突然殴る・蹴るの暴力を
振るい始めたー。

そして、髪を引っ張りながら言い放つー

「いいから、着ろー」
とー。

翔太は抵抗することもできず、加奈の皮を着るとー…
自分の身体に不思議なほどに馴染んでー
そのまま、自分が加奈そのもののような状態になってしまうー

「え……う、嘘…な、なんだこれ…?」
加奈の身体が自分のものかのように動くー

自分の口から、加奈の声が出るー。

ドキッとして、自分の口のあたりに触れると、
自分の肌とはまるで違う感触がして、
それでまた顔を赤らめてしまうー。

「ーへへへへへへーいいぞ」
龍介は笑いながらそう言うと、
加奈になった翔太のほうを見つめたー。

「今日からお前は水野加奈だー。
 その皮を脱ぐことは許さないし、
 脱いだら、お前を徹底的に酷い目に遭わせてやるー。
 今以上の、なー」

その言葉に、怯えたような表情を浮かべる加奈になった翔太ー

「へへへへ、その顔で怯えてると、可愛いなぁ」
龍介はそんな言葉を口にしながら、笑顔で加奈のほうを見つめると、
「ーー今から俺がお前に告白するーお前は嬉しそうに
 俺の告白に応えるんだー」と、言葉を口にしたー

「え…で、でも、そんなこーー…」

加奈になった翔太が否定の言葉を口走ろうとすると、
龍平は、加奈の髪を引っ張りながら言い放ったー

長い髪を引っ張られると、自分の髪を引っ張られるより
とても痛いー

そんな風に怯える加奈になった翔太に対して、
龍平は今一度言い放ったー

「ーお前は、自分が水野加奈になったという自覚が足りないようだな?」

そう呟くと、龍平はさらに言葉を続けたー。

「ーー”わたしは水野加奈”って言って見ろ」

その言葉に、加奈になった翔太は震えながらー
とても恥ずかしそうに「わ…わた…わたしは…水野…加奈」と呟いたー

「ーーダメだ。やり直しー」
龍介が淡々とそう呟くー

「ーーーーーーーーーー」

そんな光景をーー
教室の外から、身を隠すようにして、
いじめっ子仲間の眼鏡男子・拓斗が
見つめていることにー
龍介は気づいていなかったー。

②へ続く

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コメント

いじめっ子によって、無理やりクラスの美少女にされてしまった彼の運命は…!?

とっても大変なことになりそうですネ~!

続きはまた次回デス~!

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