<憑依>史上最低の通訳

”通訳”の仕事で日々活躍していた一人の女性ー。

しかし、彼女は
”憑依”によって、最悪の事態を招いてしまうー。

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龍宮寺 葵(りゅうぐうじ あおい)ー。
彼女は”通訳”として、各地を飛び回り、
色々な場所で活躍を続けていたー。

「ーーお会いできて光栄ですー」
葵が近くにいた、大臣にそう耳打ちをするー。

他国との重要な会談にやってきていた大臣・小久保(こくぼ)は、
葵の言葉を聞くと、
「こちらこそ光栄ですー」と、相手国のモレーン諸島の大臣・ドリスにそう言葉を口にすると、
葵はそれを、相手に伝えるー。

会談相手の、モレーン諸島の大臣はその言葉に笑みを浮かべながら、
地域の更なる発展や、互いの国の交流などについて
意見を交わすー。

”モレーン諸島”は、小さな島からなる島国で、
複数の島が密集している場所だー。
まだ発展途上国であるものの、海に囲まれていることから
観光地としての人気も高いー。

が、モレーン諸島は、とても小さな国で、まだ最近
海外との交流を始めたばかりということもあり、
自国で”通訳”も用意していなかったため、
葵が小久保大臣と、モレーン諸島の大臣の通訳を両方行いつつ、
話を進めていくー。

会談は順調ー。
お互いの友好関係を改めて確認し、
また、建設的な議論も行うことができているー。

そんな状況だったー。

しかしー…
そんな会談の様子を笑みを浮かべながら”霊体”として見つめている男がいたー。

憑依薬を使い、霊体となった男ー
曽根川 紀夫(そねがわ のりお)ー。

紀夫は、笑みを浮かべながら
国同士の会談の様子を見つめるとー、
二人の通訳を正確に行っている
スーツ姿の葵を見つめたー

”えへへへー葵ちゃんー。
 そのスーツ姿も似合ってるよー”

紀夫はー、
葵の学生時代の”先輩”だったー。

葵に告白して振られてー、
それでもしつこくしていたために学校側に相談されてしまい
退学になったー。

そんな経歴を持つ男だー。

そして、葵が28になった今日ー、
元先輩である紀夫は、最悪なタイミングで
葵の前に再び姿を現していたー。

…と、言っても、今の紀夫は”霊体”であるために
葵は、まさか学生時代の迷惑な先輩が
近くに来ているなどとは夢にも思っていないー。

”ってか、葵ちゃんー、何してんだ?通訳ー?”
そう思いつつも、紀夫は”ま、いっか。もうムラムラして我慢できねぇ”と、
仕事中の葵に容赦なく憑依して、
そのままその身体を奪おうと、霊体を葵に突進させるー。

「ーーひっ!?!?」
ビクッと震える葵ー。

突然の葵の異変に、小久保大臣と、モレーン諸島の大臣が少し表情を歪めると、
葵は「あ、あはっー、だ、大丈夫ですー…すっげぇー…」と、
一人奇妙な言動と仕草をしてみせるー。

がー、小久保大臣のほうを見て、葵に憑依した紀夫は
”って、面倒なタイミングで憑依しちまったなー”と、
そう思いつつ、「あ、いえー、大丈夫です。すみません。続けて下さい」と、
少しニヤニヤしながら、そう言葉を口にしたー。

小久保大臣は少し戸惑いながら、
モレーン諸島の大臣・ドリスのほうを見つめると、
「大変失礼しましたー」と、通訳である葵の異変のことを詫びると、
そのまま会談を続け始めたー。

「ーー来月の式典ではー、ぜひ大臣たちもお招きしたいと
 考えておりましてー」

小久保大臣が、最近発展を遂げている小さな島国の大臣・ドリスに
そう言葉を口にすると、
小久保大臣が少し戸惑っているのを見て、葵に憑依した紀夫は
”ーー俺、通訳なんてできねぇぞー?”と、そんなことを
心の中で考えるー

がーー

「ーーー!」
頭の中で浮かべた言葉の”翻訳結果”が、勝手に頭の中に浮かんでくるー。

相手の国の言葉など知らないはずの紀夫ー
けれど、”葵の脳”を使っているからだろうかー。

小久保大臣が今言った言葉やー、
自分が頭の中で浮かべた言葉の、
”相手の国の言葉と発音”が自然に浮かんでくるのだー。

”なんだこりゃー…すげぇ”
葵に憑依した紀夫はそう思いながら、
”これなら、俺も翻訳できるぜー”と笑うー。

がー、それと同時に紀夫は
”でもなぁー…俺、さっさと葵ちゃんの身体で楽しみたいんだよなぁ”と、
そう心の中で考えると、
”サッサと会談を終わらせる”ために、とんでもない言葉を口にしたー。

