<他者変身>わたしの代わりに友達と温泉行ってきて②~友~(完)

妹の美香からとんでもないお願いをされた兄・恭太は
美香の姿のまま、美香の友人・菜穂と
温泉に行くことになってしまうー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ーーーー…あ~落ち着かないー」
そわそわとする美香の姿をした恭太ー。

「ーーー…う~~~さみっ…」
スカートなんて、当然履いたことはないー
人生初めてのスカートに、
美香の姿をした恭太は震えるー。

「ーーなんで、こんなもんー…」
ぶるぶると震えながら、美香の姿をした恭太は
「…なんか…大事な装備を失ってるようなー
 そんな感じがするなー」
と、スカートから見える足やー、
スカートに隠れている下半身のあたりを見つめるー

「落ち着かないーダメだー…」
美香の姿をした恭太はそう呟くと、
友人の菜穂が到着する前に、風邪で寝込んでいる美香に
連絡を送るー。

”もう帰っていいかなー?”

とー。

”だめ”

即答で返事が来たー。

「ーやっぱ起きてんじゃん!っつ~か寝ろよ!」
美香は熱が39度を超えていたー。
だが、即答で返事がーー

「ーー美香!お待たせ!」
背後から声がして、ビクッとしてしまうー。

美香の姿をした恭太が振り返ると、
そこには妹・美香の親友・菜穂の姿があったー。

「ーーあ、、あ、、あ、な、奈穂ー」
”本当に他の人にも美香に見えてるんだよなー?
 女装した俺に見えたりしてないよなー?”
と、不安に感じながら言うと、
美香の友人・菜穂は「危うく遅刻しそうになっちゃった」と、
笑みを浮かべながら近づいてくるー。

「ーーあ、ううんー…全然大丈夫ー」
美香の姿をした恭太は、なんとか美香のフリをしながら
そのまま菜穂と共に温泉に向かうー。

温泉の脱衣所にやってくると
美香の姿をした恭太は、顔を赤らめて
唾をゴクリと飲み込んだー

”いいのかー…?これー?”
戸惑う美香の姿をした恭太ー。

これじゃ、まるで覗きだー。
女装した男が、女風呂に入って捕まったー
みたいなニュースは恭太も見たことがあるー。

”俺のやってること、それと同じじゃねー…?”
そんな風に考えると
罪悪感や後ろめたさが一気にあふれ出てくるー。

”いやー待て…
 俺は今、女なんだー。
 そうー完全に女ー…”

そもそも、覗き目的でここに来ているわけではないしー
今、身体は完全に美香のものと同じになっているー。
生物学的にも、今この瞬間は女と言えるー。

「ふーーー…」
深呼吸をしてようやく服を脱ごうとするも、
脱ぎ方がイマイチよく分からず、一人悪戦苦闘する美香の姿をした恭太ー

「ーな、何やってるのー…?」
奈穂が戸惑いながら言うー。

「ーえ、あ、、あの…そ、その…えっと…」
美香の姿をした恭太は、ドキドキしながら
ようやく服を脱ぎ終えると、そのまま浴場の方に
向かっていったー

「ぶふっ!?」
当然ー、女風呂の中には、たくさんの女性がいたー。

「ーーーーーーー」
美香の姿をした恭太は、
男の自分が女風呂に迷い込んでしまったような違和感を感じながら
ドキドキドキドキドキしている身体をなんとか
落ち着かせようとするー。

「ーーー…くぅぅ…変な気分すぎるぅ」
勃起しちまう!と、思いながらも、そもそも今の姿では
勃起するものもないことに気付き、戸惑いを隠せないー。

「ーーー…そ、そういえば…な、奈穂さー」

美香の姿をした恭太が、美香のフリをしながら
”どうしても聞きたかったこと”を美香の友人・菜穂に聞くー。

妹の美香によれば、温泉に行きたがっていたのは菜穂のほうで、
美香は、温泉のあとに行く予定になっている映画の方に
行きたがっていたー、とのことだったー。

「ーーどうして、温泉好きなのー?」
美香によれば、奈穂は温泉が好きなのだと言うー。

なんとなく、女子が温泉好き、というイメージがなかった
恭太は、美香の姿のまま、そう尋ねたー。

”あんまり無言だと、奈穂ちゃんも違和感を持つだろうから
 上手く雑談してね!”

