”憑依”を悪用する犯罪組織ー。
その犯罪組織を撲滅するために、
特殊な犯罪組織に対応するべく結成された捜査チームの
女性捜査官が”あえて”犯罪組織側に憑依されて
その情報を突き止めようとするー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー西山(にしやま)ー
これは、危険な任務だ。元に戻れる保証はないー。
それでも、やるのかー?」
犯罪組織アビスー。
”憑依”などを悪用する危険な犯罪組織の一つー。
その対策班として結成された”アビス対策班”ー。
現在の”班長”である宮根(みやね)が、そう言葉を口にすると、
その前に立っていた女性捜査官・
西山 野々花(にしやま ののか)は静かに頷いたー。
「ーはいー。覚悟は出来ていますー」
野々花がそう言葉を口にするー。
「ーーーー」
宮根班長は、”野々花”の提案した事案には”反対”だったー。
がー、”憑依”による被害は
表沙汰にならないところで度々起きていて、
善良な市民が憑依されて一転して犯罪者にさせられてしまったり、
その幸せを奪われている光景は、何度も見て来たー。
このアビス対策班のメンバーも何人も死んでいるほどに
犯罪組織アビスは危険な組織だー。
「しかし、いくらアビスを壊滅させるためとは言えー…
”自らが憑依される”などー…」
宮根班長がそう言うと、
野々花は少しだけ自虐的に笑うと、
「”そうでもしないと”、美月(みつき)の仇は取れませんからー」と、
そう言葉を口にするー。
彼女は、学生の頃に妹の”美月”を犯罪組織アビスに殺されたー。
美月が突然、学校内で男子生徒に襲い掛かり、
その男子の命を狙ったものの失敗ー、
その後、自ら飛び降りて命を絶ったのだー。
当初、野々花には何が起こったのか、理解できなかったー。
クラスの子に襲い掛かり、命を絶った妹・美月ー。
何故、美月がそんな凶行に及んでしまったのか、
全く理解することができなかったー。
が、野々花が調べていくと、
美月は、クラスメイトの男子を襲った際に
自分のことを”俺”と言ったり、
まるで別人のような振る舞いをしていたのだというー。
最後に飛び降りる前にも”後片付けはちゃんとしなくちゃな”と
確かにそう言ったのだとー。
執念深く調べ続けた野々花はー、
高校卒業を迎えるころに、ある答えにたどり着いていたー。
それがー、”犯罪組織アビス”と”憑依薬”ー。
殺されそうになったクラスメイトの男子は、
警察幹部の息子であり、美月は”その息子”を殺すためだけに
憑依されて、失敗したあと、証拠隠滅のために殺された、という答えだー。
野々花は、それ以降、復讐のためだけに生き続け、
アビス対策班に入るため、警察の人間となり、
そして今、アビス対策班の捜査官として活躍しているー。
「ーーー班長ー、
わたしが”憑依”されたら、何とかしてわたしを確保して下さいー」
野々花は決意の表情でそう言葉を口にするー。
「ーーー」
宮根班長は、険しい表情を浮かべながら野々花を見つめるー。
野々花は自分が憑依されることで、
”犯罪組織アビス”の内部情報やデータを確保、
さらには、”憑依薬”の予防法や治療法などを確立しようと目論んでいたー。
まず、野々花が犯罪組織アビスの”憑依”のターゲットとなり、
身体を乗っ取られて、
犯罪組織アビスの一員として行動ー、
恐らく、”女性捜査官”の身体を手に入れた犯罪組織アビスは
そう簡単に、野々花の身体を処分したりはせず、
しばらくの間、アビスの一員として悪事に利用されるはずー。
そうなれば、野々花の身体は、
犯罪組織アビスの内部情報やデータに触れることになるー。
そして、しばらく”泳がせた”あとに、
アビス対策班の仲間たちが、憑依された野々花を確保ー、
野々花に”憑依した人間”を追い出し、
正気を取り戻した野々花から、憑依されていた間のことを聞き出すー。
憑依されている間の記憶は通常は残らないものの、
乗っ取られている身体の”脳”に、憑依されている間の記憶も
封印されるような形で断片的に残っていることが、
アビス対策班の研究で分かっていて、
それを”呼び覚ます”技術をほぼ完成させたー。
それを使い、正気に戻った野々花に、