”その階段で皆さんを暗殺しようと考えているんですよー”
と、モレーン諸島の使う言葉に通訳してドリス大臣に伝えるー。

”暗殺しようとしているー”
そんな”嘘の通訳”を伝えられたドリス大臣からは笑顔が消えるー。

小久保大臣は、モレーン諸島で使われている言語を話すことができないー
そのため、通訳の葵がとんでもない通訳をしたことに気付いていないー。

にこにこしながら、ドリス大臣を見つめる小久保大臣ー。

が、ドリス大臣からすれば、
”あなたたちを暗殺しようと考えています”と
小久保大臣がそう言って来て、しかもニコニコしているような、そんな状況に見えてしまうー

「ーーーさ、サイコパスめー」
モレーン諸島の言語で、
ボソッと呟くドリス大臣ー。

それを、憑依された葵は笑みを浮かべながら
小久保大臣に”日本語”で翻訳するー。

「ありがとうございますー。楽しみですー」
とー。

その通訳とは裏腹にドリス大臣は険しい表情を浮かべているー。
それに気づいた小久保大臣は少し不思議そうな顔をしながら、
「お口に合いませんでしたかー?」と、
こちら側が用意した料理が、モレーン諸島のドリス大臣の口に
合わなかったのかと、そう思いながら言葉を口にするー。

”へへーこの二人、相手の国の言語が全然分かってねぇみたいだなー”

葵に憑依している紀夫は少しだけ笑みを浮かべると、
「ー”我々の用意した毒”の味はいかがでしたかー?」と、
そう通訳して、ドリス大臣に伝えたー。

穏やかな表情を浮かべている小久保大臣ー

そんな小久保大臣を見て”毒の味はいかがでしたか?”と言われたーー
と、通訳を通してそう誤解したドリス大臣は
「ど、毒!?」と、モレーン諸島の言語でそう叫ぶー。

憑依されている葵は、すかさず「驚いて叫ぶほど美味しいです」と、
日本語で小久保大臣に伝えるー。

モレーン諸島のドリス大臣の表情や驚き方が
尋常ではないと思いつつ、
「そうですかー。喜んでもらえて何よりですー
 実はこちらは、私の出身地の名産品でしてー、
 ドリス大臣の口にも合えばと思い、こうしてお持ちしたんですー」と、
小久保大臣は穏やかにそう説明したー

”んだよー、いつまで会談してんだよー
 俺は早く葵ちゃんの身体で遊びまくりたいんだけどなー”

面倒そうに葵は少しだけ表情を曇らせると、
そのまま”通訳”を続けたー。

モーガン諸島の言葉で、葵は言うー。

「後日、モーガン諸島に最新鋭のミサイルを撃ち込む予定になっていますー。
 実は私もそれに参戦していましてー、
 ドリス大臣の頭にもミサイルを撃ち込む予定ですー」

とー。

”ドリス”という言葉は日本語でもモーガン諸島の言葉でも
同じような発音のため、
通訳にもちゃんと”ドリス大臣”という言葉は混ぜておいて、
そう言葉を口にしたー。

「ーーーー…!?!?!?!?!?」
”ミサイルを撃ち込む”
と、言われたと勘違いしたドリス大臣は青ざめながら
「ーーい、いったいどういうつもりですか!?
 貴国は、我々に宣戦布告するおつもりか!?」と、そう叫ぶー。

葵は笑みを浮かべながら、

「このような美味しいものがあるなんてけしからん!
 我々は貴国の名産品を奪い取るために
 貴国に宣戦布告をする!」

と、ドリス大臣の表情に応じて”通訳”して、
小久保大臣に伝えるー。

「せ、宣戦布告ー?」
戸惑いの表情を見せる小久保大臣ー。

「ーいやいや、御冗談をー」
小久保大臣は、ドリス大臣の言葉を冗談だと受け取ったのか
少し苦笑いしながらそう言うと、
”憑依されている葵”は、笑みを浮かべながら
ドリス大臣に向かって、モレーン諸島の言葉で
「ーーその通りです。モレーン諸島を地図上から消し去ります」と、
そんな風に”嘘の通訳”をしたー。

「~~~~~~~~」
ドリス大臣は震えあがると、そのまま会談が行われている
場所から立ち去ろうとするー。

「ーお、お待ちください!ドリス大臣!
 急にどうしたのですかー?」
小久保大臣がそう叫ぶー。

それを”葵”は、また”嘘”の通訳をして、
逃げ帰ろうとするドリス大臣に
モレーン諸島の言葉で言い放ったー。

「ー戦場で会おうー」
とー。

ドリス大臣はそのまま逃げ去り、
小久保大臣も会談が失敗したことに焦り、
そのまま呆然とした表情を浮かべつつ、
すぐに関係者に連絡を始めるー。

そんな様子を満足そうに見つめながら、憑依された葵は
嬉しそうに微笑むと、
「俺は知らねっとー」と、ケラケラ笑いながら、
葵の身体を楽しむために、そのままどさくさに紛れて
その場から姿を消したー。

