”謎の寄生虫”に寄生された人間は、
周囲のモノを舐めずにはいられなくなってしまうー。
原因不明のまま
”奇病”として、それは扱われ、拡散していくー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
修太の通う学校では、
謎の寄生虫による”奇病”が蔓延したー。
だがー
それは”修太の学校”だけの話ではなくー、
”他の場所”でも爆発的に増えつつあったー
「ーーんふぅぅぅぅ…♡♡」
台所で、晩御飯の支度をしていた修太の母親が、
支度していた食材をペロペロと舐めながら笑みを浮かべているー。
少し離れた場所のトイレでは、修太の姉・つばさが、
便器をペロペロと舐めているー。
とても幸せそうに、ペロペロと舐め続けるつばさー。
トイレを利用しようとしていた最中だったのか、
トイレには水たまりのようなものも出来て、
女子大生にあるまじき姿を晒しているー。
”昨日から、爆発的な広がりを見せている”奇病”について、
新たな情報が入りましたー”
リビングでつけたままにされているテレビの映像ではー
緊急のニュースが伝えられているー。
初めて”奇病”の報告があったのは少し前だが、
一昨日あたりから報告数が急激に増え、
昨日は爆発的に増えたー。
そして、今日ー
社会的に混乱を起こすレベルにまで
その”奇病”は増えて、
まさに”暴走”と言ってもいい状態に”爆増”していたー。
テレビのニュースでは
”メディカル・ディストピア”という名の研究機関から
流出した”寄生虫”が原因であると報じているー
元々は、”舌”の病気を治療するために、
特殊な細胞を培養していたようだったのだが、
それが変異し、寄生虫のような生命体が生まれー、
研究所の所員数名が寄生されたー
それが、先週のことー
そして、その研究員を介して
”メディカル・ディストピア”内で爆発的に
寄生された人間が広がり、
外にまで広がったー。
”寄生虫”は、
人間の体内において、爆発的に増殖する性質を持っていて、
寄生された人間が、さらに別の人間に寄生虫を寄生させー、
それがここ数日でついに”制御不能なレベル”にまで
増えてしまったのだー。
「ー寄生された人間は、脳を侵食されて、
正常な判断ができない状況に、陥っているものと考えられます」
メディカル・ディストピア代表の大野会長が、困惑した様子で
記者会見に臨んでいるー。
記者会見場には怒号が飛び交っているー
”これだけ大変な事態を起こした責任を、どうとるつもりかー?”
とー。
「ーー現在、発生した寄生虫を駆除するための
特殊な薬を急ピッチで準備しておりー…」
だがー
その記者会見場にいた女性記者が、突然、隣に座っていた男性記者の
頬を舐め始めたー
「ーー!」
会見場がパニックになるー。
既に、会見場にも”寄生”された人間が紛れ込んでいたー
理性を失った人間たちが、次々と”寄生”を広めていくー
大野会長が慌てて逃げ出そうとして、
職員の女性に腕を掴まれ、そのまま押し倒されて
ペロペロされる様子が映し出されたのを最後に、
会見場からの生中継の映像は、途絶えたー。
しかしー
その映像を見て驚く人間は、この場には、
既にいなかったー。
何故なら、修太の姉・つばさも、修太の母親も、
既に”何かを舐めること”で頭がいっぱいで、
もう、理性というものが存在しない状態に
なってしまったのだからー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
学校から飛び出した修太は、
家に家に向かって走っていたー。
「はぁ…はぁ…はぁ 何が起きてるんだー
くそっー」
昨日ー
幼馴染の佳穂が急におかしくなったのと同じー
みんな、みんな、どんどんおかしくなっているー。
これはいったい、どういうことなのかー。
「ーーー…」
修太は家の前までやってきて、
玄関の扉を開けることを一瞬、ためらったー。
