憑依薬を手に入れてしまった姫ー。
優しい性格ながら、”女王”になったことで
日々ストレスを溜めていた姫は、
次第にその力に溺れていくー…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アンドレアは、乱れた格好のまま
泣きながら側近たちに囲まれて、
部屋へと運ばれていたー
「ーわたしは、そんなことしてないわ!何かの間違いよ!」
昨日ー
アンドレアは次々と兵士を誘惑して、淫らな行為を繰り返したー。
欲望の限りを尽くし、王宮の廊下で下着姿で寝落ちしていたアンドレアは、
王宮中の噂の種になってしまっていたー。
「ーわたしの身体に触れた兵士を全員処刑して!」
昨夜、関係を持った兵士を処刑するように叫ぶアンドレアー。
「アンドレア様ー落ち着いて下さいー
それはできませぬー」
”アンドレア派”の第5騎士団長・ウーゴが困惑した様子で言葉を口にするー。
「ーー…許せないーー
どうして…どうしてわたしがこんな目にー!」
アンドレアは泣きながらそう叫ぶと、
その姿を遠目から見つめていた姉のヒルダ姫は
少しだけ笑みを浮かべたー。
「ーーーーーーー」
満足そうに自室に戻るヒルダ姫ー。
静かにため息を吐き出すと、”憑依薬”を引き出しから取り出して
それを満足そうに見つめたー。
「この薬があればーーーーー…
王国の平和を守ることもできるかもー」
とー。
自分に文句ばかり言ってくる妹のアンドレアは、
今回の件で失脚ー
もう、王宮にいることはできないだろうー。
「ーーこれさえあればーー」
ヒルダ姫は、アンドレアを排除できたことに”快感”のような
感情を覚えると、不気味な笑みを浮かべたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「姫様ー」
王宮騎士団の第1騎士団を率いるルーカスが、
女王の間にやって来るー。
「ーいつもご苦労様ですー。
どうかされましたか?」
ヒルダ姫がいつものように穏やかに応じると、
ルーカスは、
「実はー第3騎士団長のヴェルテルに動きがありまして、
その報告をー」と、言葉を口にしたー。
第3騎士団長のヴェルテルー。
ヒルダ姫が大人しい性格であることをいいことに
独断横行が目立つようになり、
先日、世話役のロルフも苦言を呈していた男だー。
「ーーーヴェルテルが、何をしたのですかー?」
ヒルダ姫が不安そうにそう言葉を口にすると、
「ー実は、西方の部族と秘密裏に交渉を行っているようでー…
何かを企んでいる様子です」と、ルーカスはそう言葉を口にしたー。
「ーまだ、目的までは分かりませんが、
このところ、あやつは怪しい動きを続けてますからなー。」
ルーカスがそう言葉を続けると、
ヒルダは「そう…ですかーありがとうございます」と、
不安そうな表情を浮かべたー。
「ーー引き続き、監視に当たりますーそれでは」
第1騎士団長のルーカスは報告を終えるとそのまま立ち去っていくー。
「ーーー…」
ヒルダ姫は、一人残された女王の間で、大きくため息を吐き出すと、
「ーー何で、言うことを聞いてくれないのー」と、不満そうに言葉を口にしたー。
しかし、第3騎士団長のヴェルテルは仮にも騎士団長の一人ー。
当然、王宮内にも人脈があり、
”確実な謀反の証拠”などでも手に入れない限り、処分を下すことは難しいー。
世話役であり側近のロルフも、それを苦々しく思っていたー。
がーーー
「ーーーー!!!」
ヒルダ姫は、ふと”憑依薬”のことを思い出すー。
「ーーーー…ーーー」
ヒルダは少しだけ笑みを浮かべると、
そのまま自室に向かって歩き始めたー。
そして、その日の夜ーーー
第3騎士団長のヴェルテルに憑依したヒルダ姫はーー
”事故で崖から転落死した”と、見せかけるために、
ヴェルテルの身体で崖から飛び降りーー
そのまま”自殺”させたーー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
どよめく王宮内ー。
「ーヴェルテル殿が、転落死ーー?
