<憑依>入社した会社の様子がおかしい③~欲望~(完)

”この会社、変ー”

新社会人初日ー、
入社した会社は、
”以前見た時”とはまるで違う、危険な雰囲気に変わり果てていたー。

戸惑う新入社員たちの運命はー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーねぇ…二人ともどうしちゃったの!?」

元々いた部屋に戻り、
”新入社員だけ”になったタイミングで菜穂が
茶髪のおしゃれな感じの涼香と、眼鏡をかけた百恵の二人に
そう言い放ったー。

二人とも、会社の異様な雰囲気に反発しー
その後”特別研修”とやらに連れていかれて、
戻って来た時には、別人のように豹変していたー

セーラー服姿の涼香と、ラバースーツ姿の百恵が笑うー

「どうって?」
百恵の言葉に、菜穂は
「ふ、二人とも、何でそんな格好してるの?!」と、
純粋な疑問をぶつけるー

「え~?そりゃだってー、エロイじゃんー」
百恵はそう言いながら、ラバースーツの上から
自分の身体の味わうかのようにー
両手で身体をなぞっていくー

「ーーそうそうー
 新社会人なのに、セーラー服着てるとか、最高だぜ」
涼香はそう言いながら、自分のスカートを触りながら
ニヤニヤと笑みを浮かべるー

「ーー…な、なんでそんな男の人みたいな喋り方ー…」
菜穂はさらに食い下がるー。

小鈴も、そんな二人に対して
「ー”特別研修”って、何をしたの?」と質問するー

小鈴も菜穂も
”社員たち”が今、この場にいないからか、油断していたー。

涼香も百恵も、既に”他の社員と同じように”
男の魂に支配されてしまって、その男そのものになってしまっているのにー

「ーーふふふふー
 ”素敵なもの”を貰ったのー」
涼香はそう言いながら笑うー

「それでねー、わたしが間違ってるって気付いたのー
 だってわたし、こんなにエロイんだからー
 たっぷりそれを楽しまなくちゃ、損だし… ひひひひひ」

涼香はそう言いながらスカートをめくるー。

そんな様子に、男性新入社員の一平は、目もくれずー、
会社から配布された書類に目を通しているー。

「ーーーー……帰る」
菜穂は怒り心頭、という様子でそう呟くー

「ーーーーえ」
小鈴は”危険だよ!”と、止めようとしたー。

しかし、菜穂は
「今ならだれもいないし、バレないうちに、わたし、帰るー
 もうこんな会社、いたくない」と、そう言い放つと、
小鈴に対しても「こんなところにいたら、この二人みたくおかしくなっちゃうよ」と、
涼香と百恵を指さしながらそう言うと、
そのまま部屋を飛び出したー

「あ!ちょっと!」
小鈴の言葉に、「放っておけよー」と、一平が呟くー。

「ーえ」
小鈴は急に一平が声をかけて来たことに少し驚きながらも
「うーー…うん…」と、表情を曇らせながら呟いたー。

涼香と百恵が、そんな光景を見つめながら笑みを浮かべるー。

「ひとり、逃げたぜ」
涼香が小声でそう呟くとー
”男の魂”同士、離れた場所でも意思疎通ができるのか、
相手からの返事を聞いたような反応を示しながら
涼香は笑みを浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーー…何なの、この会社ー」
真面目な性格の菜穂は、
苛立っていたー。

せっかく、自分の好きなことを仕事にできたと思ったのにー、
せっかく、今日から新社会人としてがんばって行こうと思っていたのにーー。

入社式の様子を思い出す菜穂ー

就職活動中に、野沢社長のこれまでの生い立ちを見て、
感動し、”この人の会社で働いてみたい”と思ったのも、
菜穂がこの会社を選んだ理由の一つー。

だが、入社式の最中の野沢社長は、
そんな憧れをあっという間に崩してしまったー。

社員の愛梨沙とキスをしたり、
自分たちの身体がエロイだのなんだのー

「ーーーーはぁ、最悪ー」
菜穂は、受け取ったばかりの社員証をうんざりとした
表情で敷地内の地面に叩きつけると、
そのまま出口の方に向かっていくー。

だが、その時だったー

「ー逃げるのは、感心できないわねー」

「ー!?」
菜穂がビクッとして振り返ると、
そこには、破れた黒タイツを穿いている愛梨沙の姿があったー

何故タイツがビリビリに破れているのかは分からないけれどー
異様なものをそこに感じたー

「ーに、逃げるんじゃありません!
 わたし、退職します。
 必要な書類があれば後から出しますので
 お世話になりましたー」

吐き捨てるようにそう言い放つとー、
菜穂は振り返って外に出ようと走り出すー。

しかしーー

「ーー!!!!」
菜穂の前に立ちはだかった人物はー、
菜穂にとっても見覚えのある人物だったー

そしてーー

「”俺の魂”ーお前にもやるよ」

そう呟く男にキスをされてー
男の魂の”分身”を、菜穂は直接憑依させられてしまったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一方ー、
残る新入社員4人がいる部屋には、
”用事がある”愛梨沙の代わりに、
別の女性社員がやってきていたー。

