<他者変身>変身失敗~どうしてこんなことに!?~

「他人に変身する力」を手に入れた男子高校生ー。

しかし彼は、変身の最中に変身に失敗してしまいー
大惨事になってしまうー。

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「ふふふふふふ…」

男子高校生の増田 啓志(ますだ けいし)は、
笑みを浮かべていたー。

”ついに”念願の日がやってきたのだー。

”他人に変身することのできる眼鏡”

それを、手に入れたのだー。

使い方は簡単ー
眼鏡をかけて、その相手を10秒間見つめ続けるー
というだけー。

そうすると、見つめていた相手に変身することができてー
その姿で自由に行動することができるー。

そして、もう一度眼鏡をかけて、10秒間
目を瞑り、元の姿を思い浮かべれば
すぐに元の姿に戻ることができるー。

そういう、眼鏡だー。

「ーむふふふふふふ」
啓志は、この眼鏡を
同じクラスの憧れの子、御神 椎菜(みかみ しいな)に
対して、使おうとしていたー

誰にでも優しくてー
何でもできてー
しかも可愛いー

全てを持っているような子だー。

しかしー
お調子者である啓志は、椎菜に
好かれるようなタイプではなくー
以前、告白したこともあるのだが、断られてしまったー。

誰にでも優しい椎菜は、
啓志にも変わらず優しいのだが、
少なくとも”好かれてはいない”ということは、
イヤというほど、伝わってきてしまうー。

だがー

「ーーむふふふふふふふふ~」
笑みを浮かべる啓志ー。

啓志はこの、ネットで入手した
”他人の姿に変身できる眼鏡”を用いて、
椎菜の姿に変身しようとしていたー。

椎菜の姿に変身してー
そのまま下校ー
椎菜の姿であんなことやこんなことをするつもりだったー

今日はちょうど、両親が仕事でかなり遅くなるために、
超がつくほどのチャンスなのだー。

朝から放課後までー
心臓のバクバクで発作を起こしてしまいそうになりながらー
啓志はようやく、待ちにまった放課後を迎えたー。

そしてー

物陰に隠れながら、椎菜のことを
10秒凝視するタイミングを伺うー

図書委員でもある椎菜は、
最後ー図書室から利用している生徒が帰ったあとに、
図書室の戸締りをするー。

つまりー
そのタイミングは”椎菜が一人になるタイミング”なのだー

椎菜を凝視するための、絶好の機会ー。
椎菜をこの眼鏡で10秒間凝視してー
椎菜の姿に変身したら、すぐに近くの物陰に隠れるか、
あるいは本物の椎菜が図書室から出てくる前に
この場を立ち去るー

啓志は、自分が椎菜に変身した後のことを
思い浮かべて、思わず笑みを浮かべたー

「へへへへへ…俺が…椎菜ちゃんにー」
図書室付近の廊下の物陰から、
図書室から生徒が出ていくのを確認した啓志は、
図書室の入口付近まで近づいたー。

他人に変身することができる眼鏡をかけてー
図書室の中を見つめるー

椎菜の姿を確認した啓志はー
”ごめんな…その姿、半日だけ、借りるから”と、
心の中で謝罪の言葉を口にすると
椎菜のことを凝視し始めたー。

椎菜は背中を向けていて、こちらに気づく様子はないー

1秒ー
2秒ー

後ろめたいことをしているせいだろうかー。
普段なら”10秒”なんてあっという間なのに、
10秒がとても長く感じられるー

3秒ー
4秒ー

いつもは、椎菜の顔をさりげなく見たりして
目の保養にしている啓志だったが、
今、この瞬間ばっかりは
”どうか、急にこっちを向いたりしないでくれ”と
願わずにはいられなかったー。

急にこっちを向かれてしまっては、
最悪の場合、変身がバレてしまうー

5秒ー

ってか、10秒ってこんなに長かったっけな?と、
啓志は思い始めるー。
”俺、とっくに10秒以上時間が経過している気がするんだけど”と、
自分が10秒分以上の自分語りをしていることに疑問を
抱き始めたその時ー

