いじめっ子から、
”クラスの子の皮”を着て、その子になりきるように強要された
いじめられっ子…
果たして、その運命は…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「わたしは水野加奈…わたしは水野加奈ー」
加奈を着た翔太は、
何度も”自分が加奈だと”言わされるー、
そんな練習をさせられたー
「へへへ…だいぶ自然に言えるようになってきたなー」
いじめっ子の龍介は満足そうにそう言うと、
「ーじゃあ、そろそろ”告白”するか」
と、笑いながら言うー。
「俺がお前に告白するから、お前は嬉しそうに
返事をするんだー
もちろん、俺と付き合う方の返事を、なー」
龍介がそう言うと、
加奈は「ーこ…こんなことしてーー…ど…どういうこと!?」と
困惑しながら叫ぶー
「ーーーーー」
だが、龍介は反応しないー。
「ーね…ねぇってば!?ぼ、僕ー…」
加奈の声でそこまで叫ぶと、龍介は
「ーお前は水野さんだ!」と、怒りの形相で叫び返したー
「ーー”僕”ー?
ちがうだろうが。
お前の一人称は”わたし”だろ?」
龍介が怒りの形相で加奈を睨みつけるー。
「いいか、俺はお前のせいで、水野さんに振られたんだー
責任は取ってもらうぞー。
お前が水野加奈として、俺と付き合うんだー
異論は許さない」
龍介のそんな言葉に、加奈は震えるー。
「ーで、でも…ぼーーー」
龍介が、その言葉を遮り、加奈の口を無理やり手で塞いだー
「”ぼく”じゃねぇ! ”わたし”だろうが!」
怒りの口調で、加奈に対してそう言い放つと、
「わ…わた…わたしー…ーー」と、加奈が涙目で言い放ったー
「分かりゃいい」
龍介はそう頷くと、「じゃあ、告白するぜー」と、
嬉しそうに、加奈に対して告白を始めたー
「ーー…こ、こちらこそ…よ、よろしくね…」
震えながらそう答える加奈ーー
もはや、無理やり加奈にされてしまった翔太に
”逆らう”という選択肢は存在していなかったー。
・・・・・・・・・・・・・・・
後頭部に手を触れる加奈ー。
「ーど、どうしよう…」
困惑の表情を浮かべるー。
脱ごうと思えば、脱ぐことはできるー。
後頭部のあたりに不自然な引っかかりがあって、
そこの部分から、皮になった加奈を脱ぐことができるようだー。
だが、龍介に”一度脱げば、すぐに俺にはわかる”と脅されていて
怖くて怖くて、それはできなかったー。
あのあとー
龍介から”これ”は、本物の加奈であることを告げられたー。
”人を皮にすることができる特殊な針”で、
本物の加奈を皮にしたのだ、とー。
しかもー
”水野さんを脱いだら、その場で水野さんは人間に戻る”と、脅されているー。
つまり、”加奈を脱いだ瞬間に、自分が加奈に何かをした犯人”に
されてしまう可能性が高い、ということだー。
実際にはーーー
”皮にされた加奈”を脱いでも、加奈はそれだけでは人間には戻らないー。
既に、昼休みに強引に加奈を皮にした龍介が
一度加奈の皮を着て
職員室に”体調が悪いので早退します”と、加奈のフリをして言いに行っているー。
その後、龍介は翔太に加奈を着せるため、
加奈に皮を脱いでいるが、
加奈は人間の姿には戻っていないー。
つまりは、翔太が今、ここで加奈を脱いでも、
加奈はすぐには人間には戻らないー。
しかし、龍介は知っているー
”脱げばすぐに元に戻るー。だから、脱いだらお前が犯人扱いされる”と、
脅しておけば、翔太に加奈を脱ぐ度胸はない、とー。
「ーーー」
案の定、加奈の姿のまま、加奈の家の前にやってきた翔太は
震えながら加奈の家に帰宅したー。
加奈の両親とは、まともに話すことができなかったー。
”どうかしたの?”と、何度も何度も心配されたが
体調不良で誤魔化したー。
部屋の中でずっと体育座りをして、
着替えることもできずに
加奈の身体のまま過ごし続けていたものの、
やがて、トイレを我慢することは出来ずに、
半泣き状態のまま、加奈の身体で
手探りのトイレを済ませたー。
”水野さんー……ごめんなさいー”
翔太は心の中で何度も何度も加奈に対して謝罪の言葉を口にするー。
けれどー、
自分でもどうしたらいいのか分からないー。
今すぐにでも、加奈の皮を脱いで、
加奈の両親に助けを求めるべきなのかもしれないー。
でもー
そんなことをしたらー
「僕はー僕は、どうすればいいんだー」
そう思いながら、加奈になった翔太は頭を抱えたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あのなぁ」
翌日ー。
龍介は怒りの形相でそう呟いたー。
加奈になった翔太は、あのあと
トイレ以外のことをほとんどまともにすることが出来ず、
翌日の今日、
昨日から一度も着替えていない状態、お風呂に入っていない状態ー、
髪も寝ぐせまでついている状態で、学校にやってきたのだー
「ーお前に、水野加奈としてのプライドはないのか?