昨日の佳穂もそうだし、
さっきの学校で起きた”地獄のような光景”もそうだったー。
学校から飛び出して、
家に戻るまでの間は、特に異変は見られなかったもののー
家の中が無事という保証はないー。
”大丈夫だよな…”
修太は不安そうにそんな風に呟きながら、
玄関の扉を開くー。
「ーーーーー!」
だがー
家の中に入っても、
人の気配はしなかったー。
父親は仕事に行っている時間のはずだが、
姉のつばさは今日は大学は休みだと言っていた気がするし、
母親はいつも家にいる時間だー
「ーーー…」
ゴクリ、と唾を飲み込む修太ー。
さっきの学校の光景を思い出すー
強い、不安を感じるー。
友人の彼女・愛実もそうだし、
他の生徒たちも、
無我夢中になって、周囲のモノをペロペロと舐めていたー。
床を舐めている女子もいたし、
スカートの中身が丸見えの状態で、はいずりながら、
他の男子を舐めている女子もいたー。
完全に”正気”とは思えないー。
そしてー
友人は、その彼女”愛実”から出て来た
寄生虫のようなものに”寄生”されたー。
修太はその場面をハッキリとみているー。
あまりにも恐ろしい、その光景をー。
「ーーー姉さんー…母さんー…」
不安そうに、部屋の奥に進むー。
もしもー
母と、姉がーー
”あんなこと”になったりしていたらー…
もしもー
もしもー。
心臓がドクンドクンと高鳴るー
緊張が極限まで高まっていくー。
「ーーーーーあれ」
修太が緊張しながら中に入って行くとー
そこには、姉のつばさが、リビングでスマホをいじっていたー。
「ーーー」
修太が周囲を見回すと、そこには母の姿はなく、
姉のつばさの姿だけがあったー。
「ーーー…か、母さんはー?」
修太が言うと、
「ーー2階で洗濯物取り込んでたと思うけど?」と、
姉のつばさは答えたー。
「ーーーよ、よかったー…なんともなくて」
修太がそう呟くと、姉のつばさは、
「え?なになに?っていうか、学校はー?」と、
困惑した表情を浮かべたー。
「ー学校…?あ、うんー
そのー
実はー
みんなが変な虫みたいのに寄生されちゃってー」
「変な虫ー?」
つばさが首を傾げるー。
「ーーき、昨日、ほら、佳穂ちゃんがおかしくなったって
言っただろ?
あれも、その虫のせいでー」
修太が慌てた様子でそう声を上げると、
つばさは笑い始めたー。
「ーね、姉さんー?」
笑い続けるつばさを見て、強い不安を覚える修太ー
思わず、後ずさりそうになるー。
だが、その時、背後から足音が聞こえてー
修太が振り返ると同時にーーー
「ーー!?!?!?!?!?!?!?」
修太は思わず”ひぇっ”と情けない声を出して
尻餅をついてしまったー。
そこにはー
幼馴染の佳穂の姿があったー
「ーーか、か、か、佳穂ちゃんー!?」
修太が唖然としていると、
佳穂はにっこりとしながら、修太に近付いてきたー。
修太は身体を震わせるー。
学校で”寄生”された友達のことを思い出すー。
だが、佳穂は修太を逃がすつもりはないのか、
笑みを浮かべながら近づいてくるとー
修太に突然キスをしたーーー
友人が寄生された光景が何度も何度も
修太の脳裏に浮かんでくるー
自分も、そうなるー。
「ーーや、、やめっ!」
修太がそう叫ぶと、佳穂が少し驚いた様子で、
「ーーわっ…急に押さないでよー!」と、苦笑いしたー
「ーーえっ…あれ…?」
修太が戸惑いながら自分の口元や
顔のあたりを確認するー。
正直、何が起きているのか分からなかったー…
「ーーーむ、虫はー…?」
修太が怯えながらようやく、
そう言葉を口にすると、佳穂は「虫?」と首を傾げるー
「ーそ、そう…あの、人間に寄生する虫!」
修太が言うと、佳穂は「なぁにそれ?」と笑いながら呟くー。
そんな様子を見ていた姉のつばさが口を挟むー。
「ーーー佳穂ちゃん、昨日、あんたが急に逃げ出したから、
心配して、今日、家に来てくれたのよー?
