<入れ替わり>バンジージャンプ・ぱにっく

とある場所ー。
バンジージャンプに挑戦しようとする少女たちー。

しかし、そのうちの一人があまりの恐怖で
”入れ替わり”を引き起こしてしまうー…!

※TSFes様の「入替モノ祭り2024」に参加するために執筆した
作品デス!
お祭りが終わったため、憑依空間でも掲載します!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー………」
麗奈(れな)は震えていたー。

足元がガクガクと震えるー。
その震えは止まらず”下”を見るだけで、
今にも失神しそうになってしまうー。

「ー麗奈~!ファイト~!」
背後から、麗奈の友達・葵(あおい)が、
そんなエールを送って来るー。

「ー大丈夫大丈夫ーあっという間だったしー」
その隣にいる穏やかな雰囲気の友達、里恵(さとえ)も、
そんな言葉を口にするー

「だ…だ…だ…大丈夫じゃない~~~~!」
麗奈は悲鳴に似た叫び声をあげたー。

彼女は今ー…
”バンジージャンプ”に挑戦しようと、
高台の上に立っていたー。

とある観光名所で体験できるバンジージャンプ…
相当な高さからのバンジージャンプを体験できるとして、
最近、密かに人気になっているスポットだー。

その場所に、今日は同じ大学の友達二人と
遊びに来ていた麗奈ー。

既に葵と里恵はバンジージャンプを終えていて、
麗奈が最後の一人となったー。

「ーー…む、無理無理無理無理無理ー…」
麗奈が目に涙を浮かべながらそう言葉を口にするー

「ははは、大丈夫ですよー
 ロープが切れることはありませんし」

係員の男・雪村 隆夫(ゆきむら たかお)がそう言葉を口にするー。

爽やかそうなイケメン風の男でー、
とても丁寧に説明してくれる雰囲気の係員だー。

「そ、そうは言ってもー…
麗奈が戸惑っていると、
隆夫は、「まぁ…誰にでも得意・不得意はありますからねー」と、
そんな言葉を口にしながら、
”ご無理はなさらずにー”と、バンジージャンプの中止も提案するー。

麗奈は一瞬、心が揺らぐー。

がー…

「え~!麗奈が言い出したのに~!」
友達の葵が背後で不満そうに言葉を口にするー

「麗奈ちゃんー…もしかしてギブアップー?」
穏やかな雰囲気ながら毒舌の里恵がそんな言葉を口にするー。

そう、”バンジージャンプ”は、麗奈自身が言い出したことだったー。
バンジージャンプ未経験の麗奈は
”バンジージャンプなんて余裕でしょ!”と、みんなで一緒に
ここに遊びに行きたい、と、自分からそう言いだしたのだー。

しかしー…
いざ、”想像以上に高い場所”に自らが立ってみると、
その”恐怖”がひしひしと伝わって来たー。

思った以上に高いー。
思った以上に怖いー。

”そもそも、わたし、ジェットコースターとかそういうの得意じゃなかったー…!”

今更ながらにそんなことに気付く麗奈ー。
明るい性格で友達も多いものの、
彼女は妙にドジな部分や、うっかりする部分も多くー、
自分でもそんな性格に時々、呆れてしまうこともあるー。

「ーーーー……」
麗奈は、もう一度下を見つめるー。

そしてー
青ざめるー。

だがーー
葵と里恵に”やめちゃうの~?”と、言葉を掛けられた麗奈は、
「あ~~~!も~~~!行けばいいんでしょ!」と、
少し拗ねた様子で頬を膨らませると、
「お願いします!」と、係員の隆夫に対してそう言い放ったー