水野さんが、そんなみすぼらしい姿で学校に来るのか?」
龍介がうんざりした様子で言う。
”そんなプライド、ないよ”
と、言いたかったが、翔太にそんなことを言う勇気は
残念ながら、存在しないー。
「ーーやり直しだ。
お風呂に入って、ちゃんと着替えもしろ
今日は早退して、明日から来るんだ」
龍介のそんな言葉に、
「お、お、お風呂は、無理だってば」と、加奈が反論するー
「み、水野さんの身体でーーか、勝手にーそんなことー」
加奈がそう言うと、
龍介は「水野さん?」と、不満そうに表情を歪めるー
「お前は誰だ?」
突然、龍介が言うー。
「ーえ…」
加奈が戸惑うと、
龍介は「お前は誰だ?言ってみろ」と、強い口調で返してくるー
「だ、だから、ぼ、僕はーさ、坂山翔太だよー」
加奈になった翔太の必死の抵抗ー。
しかし、龍介はそれを否定した。
「違う」
とー。
何が違うと言うのか。
翔太自身、怒りを感じながらも、逆らうことはできず、
「わ、わたしは…水野加奈ー」と、呟くー
「そうだ。お前は水野加奈だ。
だったら、そんな状態で学校に来ない。
そうだろう?」
龍介がそう言うと、加奈はムッとした様子で
振り返ると、早退して家に向かい始めるー。
”もう、どうにでもなれ”
投げやりになってしまった翔太は、
加奈の身体でそのままお風呂に入り、
「どうせ、わたしは水野加奈ですよーだ!」と、
不貞腐れた言葉を発しながら
ヤケクソ気味に身体を洗い始めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・
「なぁ、ちょっといいか」
友人の一人…、一緒に翔太をいじめていた
眼鏡の男子生徒・拓斗から声を掛けられた龍介は
「ん?おう!」と、何も考えずに
拓斗と共に別の教室へと移動するー。
「今日ー、坂山のやつ、休みだったけどー
何故だか知ってるか?」
拓斗のそんな言葉に、龍介は「さぁ」と答えるー。
翔太が休みなのは”当たり前”だー。
翔太は”加奈を着ている”のだから、
他人から見れば”翔太はいない”
そんな状況になるー。
しかし、拓斗は笑みを浮かべたー
「ーーおいおいー、友達にも嘘をつくのか?」
とー。
「なに?」
龍介が困惑の表情を浮かべると、
拓斗はニヤッと笑ったー
「ー”わたしは水野加奈”だったっけー?
言わせてたセリフー」
拓斗のそんな言葉に、
龍介は表情を歪めながら
「お前ー…まさか、見てたのかー」と、
困惑に満ちた声を吐き出したー
あの空き教室は、入口の窓に
黒い紙のようなものが貼られていて、
外からは中が見えないはずだー。
龍介は、そう頭の中で考えるー。
しかし、拓斗は
”龍介が一人で翔太を呼び出したこと”を知り、
揶揄おうと思い、あの日、龍介を尾行したー。
そしてー
例の空き教室の窓はー
紙の隙間から中の様子が実はちょっとだけ見えるためー
そこから拓斗は中の様子を見ていたのだー
「面白そうなことしてるじゃないかよー。
俺も混ぜてくれよ」
拓斗の言葉に、
龍介は首を横に振ったー。
「だめだ」
とー。
「ーーははは、何でだよー。
ずっと仲良くやってきたのに、仲間外れはよくないんじゃないか?
”人を皮にするなんちゃら”って言ってたよなー?
