友達のいない大人しい男子生徒ー。
イジメを受けたりはしていないものの、
とにかく、存在感はなかったー。
そんな彼が、クラスの明るいギャルに
憑依してしまってー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーーー」
宮島 浩太(みやじま こうた)は、
今日も教室の端にある自分の座席で本を読んでいたー。
浩太は大人しい性格の男子生徒で、とにかく存在感がないー。
性格にも特に”特徴”と言えるような特徴がなく、
とにかく存在感というものがなかったー。
その”おかげ”なのだろうかー。
友達はいないし、存在感はないけれど、いじめを受けるようなこともなく、
友達がいないことを気にしさえしなければ、
高校生活を送る上で特に支障はなかったー。
存在感がないだけで、別に無視されているわけではないために
誰かに用があって話しかけたりするようなことがあれば
みんなちゃんと対応はしてくれるー。
ー最も、浩太から話しかける…などということは
そもそも滅多にないことではあるけれどもー。
「ーえ~?マジで?ありえなくない?
そんな彼氏、別れちゃえばいいのに~!」
浩太の少し先では、
浩太とは同じ教室にいながら”別世界”に住んでいるかのような
存在ー、篠原 来美(しのはら くるみ)が
今日も楽しそうにたくさんの友達に囲まれて話をしているー。
来美は明るい性格のギャルで、
友達も多く、いつも楽しそうにしているー。
案外、学校の授業や行事には真面目に取り組む方で
成績もそれほど悪くはないー。
そんな子だー。
とは言え、浩太には関係のないことで、
楽しそうに喋っている来美の声も浩太からすれば、
その内容は耳に入っておらず、
喫茶店で流れている店内BGMと同じぐらいに
”背景”ぐらいにしか思っていなかったー。
もちろん、来美にとっても同じで、
教室にいる浩太のことなど、良くも悪くも全く眼中になく、
同じクラスでありながら、お互いに会話という会話を
したことがあるかどうかも分からないぐらいのそんな存在だった。
しかしー…
「ーーーえ???????」
翌朝ー。
浩太が目を覚ますと、”知らない部屋”にいたー。
可愛らしい小物がたくさん置かれた
どこかメルヘンチックな雰囲気を感じさせる部屋。
「ーー…え……な、なんだろうー…これ」
浩太は戸惑いながら、
周囲を見渡すー。
最初は一瞬、自分が寝ている間に
妹の小夜(さよ)が、入って来て
部屋の模様替えを勝手にしたのかと、
そんな風に思ったり、
”間違えて小夜の部屋で寝ちゃったかな?”と思ったりー、
色々考えたものの、
どう考えても自分の部屋と形が違ったし、
小夜の部屋の中がどうなっているかは
あまり知らなかったけれど、小夜の部屋でもないような気がしたー。
それよりもー…
「ーって…え…?こ、この声はー…?」
浩太は、自分の口から自分の声ではなく、
女のような声が出ていることに気付くー。
「ーー…な…なんか…聞いたことあるようなー…?」
どこかで聞いたことがあるような声ー。
しかし、誰の声だか思い出せないー。
妹の小夜じゃないし、母親の声でもないー。
他に女の友達や知り合いはいないからー、
気のせいだろうか。
そう思いつつ、自分の手を見つめると、
自分の手とはまるで違う、綺麗な感じの手が見えたー。
「ーはっ!?!?えっ!?」
寝ぼけていた状態から、だんだんとハッキリ目が覚めて来て、
更なる異変に気付くー。
どこかお姫様風なメルヘンチックなパジャマを着ている自分ー
あるはずのない胸の膨らみー。
「ーーえっ…!?えっ…!?えぇぇ…!?」
何が起きているのかさっぱり分からず、
声も、部屋も、服も、身体も、
色々なところが”女”のようになってしまっている状況を前に、
戸惑いつつ、浩太は思わず”アソコ”を確認してしまったー。
男である自分に”ついているはず”のソレがちゃんとついているのかどうかー。
そんなことを咄嗟に確認してしまったー。
がー
その直後だったー
”ちょっと!!!どこ触ってんの!?”
「ーーえっ!?!?!?」
浩太は女の声でそう返すと、
周囲をキョロキョロと見回すー。
今、確かに誰かの声がしたー。
しかし、周囲には誰もいないー。
「えっ……だ、誰ですかー…?」
浩太は女の声で不安そうに言葉を口にすると、
”誰ですか!?じゃないでしょ!!あんたこそ誰よ!?”と、
そんな声が再び聞こえて来たー。
「えっ…?えっ…!?えっ…!?!?」
しかし、部屋の中を見回しても、やはり誰かがいる様子はないー。
確かに声は聞こえるのに、誰の姿も見えないー。
そんな状況を前に、浩太は心底戸惑った表情を浮かべると、
急に青ざめて「ひっ……ゆ、幽霊ー!?」と、そう声を発したー
”誰が幽霊よ!!!あんたこそ幽霊じゃないの!?