”憑依されていた間の記憶”を呼び戻して、
犯罪組織アビスの情報を手に入れるのだー。
加えて、”憑依された身体”には、ある反応が起きることが分かっているー。
野々花の身体を徹底的に検査することで、憑依薬に対する予防・治療方法が
見つかることも、野々花は期待していたー。
「ーーーわかったー。
だが、危険だと判断したらすぐに憑依されているお前を確保
する可能性もあるー。それでも構わないなー?」
宮根班長がそう言うと、野々花は「はい」と頷くー。
捜査官を集めて、作戦を確認する宮根班長ー。
「ーー作戦は、西山の命がかかっていると言ってもいいー。
絶対に失敗は許されない」
宮根班長がそう言うと、
派手な髪型の軽そうな雰囲気の男性捜査官・石島 暁人(いしじま あきと)が、
笑みを浮かべながら
「憑依された西山さんを見るのってなんか楽しみだなー」と、
そう言葉を口にするー。
「ーーおい。石島」
宮根班長が呆れ顔で言うと、暁人は「へいへいー。冗談ですよ」と、
笑いながら首を横に振るー。
作戦を説明していく宮根班長ー。
第1段階は、野々花が”犯罪組織アビス”の憑依のターゲットとなり、
憑依されることー。
野々花本人の仕事はここまでで、憑依されたあと、野々花は
身も心も乗っ取られてしまうため、あとは自分の身体を賭けて
仲間を信じるしかないー。
第2段階は、憑依された野々花の動向を把握しつつ、
しばらく”泳がせる”ことー。
憑依された野々花をすぐに確保してしまっては、
犯罪組織アビスの内部情報やデータを入手することができないー。
野々花の脳に、犯罪組織アビスの内部情報を蓄えるために
”しばらく”憑依された野々花を放置しておく必要があるー。
そして、第3段階ー。
十分に憑依された野々花を泳がせた後に、
憑依された野々花を確保ー、
尋問を行い、野々花に憑依した人間を野々花から追い出すー。
第4段階は正気を取り戻した野々花の”脳”に残っている
憑依されている間の記憶を、開発した特殊な技術で
蘇らせて、野々花本人からアビスのデータを回収ー、
さらには、野々花の身体に残った憑依されたあと独自の
体内の反応を分析し、憑依薬の予防・治療法の開発に役立てるー。
これが、作戦の概要だー。
「ー憑依されている間の記憶を呼び起こすということはー
辛い記憶も呼び起こすかもしれないー。
それでも、いいんだなー?」
宮根班長が確認するー。
例えば、憑依されている間に罪を犯していたり、
身体を弄ばれていたりした場合、
第4段階で、野々花の記憶を呼び戻した際に、
”相当、辛い思い”をするかもしれないー。
「ーーー…憑依されている間にしたことは、わたしじゃありませんからー
大丈夫です」
野々花はそう言葉を口にすると、
宮根班長は「わかったー」と、そう言葉を口にするー。
”憑依された野々花”を泳がせる期間は1ヵ月を予定しているー。
しかし、宮根班長は、憑依された野々花が危険な行為に及ぼうとした場合や、
野々花の身体が処分されそうな兆候が見られた場合は
”第3段階”への移行を早める可能性もある、と、そう説明したー。
作戦会議が終わり、野々花は”憑依”されるための第1段階に移るべく、
準備を始めるー。
「ーー先輩ー」
そんな野々花に、対策班の中では若い野々花よりも
さらに年下の女性捜査官・葵(あおい)が声をかけて来るー。
「ーーー葵ちゃんー」
野々花が振り返るー。
どことなく、死んだ妹に似た雰囲気を持つ子で、
野々花はその葵のことを可愛がっていたー。
可愛らしい雰囲気の眼鏡の子であるものの、
彼女は尾行のエキスパートで、
”監視”能力に長けているー。
「ーーー…本当に、”憑依”されるんですかー?」
葵のその言葉に、野々花は少しだけ寂しそうに笑うー。
「ーーこうしてる間にも”あいつら”の被害者は増え続けてるのー
だからー、あいつらを潰せるチャンスがあるなら、
誰かがやらなくちゃー」
野々花はそう言いながら、妹・美月が憑依された時のことを思い出すー。
現場にいたわけではないものの、美月と同じ学校に通っていた子が
スマホで咄嗟に撮影した動画が残されていて、
その動画を見せてもらったことがあるー
”あははははははっ!俺の目的は果たした!”
