<女体化>TS予報②~戸惑い~

遠い未来ー、
地球の環境は激変し、
”TS気圧”と呼ばれる人々を性転換させてしまう
特殊な気圧まで発生するようになっていたー。

そんな世界で、ある日、
一人の男子大学生が”女体化”してしまいー…?

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーう、嘘だろーー…?お、俺が女にー?」
バスの事故に巻き込まれて意識を失いー、
病院に搬送されるまでの間に
”TS気圧が発生する可能性が高い”と、TS予報で言われていた
”午後”になってしまい、女体化してしまった幸也は
茫然とした表情を浮かべるー。

「ーーー…そ、そんな顔しないでー
 ほら、”女”もいいよー?」
妹の”詩織”が、苦笑いしながら言うー。

妹の詩織は、元々は”弟”で、
真司という名前だったものの、
女体化したいという願望を元々持っていて、
TS確率が高い日に自ら外出、
そのまま女になったー…という過去を持つー。

その”詩織”が言うー。

「ーおしゃれだって色々できるしー
 わたしが色々教えてあげるからーね?」
妹の”詩織”が、少し困惑したような笑みを浮かべながら、
必死に女体化してしまった幸也を慰めようと言葉を掛けるー。

妹の”詩織”は知っているー。

”お兄ちゃん”は女体化を望んでいない、ということをー。
だからこそ、気まずそうにしながらそう言葉を口にしていたー。

「ーーーじ、冗談じゃないー
 お、俺は男だぞー」
女体化した幸也がそう言葉を口にしながら、
ズボンの上からアソコのあたりを触るー。

「ーーーー」
妹の”詩織”は困惑した様子でそれを見つめるー。

「くそっー…くそっ!!!」
ズボンの上から何度もアソコのあたりを触りー、
やがて、ズボンの中に手を入れてまで、
”男”であることを示すそれがないかどうかを確認するー。

「ーお兄ちゃんー…もう”ない”よー」
妹の”詩織”が言うー。

それでも、その言葉が聞こえていないかのように、
必死にズボンの中を探す女体化した幸也ー。

「ーーお兄ちゃんー…ないってばー…」
兄・幸也の”想像以上”の動揺っぷりに、
妹の”詩織”も困惑した様子を見せながら
そう言葉を口にするー。

「ーーーくそっ…くそぉぉぉぉぉっ!」
幸也はその場にガックリと膝をつくと、
すぐにハッとした様子で顔を上げるー。

「ーーって、い、今は何日だー?
 お、俺はどのぐらい意識を失ってたー?」
女体化した幸也が、まるで”希望”を抱くかのように
そう言葉を口にするー。

「ーー…い、今は16日の夜だけどー
 お兄ちゃんが眠ってたのは数時間だけ」
”詩織”のその言葉に、幸也は「そっかー」と、
そう言葉を口にすると、何度か頷きながら
「今日の夜は、TS確率30パーセントだったよなー?」と、
そう”詩織”に確認するー。

「ーちょ…お兄ちゃんーまさかー?」
”詩織”が戸惑いの表情を浮かべるー。

「ーー…だ、だったら、今、外に出れは、男に戻れるかも!」
女体化した幸也はそう叫ぶと、
女体化した際にすっかり伸びてしまった髪を揺らしながら
そのまま外に飛び出ようとするー。

「ーちょ、ちょっと待って!
 お、お兄ちゃん、死んじゃうかもしれないんだよー!?」
”詩織”が、慌てて目の前に立ちはだかるー。

「ーー”2″の死亡率は5パーセントだろ?
 95%は大丈夫なんだー」

女体化した幸也がそう言い返すー。

この世界ではTSした回数が1回の人間を”1”、
2回の人間を”2”と、数字で呼ぶー。

しかし、度重なる”TS”は、人体に大きな悪影響をもたらし、
2度目のTSは”5パーセントほどが死亡”、
3度目に至っては”30パーセントほどが死亡”しているー。

そして、生き延びたとしても、何らかの後遺症を残す可能性があり、
2度目のTSも、死亡率は5パーセントほどであるものの、
身体のどこかに異常が生じる可能性は大きいー。

実際に、幸也の彼女・明菜は”2”であるものの、
”左手”を失い、片腕は義手の状態だー。

「ーーーダメだってば!後遺症が残っちゃうかも!」
”詩織”はなおも必死に幸也を止めようとするー。

が、それでも幸也は
「男に戻るんだー!俺は男に!」と、可愛らしい声で
そう叫ぶー。

「ーーーお兄ちゃんの”彼女さん”の左腕ー
 どんな状況か、どうしてそうなったのか、
 お兄ちゃんが一番知ってるはずだろ!!!!」

”詩織”が、妹としての振る舞いを忘れて、
男の口調でそう叫ぶと、
女体化した幸也は、ハッとした表情を浮かべるー。

「ーーーーー」
大好きな彼女・明菜の”左腕”は義手だー。

そのことは、幸也が一番よく知っているしー、
何故そうなったかも当然理解しているー。
妹の”詩織”からそのことを指摘された女体化した幸也は
「でもー…でもー」と、その場でうなだれるー。