深呼吸してー…
ついにー、空中に放り出される麗奈ー。

「ひっ…いやああああああ!?!?!?」
「ぎゃああああああああああああ!?!?!?」
「うっ…あぁ…」

ガクー…

山中に響き渡る悲鳴を上げていた麗奈は、
あっけなく失神して、静かになるー。

「ーーーー…え」

がーー…
次の瞬間、信じられないことが起きたー。

突然、係員の隆夫が困惑した様子で周囲をキョロキョロし始めるー。

「ど、どうかしましたか?」
麗奈の友達・里恵が不安そうに、そんな隆夫に声をかけるー。

「ーーーえ…な、何か問題ですかー?」
もう一人の友達・葵も不安そうだー。

確かに、バンジージャンプをした直後に、
急に係員がキョロキョロし始めたら、不安になるのは無理もないし、
当然のことと言えるー。

しかしー、係員の隆夫はそんな二人を見つめながら
信じられない言葉を口にしたー。

「え…わたし、今、飛び降りなかったっけー?」
隆夫が、きょとんとした表情を浮かべながら
葵と里恵の二人に対してそう言い放つー。

「ーーーえ…?」
葵は戸惑いながら里恵のほうを見つめるー。

そんな視線を受けながら、里恵は
「ーえ…えっと…ど、どういうことですか?」と、
言葉を口にすると、
隆夫は「ーえ… って…え?何この声ー?」と、
今度は自分の口元を触り始めるー。

バンジージャンプをした麗奈は気絶したままでー、
既にジャンプ後の激しい動きは止まりー、
係員が上に引き上げるのを待つ状態になっているー。

「ーーー…あ、あたま大丈夫ですかー?」
毒舌な里恵が困惑しながら言うー。

「ちょ!里恵!」
葵がヒヤッとして、里恵の言葉を遮ろうとすると、
「ーー…って、えええええええええ!?」と、
係員の隆夫が困惑の声を上げたー。

「ーー…わ、わ、わたし、えっ!? えっ!?えっ!?」
そう言いながら、”下”を見つめる隆夫ー。

するとーー

「わ、わたしがあそこにいる!?!?!?」
と、バンジージャンプを終えて吊るされたままの”自分”を見て、
悲鳴に似た声を上げたー。

「ーーー…え……えっと…」
先程は里恵を止めた友人の葵も、さすがに戸惑って
係員の隆夫の方を見つめると、
隆夫は飛び込み台の下の方に吊るされたままの麗奈を
指さして、慌てた様子で叫んだー

「あ、あ、あそこにわたし…!
 えっ!?えっ!?えっ!?」

隆夫の様子がどう考えてもおかしいー

その場にいた他の係員も心配して隆夫に声を掛けると、
「ーーあ、あの、わ、わたし、さっきバンジージャンプをしたー」
と、隆夫が慌てふためいた様子でそう言葉を口にするー。

そんな慌てっぷりを見ていた葵は、戸惑いながら言葉を口にするー

「ーーま…まさかとは思うけど……
 れ、麗奈なのー?」

とー。

すると、隆夫は首を激しく縦に振ってみせたー。

「ーそ、そう!麗奈!麗奈なの!
 信じられないと思うけど、バンジージャンプした直後に
 悲鳴を上げてたら、急に頭が真っ白になって、
 気付いたらー」

身振り手振りを添えながら、
大げさとも言うべき仕草をする隆夫ー

そうこうしているうちに、
「ーど、どうなっているんですか?!」と、
下から意識を取り戻した麗奈の声が聞こえたー。

「ーーえ、えっとー…」
その様子を見ていた係員は、戸惑いながら
「とりあえず、引き上げてみましょうー」と、
バンジージャンプをした麗奈を引き上げて話を聞いてみよう、
と、そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーこ、こんなことがあるなんてー」

引き上げた麗奈の”中身”は、やはり係員の隆夫だった。

隆夫は、麗奈をバンジージャンプさせたあと、
いつも通り、手順に従って案内をしようとしていたところ、
急に意識が遠のいて、気付いたら下に吊るされている状態だったのだと言うー

「ーー二人揃って、おかしくなっちゃったんですかー?」
大人しそうな見た目なのに毒舌な里恵が言うと、
葵はぺしっ!と、里恵を叩きながら
「ーー…え、えっと、つまり二人は入れ替わっているってこと?」
と、そう確認したー。

麗奈(隆夫)も、隆夫(麗奈)も頷くー。

「ーーあ、あの、わ、わたしの身体で変なことしないでくださいね?!」
不安そうに隆夫(麗奈)が言うー。

がー、麗奈(隆夫)は少し戸惑った表情を見せながら
「し、しませんよー」と、言葉を口にするー。

麗奈の身体になったことで、少なからずソワソワしている様子だったが、
彼にとっては”職場”であることや、
お客さんと係員の立場であることからか、
必死に何もせず、このまま平穏に終わらせようとしていることが
伺えたー。