狂ったように笑いながら、ターゲットの男子の命を奪って
返り血を浴びて笑う美月ー。
あの優しい美月とは思えないぐらいに酷い光景だったー。
憑依は、人の全てを踏みにじり、奪ってしまうー。
自ら飛び降りるまで笑っていた美月の顔が忘れられないー。
憑依されたら人間、何の抵抗もすることができないまま、
全てを奪われてしまうのだー。
「ーーーそれにー」
妹・美月のことを思い出し終えると、
野々花は、眼鏡の捜査官・葵に向かって言葉を続けるー。
「それに、わたしは葵ちゃんのことも、みんなのことも
信じるからー。
憑依されたわたしをちゃんと捕まえて、
情報を引き出してくれるって、信じてるからー」
野々花がそう言うと、葵は「先輩ー」と、言葉を口にしながら
静かに頷くー。
「ー分かりましたー。先輩から絶対に目を離さないようにしますからー」
葵が意を決してそう言葉を口にすると、
野々花は「ありがとう」と、そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
野々花は、犯罪組織アビスの現在の幹部・敷本(しきもと)という男に
接触を図ったー。
敷本に色目を使って近づき、”警察ではないふり”をして
情報収集をしているー、そんな”風”を装ったー。
これまでの犯罪組織のアビスの行動を細かく分析して、
自分の容姿で、そして、どういう行動を取れば
”狙われる”かを計算した上での行動だー。
色目を使って敷本から情報を得ることができるー、とは最初から思っていないー。
仮にそれで成功すればそれはそれでいいし、ダメなら当初の予定通り
”憑依”されて、計画通り進めるだけだー。
「ーーどうやら、”この女”刑事のようでしてー」
幹部・敷本は、野々花の正体に感づいたー。
そして、犯罪組織アビスのリーダーである魔崎(まざき)という男に
それを相談するー。
「ほぅー」
魔崎は笑みを浮かべるー。
女、子供、老人、病人ー
相手が誰であろうと容赦しない血も涙もない危険人物ー。
「ーークククーお前から情報を探ろうとしてるわけだなー
でも、まぁ、いい女じゃねぇか」
魔崎はそう言うと、
「ちょうどいい、お前、この女に”憑依”しろー
俺たちを探るために潜入捜査をしている女ー
憑依するにはちょうどいい対象だー。
俺たちのアジトに出入りしていて、仲間には怪しまれないだろうしー
逆にこっちが”アビス対策班”の情報を盗むこともできるー。」
と、そう敷本に言い放つー。
「ーーそれにー」
魔崎は笑みを浮かべながら、敷本に向かって言うー。
「ーーー美人の身体になりゃ、お前も色々楽しめるだろ?敷本ー」
魔崎の言葉に、幹部・敷本はニヤッと笑うと、
魔崎は、不気味な形状のケースから「憑依薬だー。お前に使わせてやる」と、
そう言葉を口にしながら、”憑依薬”を手渡したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー」
夜道を歩く野々花ー。
野々花は”尾行”されていることに気付くー。
”来たー”
野々花は悟るー。
犯罪組織アビスの構成員が自分の憑依しに来たのだとー。
「ーーーー」
野々花は深呼吸をするー。
もし、仲間たちが失敗すれば自分の人生はここで終わりー。
憑依されたまま永遠に意識が戻らないかもしれないー。
けれどー
「ーーーー…」
野々花は今一度、決意を新たにするー。
「ーー大丈夫ー。みんな、信じてるからー」
野々花はそう呟くと、「1か月後ー…また会いましょう」と、
静かに呟くー
予定では、1ヵ月ほど”憑依された野々花”を泳がせ、
犯罪組織アビス内部の情報を、”野々花の脳”に蓄積させ、
その後、憑依された野々花を確保、憑依した男を分離させて
野々花の脳に残る情報を抽出する予定だー。
「ーーーへへへへー」
幹部・敷本が野々花の前に立ちはだかるー。
「お前の身体、貰うぜー」
敷本はそう言うと、裏路地で野々花にキスをしてー
そのまま野々花の身体を奪うー
「ーーーーーぅ…」
野々花は自分の中に敷本が入り込んでくるのを感じるー
妹の美月も、こんな思いをしたのだと、
そう思いながらーー
その意識は途切れるー。
「クククーー
女刑事の身体をげっとぉ~…
くくく…はははははははっ!」
憑依された野々花は狂った笑みを浮かべながらそう言葉を口にすると、
そのままゆっくりと歩き出したー。
②へ続く
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
今日は憑依されるまでと、
回想シーンの憑依が中心でした~!★
明日以降はたっぷり憑依後の姿が出て来るので、
楽しんでくださいネ~!

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