<寄生>奇跡の寄生虫①~共存~

遠い未来ー
人類は”新種の寄生虫”を発見したことで、
”病気”とは無縁の生活を送り始めていたー。

しかし、人類は気づいていない…。

人類そのものが”パラサイト”されつつあることに…

・・・・・・・・・・・・・・・・・

2380年ー。
人類は、”病気”から解放されていたー。

この時代では、既に”病院”は一部にしか存在しておらず、
出産の際に利用したり、
事故などに巻き込まれた人間の治療を行うだけの場所と化していたー。

それもそのはずー。
この時代の人類は既に”病気”を凌駕していたのだー。

命をも奪いかねない重病になることもなければ
風邪やインフルエンザになることもないーー
腹痛や嘔吐もないー。

人間は、数百年前からはありえないぐらいにー
”健康”になっていたのだー

そのため、病院は、この100年で瞬く間に少なくなり、
今では数えるほどしか存在しないー。
数えるほどしか存在しなくても”問題”すらないからだー。

人類はどうしてここまで健康になったのかー。

それはー

「ーー夕菜(ゆうな)、ダサくない~?もうちょっとおしゃれしないと~!」
”夕菜”と呼ばれた女子高生は、苦笑いしながら
「え~?そうかなぁ?」と呟いているー。

そんな彼女の耳からは、ミミズのような”寄生虫”が姿を見せているー。

「そうだよ~!ほらみて、わたし!」
反対側にいる女子高生の耳からも寄生虫ー。
その女子高生の寄生虫は少し、夕菜の寄生虫よりもおしゃれな感じだったー

”自分の寄生虫”の見せ合いをする二人ー

そうー
この時代の人間は誰もが子供の頃に寄生虫をその身体に”寄生”
させるのだー。

2198年ー。
人類は、この寄生虫と出会ったー。

後に”コア”と名付けられたその寄生虫は
今では人類にとって欠かせない存在となっているー

コアはあらゆる”病原体”を餌としており、
人間の体内に侵入したウイルス・雑菌ー
あらゆるものを食い尽くすー。

それだけではなく、宿主の身体を健康にする自浄作用も
持っており、”コア”に寄生された人間は、
あっという間に”超”がつくほどの健康体になるのだー。

人間に寄生した”コア”は人間に危害を加えるわけでもなく、
ただ、体内のウイルスや雑菌、病気の要素を退治していくだけで、
人間からしてみれば、夢のような存在だったー

2220年ー
人間に対して”コア”を意図的に寄生させる実験が
行われたー。

その結果、今までは治療困難であった
ありとあらゆる病気が、わずか数日で全て完治することが
判明したー。

人類は”奇跡の寄生虫”として”コア”を称えたー。

やがてー
2250年頃には、コアを意図的に”寄生”させる試みが始まったー。
当初は”寄生虫に寄生されるなんて”という反対意見も
世の中には広がっていたものの、
2260年になると、”コア”のありがたみを全ての人類が理解し、
人類は完全に”コア”との共存を始めていたー

コアが体内で病原体を駆逐しー
人間はその結果、健康体として生きることができるー。

コアの影響か、人間の老化速度も緩やかになりー
今ではその平均寿命は150を超えていたー。

当然、老衰はあるものの、
老衰も穏やかなもので、病院を必要とせず、
人生を終える人間は、少しずつ、緩やかに眠りにつくー

それが、この時代の”当たり前”だったー

”コア”がどこからやってきたのかは分からないし、
その目的も分からないがー
”コア”は寄生していない状態で外界に晒されていると、
せいぜい3,4日程度で死んでしまうことも判明しておりー
研究者は”コアが宿主を健康にすることで、コアの長生きにもつながる”と、
そう答えを導き出したー。

宿主である人間が死ねば、自分たちも死んでしまうー
だから、自分たちが”生きるため”に人間を健康にしているのだと。
その上、病原菌などを餌としている”コア”たちにとっては、
人間の体内は”最高の餌場”でもあり、
人間を健康にすることはコアたちにとって、
”食事を確保する目的”でもあるということだと、研究者は説明したー