っていうか、あたしの身体で何してんの!?”
女の声がそう聞こえて来るー。
浩太はなおも怯えた表情で周囲を見渡すと、
「だ、誰ですかー?ど、どこにいるんですか…!?」と、
そう声を振り絞ると、
”頭の中”から、”あんたが勝手に動かしてる身体の持ち主よ!!”と、
そう聞こえて来て、
続けて”あんたが勝手にあたしの身体を動かしてて、
あたしは自分の身体を動かすことができない状態でこの中にいるの!!!”と、
そんな言葉が続いたー。
「えっ…えっ…!?
も、もしかして、頭の中から声がー!?」
浩太は頭を抱えようとすると、
サラッとした長い髪が触れて「うわぁ!?」と、そう声を上げるー。
そんな様子に、
”あんたは一体何者なに?あたしの身体で何しようとしてるの?”と
不満そうな声が内側から響いて来るー。
「ち、ちがっ…ぼ、僕は別に何も企んでないですー!
昨日の夜、普通に寝て目が覚めたらこうなっててー」
女の身体で、浩太は慌ててそう言葉を口にするー。
浩太は本当に昨日の夜、普通に寝ただけで
特別なことはしていない。
幽体離脱するような何かをしたわけでもない。
なのに、起きたらこんなことになっていたのだー
”ーー…そんなことあるわけー…”
頭の中からそんな声が響くと共に、
”で、あんたは誰なの?”と、そんな声が続くー
浩太は慌てて
「あ、は、はいー、ぼ、僕は宮島ー、宮島 浩太って言いますー」
と、自分の名前と、自分が高校生であることを明かすー。
”ふ~ん…”
頭の中の声はそう言葉を口にすると
”あたしは篠原 来美”と、そんな返事をしたー。
「ーえっ!?し、篠原さん!?」
浩太が入り込んでしまった身体は、
クラスメイトのギャル・篠原 来美の身体であると気付いた浩太は
思わず驚いた様子でそう叫ぶー。
”は?何?あたしのこと知ってるのー?”
が、来美の意識はそんな浩太の反応に不思議そうにそう言葉を返すー。
「ーえ、え、し、知ってるも何もーーー
そのー」
浩太は来美の身体でそこまで言い放つと、
戸惑った様子でさらに言葉を続けるー。
「ぼ、僕ー、同じクラスでーー」
来美の身体で浩太がそう続けるー。
がー
”ー…同じクラス?????”
来美の意識は心底不思議そうにしながら
そう言葉を吐き出すと、
浩太は来美の身体で、慌てて
「み、宮島 浩太ですー」と、そう言い放つー。
”みやじまこうたー…”
来美の意識は言われた名前を最後繰り返すと、
”う~ん…”と、暫く考えてから、
”ーーえっと…誰???”と、再度言葉を口にしたー。
あまりの存在感のなさに
”宮島 浩太”という名前自体、
来美に認識されていなかったー。
別にショック、ということもないけれど、
浩太は慌てた様子で
「え、えっと、そのー教室の一番後ろの一番端にいる、
眼鏡のー男子でー」と、
自分のことをそう説明するー。
”一番端にいる眼鏡ー…”
来美の意識はそう呟くと、しばらく考え込むー
「~~~~~~~~」
”僕はそこまで影が薄かったんだ”と内心で思うー。
ショックではないけれど、
そこまで思い出してもらえないとなると、
よほど存在感が薄いのだということを
改めて自覚はさせられるー。
”ーーあぁーーいたかも???”
来美の意識はようやくそう言葉を口にすると、
”で、何でその宮島 浩太くんがあたしの中に?”
と、来美の意識は不満そうに呟くー。
”ーーあたしの身体を奪って
なんか、色々する気なんでしょ?だる…”
来美の意識のその言葉に、
浩太は来美の身体で慌てて
「だ、だから違いますってば!」と叫ぶー。
自分は普通に寝て、普通に起きたらこうなっていたと
改めて説明し、
「だ、大体、僕はそんなこと想像したこともないですし、
そ、そういう力があったとしても、ギャルになんかー!」
と、来美の身体でそう叫ぶー。
”ーーーあ~~~~ギャルでごめんね????”