「よ~~~!啓志!」
背後から声がして、肩をポンと叩かれた啓志は、
ビクッとして振り返ったー

そこにはー
お調子者な友人・上本 達平(うえもと たっぺい)の
姿があったー

「ーーうえ…」

”上本”と言おうとしてすぐに、
”しまった”と、慌てて図書室のほうを覗こうとする啓志ー

自分は、変身の最中だったー
早くー椎菜を見つめないとー

そう思いながら慌てていると、
達平が「ははは!お前もしかして、御神さんのこと好きなのか~?」と、
ニヤニヤしながら肩をバンバンと叩いたー。

椎菜のことを覗いていた啓志を見て、
友人の達平はそう思ったのだー。
眼鏡がずれて、音を立てて廊下の床に落ちるー

「ーーーえっ…」
友人の達平が表情を歪めるー。

”変身中”の中途半端なタイミングで邪魔をされてしまった啓志はー
”身体半分が椎菜”
”身体半分が啓志”というとんでもない状態になってしまったのだー。

「ーーひっ!?!?」
お調子者の達平も、あまりの光景に啓志を見て、尻餅をつくー。

「ーな、な、な、なんだおまえ!」
とー。

「えーー…あ、、えっ!?」
啓志も唖然とするー

自分の左半分が、椎菜ー
右半分が自分自身のままー、という悲惨な状態。

「ーーこ、これは…」
声も、おかしいー
啓志と椎菜が両方同時に喋っているかのような声だー。

「ーーー…ひ、、よ、、寄るな!」
達平が驚きながら叫ぶー

そんな達平を見て啓志は「お、お前が邪魔するからだろ」と
呟きながら、変身のために使った眼鏡を拾おうとするー。

元の姿に戻ることは簡単だから良いー。

だが、この光景を、
よりにもよって、口の軽い達平などに見られてしまったのは
誤算中の誤算だったー。

”くそっ!せっかく憧れの御神さんに変身できると思ったのに”
そんなことを思いながら
眼鏡を手にした啓志は、表情を歪めたー

「え…」
半分が椎菜の状態の啓志が呟くー。

綺麗な椎菜の左手で眼鏡を拾った啓志は、
絶望したー

眼鏡が、割れているー。

先ほど、達平が尻餅をついた際にー
達平は眼鏡の上に尻餅をついてしまったのだー。

無残な姿を晒す眼鏡ー

「お、、おい!!こ、これじゃ元に戻れないじゃないか!」
啓志と椎菜の声が同時に響くような感じー
奇妙な感覚を覚えながら、啓志がそう叫ぶと、
達平は「ど、ど、ど、どういう意味なんだ!?」と
困惑した様子で叫ぶー。

