<他者変身>フェイスチェンジ

変身能力を持つ男ー。

しかし、彼の変身能力には欠点があったー。

それはー
”顔”しか変身できないことだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーなんか今日の萌愛(もえ)、いつもと違うようなー」

ふと、男がそんな言葉を口にするー。

「ーーえっ…そ、そんなことないと思うけど~」
”萌愛”と呼ばれた女が気まずそうにそう言葉を口にすると、
男は「ま、まぁー…気のせいか」と、そう言葉を口にしながら
立ち去って行くー。

「ーーーふぅー。危ねぇ危ねぇー」
分厚い上着を着ている”萌愛”と呼ばれた女は
表情を歪めながら笑みを浮かべるー。

彼女はー”萌愛”ではないー。
”萌愛の顔”に変身している男ー、

変身能力使いの塩里 恭平(しおざと きょうへい)という男だー。

萌愛の”顔”に変身している恭平は、
そのまま萌愛の勤務先の奥に行くと、
目的を果たそうと行動し始めるー。

「ーククククー危うく失敗するところだったぜー」
可愛らしい顔立ちを歪めながら、
可愛らしい声でそう言葉を発すると、
”萌愛の顔”をしている恭平は、そのまま”従業員”しか入れない店の奥で、
何やら、書類を回収し、
さらには、その部屋の写真を撮影していくー。

「これでよしー、とー」
どこか不自然に分厚い上着を身に着けている
”萌愛”の顔をした恭平ー。

それもそのはずーー
彼の変身能力には”欠点”があったー。

それはー”顔”しかその相手に変身できない、
ということだったー。

彼は今日、このお店のあるものを持ち出し、写真を撮影するため、
この店で働く女・萌愛に変身して
この店に忍び込んでいたー。

が、変身するのは顔だけ。

他の部分は全部、恭平自身のままでー、
顔、髪や声は萌愛のものになっていて、
一見すると萌愛に見えるものの、
胸はないし、アレは生えているままだし、
足も毛が生えている男の足、そのものだー。

体格も違うー。

だからこそ、胸や体格を誤魔化すために、
分厚い服を着こんで、ここにやってきていたー。

「ーーーよし、こんな感じだなー」
萌愛の顔をした恭平はそれだけ言葉を口にすると、
脱出を始めるー。

”ーーったくー”
脱出しながら、萌愛の顔をした恭平は
自分の下半身が反応していることに気付いてため息を吐き出すー。

美女の顔になって行動していると、
どうしてもドキドキしてしまうことがあるー。
その反応が、アソコに出てしまっているのだー

「ーー頼むから、大人しくしててくれよー」
これが大きくなりすぎてしまうと、
服の上から”異変”に気付かれてしまうー。

そんなことを思いつつ、少し深呼吸をすると、
萌愛の顔をした恭平は他の従業員にペコリと頭を下げて、
そのまま店から脱出したー。

「ククククー残念だったなー」
萌愛の綺麗な顔立ちを、邪悪な笑みで歪めながら、
店を振り返りつつ、そう言葉を口にすると、
男は、萌愛の顔のまま裏路地へと入るー。

そしてー、”顔”に手を当てて
その顔を変えると、
少し細目の男の顔に、萌愛の顔が変わっていくー。

”顔だけ変身できる男”ー
恭平はこうして、自分の能力を駆使して、
”仕事”を引き受け、それをこなすことで
生計を立てていたー。

恭平はそのまま裏路地から表に出ると、
萌愛の姿の時に着ていた服装のまま、
そのまま歩き出すー。

”男女兼用”の服を着ていたし、
そもそも顔以外は恭平のものだったため、
変身を解除しても”服がどうこう”という、
そういう心配はいらないのは、
恭平の能力の”メリット”と言えるのかもしれないー。

「ーーー」
恭平はやがて、”依頼人”の元を訪れると、
撮影した写真のデータを保存したSDカードと、
萌愛の顔で店から持ち出したものを手渡すー。

「ーーーご苦労様ですー」
依頼人の男は、そう言葉を口にすると、
「ーこれで、あの店を”検挙”することができますー」
と、丁寧な口調ながら、少し不気味さも兼ね備えた口調で、
そう言葉を口にしたー。

「ーーへへへーしかし、あんたのような立場の人間が
 俺みたいな人間を使っていて、いいのかいー?」
恭平がそう言葉を口にすると、
依頼人の男は「えぇー。毒を以て毒を制すー。
今の世の中には、そういう存在も必要ですからー」と、
そんな言葉を口にしたー。

