<憑依>わたしが半分に!?①~混乱~

ある日ー
”わたし”は、半分になってしまったー

何故か、男子生徒の身体になってしまった少女ー…
しかし、”わたし”は、いつも通り行動していてー…?

どうして、こんなことにー…!?

・・・・・・・・・・・・・・・・・

昼休みー

高校に通う、浅井 咲織(あさい さおり)は、
昼食を終えると、自分の座席で次の授業の準備を進めていたー

咲織は誰にでも優しいタイプの女子生徒ー。

成績もほどほどに良く、気配りもできることから
同性異性問わず、頼りにされるような
そんなタイプの女子生徒だったー

「ーーえ?なになに?」
親友の女子生徒・泰葉(やすは)に声を掛けられて
振り返った咲織ー。

「ーーあ、うん、そうそう!そこ!
 え?やってなかったの?」

宿題の相談をされて、咲織がそれに答えるー。

今日この日もー
咲織にとっては”いつも通り”な、
普通の1日が流れるはずー…

だったー。

しかしー
昼休み終了間際ー
自分の座席でウトウトしていた咲織はー
昼休みの終わりを告げるチャイムの音で
目を覚ましーー

そしてー”異変”に気付いたー。

「ーーー!?」

”あれー?”

咲織はウトウトから解放されて、
周囲を見渡しながら、そんな風に思うー

”自分の座席”は、窓側から3列目ー
ちょうど教室の真ん中あたりにあるのだが、
いつの間にか廊下側の前から2番目の
座席で眠っていたのだー

”ーーなんで、わたしがここで寝てるの?
 寝ぼけて他の人の座席で寝ちゃったのかなー?”

そんな風に思いながら、
その座席が、クラスで孤立している男子生徒・
大竹 晴彦(おおたけ はるひこ)の机で
あることに気付くー

晴彦は
孤立しているー…と言っても
いじめを受けているわけではなく、
とにかく”自分の世界”に籠っているような男子生徒で
悪く言えば”誰からも相手にされていない”
そんな、状況だったー。

その晴彦の机で眠ってしまったー

咲織はそんな風に思いながら、
周囲を見渡すー。

”ふ~…大竹くん、いつも昼休みになっても
 机で寝てることが多いからーー
 邪魔しちゃったかな…?”

晴彦のことだー
恐らく自分の机に戻ってきて咲織が寝ていたら
声を掛けることなく、どこかに立ち去っていく…
そんな気がするー

咲織は申し訳ない気持ちになりながら
立ち上がって、
ふと、下を見たー

「ーーーー……!?」

そしてー
咲織は更なる異変に気付いたー

下を見ればー
”いつもなら”
高校の制服に包まれた自分の身体と、
スカートが見えるー。

がー、
何故か自分がズボンを履いているー

「ーーーえっ!?」
驚く咲織ー

「ーー…えぇっ!?」
驚いた直後に、今一度驚くー

何故なら”えっ!?”と発した声がー
”自分の声”ではなかったからだー。

”え…?ど、どういうことー?
 い、今、自分の口から男の子の声がー!?”

混乱していく咲織ー

何故か晴彦の机で寝ていてー
何故か自分がズボンを履いていてー
何故か自分の口から男子の声が出てー…

これは、いったいー…?

そう思っているとー
背後から声がしたー。

「ーー大竹くんーどうしたの?」
とー。

「ーーえっ!?」
咲織は驚くー。

咲織のことを、女子が”大竹くん”と呼んだのだー

「ーーお、大竹ー…? え?」
”わたしは咲織なんだけど…?”と思いながら振り返ると、
そこには咲織の親友・泰葉の姿があったー

誰にでも優しい咲織の親友だからか、
泰葉も、基本的に誰にでも声を掛けるタイプー。

そんな泰葉はー
自分の机から起き上がって”挙動不審な行動”をしている咲織ー

いいやーー…
”晴彦”に声を掛けたのだー

「ーーーど、どうしたの?大竹くんー?」
泰葉が困惑した表情を浮かべるー

「ーえ…わ、わたしー…」
咲織は困惑するー

そしてー
すぐに教室の窓の方に向かうとー
”窓に反射した自分の姿”を見て呆然としたー

窓に反射した自分の姿はー
クラスで孤立している男子生徒ー
大竹晴彦そのものだったからだー

「ど…どういうことー!?」
晴彦がそう叫ぶー

「ーーえ…わ、わたしー…さ、咲織ーー…なんだけどー」
晴彦が呆然としながら、心配そうについてきた泰葉に言うと、
泰葉は「え~?それ、何の冗談?」とクスクスと笑ったー。

「ーーえ…」
晴彦になってしまった咲織は困惑するー。

自分は確かに浅井 咲織だー。
さっきまでの記憶もちゃんとあるし、
思い込みなどでは決してないー

しかし、泰葉の言う通り、身体は完全に
”大竹 晴彦”になっているー

”え…?何?何なのー?わたし、どうしちゃったの?”

