2回目の人生を偶然起きた”憑依”で
謳歌していた男ー。
そんな彼の人生の先に待っていたのはー…?
・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーやっぱり、橋口さん、人生2回目なんだねー?」
美穂がそう言いながら”隠れ家”に入って来るー。
「ーー…み、美穂ちゃんー」
涼香は缶コーヒーを手にしたまま、
そう言葉を口にすると、表情を歪めるー。
「ーーコーヒー…
ーー”1回目”の人生で好きだったんだ?」
美穂のその言葉に、涼香は「あ…あははー」と、
苦笑いしながら缶コーヒーを近くの机に置くと、
美穂の方を見つめたー。
”ーーおいおいー、まさか美穂ちゃんー、
俺のこと尾行してたのかー…
ーーまぁでも、見られちまったならー…仕方ないかー。”
涼香に憑依している雄太は心の中でそう呟くー。
美穂のことは今でも親友だと思っているし、
大切な存在だー。
お互いに、信頼もあるー。
ここまで知られてしまった以上はー、
と、そう思いつつ、涼香は口を開くー。
「ーみんなには秘密だよ?びっくりするからー」
涼香がそう言うと、美穂は「うん!」と、微笑むー。
そんな美穂を見て、涼香は意を決すると、
「確かに、わたしは”人生2回目”なのー」と、
缶コーヒーをもう一度手にして、
”隠れ家”に設置しているイスに座るー。
「ーーーすごいー…!
だから、橋口さん、小さいころからずっと物知りだし、
勉強もーーあんなに簡単にできちゃうんだね!」
美穂はそう言い放つと、
キラキラと目を輝かせながら涼香を見つめるー。
笑ってはいるものの、最近の美穂には
生気がないー。
いじめもまだ続いていて、美穂はますます精神的に
病んでいる様子だったー。
涼香自身も、”わたしのせいで美穂ちゃんがー”と、
いじめを解決しようとできる限りのことはしていたし、
美穂に対しても、何とか元気づけようと今でもしているものの、
根本的な解決には至っていないー。
涼香が何をしようと、”いじめ”は完全には止まない状態が
続いているのだー。
そんな美穂の現状、改めて思い起こしながら、涼香は口を開くー。
「前の人生のことも全部覚えてるってことだよね!?
どうやったら”2回目”の人生なんて、始められるのー!?
死んだあとの世界とかってあるのー?」
興味津々という様子で涼香に迫って来る美穂ー。
「ーちょ、ちょっと落ち着いてー」
興奮した様子の美穂を見て、ますます心配になりながら
涼香は、「え~~~っとー」
と、隠れ家に持ってきている飲み物を見つめるー。
が、コーヒーや、栄養ドリンクー…とても美穂が飲みそうなものが
なくて、仕方がなく「み、水でいいー?」と、そう言葉を口にすると、
美穂は「あ、気を遣わないでー急にお邪魔しただけだし」と、
苦笑いするー。
「ーーーそ、そう?」
少し気まずそうにしながら、涼香は今一度座ると、
「ーー”2回目の人生”は、好きで始めたわけじゃないのー」と、
そう呟くー。
美穂が首を傾げるー。
涼香は、そんな美穂の反応を見て
「わたし、1回目の人生の時ー、最後に車に轢かれちゃってねー…
その時に”まだ死にたくない” ”まだ死にたくない”って、ず~っと
思ってたら、気付いた時にはこの身体になってたのー」
と、そう言葉を口にするー。
「ーー…は、橋口さんー、1回目の人生で車に轢かれたのー?」
美穂が言うと、
涼香は「うんーーー」と、当時のことを思い出しながら頷くと、
「この身体は、たまたまその事故現場の近くにいた子の身体なんだけどー」と、
自分の手を見つめながらそう素直に打ち明けたー。
もちろん、誰にでも喋るわけではないー。
相手が親友の美穂だから、信頼してのことだー。
「ーーーあ!美穂ちゃんと仲良くなる前から、もう、
わたしは”今のわたし”だったから安心してねー」
涼香がそう言うと、美穂は目をキラキラ輝かせながら、
「すごいー…!本当にすごいー!」と、そう言い放つー。
「ーーーあ、あははー…」
涼香は苦笑いしながら、美穂の方を見ると、
美穂はさらに”質問攻め”を始めたー。
「ーじゃあ、橋口さんの”前の人生”って、
もしかして”お父さん”とかだったりしたのー?」
「ー今の人生と前の人生、どっちが好きー?」
「車に轢かれた時の状況をもっと知りたいなー」
美穂に色々聞かれた涼香は
戸惑いながら、
「”前の人生”のことはあまり思い出したくないかなぁ~」と、呟くー。
何となく、”中身が男”だとは言いたくなかったー。
美穂の反応も変わるかもしれないし、
