お正月ー。
その老婆は配っていたー。
お年玉をー…
いや、お年虫をー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーえ~?これだけ~?
わたし、もっとお年玉ほしい~!!」
ワガママそうな少女がそう言葉を口にしながら
年始早々、デパートでおじいちゃんらしき人物を
困らせていたー
「ーーー」
そんな様子を少し離れた場所から見つめていた老婆は
少しだけ笑みを浮かべると、
”お年玉”を入れるためのお年玉袋を手にするー。
「ーーごめんなー麻衣(まい)
ホントはもっとあげたかったんだけどー」
おじいちゃんが申し訳なさそうに、
孫娘の麻衣に対してそんな言葉を口にするー。
「もういいもん!おじいちゃんなんて知らない!」
不満そうに頬を膨らませながら、
そのままおじいちゃんの前から立ち去っていく麻衣。
「ーーこれじゃ、わたしの欲しいものが買えないもんー」
不満そうにしながら、麻衣がデパートの店内を歩いていると、
その前に”老婆”が姿を現したー。
「ーひっひっひー…
あんた、お年玉が欲しいのかい?」
老婆がニヤニヤしながらそう言葉を口にすると、
麻衣は「えっ……う、うんー」と、少し困惑した様子で頷くー。
すると、老婆は笑みを浮かべながら
”お年玉袋”を取り出したー。
「ここで会ったのも何かの縁だー。
ほれ、お年玉だよ」
そう言葉を口にしつつ、老婆が”お年玉袋”を渡すと、
麻衣は嬉しそうに「わぁ…!おばあちゃん!ありがとう!」と、
感謝の言葉を口にするー。
老婆は、麻衣の笑顔を見つめながら満足そうに頷くと、
そのまま立ち去っていくー
老婆が立ち去っていくと同時に、
お年玉袋を早速嬉しそうに開く麻衣ー。
が、その中に入っていたのは”お金”ではなく、
硬貨と同じぐらいのサイズの
”見たこともないような虫”だったー。
「ーーーーえっー」
笑顔だった麻衣の表情が一転して恐怖に歪むー。
その直後、お年玉袋の中に潜んでいた”寄生虫”は
麻衣の口をめがけて一直線に飛びー、
そのまま麻衣の中に入り込んだー
「ーーぁ…」
体内に入り込んだ虫は高速で脳に到達ー。
その小さい身体から”針”のようなものを出して
脳にコンセントを差し込むかの如く”接続”すると、
麻衣の目が一瞬、赤く光ったー。
「ーーーふふー」
寄生虫にあっという間に乗っ取られてしまった麻衣は
「これが、人間の身体ー」と、そう言葉を口にしてから
”おじいちゃん”のところへと戻って行ったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーほれ、お年玉をあげようー」
老婆は、神社の一角で退屈そうにしていたツインテールの少女に
お年玉を手渡すー。
「えっ!?あたしにくれるの!?ありがとう!!」
嬉しそうにするツインテールの少女を見て、
老婆は満足そうに頷くと、
「ー大事にするんだよー」と、それだけ言葉を口にして立ち去るー。
ツインテールの少女に背を向けた老婆は、
少女に向けていた笑顔が嘘かのように、
真顔に戻っていたー。
”ククククー
あんたの笑顔になんて興味はないよー”
老婆は内心でそう思いながら、
ツインテールの少女に背を向けたまま立ち去っていくー。
彼女がー、老婆が興味を持っているのは
”同胞の繁殖”のみー。
そのために選んだ手段が”お年玉”ー。
子供は喜んでお年玉を受け取るー。
もちろん、中にはしっかりと”知らない人からモノを貰っちゃいけない”と
しつけされている子供もいて、そういった子供の中には
”お年玉”を受け取ろうとしない子供もいるー。
だがー、それはそれでいいー。
受け取りを拒まれた場合は、その子供は諦めて、
また別の子供にお年玉を渡すー。
何人も当たっていれば、
必ず嬉しそうにしてお年玉を受け取る、
老婆からすれば”愚かな子供”が現れるからー。
「ーーー幼少期から”支配”できた身体は
時間をかけて、我らに馴染むー…」
老婆はそう言葉を口にすると振り返るー。
先程、お年玉を老婆から受け取った
ツインテールの少女が、口に飛び掛かって来た”寄生虫”を
口の中に入れまいと、必死に口を閉じている姿が見えたー。
老婆は離れた場所からその姿を確認すると
笑みを浮かべるー