そう思いながら”自分の机”のほうを見つめる晴彦になってしまった咲織ー。

咲織の机には、”誰もいない”状態ー

”嘘…?わたし、大竹君の姿になっちゃったの?”

咲織は、この意味不明な状況をー
”わたしが大竹君の姿に変身してしまった?”と、首を傾げながら
考えたー

そうなればー
”本物の晴彦”もいるはずだー。

二人晴彦がいれば、親友の泰葉にも
”わたし、大竹君になっちゃったの!”という言葉を
信じてもらえるかもしれないー

「ーあ、ごめんー…ち、ちょっとー」
そう泰葉に言いながら廊下の方に向かおうとする
晴彦になってしまった咲織ー

まずはホンモノの晴彦を見つけ出して
泰葉や、クラスのみんなに、”わたしは咲織”ということを
信じてもらわないとーーーー

その時だったー

「うん!じゃあまたあとで~!」
隣のクラスの生徒に手を振りながら
教室に戻ってきた女子生徒を見て、
晴彦の姿になってしまった咲織は呆然としたー

「え…わ、わたし!?」
思わず叫んでしまう晴彦ー

「ーー?」
クラスメイトたちが、異様な行動をとる晴彦のほうを
見つめるー。

いじめは受けていないとは言え、
元々晴彦は一人でブツブツ呟いていたり
”何を考えているか分からない”感じがあるため、
彼のことを内心では嫌っている生徒や
関わろうとしていない生徒は多いー。

「ーーー…え?」
教室に戻ってきた自分自身ー、咲織は
晴彦のほうを見て不思議そうな表情を浮かべたー

「え…ちょっと待ってー…ど、どういうことー?」
晴彦になってしまった咲織は、
咲織の方に近付いてそう言い放つと
咲織は「お、落ち着いて…?ど、どういうことってー何が?」と
困り果てた様子で返事をしたー

”いつもの咲織”の反応だー
晴彦になってしまった咲織にもそれは理解できたー

”もし”
自分が逆の立場ならー。
”晴彦”から急にこんなことを言われれば、
こういう反応をするだろうー

「ーー(え…どういうことー?何でわたしも普通にいるの?)」
晴彦になってしまった咲織はそんなことを考えるとー

”入れ替わり”というワードが頭の中に浮かんできたー

そんなこと、現実で出来るはずがないー。
そうは思いつつも、
目の前にいる”わたし”に対して
晴彦になった咲織は聞かずにはいられなかったー

「お、大竹くんー…じゃないよね?」
とー。

「ーーーお、大竹くんーー?
 そ、それはー……自分のことでしょ?」

と、咲織は困惑しながら晴彦のほうを指差してくるー

「そ、そうじゃなくて…わ、わたしは、そのー」
晴彦になった咲織はどう説明していいか分からず困惑するー

一瞬”入れ替わった”のかとも思ったが、
目の前にいる咲織は、何が何だか分からない、というような
表情を浮かべているー

”咲織”だからこそ分かるー
目の前にいる咲織は、咲織自身だとー。

「ーーえ……えっとー…わたしも、咲織でー…」
晴彦がそう言おうとすると、
「おいおい、浅井さん困ってるだろ?」と、
男子生徒の一人が口を挟んできたー

それでも食い下がろうとしたものの、
孤立している晴彦だからー、だろうか。
周囲から、”やめろよ!”という声が強まりー、
晴彦は渋々と座席へと戻ったー

「ーーーえ……な、何…?」
”咲織”はそう呟くと、首を傾げながら
駆け寄ってきた親友の泰葉と会話を交わし始めたー

「ーーーど、どうなってるのー?」

晴彦は頭を抱えるー。

たしかにー
”わたしは”咲織だー。
けどー、これは一体ー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

放課後ー

状況が分からないまま、とりあえず保健室で
相談してみようかなー
と、考える晴彦姿の咲織ー。

しかしー
保健室に向かっていると、背後から
「大竹くん!」と呼び止められたー

振り返ると、そこには咲織の姿ー

「あ、わたしー…あ…えっとー…」
晴彦が戸惑っていると
咲織が「昼休みの時のお話ー…良ければ聞くよ?」と
いつものように優しい笑みを浮かべながら
晴彦に声を掛けて来たー。