そしてーー
妹の”詩織”が、そんな兄・幸也に言葉を掛けようとしたその時だったー。

病室の扉が開きー、
妹の”詩織”を通じて連絡を受けていた幸也の彼女・明菜が
ちょうど到着して、女体化した幸也の方を見ると同時に
「幸也ー!」と、そう言葉を口にするー。

”詩織”は、明菜が到着したのを見て、
自分は一歩引くと、
明菜は女体化した幸也に向かって、
「ーー男でも、女でも、わたしは気にしないからー」と、
そう言葉を口にするー。

「ーー明菜ー」
外に出て、もう一度男体化しようとしていた幸也は
妹である”詩織”の説得と、彼女である明菜の言葉に
ようやく落ち着きを取り戻すと、
「ごめんー」と、そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”今日は、TS確率は0パーセントですー。
 天気も晴れ一色で、雨の心配はなく、お出かけ日和ですー”

天気予報と、TS予報が今日も行われているー。

そんな映像を見つめながら、
女体化した幸也は、「よかったー。今日は大丈夫そうだなー」と、
そう言葉を口にするー。

「ーーお兄ちゃんってば、せっかく女になったのにー
 髪もそんなに短くしちゃってー」

あれから2週間ー。
女体化してしまった幸也は、現状を受け入れて、
立ち直りつつあったー。

今日は休日を利用して女体化してから初めての
彼女・明菜とのデートだー。

「ーーははー、俺はこの方が過ごしやすいからさー
 髪、長いとどうしても邪魔に思えちゃうしー」
女体化した際に伸びた髪をバッサリと切った女体化した幸也は
男だった頃とほぼ同じ長さまで切った自分の髪を
触りながら少しだけ笑うー。

「まぁ、お兄ちゃんがそう思うなら、いいけどー」
”詩織”がそう言葉を口にすると、
「ーーできるだけ、今まで通りで過ごしたいからな」と、
女体化した幸也はそう言葉を口にして、
男物の服を身に付けながら「そろそろ出かけないと」と、
笑みを浮かべるー。

「ーいってらっしゃいー」
”詩織”はそう言いながら、
玄関の方に向かう幸也の後ろ姿を見つめるー。

”女体化した後の方が、なんかカッコよくなったようなー…?”
”詩織”は心の中でそんなことを思うー。

”男の幸也”より、
”女体化したあと、男装している状態の幸也”の方が
なんとなく、総合的にカッコいいような、そんな気がしていたのだー。

「ーーーまぁ、でも、お兄ちゃんが元気になってよかったー」
”詩織”はそう言葉を口にすると、
そのまま「あ、わたしも友達と遊びに行く約束してるんだった!」と、
思い出したかのように一人、そう言葉を口にしたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーなんだか、変な気分だなぁ」
女体化した幸也は、彼女の明菜と合流して、
久しぶりのデートを楽しんでいたー。

「ーーふふー、ゆっくり慣れていけば大丈夫だしー、
 性別のことで、戸惑うところとか、分からないところがあったら
 わたしもできる限り力になるからー」
明菜が穏やかに笑いながらそう言うと、
女体化した幸也は「ははー、ありがとうー」と、
そう言葉を口にしたー。

「ーーーー」
女体化した幸也は、明菜と楽しそうに歩きながら
ふと、明菜の左腕ー…義手になっている左腕を見つめるー。

服の上からでは分からないし、左手にはいつも手袋を
はめているから、直接義手が見えるわけではないものの、
それを見るたびに、明菜が”2回”TS気圧による影響で性別が
変わっていて、その後遺症が残っていることを思い出すー。

特に、自分自身が女体化してからは尚更だー。

2回目の”TS”は、
統計上、死亡確率は”5パーセント”ー。

100人が2度目の性転換をすれば、95人が生き延び、
5人が死亡するー
そんな計算だー。

もちろん、必ずしもそうなるのではなく、
100人集めて実験したとしても、10人死ぬこともあるだろうし、
2人死ぬこともあるだろうけれど、
とにかく、統計上は大体5パーセントで、
仮に幸也が”男”に戻ろうとして、もう一度”TS確率”が高い日に
外に出ても、高い確率で男に戻ることはできるのだー。

しかしー…
”命を失う確率が5パーセント”はかなり高いー。

ゲームの技の命中率が95%なら、喜んでその技を使うのは間違いない。
どうせほぼ命中するし、5パーセントの方を引いても、
技が外れるだけで、それほど大きなリスクはないー。