「ーーど、どちらかと言うと、そのー…
 そちらの方が心配なのですがー」

麗奈(隆夫)は戸惑いながら、隆夫(麗奈)を指差すー。

それもそのはずー、
”隆夫”になった麗奈は、何故か先ほどから
ずっと勃起した状態で、
傍から見れば、外で勃っている完全に危険人物だー。

「ーーそ、それどうなってるの?」
不思議そうにそう言葉を口にする親友の葵ー。

「ーー…わ、分からないよー…
 な、なんかこうー…勝手にこうなってー…

 ど、どうすればいいんですかー?」

隆夫(麗奈)が、勃起したものをどうすればいいのか分からず、
麗奈(隆夫)の方を向きながら”確認”するー。

女の立場からしてみれば、
勃起という存在は知っていても、
それをどう鎮めればいいのかは、正直分からないのだー。

「ーど、どうってー…
 そ、それはー…言葉にしろと言われても、
 なかなか難しくて…ですねー」

麗奈(隆夫)が戸惑いながら言うー。

「わ…わわ…さ、さらに大きくなってる!?
 な、何なのこれ!? えっ!?えっ!?えっ!?」

どうすれば勃起を止められるのか分からないー。
そんなことを思いながら、隆夫(麗奈)は、
慌てふためいた様子で、周囲に助けを求める視線を
送り続けたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーふぅ…」

隆夫(麗奈)は、ようやく落ち着くと、
麗奈(隆夫)が「それで、元に戻る方法を考えたんですけどー」と、
少し恥ずかしそうに言葉を口にするー。

”麗奈の声”で喋るのが恥ずかしいのか、
あるいは申し訳ないと思っているのか、
どことなく小さな声で言葉を口にする麗奈(隆夫)ー。

「ーさっき、バンジージャンプをした時に
 身体が入れ替わってしまったので、もう一度同じことをすれば
 元に戻れると思うんですー」

麗奈(隆夫)が、そう言葉を口にするー。

どうやら、一緒にいる係員のうちの一人に、
オカルト好きの人間がいるようでー、
あまりの恐怖と”バンジージャンプしたくない”という思いが
幽体離脱を発生させて、”一番飛び込み台の側にいた人間”の身体に
入り込んでしまい、逆に”麗奈の魂に入り込まれたことで、隆夫の魂が身体から追い出されて”
行き場を失った隆夫の魂は、空っぽになった麗奈の身体の方に入り込みー、
結果的に”入れ替わり”が起きたのではないか、と、
そう、その係員は言っていたー。

「えぇ…なんだか、ご都合主義すぎませんー?」
毒舌な里恵が言うと、葵は「しっ!」と、里恵を制しながら、
「とにかく、難しい話を抜きにすれば、
 元に戻るためには、さっきと同じようにバンジージャンプすれば
 いいってことですねー?」と、そんな言葉を口にする

「ーそのようです」
麗奈(隆夫)はそう言うと、既に他の係員に手伝ってもらいながら、
バンジージャンプをする準備をしていたー。

「ーとりあえず、僕が飛び降りたらこの高台の一番端まで
 来ていただけますか?
 さっきと同じ条件を作れば、きっと元に戻れるはずですー」

麗奈(隆夫)がそう言うと、戸惑いながらも
隆夫(麗奈)は「わ、分かりましたー」と、頷くー。

「ーーー…それでは」

麗奈(隆夫))は、同僚の係員にバンジージャンプの準備を
終えてもらうと、安全を今一度確認してから、
「僕が飛び降りたら、すぐにこの近くへー」と、
そう言葉を口にしたー。