もう、何年も涼香として過ごしていると、
今の自分自身は”橋口 涼香”であり、前の自分のことは
だんだんと薄れつつもあったー。
「ーーーそ、そっかーなんかごめんねー」
美穂がそう謝ると、涼香は「ううんー気にしないで」と、
そう言葉を口にしながら椅子から立ち上がったー。
「ーでもまさか、美穂ちゃんにここが見つかっちゃうなんてびっくりー。」
涼香がそう言うと、美穂は笑いながら
「橋口さんのこと、な~んでも知りたいから!」と、そう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さらに時は流れー
高校受験も本格化したー。
成績トップを誇る涼香は、
高校受験の準備も全く問題なしー。
中学の間楽しんだテニス部も、最後には部長になり、大活躍したし、
生徒会会長としてもしっかりと役目を果たしたー。
クラスでもたくさんの友達に囲まれー、
その人生は充実していたー。
強いて言うならば、美穂の”いじめ”を完全に解決してあげられなかったことー
美穂のことを守りきってあげられなかったことは、大きな心残りではあるー。
”いじめって、完全に潰すのはむずいよなー…
中身が大人とは言え、今の俺は”生徒”でしかないしー…”
涼香に憑依している雄太はそう思いつつも、
美穂の方を見つめたー。
”人生2回目は本当”
そう打ち明けてからも、美穂は変わらず涼香に憧れー、
そして、涼香との秘密を守っていたー。
他の誰かに万が一言われても、”2回目の人生を送っている”なんて
あまりにも非現実的だし、
変な噂は立ったとしても、今の人生に大きな影響はないだろう、と、
そう思って、あの日、美穂に打ち明けたものの、
その心配すら不要で、美穂はちゃんと約束を守り、
周囲の誰にもそのことを伝えてはいなかったー。
「ーーー先輩!」
ふと、そんな声が聞こえて涼香が振り返るー。
そこにいたのは、生徒会時代に共に仕事をした
後輩の男子の一人だー。
「ーあ、あのー先輩のことー…
前からずっと、好きでしたー」
後輩が顔を赤らめながら言うー。
「ーーー!!!」
涼香は思わず驚くと、
心の中で”俺ー…初めて告白とかされたんだけどー”と、
内心で苦笑いしたー。
ちょっとだけー
”1回目の人生”ーー
元々の自分の人気の無さに、自虐的な笑いが込み上げてきたものの、
それを抑えて、その男子の方を見つめたー。
”ーーこの子も、悪い子じゃないし、優しい子なんだけどなぁ…
ーーでも、ごめんなー
まだ”男と付き合う”ってのがあまり想像できないんだー”
涼香に憑依している雄太はそんな風に思うー。
涼香になって、もう5年以上が経過したー。
けれどー、”まだ”男子を恋愛対象として見る気はしなかったー。
女子に対する感情は、すっかり”同性に対する感情”にはなっていたものの、
まだ、男子のことも異性として見ることが出来ず、
今の状態で”恋愛”することは難しかったー。
「ーー(ごめんねー、騙してるみたいになっちゃって)ー」
涼香は少し申し訳なく思いながらも、
その後輩の告白を、なるべく傷つけないように言葉を選びながら
断ったのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー。
「ーーーーーーー」
帰宅した涼香は、両親と会話を交わし、
そのまま自分の部屋へと戻るー。
最初は違和感があったものの、
今では”涼香の両親”のことも、
ちゃんと家族として認識できるようになった雄太ー。
その二人のことを傷つけるようなことは
したくないし、将来的には親孝行もしてあげたいと
そんな風に思うようになったー。
「ーー不思議なもんだなー
俺の実の親には、そんなことしてあげようと
思ったことはなかったのにー」
そう呟きながら、涼香は受験勉強を始めるー。
涼香に憑依している雄太自身の”両親”は
あまりいい親ではなく、雄太に対する扱いも散々だったこともあって、
”涼香の両親”は、雄太にとって実の親よりも大切な存在になりつつあったー。
「ーま、もう俺の親は、俺が死んだと思ってるしー
わざわざこの身体で2度目の人生を送ってるなんてこと
言う必要はないだろー」
そう呟く涼香ー。
が、その時だったー。
♪~~
スマホが鳴るー。
涼香がスマホを確認すると、
そこには親友の美穂の名前が表示されていたー。
「こんな時間に何かなー…?」
涼香はそう言葉を口にすると、スマホを手に
「ーどうかしたの?」と、そう言葉を口にしたー。
するとーーー
”ーねぇ、橋口さんー
わたしも、2回目の人生始められるかなー?”