美香からはそんな風に頼まれているー。

そんな理由もあって、恭太なりに頑張って雑談を
盛り込むようにしていたー。

「ーーーえ~どうしてって?」
奈穂がニコニコしながら言うー。
真面目そうな雰囲気で、恥ずかしがり屋そうな印象を受ける菜穂ー。

そんな菜穂が小声で、美香の姿をした恭太に”理由”を告げるー。

「ーーだって~お風呂ならみんなの裸とか見れるし~」
菜穂の言葉に「えぇっ!?」と美香の姿をした恭太は
変な声を出してしまったー

「ーーえ、、え、、え、、…」
戸惑っていると菜穂が微笑むー。

「ーわたしが、いつも体育の授業楽しみにしてるの、知ってるでしょ?」

菜穂がそう言うと、美香の姿をした恭太はとりあえず
「う、うんー」と頷くー。
多分、美香は知ってるはずだからだー。

「ーあれも、着替えの時間が楽しみだからー!
 わたし、下着を見ただけでクラスの誰の下着だか分かるし!」

菜穂の言葉に、美香の姿をした恭太は、言葉を失ったー

「ーな、なんか、おじさんみたいー」
辛うじて美香の口調を装いつつも、恭太が思わず本音を
口にしてしまうと、菜穂はクスクスと笑いながら、
「前世は、おじさんだったのかもしれないね」と、微笑んだー。

”い、一体どんな子なんだーこの子はー…
 女好きなのか?”

しかもー
恋愛的な意味ならまだ分かるが、
どうやらこの菜穂という子は、
まるでおじさんかのような、Hな方面で、
女子が好きなような感じがするー。

”ーーーまぁ、俺の妹の友達となれば
 このぐらい個性的でも当然…なのかー”

そんな風に思いながら、
なるべく”適当”に身体を洗い終えると、
お風呂の方に向かうー。

身体を長々洗っていると、美香の身体を見たり
触ったりしているうちに、どんどん興奮してしまって
頭がおかしくなってしまいそうだー。

だからこそ、適当に洗い終えたー
どうせ、”美香の身体を乗っ取っている”わけではなく、
あくまでも”恭太が美香の姿に変身”しているだけだー。

ここで、適当に洗ったところで、
美香本人が汚れるわけじゃないから、
大きな問題はないだろうー。

「ーーーーふ~~~」
ようやくお湯に浸かった美香の姿をした恭太は、
”なんか…違和感がすげぇ”と、戸惑うー

濡れた髪が身体にベタベタと張り付くような感触が
するのも当然そうだったし、
胸のあたりもとても気になるー。

何より、アソコの感じー…
言葉には言い表せない”変化”は非常に気になり、
つい、そのあたりに手をやってしまったり
そわそわしてしまうー。

「ーーーーー!」
菜穂が美香にやたらと身体を密着させてくることに気付くー。

「ーーな、、な、菜穂ちゃんー!?」
顔を真っ赤にしながら美香の姿をした恭太が言うと、
菜穂は「いっつもこうしてるでしょ!」と笑いながら
さらに身体をくっつけてくるー。

”いっつもこうしてるー?ど、どういうー…”

女子高生に密着されるー…なんてことは
男子大学生である恭太にとってはまずないことだろうー。

いや、恭太が高校生だった頃にも、そんな経験はなかったかもしれないー。

菜穂の身体の感触を感じながらー
いつの間にか、美香の姿をした恭太は、鼻血を垂らしながら
顔を真っ赤にしていたー

「ーちょ!?鼻血!鼻血出てる!」
菜穂がそれに気づいて叫ぶー

「えっえぇっ!?」

せっかくー
”俺にしては上出来”なほど、冷静に女湯に入れていたのに、
最後の最後で鼻血を噴き出して、菜穂に連れられながら
お風呂から出る、という醜態をさらしてしまったー

「まぁーー…でも、菜穂って子も気づいてないみたいだしー
 あとは余裕だなー」

残りは映画とご飯ー。

映画館は美香が行きたいと提案したと聞いているー
何の映画を見るのか知らないがー
映画なら、恭太もよく見るから余裕ーーー

「ーーじゃあ~あそこだね!」

映画館に到着して、菜穂が事前に美香から
預かっていたチケットを渡してくるー

それを見てー
美香の姿をした恭太は、青ざめたー

”ナイトメア・サイレン”

美香が見ようとしていた映画は、
恭太が大の苦手な”ホラー映画”だったのだー。

「ーーひぃあああああああああああああああああっ!?」

「ぎゃあああああああああああああっ!?」

「ーうあぁぁあっやめっ!ぎゃあぁぁぁっっ!?!?」

美香の姿であることも忘れて
素で悲鳴を上げる恭太ー。

絶対に周囲に”うるさいなぁ”と思われたに違いないー。
そんな風に感じながら
ようやく”ナイトメア・サイレン”が終わると、
美香の姿をしたまま、菜穂と一緒に映画館を出たー。

