一見すると”ごく普通の姉”を持つ、男子高校生ー。
しかし、彼の”姉さん”の中には
”親父”がいた…。
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「--あ、そういえば、美咲希が欲しがってたやつ、
今日スーパーで見かけたから買っておいたから」
「---え?ホントに!?お母さんありがと!」
母・娘・息子ー
3人で囲む食卓ー。
沢井(さわい)家には、
父親の姿が見当たらなかったー。
仕事が遅いわけではないー
単身赴任をしているわけではないー。
「---」
寂しそうに時折、キッチンの脇に置かれている写真を見つめる
沢井家の母親・功恵(いさえ)-。
その写真にはー
沢井家の父親である剛志(つよし)が映っていたー。
「ーーーお母さん?大丈夫?」
姉の美咲希(みさき)が、そんな母親に声を掛けるー。
「--ーあ、うん、大丈夫ー」
母・功恵が寂しそうな表情を浮かべるー。
美咲希の弟であり、長男の和雄(かずお)は、複雑な表情を
浮かべながら父親・剛志の写っている写真を見つめたー
父・剛志はー
3ヵ月前に死んだー。
仕事帰りに乗っていたバスが、事故を起こしー
その結果、命を落としたのだー。
「---ごちそうさま」
和雄はそう呟くと、自分の部屋に戻っていくー
「----」
姉・美咲希がそんな和雄の方を見つめるー。
「--はぁ~~」
和雄は部屋に戻ると、母・功恵の寂しそうな表情を
思い出して、ため息をついたー
「親父…急だったからなぁ…」
とー。
父の剛志はとても家族思いの性格で、
高校生の娘・息子ともうまくやっていたー。
思春期の娘である美咲希とも関係は良好で、
当日もちょうどーーー
コン コンー
部屋がノックされて、和雄は考え事をやめて
部屋の入口の方を見つめると、
間もなく美咲希が入って来たー。
「---ふ~~~~~!
疲れたぁ~」
部屋に入って来た美咲希は、和雄の部屋のイスに座ると、
まるでおっさんのように、太ももをボリボリと掻き始めたー。
「---……ま~た急に部屋に入って来るー」
和雄が呆れた様子で言うと、
美咲希は笑みを浮かべたー
「だって”俺”が”俺”でいられるのは
お前の前でだけなんだからー。
頼むよ」
美咲希はそう言うと、ショートパンツから覗く
綺麗な太ももをボリボリと掻きむしるー
「--ちょ、俺だって、ほら、、年頃なんだから
姉さんの身体をそんな、、さぁ、、
分かるだろ?」
和雄が行くと、
美咲希は「ははは すまんすまん」と可愛い声で笑みを浮かべたー。
「-----まったくーー
”親父”はーー」
和雄はそう呟いたー。
”親父”-
そうーー
和雄の”姉さん”の中には”親父”がいるー。
和雄しか、知らない、事実ー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3ヵ月前ー
その前日までは、”ごく普通”の日常生活だったー
”ありきたりな1日”が
どれだけ幸せなことなのか。
和雄も、母親の功恵も、イヤというほど、それを思い知ることになったー
本当に、突然のことだったー。
”普通の日常”は、
何か”少しでも”運命が変わればー
いとも簡単に、壊れてしまうー。
夕方…
その日は部活などもなく、早めに帰宅していた和雄は、
電話に出た母親が、悲鳴を上げているのを聞いて、
驚くー
”夫と娘が事故に遭ったー”
そういう、知らせだったー。
その知らせを聞いたとき、母の功恵は、この世の終わりかのように
取り乱したー。
”事故”が起きたのだー。
ちょうどその日ー
仕事帰りの父・剛志と姉・美咲希が、ばったりと出くわして
同じバスに乗って帰宅しようとしていたー。
「--あ、お父さん!」
美咲希が手を振るー
美咲希は穏やかな性格で、
面倒見が良い”お姉さん”タイプの女子高生ー
父である剛志との関係も良好で、
剛志も美咲希のことを可愛がっていたー
その日はー
偶然、仕事帰りの剛志と、
学校帰りの美咲希が出くわして