「ーーこ、、これは…」
啓志が焦りを覚えるー。

左半分が椎菜ー
右半分が自分の姿ー

そして、背は二人の中間ぐらいの背になっている気がするー
服装は啓志の服装のままー

だがー
左だけ胸があってー
右は胸がないー
股間のあたりは悲惨な状況になっている気がするしー
手も左右で明らかに違うー

啓志が、なんとか言い訳を頭の中をフル回転させながら
考えていると、

「ーきゃああああああああああああっ!?!?」
図書室の方から声がしたー。

啓志が慌てて振り返るー。

そこにはー
椎菜の姿があったー。

達平と話をしている間に、
本物の椎菜が図書室の片づけを完全に終えて、
出てきてしまったのだー。

「あ、いや…こ、、これは…!」
啓志が必死になんとかこの場を切り抜けようとするー

左半分は椎菜ー
右半分は啓志ー

椎菜はその場で震えて、
怯えた様子で「な、、な、、な…何なの…?」と、
やっとの思いで呟くー

「ーーあ、いや、これは、落ち着いてー」

落ち着けるはずがなかったー
椎菜からすれば、
”半分が啓志”で”なぜか半分はわたし”の
”化け物”が目の前にいるのだー

”うん、わかった”などと落ち着けるわけがないー

「た、、助けて…!来ないで…!」
震える椎菜ー

「そ、、そ、、そうだ!み、、御神さんに寄るな!」

啓志の背後にいた友人の達平が、椎菜の前に立ち、
啓志から椎菜を守るようにして叫んだー

「お…お前は…な、なんだ!」
達平が叫ぶー。

啓志は「ち、違うんだ!話せばわかる!」と叫びながら
なんとかして言い訳を考えようとするー

”他人に変身することができる眼鏡”のことを
シンプルに説明してもいいー

だが、それをすれば、自分が椎菜に変身しようとしていたことが
バレてしまうー

なんとかー
なんとか、良い言い訳を考えないとー

そう、考えていると達平は叫ぶー

「ーー啓志と御神さんの姿をしてー
 なんなんだお前は!?この…ば、、化け物が!」

とー。

椎菜は達平の背後で震えているー

別に椎菜と達平は親しい間柄ではなく、
ただのクラスメイトに過ぎないが
半分椎菜、半分啓志という”化け物”を見て
椎菜を守らないといけない、と咄嗟に思い、
椎菜の目の前に立ちはだかっていたー

・・
「ーーーこ、、これ以上近寄ったら…た、、ただじゃおかないぞ!」
達平は目の前にいる
”中途半端に変身してしまった啓志”を”化け物”と思っているようだったー

半分椎菜で半分啓志ー
だが、目の前に本物の椎菜がいるー

その状況を目の当たりにしている達平は
”本物の啓志も別の場所にいる”と誤解していたー

そして、啓志はそれを読み取ったー

啓志は笑みを浮かべるー

「くくくく…気づかれてしまったかー
 この学校の生徒の姿に変身して、
 悪さをしようと思ったがー」

啓志は、啓志と椎菜が混ざった声で言うー。

そうー

”啓志でも椎菜でもない、
 啓志と椎菜の姿をした化け物”をこの場で演じておけば何とかなるー

元に戻ったら、後で何食わぬ顔で、
2人の前に姿を現せばー
今、目の前にいる”本物の椎菜”と同じようにー
”被害者”の素振りをすることができるー。

「ーーよ、寄るな!」
達平が叫ぶー。

椎菜は怯えた様子で、震えているー

”くそっー”
啓志はそんな椎菜の様子を見ながらー
”こんなかわいい姿になって楽しめると思ったのにー”と、
心の中で舌打ちをするー

達平さえ邪魔をしてこなければー

そう思いながら、達平が尻餅をついた際に割れた
”他人に変身することのできる眼鏡”を拾い、
そのまま啓志は走り去っていくー

「ーーお、、おい!待て!」
達平が叫ぶー

「その化け物を誰か捕まえてくれ!」
とー。

椎菜は不安そうに
「何なの……?」と、一人呟くことしかできなかったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・

「はぁ…はぁ…はぁ…」

なんとか達平らを振り切り、学校から脱出した啓志ー。

しかしー
半分が啓志で、半分が椎菜というこの異様な姿のまま
ずっとウロウロしているわけにはいかないー

この格好でずっとウロウロしていれば
通報されるのも時間の問題だろうー。

啓志は椎菜の手のほうで、先ほど達平に
踏みつぶされた眼鏡を手にするー

割れてはいるもののー
完全に割れているわけではなくー

まだ、なんとか使うことが出来そうだー

啓志は慌ててその眼鏡をかけるー。

”元の姿を思い浮かべて10秒間目を瞑っていれば”
元の姿に戻ることができるー。

早いところ、元に姿に戻ったほうがいいー

眼鏡をかけた啓志ー
目を瞑り、元の自分の姿を思い浮かべるー。

そして、10秒が経過した啓志は
恐る恐る目を開いたー

するとーー

「ーーーふぅ…」
啓志の顔は無事に元に姿に戻りー
啓志は安堵の溜息をつくー

眼鏡の表示がおかしくなっているー。

他人に変身することのできる眼鏡の左側のレンズには
起動確認の情報などが表示されるようになっているが、
その情報表示のもはやまともに表示されておらず、
達平に踏みつぶされた際に、故障して、バグっている状態で
あることがわかるー

「くっそ~…あいつに絶対弁償してもらうからなー」

そう呟いて歩き出す啓志ー。

”なんとか変身失敗を乗り越えることができたー”

だがー
眼鏡は既に故障していたー。

啓志は元に戻っていないー。

今度は上半身が自分、下半身が椎菜のものに
なっていることに啓志が気づくのは、
この15分ほど後のことだったー。

おわり

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コメント

1話完結の変身モノでした~!☆

上半身が自分なら…
なんとかなりそうな気もしますネ~笑

小説
憑依空間NEO

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