<他者変身>わたしの代わりに友達と温泉行ってきて①~お願い~

”わたしの代わりに友達と温泉行ってきてー”

妹からの突然のお願いに、
兄は、仰天したー…!

そしてー…!?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大学生の内山 恭太(うちやま きょうた)は、
ちょうど3連休ということもあり、
自宅の部屋でのんびりと過ごしていたー。

”もうすぐお昼”
そんな、時間帯ー。

だが、そんな”平穏”を打ち破る”訪問者”が
部屋にやってきたー。

部屋をノックする音ー。

恭太は、咄嗟に沈黙したー。

「ーーーーーー」

だが、部屋をノックする音が止まらないー。

コンコンコンコンコンコンコンコン
コンコンコンコンコンコンコンコン

”あ~うっせぇな!”
そう思いながらも、恭太はさらに無視を続けるー。

別に恭太は引きこもりではないー。

”誰が来た”かを、理解していてー
”扉を開ければ厄介なことになる”ことも理解しているからこそー、
恭太は部屋から出ずに閉じこもっているのだー。

「あ~~~~~!」
部屋の外から声がするー

「お兄ちゃんが”また”エッチな本読んでるぅ~!」
わざとらしく叫ぶ声ー

「ーーおい!?デタラメ言うんじゃねぇ!」
恭太はその声に咄嗟に部屋の外に飛び出すと、
妹の美香(みか)が、ニコニコしながら立っていたー

「やっぱいるじゃん」
とー。

「ーーーーーー…」
”くそっ”と、思いながら恭太は「せっかくの休日になんだよ…」と、
呟きながら、美香を部屋に招き入れるー。

「っていうか俺、ホントにエッチな本なんて読んでないからな!
 俺は健全な男子だし!」

恭太がそう言いながら椅子に座ると
「で、どうせまた、変なお願いしてくるんだろ?」と、
ため息をつきながら呟くー

妹の美香が、部屋にやってくるときは、
大抵、”厄介なお願い”か”おかしなお願い”をしてくる時だー

兄である恭太は、妹の美香のことをよく理解しているからこそ、
こうして部屋で居留守を使おうとしたのだー。

「さっすがお兄ちゃん!よく分かってる!」
美香がそう言いながら笑うとー、
「ーーお兄ちゃん!わたしの代わりに温泉行ってきて!」
と、叫んだー。

「ーーーーー」
恭太が反応に困って表情を歪めるー。

「ーーーーー」
満面の笑みのまま美香が恭太のほうを見ているー。

「ーーーーーーーは?」
恭太はようやく口を開いたー

確かー
3連休初日の今日は、クラスメイトの友達と一緒に
日帰りの温泉に行くとかなんとか言っていたー。
そのついでに、友達と一緒に見たい映画を見るとか、なんとかー。

「ーーーーーーーー意味がわかんないけど」
恭太が言うと、
何故か3連休初日なのに制服姿の美香が、
「ーーだから~!お兄ちゃんがわたしの代わりに、奈穂(なほ)ちゃんと
 一緒に温泉に行くの!」と、説明するー

「ーーーーほぇ…?」
恭太の頭の上にハテナがいっぱい浮かぶー。

「ー男子大学生の俺が、妹の友達の女子高生と温泉に行くの?」
恭太がそう言うと、
「何そのエッチな言い方!」と、言いながらも美香は
「まぁ、そういうこと!」と、微笑むー。