そんな時代は続きー
2380年ー
人類のほとんどは”コア”に寄生された状態で
生活を送っていたー

「ーー昔の人はホント大変だよなぁ~」
大学生の達也(たつや)が言うー。
友達と”寄生虫自慢”をしていた夕菜の兄だー。

「ーーそうだよね~!病気ってどんな感じだったのかなぁ~」
夕菜の言葉に、達也は「さぁ…」と呟くー

現在大学生の達也や
現在高校生の夕菜からすれば「病気」などというものとは
まったく縁のない人生を送っていたー

風邪もひいたことがないし、
風邪などというものを見たこともない。

「ーー全部、コアのおかげだね!」
夕菜はそう言いながら耳から出てきた寄生虫を
嬉しそうに撫でるー。

「ーでも、昔の人から見たら、
 ”虫”が身体の中にいるなんて!とか言われるかもしれないぞ~?」
達也が笑いながら言うと、
夕菜は「そんなそんな~」と笑みを浮かべるー。

「昔の人だって”絶対に病気にならない”って分かれば
 喜んでコアを受け入れるよ!」

寄生虫”コア”はこの時代の人間にとって、
当たり前の存在ー。

人類を病気から救ってくれる
まさに”救世主”ともいえる存在ー。

しかしー
人類は気づいていないー。
人類は”支配”されていることにー

「ーーーークククク 愚かな人間共めー」

2200年ー
地球に姿を現した”奇跡の寄生虫”は、
地球で生まれた存在ではなかったー。

”コア”は宇宙からやってきた寄生虫だったー。

この寄生虫は既に、太陽系外で
”7”の惑星を同様の手口で支配し、完全に乗っ取っているー。

8つ目の獲物に選ばれたのが”地球”ー

この寄生虫たちは”直接的な侵略”は行わないー。
共存共栄をしているフリをして、
徐々に社会に浸透していきー
数百年かけて、その惑星を乗っ取るのだー。

「ー地球も、時間の問題ー」

寄生虫たちはー
長い時間をかけて、侵略する惑星の文化を学び、
最後には、全てを奪い取るー。

”地球”で暮らす人間の文化も、100年以上かけて
学び続けているー。

そしてー
”完全支配”の時は、目前に迫っていたー。

既に地球の文化は学んだー。
地球をどうするか、も決めたー。

長い時間をかけてー
人間の脳も”支配しやすいように”調整したー。

あとはーーー
”意識”を乗っ取るだけー。

その時地球は、”コア”たちの第8の惑星となるー。

完全支配の日は、近いー。

100年以上もかけて、”完全支配”を準備してきた”コア”たちは、
まもなく人類を完全に乗っ取ろうとしていたー。

”支配”するときは、一斉にー
1日で完全に支配する必要があるー。

少しずつ意識を奪えば、必ず反抗する人間が出てくるー。
それでも、”コア”が人類を駆逐することはたやすいことだがー
コア側にも犠牲が出ることは防げないー。

だから、じわじわと時間をかけて準備してきたのだー

”奇跡の日”の準備をー。

・・・・・・・・・・・・・

「ーーーーー」
夕菜と”コア”について話していた兄・達也は
自分の部屋に戻ると表情を歪めたー

達也はー
”コア”を疑っている人間の一人だったー。

コアは本当に、人類のためになっているのだろうかー。
と、そう思わずにはいられなかったー。

達也がそんな風に思ってしまったのには、理由があったー。

小さいころー
仲良しだった友人の一人が、公園で遊んでいる際に
大けがをしてしまって、
その時に”コア”が耳から飛び出してしまったことがあったー。

だがー
学校の先生たちは”その友達”を完全に無視しー
耳から飛び出した寄生虫のほうを、心配していたー。

その友達は”放置”されて死亡したのだー

周囲も、何も疑問に思っていなかったー

達也はその時から”コア”に疑問を抱くようになったー。
みんな”異様なまで”にコアを崇拝しているがー
本当に、この寄生虫は人類のために
なっているのだろうかー。

そう、疑問を感じずにはいられなかったのだー。

妹の夕菜も、両親も、大学の仲間たちも、