恭平は主に”能力”を、”良い方面”に使っているー
本人の不遜な態度や、
裏の社会にも通じているような振る舞いから、
勘違いされやすいものの、
彼は”純粋な悪事”のために自分の能力を使ったことはないー。

先程、萌愛の顔で行った仕事も、
潜り込んだ先は”数々の不正を行っている”という噂があった店で、
その確証を掴むために潜入したのだー。

「ーーーなるほどねー」
恭平はそれだけ言葉を口にすると、
「ーま、あんたがそう言うのなら、俺はただ依頼された仕事をこなすだけだー
 目黒(めぐろ)警視正ー」と、
そう言葉を口にするー。

依頼人の男は、手段を択ばず内部の不正や、表沙汰にできない事件を
”処理”していると言われている刑事ー、
目黒 圭吾(めぐろ けいご)ー。

「ーーあなたは物分かりが良くて助かりますー。
 これからも、宜しくお願いしますよー。

 ”闇”を全て葬り去るためにー」

依頼人の目黒警視正は、そう言葉を口にすると、
そのまま夜の闇に紛れて姿を消したー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーうん、もしもしー。
 そうー、わたしー。
 ごめんねー、連絡が遅れてー」

数日後ー。
恭平は、”犯罪組織アビス”の構成員の男と組んで
悪事をこなしている女の”顔”に変身ー、
その顔で相手の男に連絡をかけていたー。

これも”目黒警視正”からの依頼だー。

「ーーそれで、”例の取引”の場所なんだけどー、
 元々予定していた場所は警察にマークされてるみたいだから
 場所を変更したいのー」

アビスの構成員と結託している女・香織(かおり)の顔で
相手の男と電話を続けるー。

”電話は、楽だなー
 顔だけの変身でも、バレようがねぇしなー”

香織の顔で、恭平は邪悪な笑みを浮かべると、
「うんー南地区の第8倉庫でー
 そこなら絶対に大丈夫ー」と、
そう返事をするー。

”目黒警視正”の指示で、犯罪組織アビスの構成員を
その場所におびき出すのが目的だー。

「うん、じゃあ待ってるー。よろしくねー」
そう言葉を口にすると、香織の顔をした恭平は電話を切り、
近くの別室で待機していた目黒警視正に合図を送るー。

”ご苦労様でしたー”
スピーカー越しに目黒警視正の声が聞こえてきて、
香織の顔をした恭平が「ー電話だと、楽だなー」と、
そう言葉を口にするー。

「ーついでに、この女の声、エロい感じで気に入ったぜー」
香織の顔をした恭平はそう言いながら
自分の手で香織の顔を触ると、
目黒警視正はスピーカー越しに
”あなたのその力、いつ見ても素晴らしいと同時に恐ろしくもありますね”と、
そんな言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーご主人様ー こちらですー」

数日後ー
メイド服をあらかじめ着て、
そのまま”メイドの顔”に変身ー、
身体は男のままではあるものの、
なんとか誤魔化して、
”悪徳企業の社長”を、上手く屋敷の外に誘導する依頼を
恭平はこなしていたー。

「ーーくそっーいったい誰がこんなことをー」
”屋敷の中に侵入者が紛れ込んだため、避難をー”と、
そう言われた悪徳企業の社長・権三郎(ごんざぶろう)は
不満そうに屋敷の外に向かおうとしていたー。

「ーあちらの階段からお逃げくださいー」
顔だけメイドで、身体は恭平のままの
メイド服を着た恭平はそう言うと、
権三郎が階段を降り始めるのを見て
その場で”顔”を普段の自分の顔に戻したー。

そして、その場で叫ぶー。

「社長ぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!!」
と、恐ろしい声で大声を上げるー。

その声は、確実に非常階段を降りている最中の
悪徳企業の社長・権三郎にも聞こえたはずだー。

権三郎は青ざめながら
”自分が本当に命を狙われている”ということを
実感して、そのまま逃げていくー。

「ーーククー」
非常階段の上から、その様子を察した恭平は
すぐにまた”顔”を別のメイドに変えると、
先回りして、屋敷の1階の方に降りると
「ご主人様!」と、そう言葉を口にしたー。

顔以外は男の身体のまま、メイド服を着ている状態であるものの、
悪徳企業の社長・権三郎は命を狙われている恐怖に
怯えているかか、そのことに気付くことはなかったー。

「ーお車を用意してありますー。
 早くお逃げくださいー」
メイドの顔でそう言葉を口にすると、
社長の権三郎は、「わ、分かったー」と、そう言葉を口にしながら、
メイドのほうを見つめるー。