美穂が、そんな言葉を口にしたー。
「ーーー…え?ちょっと待ってー
何言ってるの?」
涼香がそう言葉を口にすると、
美穂は笑ったー
”車に轢かれたらー、新しい人生、始められるかなーって思って”
そう言い放つ美穂ー。
「ーーーわ、わたしの場合はたまたまそうなっただけー
絶対にそんなことしちゃだめだからね!?」
涼香はすぐにそう返すー。
”どうして”憑依できたのかは分からないー。
でも、普通は、車に轢かれて死ねばそれで終わりだー。
”ー橋口さんみたいに、わたしもなりたいのー
わたし、ずっとずっと橋口さんに憧れてたんだからー…
ーーやっと、橋口さんの秘密を知ることができたんだからー
わたしも、橋口さんと同じになりたいのー
2回目の人生、したいのー!”
美穂の言葉に、涼香は呆然とするー。
”やっぱり、俺が人生を狂わせてしまったんだー”
と、そう思うー。
涼香に憑依して送る2度目の人生ー。
それ自体は上手く行っていたー。
でも、年齢にそぐわない優秀すぎる涼香の”近くにいた”
人間の人生を狂わせてしまったー。
涼香が、涼香本人のままなら、
きっと美穂の人生はこんな人生にはならなかったー。
小さい頃のように、少し控えめな笑顔が可愛らしい、
そんな美穂のままでいたはずー。
それが、”何でもできる涼香”の近くにいて、
憧れを抱いてしまい、優秀すぎる涼香の側にい続けたことで
”わたしはダメな子”と歪んだ感情を抱き、
イジメの原因にもなってしまったー
「ーーー」
ぐっ、とスマホを握りしめる涼香ー。
”ーーわたし、1回目の人生を終わりにしてー
2回目の人生を始めるねー。”
美穂が電話の向こうで、そう言いながら笑うー。
電話の向こうから聞えて来る音を聞く限り、
車が多く走るところにいるようだー。
大通りの歩道か何かから、電話しているのだろうー。
「ーー美穂ちゃんー、
バカなこと考えちゃだめー。
わたしみたいなことは普通は起こらないんだからー、
車に轢かれてもただ死ぬだけー
絶対に、馬鹿なことは考えちゃダメー」
涼香がそう言うと、
美穂は”わたし、2回目の人生をーー”
と、なおもそう続けたー
「ーー絶対ダメ!今からそこに行くから!
どこにいるの!?!?」
涼香がそう叫ぶー。
”ーーふふーありがとー
橋口さんのこと、ずっと大好きだからーーー
2回目の人生始めたらまた会いにいくねー
さよならー”
美穂はそう言葉を口にするとー
そのまま電話を切ろうとしたー。
美穂が電話を切ろうとしているのに、涼香も気づくー
”ーーー俺のせいで、美穂ちゃんはーー…”
スマホを持っている手が震えるー
そして、涼香は咄嗟に叫んだー。
「ー行くなって言ってるだろ!!!!」
とー
”ー!?”
電話を切ろうとしていた美穂が驚くー
「ーーーー
今からそっち行くから!!
話ならいくらでも聞くから!!
だから、どこにいるのか言えよ!!!」
涼香は、今まで出したことのないような口調で
声を荒げたー。
「ーー美穂ちゃんがつらいなら、
なんでも聞くし、なんでもするし、
これからもずっとずっと守るから!!
だからー、死のうとなんてするんじゃねぇよ!」
とにかく、美穂を死なせないように
なりふり構わず叫ぶと
電話の向こうの美穂はーー
しばらく沈黙してから笑ったー
”ー1回目の人生ー、男の人だったのー?”