「ーーー…いやだから俺は健全なんだって!」
と、否定しつつ、
「ーまるで意味が分からない」
と、呟いたー。

本当に、意味が分からないー

「ーいやいやいや、奈穂ちゃん…だっけ?俺、あまりよく知らないし、
 そもそもなんで美香がいかないんだよ?」

恭太がそう言うと、

「ーーもちろん、行きたいんだけどー…」
と、呟きながら、「体調悪くてー」と、苦笑いするー

「ー絶対仮病だろ!?
 どうせお前のことだから、”行くの面倒臭くなっちゃった!”的な
 やつだろ?」

呆れながら叫ぶ恭太ー。

「違うよ~!菜穂ちゃんだって楽しみにしてたんだし、
 急にキャンセルしたら申し訳ないし~…
 だから、お兄ちゃん、代わりに行ってくれないかな~って」

いじいじしながら呟く美香ー。

「いやいや、あり得ないー。
 その菜穂ちゃんだって、”ほぼ知らないお兄ちゃんと二人きりで温泉”とか
 イヤだろ?
 しかも、同じ風呂に入れないしー」

そう言うと、
美香は「ううん。お兄ちゃんも女風呂に入るんだよ」と、微笑むー。

「ーおいっ!俺を犯罪者にしたいのか!?」
そう叫ぶと、美香は「ノーノー」と、言いながら指を振るー

”なんなんだよもう”と、思いながら美香の反応を待っていると、
美香は「お兄ちゃんには”わたし”として代わりに温泉に行ってほしいのー」
と、説明したー。

さらに意味不明になったー。

そんな風に思いながら
「なんだって?俺に美香みたいな雰囲気に女装しろとでも?
 俺と美香、そんなに似てないぞ!?」
と、叫ぶー。

「ーーチッチッチッチ」
美香はニヤニヤしながら指を振ると「じゃ~ん!」と、
何かを取り出したー

「ーわたしがネットで手に入れた24時間だけ他の人の姿に変身できる薬!
 これを使えばお兄ちゃんはわたしの姿に変身できるの!
 そうすれば、奈穂ちゃんにはバレないし、
 菜穂ちゃんと一緒にお風呂にも入れる!」

美香の言葉に、

「いやだ」
と、恭太は即答したー

「え~!?なんで!」
美香が叫ぶー。

「ーなんでじゃねーよ!
 それだって、バレたらやっぱ犯罪じゃねーか!
 俺は女風呂になんか入らないからな!

 ってか、そんな怪しすぎる薬飲めるか!」

恭太の言葉に、
美香は「え~!?もう試したから大丈夫だよ」と笑うー。

「試したのかよ!」
恭太が突っ込むー。

「ーうん。先週、こっそりお兄ちゃんの姿に変身して、
 本屋さんでアダルトコーナー立ち読みしてきたの」

「おぉい!なんてことするんだ!」
恭太が思わず叫ぶー。

美香は「何かの時に役立つと思って、事前にテストしちゃった♡」
と、舌を出しながら笑うー。

「しちゃった♡ じゃ、ねー!なんで俺の姿で
 そんなことするんだ!?」

恭太が言うと、美香は「お兄ちゃん、エッチだと思って」と笑うー。

「エッチじゃねー!俺はAVも何も見ない超健全系男子だぞ!」と、
美香の言葉を否定したー。

「っていうか、そんな元気ならいけるだろ?
 どこが体調不良なんだよ」

恭太があきれ顔でそう言うと、
美香から突然電子音が鳴ったー。

どうやら、体温計を挟んだ状態で、
部屋に来ていたようだー。

“39.2ー”

「ーーうぉっ!?高熱じゃん!?」
恭太が驚くと、美香は
「ーーお兄ちゃんお願いー」と、目をうるうるさせながら呟いたー。

「ーー…ーーーー」
恭太は、一瞬、美香のお願いを聞いてしまいそうになったものの、
すぐに「騙されると思ったか?」と笑みを浮かべるー。

”体温計”は演出ー。
こんなに元気なのに、39.2もあるはずがないー。

そう思いながら恭太が
美香のおでこのあたりを触るとー

「ーあっちぃ!?!?」
と、叫ぶー

「ーー嘘じゃないもん」
美香は少し拗ねた様子で呟くと、
「ってか、そんなに熱があるなら、真面目に休んだ方がいいぞ」
と、心配そうに言うー。

「うん。だから、代わり、お願いー。
 わたしを休ませるためにー」

美香がお願いポーズのようなポーズで、訴えかけてくるー

「ーーう…うーー
 で、、でも、美香の姿で、とか、俺には無理だぞ!?
 美香だっていやだろ!?自分の姿でエッチなこと
 されたりしたらー!」

恭太が言うと、
美香はニコニコと笑ったー。

「お兄ちゃんは、超健全系男子なんでしょ?
 さっき自分でそう言ってたじゃない!
 だから大丈夫ー」

美香の言葉に、
恭太はハッとしたー。

さっきからやたらと美香が恭太を”エッチ扱い”していたのはー
こう言って、逃げ場をなくすためだったのだとー。

「ーーく… く…我ながら恐ろしい妹だぜ」
恭太はそう言いながらも「わ、、わ、分かったよ」と言いながら
「でもその怪しい薬、副作用はないんだなー?
 途中で変身解除されたりしないんだな?」と再三確認を繰り返すー。