同僚のオカルト好きの係員の説を鵜呑みにするのであれば、
”飛び込んだ相手と一番近くにいる人間”と、
入れ替わるはずだー。

もし、麗奈(隆夫))が、”さらにほかの人間”と入れ替わってしまうと
余計にややこしいことになってしまうし、それだけは避けたいー。

「ーーまさか、僕が他人の身体でバンジージャンプをすることになるなんてー」
麗奈(隆夫)は少しだけ苦笑いしながら下を見つめるー。

そしてー、麗奈(隆夫)は、意を決したかのように
バンジージャンプに挑んだー。

「わぁ!すごい!クールにバンジージャンプする麗奈!新鮮!」
友達の葵が笑いながら言うー。

”騒がずに堂々とバンジージャンプする麗奈”は、
とてもさっきと同一人物とは思えないー。

そしてーー
麗奈(隆夫)が下まで落下するー

がーーーー

「ーーーーーーーー」
麗奈(隆夫)は、ジャンプの勢いが止まり、
吊るされた状態で、真顔のまま
”再度入れ替わり”が起きるのを待っていたー。

しかしー

「ーあれれ?」
高台の上にいる隆夫(麗奈)も戸惑うー。

入れ替わりが起きないー。

「あれれれれれれ?」
隆夫(麗奈)が戸惑っていると、
オカルト好きの係員とやらが「と、とりあえず一度引き上げて見ましょうー」と、
そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーーー戻ってないー」
葵が呆然としながら言うと、
オカルト好きの係員も「戻ってませんねー」と、呟くー。

「え…??え…??え…??
 ど、どうすればいいんですか?」

隆夫(麗奈)が困惑の表情を浮かべながら言うと、
麗奈(隆夫)は「たぶん…僕が全然怖がらないからですねー…」と、
そう呟くー。

確かにさっきと同じ条件は作り出したー。
しかし、身体は麗奈でも中身は隆夫。

隆夫自身、何度もバンジージャンプをしたことがあり、
高所恐怖症でもないために、
麗奈の身体でのバンジージャンプとは言え、
”全く”恐怖はないー。

そのため、最初に麗奈がバンジージャンプした時のように
麗奈(隆夫)が失神することもなく、
入れ替わりが起きなかったのだー。

「ーすみませんー。つい、いつもの感じで”無”になってしまってー」
照れくさそうに笑う麗奈(隆夫)ー

隆夫はいつも、バンジージャンプをするとき
”地球に身を委ねるような感じ”で、無心になって
重力を感じる…
そんな感じで楽しんでいるのだと言うー

「ー…でもなんか、堂々とした麗奈ちゃんカッコいいー」
毒舌な友達・里恵がそう言うと、
「え~~~…!」と、隆夫(麗奈)は少し拗ねたような表情を浮かべるー。

「ーはは…でもまぁ、次こそ大丈夫です。
 もう一度、お願いします」
麗奈(隆夫)がそう言うと、オカルト好きの係員が頷くー。

今度こそ、元に戻るために麗奈(隆夫)が、
再びバンジージャンプをするー。

麗奈の身体は既に”本日3度目のバンジージャンプ”だー。

「きゃあああああああああああああーーーーー」
わざとらしい叫び声をあげる麗奈(隆夫)ー。

「ーひぃぃぃぃいいいいいいいいいいい!?」
「うわあああああああああーーーーー!」
「あーーーーーっ!」

バンジージャンプの動きが止まるまで、
繰り返す棒読みっぽい悲鳴をあげ続けるー。

がーー

「ーーーあれ?」
麗奈(隆夫)は、バンジージャンプの衝撃が止まったことに気付き、
少し戸惑った表情を浮かべるー。

「ーーー…だめじゃんー」
上でその様子を見ていた葵がそう言葉を口にすると、
隆夫(麗奈)も、「や、やっぱり…自然に怖がらないとダメなのかな?」と、
そんな言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

再び引き上げられた麗奈の身体ー。

もう、3回もバンジージャンプした”麗奈”の髪はボサボサだー。

「すみませんー。やっぱり”わざと”悲鳴をあげても
 ダメみたいですねー」
麗奈(隆夫)がそう言うと、
「雪村さんは慣れちゃってますからねぇ…」と、
同僚のオカルト好きの係員がそんな言葉を口にしたー。

