<寄生>奇跡の寄生虫②~支配~(完)

”病気となる要素を餌とする”
奇跡の寄生虫”コア”ー。

人類がコアと共存を初めて数百年ー。
人類は今、まさに”コア”に支配されようとしていたー

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10月22日ー
”奇跡の日”

人類が初めて未知なる寄生虫・コアと出会ったこの日は、
全世界で”祝日”となっていたー。

正午にはコアに感謝する時間も存在するー。
正午から1分間ー
コアに”祈り”を捧げるのだー。

寄生虫・コアは、
病原菌やウイルスー
そういった、人間にとって”マイナス”となる
あらゆるものを主食としており、
人間に寄生することで、
結果的に人間は、”病気知らず”になることができたのだー。

2380年ー
この時代の人間は”病気”というものを知らないー
”風邪”も知らないー。
一人一匹ー。
コアと人間は、共存共栄ー。
コアが病原菌を食べつくすことにより、
誰も、病気になどならなかったのだー。

「ーーーお兄ちゃん!もうすぐお祈りの時間だよ!」
妹の夕菜が笑うー

「はいはいー」
達也が苦笑いしながら”面倒臭いんだよな…これ”と呟くー。

「ーーーーークククククク」

”コア”の王にあたる個体に寄生されている人間が
笑みを浮かべるー

彼は、”世界コア機構”の代表を務める男性でー
彼だけは完全にコアに乗っ取られているものの、
そのことには誰も気づいていないー。
普段は一般人として生活しており、
その間は、”偽りの記憶”を持った普通の人間として生活しているー

自分の隠し部屋に設置した
モニターで世界各国の”奇跡の日”の様子を見つめるー。

世界で一斉に祈りが行われるー。
時差はあれど、どの世界の人間も、この日だけは
起きて、祈りを捧げるー

「長かったー」
彼は微笑むー。

この星に来てから100年以上ー
”コア”は人間たちの信頼を得て
”寄生されていることが当たり前”の世の中を作り出しー
人間に寄生した状態で、少しずつ人間の身体や脳を
自分たちが支配しやすいものにゆっくりと作り変えー
寄生されている人間同士から生まれた子供はー
さらに”コアたちにとって好都合な存在”になるようにしたー。

人間は、これまでコアたちが支配してきた星の
どの生命体よりも複雑な構造でー
完全に支配するためには、脳を支配する際に
”拒絶反応”が起こらないよう、長い時間をかけて
”人間の身体にとってもコアは当たり前”の存在になる必要があったー