そのまま二人、同じバスに乗っていたー。
「ーーーあ、そういえばお父さん!あのね」
美咲希がバスの中で父の剛志に対して言うー。
剛志が「ん?」と優しく美咲希の方を見つめると、
美咲希が微笑んだー
「--わたしね、好きな人が出来ーーー」
そこまで言いかけたその時ー
突然、バスが激しく揺れたー。
「--なんだ!?」
父の剛志が、戸惑うー
しかしー
”何が起きたのか”理解する前もなく
次の激しい衝撃がバスを襲いーー
そのまま、何が何だか分からないままーー
剛志も美咲希も意識を失ってしまったー
バスに対しー
突然、トラックが突っ込んできてー
その結果、玉突き事故が発生してしまったー
それに、父・剛志と長女の美咲希が
巻き込まれてしまったのだー
「親父…姉さん!」
知らせを聞いた長男の和雄は、母・功恵と共に
慌てて病院に駆け付けたー
しかしー
父の剛志は、既に死亡していたー。
一方ー
長女の美咲希は、負傷していたもののー
命に別状はなくーーー
無事に、目を覚ましたのだったー
「---美咲希…美咲希…よかった!」
母の功恵が美咲希に抱き着くー。
美咲希は戸惑った表情を浮かべながらも
「お、、お母さん…」と呟くー
3ヵ月前の事故でー
沢井家は、父である剛志を失ったのだったー
それから2日が経過した日ー。
和雄は学校帰りに、病院にお見舞いに行くー。
昨日まで母・功恵が美咲希に付きっ切りだったが、
今日は、夫が死亡してしまったことによって
色々とやることがあるから、と病院からは離れていたー
「---でも、姉さんが無事で本当によかったよ」
和雄が笑うと、美咲希もぎこちなく笑ったー。
雑談はいつものように出来るのだが、
なんとなく美咲希が無口な気がするー。
「---…親父があんなことになっちゃったしー
姉さんも怪我をして、大変だと思うけどー
俺に出来ることがあれば、なんでもするから」
和雄がそう言うと、
美咲希は「うん。ありがと」と、微笑んだー。
和雄が美咲希の言葉を聞き終えると、
そのまま病室の外に向かおうとしたー。
しかしー
そんな和雄を、美咲希が呼び止めたー。
「---ん?なに?姉さん」
和雄が言うと、美咲希は
少し考えたあとに呟いたー
「--和雄…これからわたしが言うことーーー…
冷静に聞いてくれる?」
美咲希の言葉に、和雄は「もちろん」とほほ笑むー。
「--誰にも言わないって約束できる?」
「--あぁ。 ってか、怖いな!どんな話をするつもりなんだよ!?」
和雄が苦笑いしながらツッコミを入れると、
美咲希は深呼吸をしてから、和雄の方を見たー
「---実はーーーーーー」
美咲希は、まだためらっている様子だったー
和雄が、そんな美咲希の様子に緊張感を強めて
ゴクリと唾を飲み込むー。
「--実はーーー
俺ーーーーー、父さんなんだー」
とー
美咲希が真剣な表情でー
いつもの可愛い声で呟いたー
「-----」
「-----」
和雄と美咲希が見つめ合うー。
「--ぷっ…ははっ!
あは、あははははははははっ!
ちょ、姉さん、さすがにそれは無理があるよー、
さすがにーー」
和雄が笑いだすー
「さすがに、冗談きついよ姉さんー
いや、まぁ、俺とか母さんを元気づけようとしてくr
「---!」
和雄は、言葉の途中で、美咲希の目を見てー
美咲希の真剣な表情に驚いたー
その表情にはー
”一切の嘘”を感じさせないような”強み”があったー
「----え…ほ、、、ホントに?」
和雄が言うと、
美咲希は頷いたー。
「--本当なんだ…
目を覚ましたら、俺が美咲希になっていた」
美咲希が険しい表情で言うー。
「-えっ、、ええええっ!?じゃあ、姉さんは!?」
和雄が言うと、
美咲希は「---わからない」と首を振るー。
「え、、え~~~えっと、、じゃあ
身体は姉さんだけど、中身は親父、、ってこと?」
和雄の言葉に、美咲希は綺麗な髪をかきむしりながら
「ま、、まぁ…そういうことだな」と、目を逸らしたー
「---ま、、まじかぁ…」
和雄が驚いて言葉を失っているー
だが、本当にー?