「ーーーーーー」

やはりー
目の前にいるのは”わたしのフリをした大竹くんじゃない”と、
そう心の中で思うー

表情や仕草、話し方ー
全てが”わたし”そのものー

それならー…

”もし、ホントにわたしなら、
 きっとしっかり話せば信じてくれるはずー”

そんな風に思いながら、
「ーーあ、うんー…」
と、”話を聞くよ?”と言ってくれた咲織に対して、
そう言葉を返すと、
咲織と共に、あまり人が来ない廊下の一角まで移動したー。

そしてー
言葉を口にするー

「実はーわたしも…咲織でー」
晴彦の身体でそう言い放つと、
咲織は少し困ったような顔をしながら
「ーーーま、待って…どういうことか、何が起きてるのか
 一から説明してくれるかな…?」

と、戸惑いの表情を浮かべるー

「ーも、もしも大竹くんも”わたし”だって言うならー
 いきなりそんなこと言われるとわたし、困っちゃうのも分かるよね?」

咲織の言葉に、
晴彦になってしまった咲織は、
「ーう、うんーたしかにー」と頷くと、
そのまま言葉を続けるー。

今日の昼休みー
ウトウトしていたと思ったら
いきなり晴彦の机で目覚めたことー。

そして、晴彦になっていることに気付いて
困惑していたらなぜか”わたし”も、いつも通り存在していたことー

昼休みから今に至るまでの出来事を、
晴彦になってしまった咲織は、丁寧に、
全て説明してみせたー。

「ーーーーー…」
咲織は困惑した表情を浮かべながらも
「ーーじゃあ、いくつか確認させてもらっていいかな?」と、
質問を始めるー

質問内容は”咲織の個人情報に関すること”と、
”咲織しか知らないような出来事に関すること”ー。

確かに”わたし”が逆の立場だったら、
同じことを聞くだろうー、と
晴彦になった咲織はそう思いながら、
質問の答えをすらすらと口にしていくー

”わたしは咲織”だから、
当然、自分の個人情報も、自分のこれまでの出来事も理解しているー。

それを聞くと、咲織は
「ー本当に、わたしみたいだね…」と、困惑しながらも、
目の前にいる晴彦のことを、咲織本人と信じてくれた様子だったー

「ーでも、どうしてこんなことにー…」
咲織はそれだけ言うと、
「ー…分からないー」
と、晴彦姿の咲織は、そう呟いたー。

「ーーー……」
二人で沈黙するー。

しばらくして、ようやく咲織が口を開くー

「ーわたしの一部が、大竹君に乗り移っちゃったとかー…
 そういう状況なのかなー?」

咲織の言葉に、
晴彦姿の咲織は「う~ん…」と呟くー

事実上”ふたり”になってしまったような状態の咲織と晴彦の身体になった咲織ー

二人で色々な可能性を考えてみるー

どうやら入れ替わっているわけでもなさそうだし、
晴彦が、咲織になりきっているとも考えられにくいー

晴彦の中に咲織を模した人格が生まれて二重人格になったー…
なんて言うのも、咲織しか知らないようなことを知っている以上、無理があるー。
仮に晴彦がストーカーだとしても、幼少期の咲織しか知らないような思い出を
晴彦が知っているわけがないし、答えられるはずもないー。

と、なればーーー

”咲織の一部が何らかの原因で晴彦の身体に乗り移ってしまった”

これがー
一番可能性が高そうだと、二人で結論に達するー

「ーで、でもー
 今のままだと、別にわたしは困ることないけどー…

 そっちのわたしは困っちゃうよねー?」

咲織が言うー。

「ーーうん…」
晴彦になってしまった咲織も
”さっきまで普通に生活していた咲織”そのものー

元の身体のままの咲織は困らなくても、
晴彦になってしまった側の咲織は困ってしまうー。

「ーわかったー」
咲織はそう言うと、
「ー元に戻るために、わたしも力を貸すから、一緒にがんばろ!」
と、晴彦に声を掛けたー

晴彦になってしまった咲織はー
「自分に励まされるなんて、変な気分ー」と、笑いながらも
「ー優しく生きて来てー、ホントによかったー」と、
晴彦の姿のまま、安心した様子で微笑んだー。

何が、起きているのかー。
この先に、何が待っているのかー。

どうして”半分だけ”晴彦に憑依してしまったのかー。

二人はまだ、知らないー。

②へ続く

・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

半分だけ、別の男子に憑依してしまった咲織…

一体何が起こっているのでしょうか~?

続きはまた明日デス~!

今日は昨日に引き続き、600万アクセス記念小説も
18時に掲載するので、
そちらもぜひ楽しんでくださいネ~!

それではまた後程~★★!

コメント