恭平は、メイドの顔で、何食わぬ表情のまま
「お車は裏側にございますー」と、そう伝えると、
そのまま、権三郎社長は屋敷の外に出て裏側に回り始めたー。

恭平はすぐに変身を解除して、今度は
「権三郎ぅぅぅ!どこだああああああ!」と、叫びながら
そのまま屋敷の中を移動しつつ、裏側に向かって行くー。

そして、屋敷の執事の顔に変身すると、
メイド服を慌てて脱ぎ捨てて、執事の服に着替えると、
先に用意していた車に、権三郎が現れるよりも前に乗り込んでから、
平然とした表情で「ご主人様!お乗りください」と、そう言葉を口にするー。

すっかり青ざめた様子の悪徳企業の社長・権三郎は車に乗り込むと、
心底安心した様子で息を吐き出したー。

”さてー”
恭平は、心の中でそう思いながら、
目黒警視正に指示された通りの場所に、悪徳企業の社長を連れて行くー。

悪徳企業の社長、と言えども
世間的にそれなりの影響力のある人物で
単純に抹殺するのは難しいのだと言うー。

だからこそ、ある場所におびき寄せて、ある方法で始末する、と、
そう目黒警視正は説明していたー。

「ーーこ、ここはー!?」
権三郎が異常に気付いた時には、
既に車は山中にいたー。

執事の顔に変身している恭平が笑みを浮かべると、
「車から降りろ」と、そう権三郎に言葉を発したー。

怯えながら、車から降りる権三郎ー。

そこには、目黒警視正が笑みを浮かべながら
待ち構えていたー。

「ーーあなたは、やりすぎたー。
 死んでもらいますー」
とー。

「ーーー…な…わ、私を殺すつもりかー?
 き、貴様は警察の人間だろうー!?
 それなのにー!」

悪徳企業の社長・権三郎がそう叫ぶー。
が、目黒警視正は黒い手袋をはめたまま、
謎の注射器のようなものを権三郎に打ち込むと、
権三郎は苦しそうにしながらその場に倒れ込むー。

「ーー闇を葬るのが私の使命ですー。
 どのような手段を使おうともー」
目黒警視正はそう言葉を口にすると、
息絶えた権三郎を確認してから、
少しだけ笑みを浮かべたー。

「ーさて、今回もご苦労様でしたー」
そう言葉をしながら、目黒警視正は
変身を解除した恭平に”注射器”を手渡すー。

「ーーしかし、恐ろしいもんだなー
 いったい、何が入ってるんだー?」
恭平は笑みを浮かべながら注射器を見つめると、
目黒警視正は「毒です」と、単刀直入に答えたー。

そしてーー

「ーー!?」
恭平が目を見開くと、直後、目黒警視正が取り出した拳銃から
銃声が響いたー。

「ーーが……!?!?」
手渡された注射器を地面に落下させると、恭平はその場に倒れ込むー。

黒い手袋をはめたまま、
目黒警視正は、死んだ権三郎に拳銃を握らせると、
苦しそうにしている恭平のほうを見つめたー。

「ーー申し訳ありませんー。
 ですが、この社長を葬るためには、
 こうして”相打ち”を演出するしかないー。

 それとー、
 あなたのような”力”ー
 とても便利なものですがー、
 万が一それが”暴走”すれば、社会に大きな混乱をもたらすことになるー。

 ーーですからー残念ですがー
 あなたとのビジネスはここまでです」

目黒警視正はそう言うと、「お疲れ様でした」と、ぺこりと
頭を下げてそのまま立ち去ろうとするー。

「め……目黒ぉぉぉぉぉ!」
恭平は血を流しながら怒りの形相で立ち上がるもー、
そこで力尽きて、そのまま倒れ込んでしまったー。

「ー申し訳ありませんー
 ですが、これは秩序を守るためー」
目黒警視正はそれだけ口にすると、そのまま車で走り去っていくー。

”顔だけ変身する力”を持つ男・恭平ー。

当然、彼も”普段使っている顔も、自分の顔ではない顔にする”など、
用心はしていたものの、
こうして、葬られてしまったのだったー。

おわり

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コメント

”顔だけ変身できる”
変身モノでした~!★

変身できる場所が制限されているのも
たまには新鮮(?)ですネ~!

お読み下さりありがとうございました~!★!

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