ある日、突然憑依されてしまった女子大生。
彼女は、自らの中に潜む男を消し去ろうと、
奔走する。
しかし…!?
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”お前の身体は、俺のものだー”
”やめて…!お願い、、やめて…!”
”今日から俺は…佐由子だ!”
・・・・・・・・・・・・・・・
「---!!!」
布団から、ガバッと起き上がる可愛らしい顔立ちの女子大生ー
「はぁ…はぁっ…」
女子大生・杉浦 佐由子(すぎうら さゆこ)は、
荒い息を口から吐き出していたー。
悪夢を見たー。
”へへ…おはようさん。安心しろよ、今日は何もしてないぜ”
男の声が佐由子の中に響き渡るー。
佐由子は、2カ月前ー
”男”に憑依されたー。
憑依薬ー、と呼ばれる薬を使った男に
突然路上でキスをされてー
そのまま憑依されてしまったのだー。
その時の、夢ー
黒い服のやせ細った男に、追い詰められてー
佐由子は、そのまま憑依されてしまったー。
”しっかし、何でお前の自我、消えなかったんだろうなぁ、
とんだ誤算だぜ”
佐由子に憑依した男が笑うー。
男は、佐由子に憑依したのだが、
佐由子の自我まで完全に乗っ取ることはできず、
こうして、一つの身体を二人で使う、そういう状態に
なってしまっていた。
「--わたしの身体を勝手に使ったら許さないから」
佐由子はそう呟くー。
”へへ…強気だねぇ 俺がその気になれば
お前は何も抵抗できないくせに”
男が笑うー
確かに、男の言葉は事実だー。
男がその気になってしまえば、
佐由子は、抵抗できないー
何もできず、乗っ取られてしまうー。
だが、男が佐由子を乗っ取っても、
佐由子の身体で、”人生が破滅するようなこと”はしなかったー。
何故ならー
佐由子に憑依した男は、佐由子から抜け出せない状況に
なってしまっていたからだー。
そのため、佐由子の人生が崩壊してしまうことは
自分の人生が崩壊することを意味するー。
だから、あくまでも佐由子の人生に影響が
及ばない範囲で”楽しむ”ことしか、
できなかったのだったー。
その日の夜ー
佐由子を乗っ取った男は、
佐由子の胸を揉み始めるー
「へへへ…ほ~ら、こうして俺がその気になれば
抵抗できねぇじゃねぇか」
佐由子はニヤニヤしながらそう呟くと、
「--わたしはあなたのしもべですぅ!」と嬉しそうに呟いたー
「ははは!いい気味だぜ!」
ショートパンツ姿になって
生足を晒すと、
佐由子はうっとりとした表情で、
生足を撫でまわし始めたー
「ふひっ… ふひひ…
ふひひひひひっ♡」
欲望の表情を浮かべる佐由子ー
佐由子の自我を消すことはできなかったがー
こうして、その気になれば佐由子を完全に乗っ取ることが出来るー。
「--っかし、」
太ももを撫でながら佐由子は呟くー
「どうしてこの女は、自我まで乗っ取ることができなかったんだ?」
佐由子は首を傾げたー。
実際のところ、男の憑依はこれが”初めて”ではない。
佐由子の前にも何人かで遊んできたー。
だが、いずれも佐由子とは違い、
心も身体も完全に乗っ取ることができたー。
しかし、佐由子は違うー
こうして、その気になれば佐由子を乗っ取ることはできるのだが、
佐由子の意識は、乗っ取ってるとき以外は残っているし、
そもそも佐由子本人の意識が優先されるのか、
”佐由子が寝ている間”や
”疲れているとき”しか、そもそも乗っ取ることも出来ないー。
「--まぁ、いいか」
太ももを触りながらはぁはぁと呟く佐由子ー。
「へへへへ…いい脚だぜ……へへへへ…へへ♡
なんでこんな、女の脚って、綺麗なんだろうなぁ~~~
へへ、うひひひひひ♡」
下心丸出しの表情で呟く佐由子ー。
やがて佐由子は部屋の中をモデルのように歩いてポーズを決めたり、
卑猥な言葉を口から次々と吐き出したりー
それらに飽きたころには、激しいエッチを始めるのだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「------(なんとかしないと)」
佐由子は、”密かに”あることを考えていたー
それはー
”自分の中にいる男を消す”方法だー。
男によれば、
憑依すれば相手のことを完全に乗っ取ることができる、
とのことだったが
幸いなことに、佐由子はそうはならなかった。
自我は残っているし、
佐由子が疲れたり、眠ったりしていなければどうやら男は
強引に佐由子を乗っ取ったりはできないようだー。
”-----”
男も当然、佐由子の”怪しい”行動は理解していたー
だがー
それをあえて野放しにしていたー
”憑依した俺を消すことなんて、できるわけないだろ”
、、と、いう”余裕”からだー。
しかし、それは”油断”だったー。
佐由子は、たどり着いてしまったー
”憑依から抜け出す”方法にー。
「---ええ。あなたの中にいる”別の意識”をこれで
取り出すことができます」
とある研究所の所長が佐由子に向って言うー。
佐由子は、人間心理や多重人格などを研究している研究機関に
憑依のことをダメ元で相談、
最初は”そんなことあるわけがない”と突っぱねられていたものの、
そこの所長が、佐由子の状態に興味と理解を示し、
半年間の間、佐由子のことを見て来たー
”なんだと…?”
