<女体化>TS予報③~想い~(完)

人々をTSさせる気圧が発生するようになった世界ー。

そんな世界で生きる彼は、
彼女が再び、TS気圧の影響を受けてしまったと
聞かされてー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーちょ、ちょっとお兄ちゃん!
 TS予報見てなかったの!?」

玄関先で慌てて外に飛び出そうとしている
女体化した幸也を見て、
妹の”詩織”は戸惑いの表情で声を上げるー。

女体化したあとー…
男装している”兄”の幸也と、
女体化していることを楽しんでいる”弟”の真司ー。

この世界では、男性としての名前と、
女性としての名前、両方を持つことができるものの、
”詩織”という女性名を持つ真司とは違い、
兄の幸也は女体化したあとも”幸也”を名乗り続けていて、
女性名は登録していないー。

「ーーTS気圧が不安定に入り乱れて、
 TS確率70%、だろ?」

女体化した幸也がそう言葉を口にすると、
”詩織”は「じ、じゃあ何で外に行こうとしてるのー!?」と、
そう叫ぶー。

「まさかまた男に戻りたくなったとか言い出さないよねー?
 彼女さんの腕ーー」

”詩織”がそこまで言いかけると幸也は
「明菜がーーー”男体化”して、病院に運び込まれたってー」と、
そう叫ぶー。

「ーーーえ……」
”詩織”は表情を歪めるー。

幸也の彼女・明菜は既に小さい頃に”2度”のTSを経験していて、
2度目のTSの際に左腕を失っているー。

その明菜が再び男体化してしまったとなれば
”3度目のTS”ー。

TS気圧による性転換は人体に大きな負担を与えるー。
1度目は、ほとんどの人が何の問題もないまま終えるものの、
2度目の死亡確率は5パーセントで、後遺症が残る人間も多いー。
そして、3度目の死亡確率は30パーセントー

女体化した幸也は、TS確率を抑えるための
抗TS薬を飲むと、そのまま外に飛び出すー。

一見すると快晴の穏やかな気候ー。
しかし、外にはほとんど人がいないー。

今日の降水確率は0パーセント。

しかし、TS確率は70%。

TS気圧は天気を左右するものとはまた別の存在で、
晴れの日だからTS確率が低いとは限らないし、
逆に、雨の日だからTS確率が高いとも限らないー。

今日のようなー、快晴の日でも、
目に見えない”TS気圧”が猛威を振るっていることも多いー。

「ーーーー…くそっー…ふざけやがってー」
”昔”は、なかったというTS気圧ー。
その存在に、女体化した幸也は怒りを感じながら
走り出すー。

思ったよりも早く疲れてきて、
「女体化したせいかー…?」と、そう言葉を口にする幸也ー。

そうは思いつつも、早く病院にたどり着かないと、
と、そのまま移動を続けるー。

外には、ほとんど人がいないー。
今日のようなTS確率が70%もある日はー、
繁華街ですらゴーストダウンと化すー。

「ーーうぉぉぉぉぉぉ!やったぜー!」
タンクトップ姿でガッツポーズをしている女が視界に入ったー。

”女になりたくて、TS確率の高い日にわざと外に出た”
そんな感じのやつだろうー。

そう思いながら、幸也はさらに病院に向かって移動を続けるー。

TS確率の高い日は、バスやタクシーもほとんど走っていないため、
自分で移動するしかないー。

ようやく、病院付近にたどり着くも、
ふと、倒れ込んで痙攣している女の姿が目に入ったー。

女体化した幸也は、自分自身が”TS”してしまう可能性もあるし、
早く明菜のところに行きたいという気持ちから急いでいたものの、
その女のことを放っておくこともできずに、駆け寄ると、
「大丈夫ですかー?」と、声を掛けるー。