「無駄だよー小娘ちゃんー」
そう言葉を口にすると同時に、
ツインテールの少女の口からの侵入を諦めて
寄生虫は強引に鼻から少女の中へと入り込んでいくー。
「ーーぁ…」
強引に鼻の中に入り込まれたせいか、
鼻血を垂らしながらよろめくツインテールの少女ー。
しかし、やがて目を赤く光らせると
笑みを浮かべながら、周囲をキョロキョロとしてから
老婆のほうを見つめたー。
「ーー鼻血は止めておきなー。
人間たちに怪しまれるー」
老婆がそう言葉を口にすると、
ツインテールの少女は、妙に大人びた笑みを浮かべながら
「はいー…マザー」と、そう答えるー。
そして、鼻血を止めたツインテールの少女に近寄ると、
「あんたは、しばらくの間、その人間として生活するんだー。
成長途上の身体に寄生することで、
その身体はよく我らに馴染むー」と、
老婆はそう言葉を口にするー。
「ーはいー。分かりましたー
全ては、我らの繁栄のためにー」
ツインテールの少女が目を赤く光らせながらそう言葉を口にすると、
老婆は満足そうに笑みを浮かべながら
立ち去っていくー。
”大人”に寄生しても、もちろん支配することはできるー。
ただ、身体が拒絶反応を起こすリスクが高いうえにー、
乗っ取ったとしても、身体が完全に寄生虫と同化せずー、
不完全な状態になってしまうー。
しかし、”器”である人間が子供のころから乗っ取っておくことで、
寄生虫たちは人間の身体により強く、深く馴染むことができるー。
だからこそ、”お年玉”に寄生虫を忍ばせて、
”お年虫”という形で、同法を次々と寄生させているのだー。
将来ー、10年後を見据えてー。
「ーーおやー」
おもちゃ売り場にいた高校生らしき子を見つけると、
”少し想定よりは成熟しているがー、まぁいいだろうー”と、
老婆は内心でそんなことを思いながら、
近付いていくー。
高校生ぐらいでも、まだ、”寄生虫”が馴染みやすい身体で
あるのは確かだー
身体を乗っ取ったあとに、身体の”内部”のシステムを
作り変えることができる時間があるー。
「ーーーまぁ、あの小娘が受け取るかは分からないがー」
老婆はそう言葉を口にすると、一旦、おもちゃ売り場から
離れて、人目のつかない場所まで移動するー。
そしてーーー
老婆は口から”寄生虫”を吐き出すと、
そのままそれをお年玉袋へと入れていくー。
”お年虫”の完成だー。
「ーーー」
老婆はニヤリと笑みを浮かべると、
そのままおもちゃ売り場の方に戻っていくー。
「ーおや、どうしたんだいー?
何か欲しいものでもあるのかいー?」
老婆がそう声を掛けるとー、
相手は、流石に高校生であるからか、
少し警戒の色を見せるー。
が、老婆は「わたしはねー、この施設のイベントで
お年玉を配ってるんだー。」と、そう言葉を口にすると、
「もちろん、大人には配らないけどね」と、
笑いながらそう言葉を口にするー。
そしてー、
”警戒しそうな相手用”に今、自分がいる場所の施設名が
入ったお年玉袋を取り出すと、
「ーーあんたも、受け取る資格があるー。あけましておめでとうー」と、
そう言いながら、老婆はお年玉袋を
女子高生に差し出したー。
「ーーあ、ありがとうございますー
わたしの親、親戚付き合いとか全然なくてー
お年玉も全然貰えないので、嬉しいです」
そんな言葉に、老婆は満足そうに頷くと
「それはよかったー。もう”そんな思いをしなくても”済むねぇ」と
そう言葉を口にするー。
それ聞いた女子高生は穏やかな表情で笑うと、
今一度、「ありがとうございますー」と、そう言葉を口にするー。
「礼なんていらないよー。
その分、”将来”立派に社会に貢献して貰えれば、
わたしはそれでいいのさ」
老婆は笑みを浮かべながらそう言葉を口にすると
「それじゃ」と、そのまま振り返って立ち去り始めるー。
”わたしたちの社会にねー”
老婆は笑みを浮かべるー。
そう、将来ー、寄生虫が完全に定着したその身体で
”我々の社会”に貢献してくれれば、それでいいのだー。
老婆がそう思いつつ立ち去る中、
老婆から”お年玉”を、いや”お年虫”を受け取ってしまった
女子高生は、その袋をワクワクしながら開けてしまうー。
しかしー、中に入っているのは
渋沢栄一でも、福沢諭吉でもない。
つまり、1万円札ではないー。