「ないない!大丈夫!」
美香がそう言うと、
恭太は仕方なく、”変身薬”の説明を聞き始めるー。

その最中ー
美香は「あ~わざわざ制服着てきてよかった!」と笑うー

「ーこの服装なら、お兄ちゃん、わたしに魅了されて
 絶対お願い受けてくれると思った!」

とー

「ーー休みの日なのに制服なのはそんな理由かよー…
 ってか、魅了されてねーし」

半分あきれ顔で恭太がそう呟いていると、

「ーーじゃあ、早速、わたしの姿に変身してみよ~!」
と、嬉しそうに美香が叫んだー。

「ーー美香…本当に39.2も熱があるのかよ?」
恭太は苦笑いしながら、美香のほうを見つめるー。

まぁー…とは言え、熱は本当にあるのだろう。
体温計だけなら美香のことだから、
誤魔化してくることも考えられるが、
額は本当に熱かったし、時々触れる手も結構熱いー。

よく見ると目も少し充血している気がするー。

「ーーはい!これが変身薬!」
美香が変身薬を差し出してくるー。

恭太は「ほんとに、飲んでも大丈夫なんだよな…?」と
今一度不安そうに確認するー。

これで毒入りだったりしたら
”妹に毒殺されるお兄ちゃん”だー。

「ーーお兄ちゃんはわたしの大事なおもちゃだから
 そんなことしないよ!」

「おい!言い方!」
表現が怖すぎる!と思いながらそう叫ぶと、
美香は笑いながら「冗談冗談~!大丈夫だから~!」と、
恭太のほうを見つめたー。

ようやく、意を決して”変身薬”を飲むー。

その瞬間、
身体に衝撃を感じてー、
髪が急激に伸び、
胸のあたりの内側から強い衝撃を感じたー

「う…うおぉぉぉぉぉぉ!?」
股間のあたりにも違和感を感じて
身体中のあちこちが熱い…と、いうかかゆいー…
いやー、そうでもないー
とにかく形容しがたい感触に襲われるー

「ーーはぁ…はぁ…はぁ…」
やがて、自分の声が妹の美香と同じ声になっていることに気付き、
美香の姿に変身した恭太は、
美香のほうを見つめたー

「わぉ!」
本物の美香が驚いた様子で笑っているー

変身薬を使ったことはあっても
”自分がもう一人”という状況は初めてなのだろうー

「ーーうぁ…マジか…本当に俺が美香に…」
美香の声で驚いた様子で言うと、
本物の美香は「なんだか双子の妹ができたみたい!」と嬉しそうに微笑むー。

「ー俺が妹かよ!」
そんなツッコミを入れていると、
美香は早速言い放った。

「お兄ちゃんのダサい部屋着のまま菜穂ちゃんに
 会いに行かれたら困っちゃうから、
 早速着替えてもらおっと!」

美香が言うと、美香の姿になった恭太は
「え…俺が美香の服、着るの?」と、困惑するー。

「ーーそう!あと、わたしの姿でいるときは
 ”俺”って言っちゃだめ!」

美香の言葉に、恭太は「え、でも俺と美香しか今はいないんだしー」と
反論しようとすると
「こら!”わたし”でしょ!」と、言葉を遮られてしまうー。

「わ、、わ、、わ、わかったよー」
美香の姿をした恭太が言うと、
「お兄ちゃん、今から練習してないと、癖で「俺」って
 言いそうだからー」と、言いながら
服を差し出してきたー

「ーー…って、てか、お兄ちゃんに自分の服差し出すか普通…?」
美香の姿をした恭太が真っ赤な顔をしていると、
「ー超健全系男子なんでしょ?」と、美香はニヤニヤしながら
恭太に反論できないようにして、そのまま恭太に自分の服を着せたー。

ドタバタしつつも、ようやく
”見た目は完全に美香”になった恭太は、
そのまま友人である菜穂との待ち合わせ場所に
向かうのだったー…

②へ続く

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温泉編(?)は、明日の第2話ですネ~!
今日は妹との会話が中心でした~笑

明日もぜひお楽しみください~☆!

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