”TS確率が高い日”に外に出たら100%女体化したり男体化するわけではないー。
あくまでも確率の問題で、24時間外にいても平気なこともあるー。

幸也は、”自分が影響を受けないこと”を祈りつつ、
倒れている女に声を掛けると、
その女の身体が変化し始めて、今度は男体化したー。

「ーー…あ、あの…!」
幸也がそう声を掛けると、
男体化した女ー…いや、元々”どっち”なのかも分からない彼が
言葉を発したー

「ーーもう…ダメだー」
とー。

「ーーえ」
幸也がそう言葉を口にすると、
彼は言ったー。

”俺はもう”5”だー。”
とー

女体化した幸也は呆然とするー。
”5”とは、5回、TSを経験した人間ということだー。

4回目の死亡率は50%。後遺症はほぼ確実に残るー。
そして、5回目の死亡率は7割を超えると聞いているー。

「ーーー君もーー早く屋内にー」
男が苦しそうに言うー。

女体化した幸也は「で、でも、助けを呼びますー!」と、
それだけ言うと、周囲を見渡すー。

TS確率の高い日は、特殊加工の救急車しか出動できないために、
病院も急病の人間に限って対応するー。

”TS確率の高い日に倒れたら、死ぬ可能性が高い”
そんな風にも言われている世の中だー。

「ーーいいから…行くんだー」
倒れていた女ー…いや、今は男体化した男がそう言うと、
女体化した幸也は困惑しながらも頷くー。

そしてーー
倒れている男は、再び女体化したー。

激しく痙攣しながらぐったりと倒れ込む女ー。

幸也は、TS気圧の恐怖を改めて感じながら病院を目指すー。

途中、振り返ると、
女は再び男体化して、動かなくなっていたー。

「ーーーーー」
毎回、TS確率が高い日には、”死者”も出るー。
路上に死人が転がっている日も多いのだー。

「ーーーはぁ…はぁ…はぁ」
病院にたどり着いた幸也が、明菜のいる病室に駆け付けるとー、
男体化してしまった明菜がそこにはいたー。

幸い、息はあるー。

「ーー明菜!」
TS確率70%の外で、運よく”再度男体化”しなかった幸也は
女体化したまま、明菜の元にたどり着くとそう叫んだー。

すると、男体化した明菜は幸也の方を見て、言葉を口にしたー。

「ーーーあなたはー?」
とー。

「ーーーえ…?あ、明菜ー…?」
幸也がそう言うと、
「ーーーあきな…?」と、
男体化した明菜は、それだけ言葉を口にするー。

しばらくの沈黙のあと、明菜は少しだけ笑うと、
「ーごめんなさいー。何も、分からないー」と、
それだけ言葉を口にしたー

「ーーーーーーー明菜ー」
幸也は激しくショックを受けながらも、
男体化した明菜の手を握るー。

明菜はー、”3度目のTS”ー
死亡確率30パーセントとも言われるそれを生き延びたー。

がー、重度の記憶障害を起こしてしまい、
明菜は、幸也のことも分からなくなってしまったー。

後にー、明菜の母親に確認したところ、
小さい頃から明菜が大好きだったおばあちゃんが危篤状態になり、
慌てて駆け付けようとして、TS気圧の影響を受けて
自分があんな状態になってしまったのだと言うー。

”大事な人の最後”にも、タイミング次第では
駆け付けることができないー。
それが、この世界の現実ー。

女体化したままの幸也は、
記憶が戻らない男体化した明菜を見て、悲しそうに首を横に振ったー。

がー、それでも幸也は明菜を支えていくつもりだったー。

「ーーー…そっかー、”わたし”ー”3”なんだねー」
男体化した明菜は、自分が3度目のTSを経験した人間なのだと
聞かされて、苦笑いするー。

「ーーーー」
そして、自分の左腕の義手を見つめるー。

「ーーーーーーーー」
男体化した明菜は、険しい表情を浮かべるー。

「ーーー」
女体化した幸也が、心配そうに明菜を見つめると、
男体化したままの明菜は寂しそうに
「この手を見てると、大事な人を思い出しそうな気がしてー」と、
そんな言葉を口にしたー。

3度のTSを経験した明菜ー。
その記憶が戻る可能性は”まずない”と、
医師から告げられて、幸也は悔しそうに目に涙を浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「お兄ちゃんー…」