もう一度入れ替わるには、
さっきのように、心の底から恐怖を感じて、
心の底から悲鳴を上げる必要があるー。

がー、麗奈と入れ替わった隆夫は、
中身が隆夫である以上、
何度バンジージャンプしても、麗奈のように
心の底から悲鳴を上げることはできないー。

「ーーー…じゃあ、麗奈ちゃんが飛び降りればいいんじゃない?
 スタッフさんの身体でー」

友達の里恵がそう言葉を口にするー。

麗奈(隆夫)も、葵も、オカルト好きの係員も、
「あっ!そっか!」と言いたげな表情で、
隆夫(麗奈)のほうを見つめるー。

「ーそうだね!麗奈が飛び降りれば、また失神するんじゃない?」
葵が笑いながら言うー。

「えっ… えっ… えっ!?」
戸惑いの表情を浮かべる隆夫(麗奈)ー。

「ーーえ…も、も、もしかして…
 わたしにもう1回バンジージャンプしろって言ってる?」
隆夫(麗奈)が恐る恐るそんな言葉を口にするー。

とてもとてもイヤな予感がするー。

そしてー、その予感は的中していたー。
オカルト好きの係員も、友達の里恵と葵も、その言葉に
無情にも頷くー

「ーえっ…えっ…えええええ…!?」
隆夫(麗奈)は、助け舟を求めるかのように、
”自分”ー…麗奈(隆夫)のほうを見つめるー。

「ーーー…残念ながら、それしかないかとー」
麗奈(隆夫)がそう言葉を口にするー。

バンジージャンプするだけで、幽体離脱してしまうぐらいに
ビビれる人間はそうはいないー。
やはり、ここは”隆夫(麗奈)”がもう一度バンジージャンプを
するしかないのだー。

「そ、そんなぁぁ…」
隆夫(麗奈)は、そう呟くと、
大人しそうに見えるけど毒舌な友人・里恵が笑いながら
言葉を口にする。

「大丈夫大丈夫。バンジージャンプなんて
 死ぬことはほとんどないし、
 仮に途中でロープが切れちゃってもさ、
 入れ替わってるだから、麗奈ちゃんが死ぬわけじゃないんだし!」

里恵のそんな言葉に、
隆夫(麗奈)は「そっかぁ」と、一瞬安堵の表情を浮かべたものの、
「って、中身がわたしなんだから、結局わたし、死ぬじゃん!」と、
ツッコミを入れるー。

とにかくバンジージャンプしたくない隆夫(麗奈)は
必死に他の方法を…!と叫ぶも、
結局のところ、他の方法は存在せず、
震えながら、バンジージャンプの準備を始めるー。

「そんなぁ…せっかく終わったと思ったのにー…」
思わず、愚痴をこぼす隆夫(麗奈)ー。

しかし、ずっとこのままこうしているわけにはいかないー。

「ー飛んだだけで昇天しちゃうなんて、麗奈の才能だし、
 他の人には真似できないよ!
 だから、ファイトファイト!」
葵が笑いながら言うー。

「し、昇天って…し、死んではいないもん!」
隆夫(麗奈)がそう言うと、
毒舌な友達の里恵は「今度はどこか遠くに魂が飛んで行っちゃったりしてー」
などと、茶化し始めるー。

「も~!やめてよ~!」
隆夫(麗奈)が二人の友達に対してそんな言葉を口にすると、
麗奈(隆夫)は「すみませんー。色々迷惑をおかけして」と、
申し訳なさそうに言葉を口にしたー。

「ーーー…あ、いえ
 わたしが魂抜けちゃうほど、怖がっちゃったのが原因なのでー
 係員さんは、そんなー」
隆夫(麗奈)のそんな言葉に、麗奈(隆夫)は
「あと1回ですからねー。今度こそ、戻りましょう」と、笑みを浮かべるー。

静かに頷く隆夫(麗奈)ー。

そして、さっきと同じように
これから死ぬかの如く、真っ青になりながら
隆夫(麗奈)は、バンジージャンプに挑んだー

「ーひゃああああああああああああああああああ!?!?!?」
「ーうわあああああああああああ!」
「ぎゃあああああああああああああああああああああ!」

さっきと同じように、悲鳴を上げる隆夫(麗奈)ー。

ただ、さっきとは違い”女子”の悲鳴ではなく
似合わない感じの男の悲鳴が響き渡るー。

そしてー、また、失神したー。

「ーーーあはは…また失神してるー」
葵が上から、隆夫(麗奈)が失神したような動きを
していることに気付いて、そう笑うと、
麗奈(隆夫)は「お騒がせして申し訳ありませんでしたー」と、
そう言葉を口にしながら、
先程と同じく”入れ替わり”が起きるのを待つー…

