大人しい性格で、優しすぎるが故に
苦言を呈されることの多かった姫ー。
憑依薬を手に入れた彼女は次第にその力に魅入られていき、
ついに、”事件”は起きたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
クローバー王国の王宮内は混乱していたー
女王・ヒルダの妹であるアンドレアが突如として失踪しー、
さらには第8騎士団長のガスパロが錯乱したメイドに殺害されたためだー。
「ーーーーーー」
ヒルダは、ガスパロの遺体を見つめながら
少しだけ笑みを浮かべるー。
「ーー…姫様ー」
そんなヒルダの元に、第1騎士団長のルーカスがやって来るー。
「ーガスパロを殺したメイドですがー、
”全く覚えがない”の一点張りですー。
現在、ヨハンネスが尋問を行っていますがー
時間がかかりそうですー」
第1騎士団長のルーカスのその言葉に、
「ーーすぐに罪を認める罪人は、なかなかいませんからね」と、
ヒルダはクスッと笑うー。
「ーそれと、アンドレア様の捜索ですがー」
ルーカスが、ヒルダの妹・アンドレアの名を出すと、
「ーあの子のことは、放っておいて大丈夫ー
”昔から”そういう子だからー」と、少しだけ笑みを浮かべたー
「はー…?」
ルーカスは、”妹を探さなくていい”と言いだしたヒルダに
少し困惑の表情を浮かべるー。
ヒルダは妹・アンドレアに嫌味をいつも言われて
”嫌がっていた”のはルーカスも察しているー。
がー、ヒルダはいつも”最後には”そんな、辛辣な妹であっても、
心配していてー、
以前、アンドレアが魔物の出る山岳地帯に一人で足を運んでしまった際も、
ヒルダは危険を顧みずに助けに行ったのだー。
”嫌っていても”ー
少なくとも、ヒルダの方は、
アンドレアに情のようなものを見せることはあったー。
先日、アンドレアが奇行を繰り返した際にも
”離宮で謹慎”と、王宮から引き離すような形での処遇を与えていて、
それも、姉としての情なのではないかと、ルーカスはそう思っていたー。
事実ー、
ヒルダは、自分自身が憑依して滅茶苦茶にしたアンドレアを
直接的には処罰せずに、謹慎で済ませていたー。
”ムカつくから遠ざけたいし滅茶苦茶にしてやりたい”、
そうは思っていたけれど、命まで取るつもりはなかったし、
離宮に隔離したのは、王宮にいればアンドレアが、
必要以上に周囲から白い目で見られるために、”そこまでは望んでいない”と、
ヒルダはアンドレアを離宮で謹慎処分にしていたー。
離宮に離してしまえば、小言は言われなくなるし、
会う必要もなくなるー。
少なくとも、あの時点では
そう、ヒルダは思っていたー。
ヒルダ姫がこれまで、
”憑依”で命を奪ったのは、独断横行で平和を乱しかねなかった、
第3騎士団長のヴェルテルのみー。
しかしーーー
「ーー好きにさせてあげればいいのですー」
ヒルダはそれだけ言うと、そのまま興味なさそうに立ち去っていくー。
「ーー姫様ー」
第1騎士団長のルーカスは、少しだけ不安そうに表情を歪めたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー」
ヒルダ姫は、”憑依”の力を乱用し始めたー
メイドに憑依して”気になっていた男”を別の女の身体で
貪りつくしー、
お気に入りのメイドを見つけると、憑依して
その身体を存分に楽しんだー。
憑依に完全に魅了されてしまったのだろうかー。
ヒルダは笑いながら、憑依薬を見つめるー。
だがーーー
そこに、世話役のロルフがやってきたー。
「ーー姫様ー
最近は、少し強引なやり方が目に余りますぞー」
そう呟くロルフー。
大人しく、優しすぎるー
そんな風に言われていたヒルダだったものの、
最近は強引な施策が目立つようになり、
先日も、自分に意見した第7騎士団長を
突然解任してしまったー。
「ーーーだってーー
みんな、わたしが”優しすぎる”みたいなこと言ってたしー
判断が遅いみたいなことも言ってたでしょ?