来美の意識が不満そうにそう返してくるー。
「あ、い、いえっ、ちがっー…
そ、そういう意味じゃなくて、
ぎ、ギャルな篠原さんの身体になんて入ったら
僕が緊張で耐えられないっていうかー
学校でもギャルとして振る舞うなんて無理なのでー」
来美の身体で、浩太は慌ててそう説明するー。
”あははーいいよいいよー
で?ホントにあたしの身体に入った理由に心当たりはないってこと?”
来美の意識がそう確認してくるー。
浩太は、来美の身体で「全然!普通に寝てただけですからー」と、
そう答えるー。
あまりに浩太が必死なためか、来美の意識はため息を吐き出すと、
”じゃ、そういうことにしておいてあげるー”と、
それだけ言うと、”っていうかさ、それやめない?”と、
そう続けるー。
「え……そ、それって、ぼ、ぼ、僕、何もしてないですよー!?」
来美の身体でドキドキしながら、慌ててそう返すー。
すると、来美の意識は”いや、それ。やめよ?”と、
そう言葉を返して来たー。
「えっ!?えっ!?えっ!?」
来美の身体で混乱する浩太ー。
”それ”と言われても何のことを言われているのか
全く分からないー。
そう思いながら
「あっ!え、えっとー…
え……ぎ、ギャルっぽく喋れってことですかー?」
と、そう言葉を口にすると、
「た、た、確かに、僕なんかが篠原さんの声で喋るなんてー
お、おこがましいですよねー?」と、申し訳なさそうに言葉を口にしたー。
普段、明るい来美の”顔”が、浩太が中身になると
途端に弱々しい雰囲気になるー。
同じ身体を使っていても、それを使う人間によって
大きく雰囲気が変わってしまうー。
”ち~が~う!それ!あんた、あたしと同じクラスなんでしょ?
何で敬語なの?”
来美の意識が不満そうに内側からそう叫ぶー。
「ーえっ、あっ…え、え~っと…す、すみませんー」
来美の身体でそう言葉を口にする浩太ー。
”何で敬語なの?”と言われると、何故だか自分でも分からないー。
必死に頭の中で考えて
「も、申し訳ない気がするのでー」と、そう言葉を口にすると、
”あんた、ホントにあたしのクラスメイト???”と、
来美にそう言われてしまうー。
「ほ、ほ、ホントにクラスメイトですってば!」
来美の身体で必死に叫ぶー。
そんな様子に、来美の意識は心底呆れたようにため息を吐き出すと、
”クラスメイトなら、敬語じゃなくていいでしょ?
あんたとあたしは同じ学年で、別に上下関係もないんだし。”
と、そう言葉を口にしたー。
「ーあ、は、はいー…
わ、分かりましたー」
”ーおい、分かってないじゃんー”
来美の意識が心底不満そうに言うと、
「ひっ!?わ、わ、わ、わかっーーーた…」と、語尾を小さくしながら
来美の身体で浩太は答えるー。
”はぁ”と、ため息を吐き出す来美の意識ー。
しかし、そんな会話をしている間に、
来美に憑依してしまっている浩太には”ある問題”が生じていたー
「あ、あ、あの…」
来美の身体で、浩太が来美の意識に語り掛けると、
心底申し訳なさそうに、そして困り果てたような表情を浮かべながら
言葉を口にしたー。
「あ…あの…と、と、トイレ…行きたいんですけどー…
どうすればいいですか…?」
また敬語ー。
来美の意識はそう思いながらも
”え???は????”
と、トイレ、と言われたことに少し驚くような声を上げるー。
「ーー…ど、ど、どうすればー…」
浩太は来美の身体でトイレに行くことを躊躇っているー
女の身体でどう済ませていいのかも分からないし、
トイレを済ませるとなれば色々なものを見たりすることに
なってしまうかもしれないー。
”ーーー……ーあ、あ、あんたー!や、やっぱり変態!?”
来美の意識がそう叫ぶー。
そんな言葉に、浩太は来美の身体で「ごめんなさい!」とそう叫ぶと、
「こ、ここで、が、我慢しますー」と、そう言葉を口にしたー。
しかし、来美の身体でもじもじして、浩太は冷や汗をかき始めるー。
その様子を見て、来美の意識は
”あ~~~!も~~~!漏らされたらもっと困るから、早くトイレに行って!”と、
そう叫ぶのだったー。
②へ続く
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コメント
憑依されちゃったほうの意識も残されていて、
二人でドタバタ(?)していくお話デス~!!
②では、登校もしちゃいます~!!★
今日もありがとうございました~~!

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