と、疑いの目で美咲希を見つめているとー
美咲希が和雄を手招きしたー
「--ほら」
美咲希が突然、和雄の手を掴み、
和雄に自分の胸を触らせたー
「うわっ!?!?」
思わず声を出して真っ赤になってしまう和雄ー
「な、、な、、な、、なにするんだよ!?!?」
真っ赤な和雄が叫ぶと、
美咲希は「ははは、そんな反応するなよ」と
笑いながら、ベッドの上であぐらをかくと呟いたー
「お前が疑うからだよ。
美咲希、こんなこと絶対にしないだろ?」
美咲希の言葉に、和雄は
「わ、、わかったよ…」と呟いたー
美咲希が”父”のフリをしてこんなことする必要はないし、
美咲希に、父の剛志が入り込んでしまったー、
というのは、本当なのだろう。
「---か、、母さんにも伝えー」
和雄が、母親である功恵にも伝えようとスマホを取り出すも、
美咲希は「待ってくれ!」と叫んだー
「---……だ、、誰にも言わないって約束しただろ?」
美咲希の言葉に、
和雄は「でも…」と呟いたー
「--俺が美咲希に憑依した状態…なんて言ったら
功恵を余計に苦しめちまうし…
父親が娘に憑依してるなんて、俺も変態に見られるかもしれないし」
美咲希は、理由を和雄に説明したー
学校でもイジメが起きる可能性がある上、
二重人格だのなんだの、そういう扱いをされたり、
母親側の親族は、美咲希をとても可愛がっていたために、
その美咲希の中身が剛志だと知れば発狂する可能性もあるー
「--うん…ま、、まぁ」
和雄が言うと、美咲希は、髪を邪魔そうにどかしながら、続けるー
「---美咲希の意識が目覚めたらー
俺はなんとかして美咲希から出ていくつもりだからー
美咲希のためにも、それまでは黙っててくれ」
美咲希がお願いするようにして言うー。
和雄は迷った挙句に「わかったよ…」と呟いたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それからはずっとー
この状態。
3か月前から姉は父なのだー
「--ってか、なんで俺にだけ教えたんだ?」
和雄が言うと、美咲希は
「ずっと女の子として振舞ってるの疲れちゃうだろ?
誰かに美咲希の普段の行動、色々教えてもらいたかったし」
美咲希は、太もものあたりを触りながら呟くー。
「--それに、こうして、たまには素を出せないと疲れちゃうしな」
美咲希はそう言うと、和雄の部屋で
大好きなおつまみの袋を取り出すと、そのままそれを食べ始めたー。
ボリボリと音を立てながら
おつまみを食べる美咲希ー
「--ーーーそれにしても、姉さんの意識は本当にいつ戻るんだろう?」
和雄が不安そうに呟くと、
おつまみを食べていた美咲希も「そうだなぁ…」と不安そうに言葉を口にしたー
「--あ~~あ…早く美咲希、二十歳にならないかなぁ~」
美咲希がそう呟くー。
和雄は「絶対ダメ!というか何年いるつもりだよ!?」と苦笑いしたー。
お酒が好きだった父・剛志は
”飲みたい”ようだったが
さすがに自分の娘が未成年であることからも、
それを我慢していたー
「--ははは、冗談冗談」
美咲希が笑うー
”身体は姉さんなのに
中身は父親ー”
そんな不思議な姉との共同生活はー
いつまで続くのだろうかー。
和雄はそんな不安を覚えながらも、
美咲希の方を見て、愛想笑いを浮かべたー
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
姉の中に父親の意識が!?
ちなみに”入れ替わり”ではないので、
実は死んだ父親の方に姉が入ってしまっていて…!
という結末ではありません~!★

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