だからー、こうしてるの」
ヒルダの言葉に、ロルフはため息をつくと
「姫様ー…」と、そう言葉を口にするー。
「ーー確かに、姫様のことを悪く言う人間もいますー。
私自身も、”姫様は優しすぎる”とは言いましたー。
けどー、それでこそ姫様なんですー。
姫様が優しすぎる部分は、私のような
口うるさい爺が、そして家臣が上手く補いますー。
だから、そんなにご無理をなされなくても良いのです」
ロルフの諭すような口調に、
ヒルダが少しだけ笑うと、
「ーーなんか、面倒臭いー」と、そう言葉を口にしたー。
「ーー…姫様?」
ロルフは戸惑うー。
「ーー世話役なんて、いらなくないー?」
ヒルダがそう言うと、ロルフは表情を曇らせたー。
そしてー、その夜ーー
ヒルダは城内の女騎士の一人に憑依すると、
邪魔者になったロルフを殺害したー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーバカな男ー」
ヒルダはロルフの亡骸を見つめながら笑みを浮かべるー。
「ーーわたしに、歯向かえば、こうなるのー
わたしは”憑依薬”を持ってるのだからー」
ヒルダは笑みを浮かべながら
ロルフの亡骸に対してそう言葉を口にすると、
そのままその場から立ち去ったー。
ヒルダ姫は、ますます憑依に溺れたー。
妹・アンドレア派だった第5騎士団長のウーゴに憑依して、
ウーゴを自害させたー。
アンドレアが失踪した後に、アンドレアを必死に探し続けていたために
”邪魔”になったのだー
”探さなくていい”、
何度もそう言ったのにー。
探さなくていい理由はーーー…
ヒルダは笑みを浮かべながら、
死んだウーゴの後任を選定していくー。
さらに、王宮で何かが起きていると言い出した
第4騎士団長をメイドの身体で毒殺ー、
切替を行い、
先日、口応えした元第7騎士団長も抹殺したー。
憑依で連日、遊びを繰り返し、
気に入らない者は次々と排除していくー
女王・ヒルダの狂気的な行動を前に、
第1騎士団長のルーカスと、第4騎士団長のヨハンネスは
頭を抱えていたー。
「姫様は、どうしちゃったのかねぇ…」
軽い口調のヨハンネスが言うと、
ルーカスは険しい表情で「分からぬー…だがー
最近の姫様のご様子は目に余るー」と、そう言葉を口にするー。
「それにー…
”自分のしたことを覚えていない”者が王宮内に何人も
確認されているー」
ルーカスがそう言葉を口にすると、
第4騎士団長のヨハンネスは「俺も気になる話を聞いた」と
口を開くー。
「ー気になる話?」
ルーカスが言うと、ヨハンネスは頷くー。
「急に様子がおかしくなって、騎士とヤッたメイドがさー、
その最中に”わたしは女王”だって、そう言ったらしいんだよー。」
ヨハンネスがそう言うと、
ルーカスは「女王ー?」と、首を傾げるー。
「ーー王宮内には”姫様”が、乗り移ってるんじゃないかなんて
噂まで出ている始末さー」
ヨハンネスの言葉に、ルーカスは「まさか」と、困惑した表情を
浮かべたものの、「調べてみる必要がありそうだなー」と、
そう言葉を口にしたー。
そしてーーー
その夜から、ルーカスとヨハンネスは
”主に、急に様子がおかしくなる人が続出している夜”を狙い、
あることを始めたー。
ルーカスが王宮内を見回り、
ヨハンネスは姫の様子を見張るー。
”姫が他の者に乗り移っている”という都市伝説的な話を調べるためだー。
「ーーーー…」
ヨハンネスは、睡眠薬を口にして眠るヒルダを見つめるー。
睡眠薬を飲んだヒルダは突然、ビクッと震えると
そのまま気絶するようにして眠っているー
「ーーーー……」
ヨハンネスは、そんな様子を見つめながら
表情を曇らせるー。
一方、ルーカスは王宮内で”おかしな行動”をしている人間を探し、
見回っている最中、夜中の王宮をこっそり歩くメイドを見つけたー。