しかし、その女性社員は、チャイナドレス姿で
自分の足を机に叩きつけたりしてー
太腿を涼香たちに見せつけて盛り上がっているだけでー、
何の役に立つこともしていないー

涼香と百恵は、そんなチャイナドレスの社員の足を嬉しそうに
見つめながら「すっげぇ~!」だの「やっべぇ~!」だの、
興奮しているー。

「ーーー…」
小鈴は、耐えたー。
菜穂は、無事に逃げることができただろうかー。

たった数時間だったけれどー、
もし、この会社が”おかしくなって”なければー
菜穂とはこの先、仲良しな同期になることができたような気もするー

「ーこの女はさ~美脚だからチャイナドレスが似合うと思ったんだよねぇ~」
愛梨沙の代わりにやってきた女性社員が、そう言いながら
涼香のほうを見つめるー。

涼香と百恵は嬉しそうに、その女の足を褒めてー
さらにはーペロペロと舐めたり、イヤらしい手つきで触っているー

「ーーーーー…」
小鈴の不安はさらに高まるー。

そう言えばさっきー、
男性新入社員の一平も、トイレに向かったきり戻ってこないー。
まさか彼も”特別研修”とやらの餌食になってしまったのだろうかー。

そんな不安を覚えながらも、小鈴は耐えたー。

”今、行動を起こせばー”
何が起きているのか分からないけれど、
自分も涼香や百恵のようになってしまうような、
そんな気がしたー。

初日ー
それを終えればー
”自然と”退社することができるはずだー。

退社したら両親にこのことを相談して
今後の対応を考えていこうー。
小鈴は、そう考えていたー。

とにかく、今、何か行動を起こすことは、
とても危険なことだとー。

ガラッー

突然、小鈴たちのいる部屋の扉が開いたー。

するとそこにはーー
バニーガールの格好をした菜穂の姿があったー

「へへへへへー
 反抗的だったこの女も、俺のものだぜー」
菜穂はそう言うと、モデルのように歩きながら
中に入ってきて、
百恵と涼香の前で、網タイツに包まれた足を
嬉しそうに見せ始めたー

「ーーえ……」
小鈴は呆然とするー

さっき、この会社に見切りをつけて立ち去ったはずの菜穂が、
バニーガールの格好をして、戻ってきたのだー。

明らかに、明らかにおかしいー

「ーな…何が…あったのー?」
小鈴が思わず、そんな言葉をかけてしまうー。

「ん~~~?
 ふひひひー
 さぁねぇ~?」

菜穂は、さっきまでとは別人のような表情を浮かべながらー
バニーガールの服を見せびらかすように、涼香たちの前で
再び色々なポーズを取り始めるー

そこに、愛梨沙も戻ってきて、
「さぁ、続きを始めましょうー」と、
これからの研修のスケジュールやら何やらを色々話し始めたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

やがてーー
夕方になり「今日はここまでにしておきましょう」と
愛梨沙がそう呟いたー。

酷い時間だったー
菜穂まで豹変してしまいー、
トイレから戻って来た一平は、暗い表情を浮かべたままー

菜穂、涼香、百恵は三人で盛り上がりー、
小鈴と一平は、まるで孤立したような状態だったー。

しかし、ようやく1日が終わったー

「ーーーお疲れ様でしたー」
小鈴が、愛梨沙に頭を下げながら帰ろうとするー。

菜穂、涼香、百恵の三人は
会社から帰る素振りも見せずに、
”服の交換”とやらをし始めてー
平気でその場で服を脱いでー
今度は菜穂がセーラー服、涼香がラバースーツ、百恵がバニーガール姿になって
三人で楽しみ始めるー

小鈴はそんな三人と関わらないようにして、
この会社から立ち去ろうとするー。

そんな小鈴の姿を背後から見つめながら、一平は
少しだけため息をつくと、
そのまま男子トイレの方に向かって歩き出したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーふぅ…」
小鈴は、会社の建物のほうを振り返りながら、
敷地の外へと向かうー。