ははっー…姫様に反抗的な態度ばかり取ってるから
バチが当たったんだなー」
軽い口調の第4騎士団長・ヨハンネスが、そう言葉を口にするー
ヨハンネスは軽い男であるものの、
現女王のヒルダを支える”ヒルダ派”の一人だー。
「ーーー…ーーー」
第3騎士団長・ヴェルテルの死に心を痛めて涙する”演技”をするヒルダー。
”憑依で人を殺せるー”
そのことに気付いてしまったヒルダは、ますます憑依の快感に
取り憑かれ始めていたーー。
その日の番ー
ヒルダは王宮のメイドの一人に憑依すると、
一人で自分の身体を弄び始めたー
「ーふふっ……なんて気持ちイイの…♡」
メイドの身体で欲望を楽しむヒルダ。
幼い頃から”姫”として育てられたヒルダには、
なかなかこうしたことを楽しむ機会もなかったー。
姫になった今は、尚更ー。
世話役のロルフにも心配されてしまうし、
”自由”がヒルダにはないー。
だからこそー、ヒルダは夜になると
連日、王宮のメイドに憑依したり、騎士に憑依したりして
”自分ではできないこと”を繰り返し繰り返し楽しんだー。
「ーーーふふふふ…あははははははっ♡」
嬉しそうに笑い声をあげるメイドに憑依したヒルダー。
今夜も十分に楽しむと、メイドの身体を解放して、
ヒルダはそのまま自室で”抜け殻”となっている自分の身体に戻るー。
「ーーふふふふーーーーー…」
自分の身体に戻っても、メイドの身体で感じた余韻を楽しみながら、
ヒルダは嬉しそうに笑みを浮かべたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そんな日々が続いたある日ー。
「ーー姫様ー」
第8騎士団長のガスパロ…
クローバー王国の大森林の見回りの任に当たっている騎士団長が、
ヒルダ姫のところにやってきたー。
「ーーいつもご苦労様ですー」
ヒルダがぺこりと頭を下げると、
ガスパロは少し考えてから、言葉を口にしたー。
「ーーー姫様ー。最近、王宮内で不審な行動を取るメイドや騎士が
何名か確認されていますー。」
とー
「ーーーーそれはーー…どういうことですか?」
ヒルダ姫は一瞬、動揺しながらも平静を装って言葉を口にするー。
「ーー現在、離宮で謹慎中のアンドレア様と先日、話をしてきました」
第8騎士団長のガスパロはそう言葉を口にすると、
表情を曇らせながら言うー。
「ーーアンドレア様が謹慎する原因となった例の件ー。
アンドレア様には記憶がないー、と」
第8騎士団長のガスパロの言葉に、
ヒルダ姫は「アンドレアは昔からよく嘘をつくのでー」と、苦笑いしながら
「騎士団のお手を煩わせて申し訳ありません」と、ぺこりと頭を下げるー。
がー…ガスパロが言いたいのはそういうことではなかったー。
「姫様ー
先日のヴェンデル殿の転落死もそうですがー
何やら不穏な気配がしますー。」
そこまで言うとガスパロは険しい表情を浮かべたまま
ヒルダ姫の方をまっすぐと見つめたー。
「ー”例の憑依薬”ーあれが、悪用されている可能性があります」
とー。
「ーーー…!?」
ヒルダ姫は驚いた表情を浮かべると、
「ーわたしは、何もー」と、そう言葉を口にするー。
「例の憑依薬はわたしが責任をもって管理していますー
心配する必要はーー」
しかしー
その反応に、今度は逆に第8騎士団長のガスパロが戸惑いを見せたー
ガスパロは、ヒルダ姫を疑っているわけではなかったー
あくまでも、憑依薬を回収した際に対峙した”魔術師の一団”に
まだ残党がいて、その者たちが王宮内の人間に憑依ー、
悪事を働いているのではないか、と、そう考えていたのだー。
姫を疑う気持ちなど、微塵もなかったー。
がーー
今のヒルダ姫の反応に、ガスパロは戸惑いを覚えたー
「姫様ー?」
困惑した表情を浮かべるガスパロー。
「ーーいえーー…報告、ありがとうございますー」
ヒルダもすぐにそれを察したのか、平静を装うと、
「ー憑依の件、まだ誰にも話していませんね?」と、そう確認するー。
「えぇ、はいー。
先日お話した通り、あのような危険なモノの存在は
広まらない方が良いと思いますのでー」
ガスパロのその言葉に、
ヒルダ姫は安堵の表情を浮かべると、
「ーーガスパロの言う通りですー。
憑依の件はわたしの方で調査しますー。
このことは誰にも口にしないようにお願いしますー」
と、
ぺこりと頭を下げたー。
ガスパロは頭を下げて立ち去っていくー。
「ーーーー」
一人残されたヒルダ姫は表情を歪めるー。
がーーー
第8騎士団長のガスパロは真面目な性格で、
ヒルダ姫に対しても、忠誠を尽くしてくれているー。
仮にー憑依を悪用していることに感づかれているのだとしても、