とー、クスッと笑う美穂ー。
「ーーー…っ……」
涼香は、ハッとしてから、大きく息を吐き出すと、
「ーーー行くまで待ってたら、教えてあげるー
だから、待っててー」と、
いつものような口調でそう言葉を口にしたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーー美穂ちゃんー」
美穂から教えてもらった場所にたどり着くと、
美穂は、大通りの壁に寄りかかって寒そうにしていたー。
「ーーー……ーー…ごめんねー…わたしー」
美穂が謝罪の言葉を口にすると、
涼香は有無を言わさず、美穂を抱きしめたー。
「ー心配したんだからねー…」
とー、そう言葉を口にしながらー。
美穂は、そんな涼香を見て
目に涙を浮かべると
「心配かけて、ごめんなさいー」と、
そう言葉を口にしたー。
”橋口さんは、わたしのこと、こんなに大事にしてくれているー”
と、そう思った美穂は、
「ーーもう、こんなことしないからー」
と、そう約束するのだったー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
時は流れー、
高校生になった涼香ー
「♪~~~」
”JK”ライフは楽しいー。
そんな風に思いつつ、2度目の人生を今も堪能しているー。
相変らず、天才状態だし、人気者状態も変わらないー。
報われないと思っていたけれど、
1度目の人生で努力し続けたことが、今に繋がっているー。
そしてーーー
「ーーね~ね~…”1回目”の時の写真、見せてよ~」
結局、同じ高校に進学した親友の美穂が笑いながら言うー。
「ーーだ~め!約束通り、”性別”だけは教えたでしょ?
それ以上は言わないもんー」
涼香はそう言葉を口にすると、美穂は「え~~~~」と、
拗ねたような表情を浮かべるー。
美穂のいじめは止まったー。
あのあと、涼香がさらに必死に色々手回ししたこと、
そして、最終的には高校に進学して
”周囲の顔ぶれ”が変わったことで、それは終わったのだったー。
今では美穂もすっかり元気になっているー。
「ーーーあ!わかったー!」
美穂が笑いながら言うー。
「ーー何よー…?」
涼香が少し表情を曇らせながら美穂を見つめると、
美穂はニヤニヤしながら言葉を口にしたー
「見せたくないってことは
あれでしょー?
ハゲ頭の太ったおじさんだったとかー?」
美穂の悪戯っぽい笑みを前に、
涼香は顔を赤らめながら
「そ、そこまでじゃないし!」と、そう言葉を口にしてから、
「イケメン!滅茶苦茶イケメンだったんだから!」と、
そんな嘘をつきながら、笑うー。
「ーあははーじゃあー、そういうことにしておこうかなー」
美穂も、きっと嘘だろうと思いつつ笑うー。
涼香は、そんな美穂の姿を見つめながら
心の中で思うー
”2度目の人生が始まった理由は分からないー
でも、1度目とか、2度目とかそんなことはもう、どうでもいいー。
今はこの、親友と一緒にいられる時間を大切にしようー”
とー。
涼香は少しだけ微笑むと、美穂の方を見て、
「ーー美穂ちゃんと出会えてよかったー」と、
そんな言葉を口にするのだったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
”憑依”で新しい人生を手に入れるタイプのお話は
これまでに何回か書いていましたが、
毎回、失敗しているパターンが多かったので
今回は”失敗しない人生2回目”をテーマに書いた作品でした~!☆
失敗せずに、これからも2回目の人生を堪能できそうですネ~!☆
お読み下さりありがとうございました~!☆!

コメント
仮に美穂も2回目の人生を始めることが出来たとしても、まず、涼香みたいにはうまくはいかないでしょうね。
あと、この話を見て思ったんですが、2回目の人生を成功させるにはある程度の努力が出来ることや、性格の良さなどが必要なんでしょうね。
実際、今までの類似系の話では努力が出来なかったり、人格が腐りすぎてるせいで人間関係を良好に保てなかったりとかして失敗してるパターンばかりですし。
もし雄太が自分勝手な性格なら例え優秀でも、どこかで破滅したかもしれませんしね。
それにしても、本物の涼香が理由はどうあれ、身体を奪われてるのを知った上でも変わらず
雄太に好意的な美穂もスゴイですよね。
たくさんの感想ありがとうございます~~!☆
感謝デス~~!☆★★!
美穂にとっては小さい頃から憧れの存在だったので、
そのままの感覚なのかもですネ~!
いつも、破滅してる人ばかりなので
今回はあえて上手く行ってるパターンにしてみました~!笑