男は戸惑うー
佐由子は「ありがとうございます」と頭を下げているー
男は焦るー
佐由子が自分を消そうとしていることは理解していたー
しかし、
憑依した意識を消すことなど出来るはずがないー
そう、”油断”していたのだー
”おい!ふざけるな!”
男が叫ぶー
「---…もうわたしの身体を好きにはさせない!」
佐由子が叫ぶー。
「---わたしの身体は、わたしのものよ!」
佐由子の言葉に、佐由子に憑依している男は、怒り狂うー
「--ひぅっ!?」
ありったけの力で佐由子を乗っ取った男は
研究施設から逃げ出そうとするー
「待ちなさい!」
研究施設の男が叫ぶー
「くそっ!俺は消えねぇ!ふざけんじゃねぇ!」
大声で叫ぶ佐由子ー
佐由子を乗っ取った男は、
鬼のような形相と
怒り狂った口調で、暴れ始めるー
周囲の研究所員が、
佐由子を取り押さえようとするー
「邪魔だ!!邪魔をするなぁぁああああああ!」
佐由子の喉が傷みそうなぐらいに、
大声を出す佐由子ー
しかし、怒り狂った佐由子はやがて、取り押さえられるー
「----」
研究所の所長らしき人物が佐由子に近づいてくるー。
「---杉浦 佐由子さんの身体は
杉浦 佐由子さんのものだ」
所長が言う。
「--お前のような他人の身体を奪って好き放題しようとする悪魔の
ための身体じゃない!」
所長にそう言われた
佐由子を乗っ取っている男は、悔しそうな顔で所長を見つめるー。
「--ぐぐぐぐぐぐぐぐ…」
佐由子は、今にも獲物に噛みつきそうな獣のような目をしながら
イスのようなものに座らされて拘束されるー。
「----人の身体を勝手に乗っ取るなど、許されることではない」
所長の言葉に、
佐由子は歯ぎしりしたー
そして、最後の抵抗にー
と、所長の顔に向かって唾を吐き捨てる佐由子ー
「--これより、この子に潜む”別の意思”を取り除く」
所長は佐由子の挑発には乗らず、
周囲の研究所員に指示をしたー
「--はぁっ…はぁっ…」
佐由子本人の意識が表に出て来るー。
「ありがとうーございます」
佐由子が、お礼を口にすると、
所長は「ちょっと衝撃があるかもしれないが、すまないね」と優しく微笑んだー
「やっとーーー」
佐由子はほほ笑むー
やっと、解放されるー
「--くそっ!!!!くそっ!!!!くそぉおぉおぉおおおおお!!!」
佐由子を再び乗っ取った男が叫ぶー。
男は思うー
佐由子を乗っ取った時のことをー。
憑依薬を乱用しー
今まで何人もの女を乗っ取って来たー
そんなある日、
女子大生の佐由子を見かけて
男は一目ぼれしたー
”次に乗っ取るのはこの女に決めたー”
佐由子を手に入れたいー
そう思った男はいつも購入している憑依薬を裏ルートで入手しー
そして、大学帰りの佐由子を襲ったー。
「---あなた、誰ー?」
佐由子は、そう呟いたー
男は笑みを浮かべたー
「--その身体を、貰うよ」
とー
佐由子は返事をする間もなく、男にキスをされてー
そして、乗っ取られたー
「ぐああああああああああっっっ!!!!」
佐由子の身体で大声を出すー
佐由子を乗っ取った時のことを思い出しながらー
男は佐由子の身体で悲鳴を上げるー。
頭に取り付けられたヘルメットのような装置から
男の意識が”吸引”されるかの如く、
取り除かれていくー
”その身体に元々存在した意識以外を識別し、
強制的に取り除く装置”
元々は、多重人格と呼ばれる状況を解消するために
この研究施設が作り出したものだったが、
佐由子から相談を受けた所長は、装置をカスタマイズして
佐由子に憑依して”他人の意識”を取り除こうとしていたのだー
”くそ…”
男の意識が装置の中に取り込まれていくー
男は思うー
”でも、どうしてー…?