「おい!そこの者」
ルーカスが呼び止めると、メイドは表情を歪めたー。
「どこへ行くつもりだー?」
ルーカスがメイドを尋問するー。
「ーーわ、わたしは別にー」
メイドはそう言葉を口にしながらも、突然逃げ出すと、
そのまま高所から飛び降りて”自ら”命を絶ってしまったー
”チッーわたしの邪魔をするなんて許さない”
そのメイドはーー
”憑依”されていたメイドー。
邪魔をされたことに腹を立てた女王は、
第1騎士団長のルーカスと第4騎士団長のヨハンネスを、
その日のうちに”憑依”で始末したー。
「ーーわたしの邪魔をするやつは、誰であっても許さないからー」
ヒルダ姫はそう言葉を口にすると、クスクスと笑い始めたー。
”憑依”の力に魅入られたのか、
横暴の限りを尽くすヒルダ姫ー。
好き放題メイドに憑依したり、イケメンの騎士に憑依して
身体に酔いしれたり、
邪魔者には容赦なく憑依してその命を奪ったー。
女王としての務めは果たそうとはしていたものの、
そのようなやり方をしていたために、あっという間に王国は乱れ、
歪み切ってしまったー。
そんな、ある日ー。
「ーーー姫様!敵襲です!」
その言葉に、ヒルダ姫は表情を歪めたー
「ー敵襲!?誰!?」
とー。
「分かりません!怪しげな魔術師の集団です!」
兵士のその言葉と同時に、その兵士に闇の魔法が直撃して
兵士が吹き飛ばされるー
「ーー!?!?!?」
ヒルダ姫が表情を歪めると、
黒いローブの魔術師が近付いて来るー。
以前、第8騎士団長のガスパロが、大森林の中で遭遇した
魔術師たちの仲間だー。
ガスパロが倒した魔術師はあくまでもこの謎の集団の”一部”であり、
まだ生き残りがいたー。
「ーー…あ、あなたたちー…
どういうこと!?」
ヒルダ姫が声を上げるー。
するとー
魔術師の男が言ったー。
「ーヒルダ姫ー
いいやーーー…愚かなる女王アンドレアよー」
とー。
消息を絶ったヒルダの妹・アンドレアの名前を口に出す魔術師ー。
「ーーっ…!その名前で呼ばないで!
今のわたしはヒルダ…!
クローバー王国の女王よ!」
ヒルダが声を荒げるー。
「クククー
実の姉に”憑依”してやりたい放題ー
おかげで王国は崩壊寸前ー
”楽に滅ぼすこと”ができるよー」
魔術師は笑みを浮かべたー。
「ーーー!」
ヒルダ姫は表情を歪めるーーー
今の”ヒルダ”は、消息を絶った妹・アンドレアに憑依されていたー。
いつもヒルダに嫉妬し、嫌味を言ったり、
時には妨害も繰り返していたアンドレア。
ヒルダから嫌われ、憑依薬を手に入れたヒルダに2度憑依され、
謹慎処分になったアンドレア。
だがー
そんなアンドレアに魔術師の男が密かに接触して
”憑依薬”の存在を教えた上で、憑依薬を手渡していたー。
”これを使えば、アンドレア様ー
あなたがお姉さんの身体を乗っ取って
女王になることができますぞー”
とー、そうそそのかされてーー。
結果、アンドレアはヒルダに憑依したー。
アンドレアが突然消息を絶ったのは、そのためー。
抜け殻となった自分の身体は、魔術師たちに隠してもらい、
姉・ヒルダに憑依ーー
姉の身体と立場を奪ったー。
ヒルダが”憑依”で、なりふり構わず
逆らう者を殺し始めたのもそのためー。
元々、憑依薬を使っていたヒルダは
反乱の気配があった第3騎士団長のヴェルテルの命は奪ったものの、
それ以外には少なくとも人の命を奪うことはせず、
憑依を悟りかけた第8騎士団長のガスパロのことも、そのまま見逃していたー。
しかし、アンドレアに乗っ取られたヒルダは、
姉とは違い、逆らう者も、邪魔者も、気に入らない者も、憑依で滅茶苦茶にして
命も奪い始めたー。
その結果ーーーー
「ーークローバー王国は、アンドレアーーー
お前が壊したのだー」
魔術師が言うー。
「ーーー……そ…そ…そんなことー…わたしは…!
