<MC>相手がいなければ作ればいいじゃない③~幸福~(完)

独身者から税を取るー
そんな未来のディストピア世界…

”洗脳ビジネス”と出会い、
結婚することに成功した彼。

しかしー?

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「はぁ…はぁ…望結は最高だよ」
克太が言うと、
克太の妻となった望結は、チャイナドレス姿のまま嬉しそうに微笑んだー

「-だって、克太のためだもん♡」
甘い声を出す望結ー。

望結は今、克太とこうしていられることに
”この上ない幸せ”を感じているー

洗脳目薬で洗脳した相手はー
その後はずっと、洗脳した人間の意のままー

完全に操ることもできればー
ある程度自由に、自然な感じで日常生活を送らせることもできるー

「ふふふ♡大好き」
望結が克太にキスをするー

克太は顔を赤らめながらも
”すごいなぁ”と、
台所の方に向かう望結の後ろ姿を見つめるー

隣人の大学生だった望結は、
どことなく人を避けているような、そんなクールな感じの子だったー

それが今では、克太にべったりー。

克太はスマホで、株式会社DOKUSINの運営している
有料サイトを見つめるー
”洗脳目薬”の最新情報などが配信されるサービスで
月額300円、というお手頃価格のサービスだったー。

”独身税に比べたら滅茶苦茶安いし、
 こんな幸せな家庭をつくれるなんて”と、
正直、株式会社DOKUSINの運営している有料サイト自体の
内容は微妙に感じたものの
”まぁ、感謝の気持ちもかねての御布施みたいなもの”と、
月額300円の有料サービスに加入していたー。

洗脳目薬の情報を見つめる克太ー

克太は”洗脳目薬”を最初に点眼したきり、
使っていなかったが、
もう必要ないー

洗脳目薬は1回点眼すると
5時間ほど、効果を発揮するー
その間に洗脳した相手は以降は、思いのままー
洗脳目薬の克太に対する効力は切れても、
「新規で洗脳」することはできないが
「一度洗脳した人」には新たに命令を下すことも出来るー

とても幸せそうな望結を見て、克太は思うー。

望結は、大学では”自然”に振舞っていてー
”自然”に克太を好きになったような振る舞いをしているー

克太は社会人だが、
望結の友達とも、何度かあったが
特に”望結の様子がおかしい”みたいに言う人間はいなかったー

と、いうことは
”望結は望結として”
周囲から違和感を覚えられない程度には
普通に日常生活を送ることが出来ているのだろう。

「----ーーー!」
ふと、克太は机の上に飾っている姉・沙希菜と一緒に
小さいころに撮影した写真を見つめたー

望結と結婚できてー
のぼせていたから気づかなかったがー

「--そ、そういえば、姉さん…」

姉が急に、無職のオタクと結婚すると言いだしたときは驚いたー

がー
今ではとてもラブラブな様子で
沙希菜は夫の祐太郎のために、アニメキャラのコスプレばかりしているー

「まさかーー」
克太は表情を歪めるー

株式会社DOKUSINからの招待状が届いたのも
”紹介”があったからと聞いたー。

克太は望結に「ちょっと出かけて来る!」と叫ぶと
そのまま姉・沙希菜と、夫の祐太郎がいる家へと向かったー

マンションの部屋の前にやってくるとー
姉の”喘ぎ声”が聞こえたー

昼間から、祐太郎とヤッているーー
のだろうー

克太は戸惑いながらも、少しだけ時間を置くことにして
コンビニに向かうー。

祐太郎がーー
姉さんを洗脳して妻にしているのだとしたらー

克太は拳を握りしめるー。

そしてー
時間を空けた克太は、そのまま姉の家へと向かったー

もうそろそろー
営みの時間は終わっているだろうー、
と思いながらー

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「♪~~~~」
望結が、嬉しそうに克太の写真を見つめていると、
ふと、克太の机の上に、”目薬”が置かれたままなことに気づいたー。

克太が”姉さんも洗脳されて結婚したんじゃ!?”と
思い、慌てて家を飛び出したために
うっかりそのまま置き忘れてしまったのだー。

”洗脳目薬”
容器には何も書かれていないからー
仮に机の上に置きっぱなしにしていても、
望結に何かを気づかれる心配はなかったー。

けれどーー

「--ちょうど目がかゆかったし、借りちゃお!」
望結はそう呟くと、その目薬が
”洗脳目薬”だとも知らずに、点眼してしまったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「-克太ってば~!急に来るなんて~!」
姉の沙希菜は、今日もアニメキャラのコスプレをしているー