修太に謝りたいって」
つばさの言葉に、修太は「えっ」と、佳穂のほうを見つめたー
佳穂は笑いながら、少し恥ずかしそうにして、
「昨日はごめんねー…」と呟くー。
「わたし、修太のこと、ずっとずっと前から好きでー
ーー…そう思っているうちに、我慢できなくなっちゃってー
ついー」
佳穂が恥ずかしそうに呟くー
「ーえ…え…い、いや、だからってあんな急にー」
修太は戸惑いの声を上げるー
佳穂は、「だから謝りに来たの」とだけ言うと、
そのまま修太に「ーーーーーねぇ…良ければ、なんだけどー」と、
緊張した様子で、修太のほうを真っすぐと見つめたー。
佳穂の背後で、ニュースを報じているリビングのテレビでは、
動物特集を報じていて、のどかな雰囲気だー。
重大なニュースは、ないのだろうー。
佳穂に見つめられた修太は、ドキドキしながら
佳穂のほうを見つめ返すー
”まさか、僕が告白されるー?
そんなことが、あるはずがー”
修太はそんな風に思うー。
ずっと、佳穂のことが好きだったー
告白されるなら、飛び跳ねながら喜ぶだろうし、
これ以上の幸せはない。
でも、そんなこと、あるわけがー
「ーー良ければーわたしと…付き合ってー」
佳穂が呟くー
「ーえ…い、今、なんてー?」
修太は震えながら佳穂のほうを見つめ返すー。
こんなー
こんな、夢のようなことが、あるはずがー。
そんな風に思いながらも、
今度はハッキリと聞こえたー
”わたしと、付き合ってくださいー”
と、言う言葉がー。
姉のつばさがそんな様子を見つめながら笑うー
「ーう…う…ウソ…!?ほ、ほんとにー!?」
あまりの驚きに思わず裏返った声で叫ぶ修太ー。
「ほんとにって…ウソなんかついても
仕方ないでしょ…?」
佳穂がそう言うと、修太は「そ、そうだよね!そうだよね!」と
2回、同じ言葉を繰り返すと、
嬉しそうに「やったあああああああああああ!」と、
ガッツポーズしたー。
時計は11時45分を刻んでいるー。
修太はまるで夢のような展開に、
この上ない幸せを感じながら、佳穂と抱き合うー。
なぜー
”学校を欠席していた佳穂が、修太の家にいるのかー”
仮に、昨日の勉強の際の行為が正気で、
そのことを佳穂が謝ろうとしているのだとしても
”本来学校があるはずの時間”に
わざわざ学校を休み、修太の家に来ているー、というのは
”ふつう”ではないー。
明らかに、おかしいー
さっきー
修太は、学校中に寄生虫が蔓延しー
逃げ出したー。
だがー
そんなこと、もう、不思議と気にならなかったー
そんなことーーーー
”寄生、された人間は、夢を見るようです”
メディカル・ディストピアの専務が記者会見を行っているー
謎の寄生虫はさらに増殖、
寄生された人々は、幸せそうに、周囲のものを
手当たり次第、舐め回すー。
そんな状況に、専務は
”寄生された人間の意識は、心の奥底に幽閉されて、
夢を見続けている状況になっているようだ”
と、記者会見で説明したー。
「ーーえへへへへ…♡ えへへへへへ」
修太も、そうー。
修太は、あの時、職員室から逃げ出そうとした直後ー
背後にいた女子生徒にキスされて、
あっという間に寄生されてしまったー
”学校から、学校の前にワープしたような錯覚”を覚えたのはー
”そこからが、夢”だったからー。
修太は、もう、寄生されてしまってー、
路上で地面を舐めながら、満面の笑みを浮かべていたー
修太も、
佳穂もー、
姉のつばさもー
両親も、
それぞれ別の場所で嬉しそうに、周囲のモノを
舐め回しているー。
繋がっていた”絆”は、
完全に砕かれてしまったー。
またー…
いつか、この寄生虫から解き放たれる日が来るまでー
修太は”佳穂と付き合い始めた”幸せな幻を
見続けることになるー
永遠にー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
修太くんは①の後半の時点で
既に寄生されてしまって、
②の冒頭の、家族が寄生されてしまっているシーン以外は、
修太くんの見ている幻でした~!
①の職員室を出るまで =現実
②の冒頭 =現実
②の修太君視点の描写 =夢
②のラスト =現実
デス~!☆
お読み下さりありがとうございました~~!!
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