けれど、これは訳が違うー。
同じ成功率95%でも、ハズレの5パーセントを引いたら死ぬのだー。

そしてー…

「ーーーー」
明菜の左腕を見るたびに思い出すー。

”95%はあくまでも死ななかった人間”の数字ー。
その人間がどんな状況かは考慮されていないー。

当然、何事もなかった人間もいて、大学にも”2”だけど、いたって健康な子もいるー。
しかし、明菜のように片腕を失った人間もいれば、
親戚には2回目のTSの際に脳出血を起こして寝たきり状態の人もいるー。

一方で、白髪が増えただとか、爪が変色したとか、
日常生活自体には支障のない後遺症の人間もいて、その症状は様々ー。

けれどー、”95%の確率で男に戻れるんだから”と思ってしまいそうな
幸也を、”明菜の左腕”が思いとどまらせてくれるー。

”生き延びても、何が起こるか分からないんだよ”と、
そう、伝えてくれるー。

「ーーーー…どうしたのー?」
明菜が、女体化した幸也の視線に気づいて、
自分の左腕を見つめるー。

明菜は、幸也が何を考えているのか理解して、
少しだけ笑うと、
「ーー変なこと考えちゃ、ダメだからねー?」と、
そう言葉を口にするー。

女体化した直後、幸也が病院から飛び出して、
男体化して男に戻ろうと試みたことは
幸也の妹”詩織”から聞かされているー。

「ーーーーははー…お見通しかー」
少し寂しそうに笑う幸也ー。

女体化後は、髪も切って、男装したような状態で、
なるべく”俺は男だ”と、思えるような過ごし方をしている幸也ー。

けれどー、それでもー、
時々、思ってしまうー。

”TS確率が高い日に外に出れば、案外あっさり男に戻れるんじゃないか”
とー。

普通に男体化して、後遺症も残らずに、戻れる可能性ー。
それに縋りたくなってしまうー。

「ーーー小さい頃に無茶したわたしが言うのもなんだけどー…
 でも、絶対に後悔するー。
 わたしは、腕1本で済んだけどー…もっとひどい子もいるんだからー」

明菜は手袋を少しずらして、義手を直接幸也に見せると、
「ー男でも、女でも、幸也は幸也でしょー?」と、そう言うと、
「ー”詩織”ちゃんも悲しむから、だからー…無茶はしないで」と、
そんな言葉を口にしたー。

その明菜の言葉に、女体化した幸也は少しだけ微笑むと、
静かに頷いたー。

「ー分かったよー。無茶はしないー。
 俺は”今のまま”生きるー。約束するー」

女体化した幸也は、
彼女の明菜を、そして妹の”詩織”を悲しませないためにも、
馬鹿なことは考えない、と、そう約束するのだったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

”今日は、TS気圧が不安定に入り乱れて
 TS確率は70%を超えていますー。
 不要不急の外出は控え、
 万が一の際には、抗TS薬を服用した上でーーー”

今日のTS予報では、
午前中から”TS気圧の発生状況が不安定”だと、
そう報じられていたー。
”抗TS薬”とはTS気圧による影響を受けにくくする薬であるものの、
”ある程度確率を下げるだけ”で、基本的には外出は推奨されないー。

大体、目安として、TS確率70パーセントの日に抗TS薬を服用すると、
35%相当ぐらいに落とせるー…そんな感じだー。
が、あくまでも緊急用で、普通は家の中で過ごすのが基本。

「ーー今日は、リモートだなー」
こういう日は学校や会社に行かず、
リモートで済ませられる日はリモートで済ませるのが”普通”だー。

女体化した状態にも慣れた幸也は、
妹の”詩織”から、「お兄ちゃんもおしゃれしたらかわいいのに~!」などと
今日も冗談を言われながら、いつものように自分の部屋へと向かうー。

がー
部屋に入った幸也は表情を歪めたー。

「ーーーーーえ」

幸也のスマホに届いたのは、彼女の明菜からのメッセージー

いやーー
明菜のスマホから、”明菜の母親”が、幸也に送信したメッセージだったー。

そこにはーー
”明菜がTS気圧の影響を受けて、病院に緊急搬送された”と、
そんな言葉が刻まれていたー

既に、”2回”TSしている明菜ー。
次にTSすれば、”3”ー。

”3”の死亡確率は30パーセントー。

幸也は青ざめて、慌ててスマホを手にすると
明菜の母親に対して「な、何があったんですか?!」と、そう叫んだー。

③へ続く

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次回が最終回デス~!★

現代とは違う、異様な状況になっている世界での
物語の結末を見届けて下さいネ~!!

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女体化<TS予報>

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