そしてー、葵の身体を貪りつくすように、
トイレの個室でお楽しみを繰り返すー。

葵の喘ぎ声がお構いなしにトイレに響き渡り、
何度も何度も、おかしくなりそうになるまで
葵の身体を楽しみつくすのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

後日ー。

葵に憑依していた紀夫は、
あの後、欲望の限りを尽くしてから
葵を解放したー。

がー、葵はその後、クビになってしまったらしく
酷く落ち込んでいるという噂を耳にしたー。

「ーへへー仕方ねぇー
 せっかくだし、葵ちゃんを笑顔にしてやるかー」
紀夫はニヤニヤしながら、葵に憑依している間に調べておいた
葵の家に向かうー。

”葵を笑顔にする”ー
それは、葵を慰めるという意味ではないー。

葵に憑依して、
自分が葵になって”笑う”ことで、
葵を笑顔にするー、という意味だー。

「ーーへへへー
 俺の身体に戻ってみて思ったけどー、
 一度体験しちまったらもうー、やめられないぜー」

紀夫は、葵の身体に憑依した時の最高の体験が忘れられずに、
葵にもう一度憑依ー、今度は葵の身体を完全に乗っ取って
自分のものにしようとしていたー。

そのために、葵の家の前までやってきた紀夫は
ニヤリと笑みを浮かべるー。

そして、インターホンを鳴らすと、
応答した葵に向かって言ったー。

「お届け物です」
とー。

”はいーー…少しお待ちくださいー”
露骨に元気のない様子で中からそう返事をした葵ー。

葵が扉を開けると、紀夫は
「チャイナドレスのお届けですね~」と、軽い口調で言いながら
それを葵に渡したー。

「えっ…?わ、わたしは頼んでませんけどー」
葵が戸惑いながら言うと、紀夫は
「これから俺がお前の身体を乗っ取って、お前の身体で着るんだよ」と
嬉しそうに宣言してから、葵に”憑依”したー。

「ーへへへっ!へへへへへへっ!」
葵への憑依に成功した紀夫は、
そのまま家の中へと入り込むと、
たった今、自分が持ってきたダンボール箱を手に、
それを乱暴に開け始めるー。

中には、自分自身が持ってきた”チャイナドレス”が入っているー。

それを見ながら、嬉しそうに笑うと
「へへへへー葵ちゃんのチャイナドレス姿ー
 存分に楽しませてもらうぜー」と、自分の服を
引きちぎるようにして、乱暴に脱ぎ始めるー。

もう、葵の身体から出ていくつもりもないー。
通訳の仕事はクビになってしまったらしいけれど、
”この身体”なら、いくらでも身体で稼ぐこともできるはずだー。

葵に憑依した紀夫はそう思いながら
「さ~て、チャイナドレスの時間だー」と、嬉しそうに叫ぶー。

がーー
その時だったー

突然、大きな爆発音が聞こえて、
強い衝撃を感じると同時にーー
葵の身体は勢いよく吹き飛ばされて、壁に叩きつけられるー。

「なーーー…なんだーー…?」
苦しそうに呟く葵ー。

その直後、更なる衝撃と爆発が葵を襲いー、
葵に憑依した紀夫はそのまま、永遠の闇に飲み込まれたー。

炎が上がる一帯ー。
葵をはじめ、多くの人が犠牲になったー。

その理由はー
”モレーン諸島”により、最新鋭の未知のエネルギーによって作り出された兵器が
着弾してしまったことによるものだったー。

葵に憑依した紀夫が
”嘘の通訳”で、”モレーン諸島にミサイルを叩き込む”と言ったことで
モレーン諸島はそれを本気にし、最新兵器を放って
しまったのだー。

葵に憑依していた紀夫は、
自らが軽い気持ちで招いた”悲劇”に巻き込まれて、
そのまま生涯を終えてしまったのだったー。

おわり

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コメント

”通訳に憑依して適当なことばかり言う”をテーマに
考えた憑依モノでした~!!

書くのが難しそうなので、長い間、私のネタストックで
眠っていたのですが
細かいこと(こんな会談ないとか、相手の通訳がいないなんてありえないとか)を
無視して、フィクションだし、強引に書いちゃえばなんとかいけるかも…!?
と、いうことで今回、1話完結で書いてみました~!

憑依された側は、只々災難なお話でしたネ~!

お読み下さり、ありがとうございました~!!

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コメント

  1. 匿名 より:

    憑依した本人は自業自得だけど、憑依された葵やその他の巻き込まれた多くの関係ない人達が悲惨すぎますね!

    • 無名 より:

      感想ありがとうございます~~!★★

      本人以外はとっても可哀想なのデス…!

      本人は…自業自得ですネ~笑