みんなみんな、コアを崇拝しているー。

”コア”を悪く言うようなことがあれば、
あっという間に、達也は集中砲火を浴び、
社会的に抹消されてしまうだろうー。

だがー
達也には他にも”疑問点”があったー。

それはー
”なぜ、自分だけがそう感じるのかー”
ということだったー。

「ーーーーーーー」
ネット上で情報収集を行う達也ー。
しかし、ネット上にも当然”コア”は”人間に不可欠な存在”として
崇められており、
コアを批判するような意見は、存在しないー。

未知なる寄生虫”コア”ー。
本当に人類にとって、コアはプラスになっているのだろうかー。

「ー確かに、昔の人は病気ってのに苦しんでたんだろうけど…」
達也はそう呟きながらも、
”自分の身体の中にもコア”がいることを不気味に思っていたー。

「ーーー!」
耳からコアが顔を出すー。
ミミズが少し大きく、長くなったかのような不気味な形状の
寄生虫だー。

達也の耳から飛び出した”コア”が、
パソコンのモニターのほうをじっと見つめているー。

「ーーなんだよ…見るなよ」
”コア”が人間の言葉を理解できるかどうか、達也には分からないー。

だがー
”コア”は人間の言葉を理解しているー。
人間に寄生することで、人間の脳にある記憶を全て
コピーすることもできるため、
人間の言葉も理解できるのだー。

もっと言えば、コミュニケーションを交わすことも可能だがー
必要以上に警戒されないために、コアたちが
人間とコミュニケーションを交わすことは、基本的には、ないー。

「ーーお兄ちゃん」
背後から夕菜の声がするー

「ゆ、夕菜ー」
少しビクッとしてノートパソコンを閉じると、
「ーーお兄ちゃん、よく調べ事してるけど、何を調べてるの?」
と、夕菜が笑みを浮かべるー

「あ、いやー」
達也が誤魔化すために曖昧な返事をすると、
「ーお兄ちゃんって、自分のコア、あまり表に出さないよね~?」と
夕菜が言うー。

夕菜が耳からミミズのような寄生虫を出しながら
「もっとお兄ちゃんもこの子たちに感謝しなくっちゃ」と、
自分の”コア”を撫でながら微笑むー。

夕菜は”コア”を完全に受け入れてるタイプの子で、
何の疑いも持っていないー

夕菜が生まれた時には既に”人間はコアを寄生させて生きるー”
”寄生虫と共存する”のが当たり前の世の中で、
それ以外に選択肢など存在していなかったー。

達也もそういう世代の人間ではあるものの、
幼少期の経験から、違和感や疑問を抱いているー。

そんな夕菜を見て、達也は口を閉ざすー。

「ーーー”夕菜の前でコアの悪口を言えば…色々面倒なことになるからな”」
そんな風に思いながら、達也は
「ーーわ、わかったよ。俺も少しは感謝しないとな」と、
気まずそうに呟いたー。

数日後ー

”奇跡の日”
と呼ばれる日がやってきたー。

人類とコアに感謝する日ー

”10月22日”ー
100年以上も昔、人類と寄生虫・コアが初めて出会った日ー。

この日は、今や全世界で”祝日”となっており、
全人類が、正午になると一斉に”祈り”を捧げるのだー。

そしてーー

今年は”完全に準備を終えた”
寄生虫・コアが、この日、全ての人類を完全に支配しようとしていたー。

全ての人類はー
この日、”全てを奪われる”ことをまだ、誰も想像すらしていなかったー。

②へ続く

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コメント

スケジュールを組んだ際に偶然なのですが
未来のちょっとおかしな世界を舞台としたお話が
並んでしまいました…!
(昨日までは量子テレポートのお話…!)

奇跡の寄生虫も2話完結で明日終わるので、
未来系のお話はちょっと…!という方は
もう少し耐えて(?)下さいネ…!

今日もありがとうございました~!

寄生<奇跡の寄生虫>
憑依空間NEO

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