”さっきまでヤッていたこと”には
誰にも触れずに、
克太は姉の夫である祐太郎の方を見つめたー。

「-少し、お話、いいですか?」
克太が言うと、祐太郎は「へへ、義弟からの話なら聞かなくちゃな」と
笑みを浮かべたー

沙希菜を置いて、別の部屋に移動するふたりー。

克太は話を切り出すー。

「-株式会社DOKUSINってご存じですか?」
克太が言うと、祐太郎は笑みを浮かべたー

「へへ、僕が紹介してやったんだよ、君をね」
とー。

ーー!!

克太はその言葉を聞いた瞬間に
表情を歪めて、祐太郎を睨みつけたー

「まさかーー
 義兄さんはーー
 姉さんを洗脳してーーー」

克太が怒りの形相で言うと、
祐太郎は笑ったー

「そうさー
 その通りさー」
とー。

「-テ、、テメェ!」
元々祐太郎に良いイメージを持っていなかった克太は
怒りに任せて祐太郎の胸倉を掴んだー

しかしー

「は、、離せよー
 君だって、相手を洗脳して結婚してるじゃないか」

祐太郎は笑ったー

「--そ、、それは…!
 でも、、俺のはー」

「--君と僕は”同類”だー
 他人を洗脳して、妻を作ったー。

 何か違うのかな?ぐふ…」

祐太郎は、そこまで言うとさらに続けたー

「君にー僕を責める資格はないんじゃないかな?」
とー。

克太は、反論できなかったー

いかに、相手が幸せを感じているとはいえ、
”洗脳”しているのは事実ー
完全に正気に戻ればー
相手は驚き、悲しむかもしれないー

そしてーー
”相手が幸せを感じているからいいんだよ!”と反論すればー
”じゃあ、僕が君の姉さんを洗脳してるのもいいだろ?”と
反論されてしまうー

克太は、何も言い返せなかったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

落ち込んだ様子で帰宅する克太ー

克太が、望結の方を見つめるー

望結は嬉しそうに「おかえりなさい!」と呟いたー

けれどー
同時に望結は頬を膨らませていたー

「急に、どこに行ってたの!?」
とー。

克太は望結を洗脳した際に
「克太が好きで好きでたまらない」と洗脳しているー

そのため、嫉妬深い一面が出てきてしまっているのも
また、事実だったー

「姉さんのところだよ」
克太が言うと、
望結は「お姉さんの?」と不満そうに呟いたー

「--ねぇ克太!わたしのことだけを見て!
 わたし、今日だって頑張ったんだよ!
 ほら、克太に喜んでもらおうと思って!」

巫女服を身に着けている望結ー。

克太は、そんな望結を見つめて
色々と考え込むー

”姉さんーーーー”

姉の沙希菜が結婚したのは
”洗脳”されていたためー

克太は、落ち込んだ様子で「わたしを見てよ!」と騒いでいる望結を
無視してー
机の方に向かったー

”洗脳目薬”を点眼してーー
克太は望結を解放しようとしていたー

洗脳目薬を両目に2滴ずつ点眼しー
相手を見つめれば、元に戻すことが出来るー

株式会社DOKUSINで、彼はそんな説明も受けていたー

「---」
幸せそうな望結ー

けれどー

「---ダメだな、俺は」
克太はそう呟くとー
自分が”姉を洗脳して結婚した祐太郎”と同類だということに
酷く心を痛めてー
望結を解放しようとしたー

しかしー

「---!」
目薬の残量が減っていることに、克太はすぐに気付いたー

そしてー
思い出すー

”さっき家から飛び出した時、俺はここに洗脳目薬を置いたままー”