そして当然、5000円札でも1000円札でもない。
”虫”だー。
「ーーえっ…!?」
虫が大の苦手な少女は、慌ててお年玉袋を床に叩きつけるー。
余程虫が嫌いなのだろうー。
その動きはとても早くー…、
いつも”お年玉袋”が開いてすぐにターゲットに飛び込む
寄生虫よりも早く、お年玉袋が床に叩きつけられたー。
そして、慌ててお年玉袋ごと寄生虫を踏み潰そうとする
女子高生ー。
「ーーーおや」
立ち去る途中だった老婆は、彼女が
慌てて床に叩きつけたお年玉袋を踏み潰している音に
気付いて振り返るー。
一瞬、”同胞”が踏み潰されたのではないかと
心配にはなったものの、
老婆は”まぁ、あの程度には対応できるだろうねー”と、
内心でそう言葉を口にするー。
老婆の読み通り、寄生虫はお年玉袋ごと地面に
叩きつけられた後に、素早くお年玉袋から脱出して、
少女に踏みつぶされるのを回避していたー。
そして、彼女の口めがけて跳躍するー。
「もう!何なの!?来ないで!」
そう叫びつつ、手で寄生虫を叩き落とす少女ー。
あくまでも顔には近付かせないつもりだ。
しかし、寄生虫は少女の足に飛びつくと、
そのまま素早く足を登っていき、
スカートの中に侵入してしまうー。
「ー!?!?!?!?」
少女が驚くー。
その直後、寄生虫は
少女の”下”から内部へと侵入したー。
「ーーや、やめて…!やめてー!!」
少女はパニックになるー。
今回は”下”からの寄生であったために
脳に到達するまでに少しいつもよりも
時間を要したー。
が、ようやく寄生虫が脳にまで到達すると、
脳に針のようなものを突き刺して、
そのまま脳を、肉体を支配するー。
「ーーぁ…」
”お年虫”を渡された女子高生は目を赤く光らせると、
次の瞬間、ニヤリと笑みを浮かべるー。
「ーー大丈夫ですかー?」
その直後、先ほどまでの彼女の悲鳴を聞いたのだろうかー。
店員が近くに駆け寄って来ると、
そんな言葉をかけて来たー
「ふふー大丈夫ですー
お年玉の袋にちょっと虫がついてたので驚いただけですから」
クスッと笑いながら、少女は先ほど床に叩きつけて
踏み潰したお年玉袋を拾うと、
それを見せつけながら不気味な笑みを浮かべるのだったー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それからー、
時は流れたーーー
「ーーわたしたちは、人間どもを支配するために
この10年以上ー、大人しく人間界で生活を続けて来たー」
10年以上前ー、
デパートで”お年虫”を貰って寄生虫に支配されてしまった麻衣が、
すっかり大人びた美人な女性に変貌して、
”仲間たち”の前でそう言葉を発していたー。
そこにいる女性たちは、美人ばかりー。
”寄生虫”に寄生された効果もあるのかー、
容姿が整った人間ばかりが揃っていたー。
「ーーー我々が支配したこの身体は、成長期を通じて
我々の遺伝子と交じり合った完璧な存在となったー」
麻衣がそう言うと、
「いよいよ、時は来たー」と、そう宣言するー。
次の段階は、男たちとの子作りー。
そのために、老婆は女ばかりを狙い、お年虫を渡していたー。
男と交わり、”我ら寄生虫の遺伝子”を持つ人間を
次々と出産していくー。
そこから、さらに長い年月をかけて同胞を増やしー、
いずれ、人間という種にとって代わるー。
それが、寄生虫たちの目的ー。
「ーーふふふ
あんたたちは、10年以上、立派に人間界に溶け込んで来たー
いよいよ、本来の目的を果たす時が近付いて来たよ」
老婆が麻衣の後ろから姿を現し、そう言葉を口にすると、
麻衣も笑みを浮かべるー。
「ーー人間たちを、我らの手中にー」
老婆がそう言うと、麻衣や、集まった女たちもそう言葉を口にするー。
人類への”寄生”は、着々と進んでいたー…
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
お正月なので、1話完結のお年玉の要素が登場する
寄生モノでした~~!!
こんなお年玉は……
受け取りたくないですネ~笑
お読み下さり、ありがとうございました~!★!
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