「ーー今日、ずいぶん怖がってたけど大丈夫?」
菜穂の言葉に、美香の姿をした恭太は「ぎくぅ!?」と声を上げるー。

「いつもは美香、ニヤニヤしながら見てるのにー」
菜穂が言うー

”おいおい、美香のやつ、あんな怖いもん
 笑いながら見てるのかよー
 やっぱ、俺の妹ながら、怖い奴だぜ…”

そう思いながら美香の姿をした恭太は
「き、今日のナイトメアサイレン、滅茶苦茶怖かったし!」と、
必死に言い訳をする。

”いつも見ているホラー映画よりマジで怖かったから”などと
適当なことを言っていると、
菜穂は「確かに怖かったかも!」と、最終的には納得してくれたー。

最後にー
ご飯を済ませてー
ようやく”友達と遊ぶ1日”が終わったー

「ー今日も楽しかったよ!ありがと!」
菜穂の言葉に、美香の姿をした恭太は「うん!わたしも!」と、
美香っぽく振る舞いー、
そして、少し雑談をしてから別れたー

「自己採点70点ぐらいだなー」
我ながらー
結構うまく”美香”として振る舞うことができたー。

お風呂で鼻血を出してしまったことや、
ホラー映画でビビッてしまったことは、
マイナスだったが
他はそこまでひどい出来栄えではなかっただろうー

「しかしー美香のやつ、もし俺がこの姿で
 変態行為をしたり、犯罪を起こしたら
 自分だって無事じゃ済まないだろうにー」
美香の姿のままそう呟くと、恭太は
”まぁーー何だかんだで信頼されてるってことなのかなー”

”自分の姿を貸して外出させる”
それは、よほど相手のことを信頼していなければ
普通はできないことだと恭太は思うー。

「ーー調子のいいやつだけど、俺もアイツの前では
 ちゃんとした兄でいないとな」
美香の姿をした恭太はそんな風に呟くと、帰宅したー

「ーーーおかえりー」
美香は、昼とは違い、今度は調子悪そうだったー

「ーー大丈夫かー?」
美香の姿をしたまま恭太が美香を心配すると、
「ーー熱は38度に下がったからー」
と、美香は少しため息をついたー

「昼はあんな元気だったのにー」

恭太が言うと、美香はー
「元気に振る舞ってないと、お兄ちゃん心配して
 わたしの代わりにおでかけしてくれなかったでしょ?」
と、少しだけ笑うー

「ま、、まぁー」
恭太は”何から何までお見通しなんだな”と思いながら
「代わりはちゃんとやってきたから安心しろよなー」と告げてから
「おかゆでも作ってやるよ」と笑ったー

そう言って、部屋から出ようとした美香の姿をした
恭太に対して、美香は「いらないー」と、呟くー。

「ーーえ?」
美香の姿をした恭太が振り返ると、
「ーーお兄ちゃんの料理…まずいんだもんー」と、
美香は苦笑いしながら
「あと、その姿じゃ、お母さんたち、びっくりするかもだしー」と、
呟いたー

「ーーおい!まずいってなんだよ!」と言いながらも、
「まぁー、確かに熱を出してるはずの美香の姿で
 ウロウロするのはよくないかもな」と、
恭太は少しだけ笑ったー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

美香はすっかり元気になったー

がー…

「ーーくっそ~…風邪をうつされるなんてー」
ボヤく恭太ー。

「ーーわたしの代わりをしてくれた、お礼のプレゼントが
 風邪になっちゃったね!!」
冗談を口にする美香ー

「いらね~~~!!!!!」
恭太は、思わずそう叫んだー。

おわり

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コメント

平和的な他者変身のお話でした~!
互いに文句を言いつつも、
何だかんだで仲良しな兄妹ですネ~!

お読みくださりありがとうございました~!

コメント

  1. 匿名 より:

    少しオチに残念。実は友人の正体は妹が途中で友人に変身してたてオチを期待したんだけど。
    友だちおじさんみたいな事言っり苦手な英会話に誘ってたりしたから。

    • 無名 より:

      2作品にコメントありがとうございます~!☆

      それも面白そうな結末でしたネ~!

      作者の私が言うのもですが、
      …英会話に誘うシーンってありましたっけ…?