わたしはお姉さまー…アイツなんかよりも優秀なのよ!」
ヒルダに憑依したアンドレアが叫ぶー。
だがーー
魔術師は笑ったー
「いいやー
確かにお前の姉にも欠点はあったー
優しすぎたり、強く人に言えないところはまさにそれだー
だが、見てみろー」
魔術師はそう言うと、
火に包まれた城下町が見える窓の方を指差すー。
「ーーお前は、そんな姉にも遠く及ばないー
”無能”な女王ー」
魔術師の言葉に、ヒルダに憑依したままのアンドレアは
炎に包まれた城下町を見て、膝を折るー。
「ーーーー………そんなーー」
プライドを砕かれ、絶望したアンドレアは、
ヒルダの身体に憑依したまま、呆然としているー。
「ーーークローバー王国は我々が頂くー。
お前にはーーー
そうだなーーー」
魔術師は笑みを浮かべると、
ヒルダの身体に手を振れーーー…
アンドレアの魂を取り出したーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーー!?」
目を覚ましたアンドレアー。
アンドレアは自分の身体に戻っていることに
気付くと、顔を上げるー。
「ーお前はもう用済みだー
我々はかつてクローバー王国との戦いに敗れた
魔王の末裔の一族ー。
ずっと、クローバー王国を侵略する隙を伺っていたのだー」
魔術師はそう言うと、笑みを浮かべたー。
「ーーーーお前には、これからは”魔物”として
働いてもらうぞ」
そう言葉を口にしながら、
錫杖をアンドレアに向ける魔術師ー
「ち…ちょっと!何をするの!離れなさい!
わたしは王族のアンドレアよ!」
アンドレアが叫ぶー。
がー、アンドレアの身体がみるみるうちに変貌していきーーー
醜いゴブリンの姿になってしまったー
「ぁ… ぁ… ぁぁぁ…」
目から涙をこぼしながらゴブリンになったアンドレアが
魔術師の方を見つめると、
「ーおやおや、この魔法は人間を”その人間にふさわしい魔物”の
姿に変える魔法なのだがー」と、魔術師は笑みを浮かべながら呟いたー
「ーー愚妹・アンドレアーー
お前はーー下級の魔物にしかなれなかったようだなー」
魔術師の言葉に、ゴブリンになってしまったアンドレアは
人の言葉も発することが出来ずにもがくーーー
「ーーー貴様は地下採掘場で働くのだー
永遠になー」
魔術師はそう囁くと、不気味な笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・
クローバー王国は壊滅状態に陥りー、
魔術師たちに占領されたー。
しかしー
アンドレアに憑依されていたヒルダは
正気を取り戻した後に
隙を見て逃亡ー、
その後、消息を絶っているー。
もしかしたらー、
いつの日か、逃げ延びたヒルダ姫が
また、王国を取り戻しー再建する日がやってくるのかもしれないー。
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
最終回でした~~!☆
②の途中からヒルダ姫は妹のアンドレアに憑依されてしまっていました…★
(アンドレアが消息を絶ったところからですネ~!)
お読み下さりありがとうございました~!☆!

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