がー…
いつまで経っても”入れ替わり”が起きないー

「あれ?…おかしいですね」
麗奈(隆夫)がそう言うと、オカルト好きの係員も困惑の表情を浮かべるー。

待っても待っても入れ替わりが起きずー、
やがて、下の方から「そ、そろそろ上げてもらえますか~!?」と、
意識を取り戻した隆夫(麗奈)が叫んだー。

引き上げられた隆夫(麗奈)は、
バンジージャンプの恐怖の余韻に震えながら、
「ど、どうして、今度は入れ替わりが起きないんですかー!?」と、
不安そうに言葉を口にするー。

すると、オカルト好きの係員が険しい表情を浮かべながら
「ーーもしかしたらー」と、呟くー。

そして、「もう1回、飛んでいただけますか?」と、
そんな言葉を口にするー。

「えぇぇぇっ!?もう嫌ですよ~~!!」
隆夫(麗奈)がそう叫ぶもー、
どうすることもできず、渋々承諾するー。

結局ー
本日3度目のバンジージャンプをすることになってしまった隆夫(麗奈)は
涙目で3度目のバンジージャンプに挑むー。

再び、悲鳴を上げるー。

がー、今度はー…
”失神”はしなかったー。

「ーふふん。今度は失神しなかったよ!すごいでしょ!?」
隆夫(麗奈)がドヤ顔で言うと、
友達の葵は「ま、まぁ…」と、苦笑いするー。

しかしー、
そんな様子を見ながら、オカルト好きの係員は「やはりそうかー」と、
言葉を口にしたー

「やはりそうー…? 何がです?」
麗奈(隆夫)が、そう確認すると、
「ー”慣れ”です」と、
オカルト好きの係員はそう言葉を口にしたー

「な…慣れ…?」
戸惑う隆夫(麗奈)ー。

「ーそうです。1回目、2回目、3回目と
 どんどんバンジージャンプに慣れていってー
 最初より恐怖心が薄れているんですー。

 だから、3回目は怖くても、失神することなく
 戻って来ることができたー」

オカルト好きの係員のその言葉に、
隆夫(麗奈)は、困惑の表情を浮かべながら
「え!やった! ほらほら~!わたし、バンジージャンプに慣れてきたよ!」
と、ドヤ顔で友達の葵・里恵の方を見ながら言い放つー。

「ーーーーあははは…」
葵が苦笑いしながら、心配そうに麗奈(隆夫)のほうを見つめるー。

麗奈(隆夫)も不安そうにオカルト好きの係員のほうを見つめるー。

”バンジージャンプしただけで、一時的に昇天してしまうほどの恐怖を感じていた”
麗奈が、バンジージャンプを2度、3度繰り返すうちに、
少しずつ、少しずつ慣れて来たー。

がー…それはー…

「ーーーーー…」
毒舌な友達、里恵が「それって要するにー…」
と、言葉を口にすると、
薄々気付きながらも気まずくて言えなかった
葵や麗奈(隆夫)に代わり、言葉を口にしたー

「それって、もう元に戻れないってことですよねー?」
とー。

里恵の言葉に、
オカルト好きの係員は戸惑いながら、
「ーもう、失神して昇天してしまうほどの恐怖は味わえないでしょうから、
 そうなってしまいますねー」と、少し笑いながら答えたー。

「ーーーーーーーーー」
ドヤ顔で失神しなかったことを自慢していた
隆夫(麗奈)は、何度か瞬きをすると、
やがて、状況を理解して大声で叫んだー

「ええええええええええええええええええ~~~~~~!?!?!?
 わ、わたし、も、元に戻れないの~~~~~~~~~~!?!?!?!?!?」

バンジージャンプスポットのある山中に
この日一番の悲鳴が響き渡ったー…。

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

TSFes様の
入替モノ祭り2024のために書いた作品でした~!☆

TSFes様の企画に参加したのはこの作品で2度目でしたが、
1回目の時(先月憑依空間にも載せた「斬首の浜辺」ですネ~)とは違い、
明るいタッチのお話にしてみました~!☆

次は「皮モノ祭り」もあるみたいなので、
スケジュールが確保できれば、またそれも参加してみたいと思います~!

お読み下さりありがとうございました~!☆

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