どうして、この女だけは、完全に乗っ取ることができなかったんだー???
く…そ…”
男は、何も感じない世界ー
特殊な装置の中の世界に放り投げられたー
「くそっ…!くそっ!…俺を、、俺をここから出せ!」
男の叫び声は、聞こえないー
「---終わりました」
研究所長が笑みを浮かべるー
意識を取り戻していた佐由子が微笑むー
「ありがとうございます…
これでわたしはやっと自由になれるんで
---?」
佐由子が表情を歪めた。
「---どうしかしたのかい?」
と、研究所長が不安そうに首を傾げるー
その時だったー
佐由子の頭上に取り付けられたヘルメットのようなものが
再び激しい光を放ち始めるー
「--え、、、えっ!?!?うあ、、、あああああああああああっっっ!」
佐由子が苦しそうに悲鳴を上げるー
「-な、なんだ!?どういうことだ!?」
研究所長が慌ててモニターの前に立つー
そして、それを見た研究所長が驚くー
機械の誤作動で、佐由子の意識まで吸い出そうとしているーーー
ーーー
ーーーの、ではなかったー
「ふたり…」
研究所長が呟くー
「杉浦 佐由子さんに憑依していたのは、一人ではなく、ふたり…!」
とー。
「---ぎゃああああああああああああああああああ!!!!!」
激しい衝撃の中ー
”自分を佐由子”だと思い込んでいたー
”もう一人の憑依者”
いやー
先ほど吸い出された男よりも”先”に憑依していた憑依者は、
記憶を取り戻したー
そうだー
わたしはーー
わたしはーー
佐由子じゃないーーー
”お前の身体は、俺のものだー”
”俺”はーーー
佐由子ちゃんをいつも見つめていたー
近所の、おじさんーー。
乗っ取った時のことを思い出すー
憑依薬を使ってー
ランドセルを背負った佐由子をー
”やめて…!お願い、、やめて…!”
”今日から俺は…佐由子だ!”
俺はー
乗っ取ったー
そしてーー
自分を佐由子だと思い込み、
佐由子として生きるために
自己暗示を数カ月かけて、かけ続けてー
佐由子だと思い込んでー
中学、高校、大学生と生きて来たー
「--お、、、お、、、ま、、待って!待て!タイム!」
自分を佐由子だと思い込んでいた男ー
佐由子を小さいころから
ずっと乗っ取って来た男が、佐由子の身体で悲鳴を上げるー
”乗っ取られる場面”を、佐由子はよく夢で見ていたー
けれどー
そうだー
あの夢はーー
”数カ月前に乗っ取られた時の夢”じゃなくてーーー
”自分が、佐由子を乗っ取った時の夢”だーーー
佐由子を乗っ取っていた男は、
そう、気づくー
だがー
抵抗むなしく、その男も、装置に吸い込まれてしまったー
唖然とする研究所長ー
そして、佐由子は目を覚ましたー
3年生の放課後の帰り道ーー
佐由子は憑依されたー
それ以降の佐由子は、
”自分を佐由子だと思い込んだ、佐由子に憑依した近所のおじさん”
だからー
本当の佐由子の時間は3年生のあの日から止まっているー
「----あれ…わたし、、、おじさん、、、だぁれ…?」
身体は女子大生ー
でも、心は3年生のままー
佐由子は無垢な表情で、研究所の所長を見つめたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
何もない黒い世界ー
装置に吸い出された先で
”ふたつ”の意識は再会したー
「--なんだぁ…どうしてこの女だけ乗っ取れないのかって
ずっと分からなかったけどよー」
男が笑うー
「---!」
小さいころから佐由子に憑依して、
その自覚すら消して、佐由子になりきっていたほうの男が顔をあげるー。
「--まさか、俺より先に既に、憑依してる”先客”がいたなんてなぁ
しかもー
自分でそのことを忘れていて、墓穴を掘るなんて」
”後から憑依したほうの男”が笑みを浮かべたー
「テメェのせいで、俺までこんな目に遭ってるじゃねぇか。
たっぷり礼はさせてもらうぜ」
男が怒りの形相でー
後から吸い出された男を睨んだー
「ひ、、、ひぃいいいいいいいいいいいい!」
佐由子に憑依していた男二人の修羅場が-
誰にも知らない場所で繰り広げられようとしていた…
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
自分の中に憑依してきた男を消そうと思ったら
自分を「憑依した男」だった、という
お話でした~!
憑依した自覚まで消しちゃうと
こういうことも起きちゃうかもしれませんネ~…!
お読み下さりありがとうございました!!
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