「ーーーどうでしたか?」
ふと、そんな声が聞こえて、小鈴が振り返ると、
そこには警備員の男がいたー。

今日の朝、緊張しながらこの会社にやってきた時に、
気さくに声をかけてくれた警備員のおじさんだー。

残念ながら、今日の朝のような
”緊張と期待”が入り乱れた気持ちは打ち消されて
この会社には失望してしまったけれどー…。

小鈴が、苦笑いを浮かべながら
「ーちょっと思っていたのと違ってー」と、
寂しそうに言うと、
警備員の男も苦笑いしながら
「最近ー、何だか会社の雰囲気変わっちゃいましたからねー」
と、建物のほうを見つめながら呟いたー。

「ーーーそうですよねー…
 前に来た時と全然雰囲気が違ってー」

小鈴は、そんな風に呟くと、
警備員の男も頷きながら
言葉を続けたー

「ーーーでも、”今”の方が全然いいでしょう?」

とー。

「え」
小鈴が警備員の言葉に、少し驚いて反応を示すと、
警備員の男が笑みを浮かべながら近づいて来たー

「ーーーへへへへー
 俺の魂を憑依させたあの女どもー
 素晴らしいでしょう?」

その言葉に、小鈴は驚くー

「えー…ど、どういうこーー」

しかし、その言葉は最後まで発することはできなかったー
警備員の男にキスをされてー
警備員の男の魂の分身が、小鈴の中に入り込むー

咳き込んで、その場にしゃがみ込む小鈴ー

「ーーくくくー…
 あいつら、いつもいつも調子に乗りやがってー
 俺のこと”髪が薄くなってる”とか、”なんか気持ち悪い”とか
 影で蔑んでやがったー

 だから、俺は手に入れたこの力で、あいつらを全員支配してやったんだー」

警備員の男は言うー。
元々、彼は気さくな感じの性格だが、
下心を隠しきれておらず、いつも出社する社長や女性社員らを
イヤらしい目で見ていたー

そのことに気付かれて、陰口を叩かれていたのだー。

そして、陰口を叩かれていることに気付いた警備員の男は
復讐を決意したー
ネットで手に入れたこの、自分の魂を分裂させて憑依する力でー、
社長も、社員らも全員を支配したのだー

「ーークククー、この会社は俺の楽園になるんだ!
 どいつもこいつも、欲望まみれにしてやる!」

警備員の男がそう叫ぶと、
ゆらりと立ち上がった小鈴が笑みを浮かべながらー
「クククーこの女も俺好みだぜー」と、邪悪な言葉を口走ったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーーあ~~~~腹痛ぇ…」

一方、新人の中で唯一の男性社員・一平は、
腹を壊してトイレに籠っていたー。

「ーーていうか、この会社、なんなんだろー。
 まぁ、別に興味ないけどー」

一平が、愛梨沙たち女性社員が過激な行為をしていても
無反応だったのはー、
一平自身、”女性に全く興味がないため”だー。

この会社に入ったのは、アクセサリーなどの装飾品を
”見る”ことが趣味のため。
身に着ける人間に興味はないー。

「ーーーま、いっかー。
 仕事なんて金貰うためだけの作業だしな」

何も知らない一平は、そう呟くと
ようやく落ち着いたお腹の痛みにホッとしながら
そのままトイレを後にしたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーただいま~」
小鈴が帰宅するー

「あ、おかえりなさい~」
母親が小鈴の帰宅に気付き、小鈴に”どうだった?”と聞くと、
小鈴は笑みを浮かべながら答えたー

「ーうん!とっても素敵な会社だったよー」
とー。

そして、自分の部屋に戻った小鈴は不気味な笑みを浮かべたー

「ーこの身体も、たっぷり欲望のために使ってやるからなー」

そう、囁きながらー。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

最終回でした~☆

社員たち全員に憑依している男は、
警備員の男でした~!

ちなみに、他の男性社員は、
社長や女性社員らが憑依され始めた頃に
ほとんどが解雇されています~!

お読み下さりありがとうございました~!!

コメント

  1. TSマニア より:

    まさかの警備員でしたねっ!!

    さすが無名さんっ!!

    一平は普通の新入社員でしたねっ!!

    警備員の欲望はこの会社だけではすまない気がします…

    • 無名 より:

      コメントありがとうございます~!

      一平は、ミスリード的キャラでした~笑
      警備員の欲望…確かに広がっていきそうデス…!