ヒルダ姫に”ガスパロを殺す”という選択肢はなかったー。
ガスパロのことは信頼しているし、
しっかり働いてくれている彼に、ヒルダ姫はそんなことはできなかったー。
第1騎士団長のルーカスや、第4騎士団長のヨハンネスたちもそうー。
世話役のロルフも口煩いところはあるけれど、
彼らを傷つけるつもりはないー。
強い不安に苛まれながらも、ヒルダ姫は
それ以上何かをすることはなく、
そのまま、大きくため息を吐き出したー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ーーーー姫様」
世話役のロルフが、ヒルダ姫の元にやってくるー。
「ーアンドレア様が、どうしても姫様にお会いしたいとー」
ロルフがそう言葉を口にするー。
ヒルダのことを散々馬鹿にしていた妹のアンドレアは、
ヒルダに憑依されて暴走ー、
結果、現在は謹慎中だー。
「ーーー…」
ヒルダ姫は表情を歪めるー。
正直、もうアンドレアに会いたくないし、
顔を見たくないー。
そう思いつつ、
「アンドレアは謹慎中の身。妹と言えど、わたしが会ったりすれば
それを問題視する者もいるかもしれません」と、
そうロルフに伝えるー。
「ー確かに、それはそうですなー…
ただー」
ロルフが気まずそうにすると、
背後からアンドレアが姿を現したー。
「ーーあんたでしょ!」
アンドレアは、既に強引にヒルダ姫の部屋の近くまで
来ていたらしく、許可がないにも関わらず、
そう叫びながら部屋に入って来るー。
「ーーアンドレアー」
ヒルダが表情を歪めながらアンドレアの方を見つめると、
「ーーーーお姉さまが、わたしに何か仕掛けたのは分かってるからー」と、
アンドレアがヒルダを睨み返すー。
「ーー……」
ヒルダは一瞬、”憑依”に気付かれたのではないかと
不安そうに表情を歪めるー。
がー、すぐに
「言いがかりはやめてー。」と、そう言葉を口にすると、
アンドレアは不満そうに
「ーわたしに何をしたの!?答えなさいよ!この偽善者!」と、
そう叫ぶー。
ヒルダは顔を引きつらせながら、
怒りの形相を浮かべるー。
”2度も憑依したのに、まだ懲りていない”
そんなアンドレアの態度にさらに怒りを膨らませていくー。
「ーーーいつもそういう態度だからーーー
恨まれてるんじゃないの?色々な人からー」
ヒルダが怒りの形相でそう返すと、アンドレアもヒルダを睨み返すー。
「ーーあんたなんかさっさと死んじゃえばいいのにー
そしたら、わたしが女王になって、
あんたなんかよりもずっとクローバー王国を良い国にしてみせるからー」
アンドレアがそう吐き捨てるー。
ヒルダは「アンドレアをつまみ出して!」と、
感情的にロルフに向かって叫ぶー。
ロルフは「姫様ーしかし」と、少し戸惑った様子を見せるも、
「さっさとつまみ出してください!もう話したくありません!」と、
怒りに任せてヒルダが叫ぶのを見て、「わ、分かりましたー」と、
そのままロルフはアンドレアに退出を促したー。
「ーーーあんたのせいでわたしはこんな目に!
絶対に許さない!呪ってやる!!!」
そう叫びながら、つまみ出されるアンドレアー。
「ーーー」
ヒルダは頭を抱えながら、
大きくため息をつくと、
アンドレアを騎士に任せて戻ってきたロルフが心配そうに言葉を口にしたー。
「ーーーー…姫様ー
大丈夫ですか?」
その言葉に、ヒルダはため息をつきながら静かに頷いたー。
”アンドレアは、謹慎の原因をわたしだと思ってるー。
”憑依された”とまでは思ってないようだけどー”
そう心の中で呟きながら、
ロルフが退出したあと、憑依薬を見つけるヒルダー。
憑依薬の残りは少ないー。
怪しげな魔術師たちが持っていたと第8騎士団長のガスパロは言っていたー。
が、魔術師たちは第8騎士団に討伐されたし、
この憑依薬を入手するルートはもうないー。
もう、憑依できる回数は限られているー。
「ーーーこれがなくなる前にー」
ヒルダは、そう言葉を口にすると、
静かに笑みを浮かべたー。
そしてーーー
その翌日ーー
妹のアンドレアが消息を絶ちーーー
第8騎士団長のガスパロが突然錯乱したメイドに刺されて
死亡するという事件が起きたーーー
③へ続く
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次回が最終回デス~!
姫が憑依と出会ってしまったことで、
王国はどんな運命を辿るのか、見届けて下さいネ~!
今日もありがとうございました~!☆!
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