望結が背後から叫ぶー

「わたしのことしか考えないで!
 他のことを、考えないで!」

望結と、克太の目が合うー

望結が克太に対して、強く
”わたしのこと以外、考えないで”と叫びながらー
念じたー

「---!」
克太は、望結に洗脳されてしまったー

そういう力がある目薬だと知らずに点眼した望結に
洗脳されてしまった克太は、望結に抱き着くー

「あぁぁ…俺、もう、望結しかいらない」
克太が笑うー

克太は、自分が感じていた不安のようなものが
全てはじけ飛んでいくのを感じながらー

望結に抱き着いてキスをする克太ー

望結のことしか考えることができないー
望結を見ているだけで幸せな気分になるー

「あぁぁ…克太…♡」
望結も嬉しそうにしているー

「--お姉さんのことじゃなくて、
 わたしのこと…見て…♡」
望結が顔を赤らめながら言うと、
克太は「望結…♡」と嬉しそうに呟いたー

望結が洗脳目薬を、そういう目薬だと知らずに使ったー

自らが洗脳目薬を購入した克太には、それは分かっているー

でもー
それすらもどうでもよくなるほどに、
株式会社DOKUSINの洗脳技術はすさまじい力を持っていたー

何もかもがどうでもよくなってー
望結のことしか考えられないー

克太は嬉しそうに望結と抱き合って、
そのままエッチなことを初めてしまうのだったー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

1年後ー。

望結に子供が出来たー
望結はとても嬉しそうにしているー

大学にいる間も、望結は克太のことで頭がいっぱいー。
克太も職場にいる間は、望結のことで頭がいっぱいー

帰ったら二人はずっと、相手とイチャイチャしたり
エッチなことをしたりして、愛し合っているー。

独身に課せられた税金を払う必要もなくなりー
二人は、この上ない幸福を感じながらー
夫婦生活を続けていくー。

「---」
株式会社DOKUSINの有料サイトを見つめる克太ー。

相変わらずほとんど更新されないのだが、
克太は、月額300円をお布施代わりに、そのサイトに加入しているー。

独身税を払うより、遥かに安いし、
こんなに幸せな生活を提供してくれた毒本社長には
感謝しても、しきれないー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---ぐふふふ…」
克太の姉・沙希菜にアニメキャラの台詞を言わせて
ニヤニヤしている夫の祐太郎ー。

「---ぐへへへへへへへへ!」
アニメキャラの決めポーズをしている沙希菜を見つめて
祐太郎は笑みを浮かべるー

そして、祐太郎もまた、株式会社DOKUSINの有料サイトを
見つめたー。

ロクに更新されない有料サービスだが、
祐太郎もまた、株式会社DOKUSINへの感謝の気持ち、ということで、
このサービスに加入していたー

・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

毒本社長は笑みを浮かべるー

”今月”も
莫大な収入を得たー

一人300円ー
しかし、それが10人になれば3000円
100人になれば3万円ー
1000人なら30万円ー
1万人なら、300万円ー。

人数が集まれば、やがて、莫大な収入源となるー。

今月も、数千万単位の振り込みを確認して笑みを浮かべる毒本社長ー

「----ひとつだけーー」
毒本社長は笑みを浮かべるー

克太をはじめ、ここに来た人間たちには、最初に
”洗脳”を身をもって体験してもらうー。
1分で効果の切れる洗脳だー。

だがー
その時ー
毒本社長は”ついでに”ある細工をしているー。

大部分の洗脳は解除するのだがー
”ある部分”だけは洗脳し続けたままー

それがー
”株式会社DOKUSINの有料サービスに登録すること”

感謝の気持ちを植え付けているのだー。

月300円なら彼らの生活に影響は出ないだろうしー
その周囲にいる人物も
”月300円のサイトを利用している”ぐらいなら
誰も不審には思わないだろうー。

「--ビジネスは、賢くシステムを作り上げた人間が、勝利する」

毒本社長は笑みを浮かべたー

洗脳目薬の販売は、おまけー。
どんどんと独身税対策の客を増やしー、
そして、一人当たり月300円を払ってもらうー

既に洗脳目薬を利用して結婚した人間はー
何十万単位で存在するー。

毒本社長は、何も苦労せずに、毎月莫大な売上を上げているー。

「----私は人々に幸せと節税を提供しー
 私は金を手に入れるー」

今日も毒本社長は
”相手がいなければ作ればいいじゃない”の
キャッチコピーで、新たな客を招待するのだったー

おわり

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コメント

未来のディストピアな世界を舞台とした
(作中では税金以外に未来っぽい描写はなかったですケド…笑)
お話でした~!

お読み下さりありがとうございました!!

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