俺も仲間にしてくれよ」
拓斗は眼鏡をいじりながら笑うー
「ーーー…」
龍介はそんな拓斗のほうを見つめながら
少し考えると「そうかそうかー…わかったー」と、頷いた。
「そうこなくちゃ」
拓斗が笑うー。
だがーーー
龍介は、人を皮にする針を手にするとー
それを手に、拓斗に襲い掛かったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
加奈になった翔太は、開き直って、
加奈として学校に登校していたー。
”もう、どうにでもなれ”
髪も綺麗に整えてー、
加奈として学校に登校するー。
”坂山くんが、行方不明になりました”
担任の教師が言うー。
(僕はここにいるよ)
うんざりした様子で不機嫌そうに頬杖している加奈ー。
だが、その中身が”翔太”とは誰も気づいていないし、
翔太自身、龍介に逆らうことが出来ずに、
言うことは出来ないー。
親も心配しているだろうかー。
加奈の姿のまま、深々とため息をつくー。
そういえば、今日は
いじめっ子の一人、眼鏡をかけた森嶋拓斗の姿もないー。
(あんなやつ、いなくていいけど)
加奈は不満そうに、拓斗の机を見つめるー。
臆病な性格でもある翔太は、
面と向かってこんなことを言うことは絶対にできないー。
だからー、
こうしていつも、心の中で”やつら”に反抗するー。
それが、彼に出来る唯一の”抵抗”だったからー…。
そんなことを思いつつ、
また、大きくため息をついていると、
龍介が近くにやってきたー
「今日の放課後も、”いつもの場所”に来れるか?」
龍介の言葉に、
「ーうん」と、怯えた表情で頷く加奈ー。
「ーへへへへー」
そんな加奈の様子を見て、満足そうな表情を浮かべた
龍介は、そのまま自分の座席に戻って行ったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
放課後ー
ふと、加奈として過ごす龍介は、
廊下の水道のところにあった鏡に、自分の姿が映るのを見て
ドキッとしたー。
”やっぱり、水野さんはかわいいー”
そんな風に思うー。
”僕なんかじゃ、手の届かない存在に、僕がなっている”
そんな現実にドキドキしてしまうー。
思わず顔を赤らめながら心臓をバクバクとさせるー。
だがーーー
ふと、「やっぱり、”わたしは”かわいいー」と、
そんな風に、無意識のうちに言葉を口にしたー
すぐにハッとして
「えっ…?」と、加奈を着た翔太は混乱の表情を浮かべるー。
「ーーー……」
今ー、”なにかが”おかしかったー。
言葉には言い表しがたい不安を感じながら
加奈は首を横に振ると、そのまま龍介に呼び出されている
教室へと向かったー。
「ーーーいやぁ、まさか水野さんと付き合えるなんてー
本当に夢のようだよ」
龍介が嬉しそうに笑うー。
「ーーーーーー」
加奈が困惑した表情を浮かべながら
龍介のほうを見つめると、
「ーーお前は、俺の彼女なんだろ?」と、
確認の言葉を口にしてきたー。
「ーーう…うんー」
逆らうことはできないー。
龍介を満足させるために、そんな言葉を口にするー。
「ーへへへーなら…」
龍介はそう言うと、突然、強引に加奈にキスをしてきたー
「ちょっ…!?えっ!?」
今日はいつもよりさらに強引だー。
そう思いながら、
”加奈を着た翔太”からすれば、”男同士でキスをしている”ー
それも、自分のことをいじめてくるようなやつとキスをしている状態に
吐き気すら覚えながら、龍介を拒もうとするー。
しかしー、
龍介からすれば、恐らく”好きな”…いいや、
”彼女の水野さん”とキスをしている気分なのだろうかー
「ーな、中身は…”僕”なのに!」
あまりの気持ち悪さに、加奈を着ている翔太はそう叫ぶー。
「ーククククー
”僕”っ娘な加奈ちゃんも、最高だー!」
てっきり怒られると思ったものの、
ご機嫌そうな龍介はそう言い放つと、そのまま何度も何度も
加奈にキスを繰り返したー。
ようやくー
龍介の欲望が満たされてー
龍介と一緒に下校していた加奈は、
困惑の表情を浮かべながら、龍介のほうを見つめたー
”ーーーーーやっぱり、”わたし”、いじめをするような子は嫌いー”
加奈は嫌悪の目で龍介を見つめるー
”坂山くん”をいじめてたのは、知ってるんだからー。
加奈を着た翔太はー、
”自分のこと”を”坂山くん”を、まるで他人のように心の中で呟きながら
急速に何かに狂いが生じていることを、
自覚できないまま、龍介のほうを見つめたー。
③へ続く
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コメント
次回が最終回デス~!
なんだか、翔太くんの様子もおかしくなってきていますネ~!★
どうなってしまうのかは、明日、チェックしてみてくださいネ~!
今日もありがとうございました~!
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