数日後ー
妹の”詩織”は戸惑いの表情を浮かべるー。

女体化した兄・幸也は、彼女の明菜の件で
酷く落ち込んでしまったからだー。

3度目の”TS”の死亡確率は30パーセント。
幸也の彼女である明菜は、何とかそれを乗り越えたー。

しかし、3度のTSは身体に強い負担となり、
明菜は重度の記憶障害に陥ってしまい、
幸也のことも、自分のことも思い出せない状況に
なってしまっていたー。

「ーーーーーーー」
”詩織”は、そんな兄・幸也を見つめながら
何て言葉をかけていいか分からずにいたー。

”今は…そっとしておくしかないのかなー…?”
”詩織”がそんな風に思いながら、
ふとテレビの方を見つめるー。

すると、”今日は強いTS気圧が発生しており、
TS確率は50%ほどでー”と、
そんなニュースが流れていたー。

”今日は自宅学習かなー”
”詩織”はそう思いつつ、自分の部屋に向かおうとするー。

しかしー、その時だったー

「ーえっ!?明菜がー!?」
女体化した幸也が戸惑いの声を上げるー。

彼女の明菜が病院から姿を消したという連絡が入ったのだー。

「ーーーくそっー」
女体化したままの幸也は家の外に飛び出ようとするー。

「ーお兄ちゃん!ダメだってば!!」
”詩織”が叫ぶー。

兄・幸也のTS回数は”1”ー。
2度目は5パーセントの確率で死に、後遺症が残る可能性はそれなりに高いー。

それでも、幸也は飛び出したー。

家から飛び出した幸也はー、
彼女の明菜を必死に探したー。

そしてーーー
”ある場所”を思いつくー。

それは、幸也が明菜に”告白”した場所ー。

「ーーー」
何故か、その場所のことが頭に浮かんで離れなくなった幸也は、
必死に走ったー。

まだ完全には慣れていない”女”になった自分の身体を
必死に、必死に動かして、
その場所を目指したー。

そしてーーー

「明菜ーーーー!!」
そこには、先日、3度目のTSによって再び男体化してしまった
明菜の姿があったー。

「ーーーーーー」
男になった明菜が振り返るー。

「ーーー明菜!!!
 これ以上、TS気圧の影響を受けたらー」

女体化した幸也が悲しそうな表情で言うー。

”4度目”のTSをしてしまった場合、
死亡率は50%を超えるー。
さらに、ほとんどの人間が日常生活を送ることは困難になってしまうー。

がー

「ーーーーここ……」
男になったままの明菜は、悲しそうに言うー。

「ーーここ…大事な場所…」
何故だかは思い出せないー。
けれど、”3”となった明菜は、この場所が大事な場所であることだけは
覚えていたー。

ここに来れば、何か思い出せるかもしれない、とー、
そう思ってー…
ここに来たー。

目から涙を流しながら、その場に倒れ込む明菜ー
痙攣しながら、再び身体が変化していくー。

”TS気圧”の影響を再び受けて、
明菜は”4度目”の変化を迎えるー。

幸也は「くそっーくそっ…!」と、悔しそうにしながらも、
慌てて”女体化して女に戻った明菜”を抱えると、
そのまま病院へと向かうー。

TS確率の高い日は、救急車もなかなか来ないー。
とにかく、自分で病院に行かないとー。

幸也自身も”また”TS気圧の影響を受けて男体化してしまう中、
なんとか彼は、病院に明菜を抱え込んで、駆け付けるのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

「ーーーー」
妹の”詩織”が病院にやってくるー。

そして、病室の前に立つと、”詩織”は緊張した様子で
息を吐き出しながら、
その扉を開けたー。

するとー、そこにはー…

”4”になって、女に戻った明菜と、
”2”になって、男に戻った幸也の姿があったー。

「ーーーお兄ちゃんー」
詩織がそう言うと、
振り返った幸也は笑ったー。

「詩織ー」
その幸也はー
今までかけていなかった”眼鏡”をしていたー。

2度目のTSの際に、視力が大幅に落ちてしまい、
眼鏡が必要になったのだー。

そしてーーー

「ーーー”詩織”ちゃんー」
ベッドに横たわっていた明菜は穏やかに微笑んだー。

「ーーーお久しぶりですー」
”詩織”が兄の彼女にぺこりと頭を下げるとー、
嬉しそうに言葉を続けたー

「記憶、戻ったんですねー」
とー。

明菜は少しだけ笑いながら頷くー。

4度目のTSの際の死亡率は”50%”

がー、明菜はそれを生き延びたー。
しかも、4度目のTSの際のはずみで、記憶が戻りー、
幸也のことも、詩織のことも思い出していたー。

「ーーーーごめんねー。迷惑をかけてー」
明菜がそう言いながら、幸也の方を見つめると、
幸也は「いいさー」と、そう言葉を口にしながら
「ついでに、俺も男に戻れたしなー」と、笑うー。

明菜は申し訳なさそうにしながらも、少しだけ微笑むと、
自分の足を見つめたー。

両足は麻痺し、左腕は2度目のTSの際に義手となったまま、
さらには味覚も失われて、身体はボロボロー。

けれどー…

「ーーー幸也のこと、思い出せて本当によかったー」
明菜は目から涙をこぼしながらそう言うと、
「ーー明菜がどんなになっても、俺は明菜の側にいるからー」と、
幸也はそう言葉を口にしながら、
この過酷な世界で、明菜のことをこれからも支えていこうと、
そう心に誓うのだったー

おわり

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメント

とっても怖い世界観(?)のお話でした~!★

TS確率が高い日は、なかなか外に出られないのは
大変ですネ~!
(身体に負担がかからないなら、気にせずどんどん外に
 出てますけどネ~笑)

お読み下さりありがとうございました~!★!

PR
女体化<TS予報>

コメント