そして今ー
全ての準備は整ったー

”余計なことを考えていないタイミング”は
さらに脳を一気に支配しやすいー。

”奇跡の日”の祈りの時間のタイミングでー
今日、コアは全ての人間を一斉に支配するー。

「ーー愚かな人間たちー」
人間たちは、何も知らず、まもなく迎える”祈りの時間”に備えているー。

「ーーあと数分で、お前たちの全てが消える
 すべてがー」

コアに寄生された人間は、
コアに影響されて、コアに感謝の気持ちを抱くようになるー。

しかしー
”ごく一部”そうじゃない人間もいるようだー。

だが、そういう人間は、一斉支配の際にー
”消して”しまえばいいー

そう呟きながら、彼は部屋から外に出たー
”世界の支配”を見届けるためにー

11:59-

「ーーさぁ、お兄ちゃん!お祈りお祈り!」
夕菜が、耳から寄生虫を飛び出させながら笑うー。

「ーーーー」
達也は、毎年のこの日が嫌いだー。

何だかー
不気味さを感じさせるからだー。

まるでー
人間が寄生虫の奴隷にされているかのようなー
そんな感覚を覚えるからだー。

”感謝ー?冗談じゃないー”
そんな感情すら覚えてしまうー。

「ーーー…」
それでもー
この世界はー
今の人類はー
寄生虫・コアと
共存共栄ー

それ以外に、道はないー。

達也がどんなに喚こうとー
”寄生虫・コア”を受け入れない人間は、人間に非ずー”
そういう世の中だー。

それも仕方のないことなのかもしれないー
”寄生虫・コア”のおかげで、
人間は長寿化し、病気という言葉と縁が亡くなったー

昔の人間が苦しんだという”病気”が
寄生虫・コアのおかげで”縁のないもの”になったのは事実なのだー。

12:00-

寄生虫・コアへの”お祈り”が始まるー。

テレビの中継を見ながら、
夕菜が、両親がー
”お祈り”を始めるー

しかしー
その直後だったー

夕菜が「うっ…」と、うめき声をあげたー

「ーーーえ」
目を瞑り、お祈りを嫌々していた達也が目を開いて夕菜のほうを見つめるー。

ビクンと震えた夕菜の目が、赤く光ったー。

「ーー夕菜…?」
達也が不安に思って夕菜に呼びかけると同時にー
テレビの中からも同じようなうめき声が、たくさん聞こえてきたー

”お祈り”を中継していたリポーター…
お祈りを捧げていた民衆ー
あらゆる人が一斉に、今の夕菜と同じように
軽くうめき声をあげてー
そして、目を赤く光らせたー

「ーーーえ…なにこ… あっ!?」
母親も異変に気付いたが、すぐにビクンと震えて、
赤く目を光らせるー。

「ーーー」
父親も既に目を赤く光らせてー
ビクンと震えていたー。

「ーーゆ、、夕菜!?母さん!?父さん!?」
達也は思わず叫んだー。

自分の身に異変はないー。

夕菜がニヤニヤしながら
「ーーついに”人間”を手に入れたー」
と、呟くーーー

「ゆ、、夕菜…?夕菜!どうしたんだ!?」
叫ぶ達也ー

父親と母親も笑みを浮かべながら達也のほうを見つめるー。

三人が同時に呟くー。

「ー我々の目的は、人間を”文化ごと”乗っ取ることー」

その言葉に、達也は震えたー。

「ーど、どういうことだ…!?」
達也が震えながら言うー。

意味が分からないー

夕菜がー
母親がー
父親がー
口を開いて、寄生虫・コアを飛び出させると、
「ー人間を一斉に支配するための状況を
 我々は100年以上もかけて準備してきたー。
 一斉に乗っ取ってしまえばー
 我々は一切の血も流すことなく、
 人間の身体と、文化を全て乗っ取ることができるー
 そのために、これだけ長い時間をかけたのだー」
と、夕菜が、口をもごもごさせながら呟いたー

「ーーふ、、ふ、、ふざけるな!」
達也が大声で叫ぶー

「ーふざけてなどない。
 今ーーこの瞬間、地球上の全ての人類が
 我らに支配されたかー
 ”処分”されたー。
 どうしても我らを拒もうとする”一部の人間”は
 ”不良品”だー。」

夕菜はそう言うと、スカートを膨らませながら笑みを浮かべるー
アソコから、飛び出した寄生虫が、不気味にうごめいているー

「ーー見ろ」
夕菜がテレビを指さすー。

頭がはじけ飛び、中から飛び出す寄生虫ー。

どうしても”コア”を受け入れようとしない人間の
頭部は”不用品”として破壊しているのだと夕菜は説明したー

「ーーそ、、そんな…そんな馬鹿な!」
達也は慌てて家から飛び出すー。

しかしー
近所の住民も、笑みを浮かべながら
不気味にゆらゆらと動いているのを見てー
家族だけではなく、全員が寄生虫・コアに乗っ取られてしまったのだ
達也は悟ったー

「ーーく…く…う、、嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ!」
達也はパニックになりかけて叫ぶー

「人類はー
 この数百年、病気に怯えることもなく、
 最高の繁栄を謳歌したはずだー。
 少しぐらい、感謝してくれても良いと思うのだがなー?」

夕菜のスカートが破れー
寄生虫が不気味に蠢いているー
しかし、夕菜はそれを気にする様子も見せないー

「ーーや、、やめろ!夕菜を返してくれー!」
叫ぶ達也ー

「ーークククー
 誰だって”見返り”は欲しいものだろうー?
 この100年以上、”病気のない世界”を謳歌したのだー。
 その代わりに、身体と文明を丸ごと貰ったに過ぎないー」

「ーーーく…くそおおおお!!」
達也は叫びながら走り出すー。

どこかー
どこかにー
”自分と同じような人間”がいるはずだー。

達也は昔から、寄生虫・コアに疑問を抱いていたー。
そのせいなのだろうかー
世界中の人間が一斉に寄生虫に支配された今でも、
達也は自分の意識を保つことができているー。

「ーー愚かな人間どもは、終わりを告げたー!」

「ーー!!」
達也が駅ビルに表示されたニュースの映像を見つめるー

人気女性アナウンサーが耳から寄生虫をぶら下げながら
ゆらゆらと動きながら笑っているー

「ー今日こそ我らの”記念日”だー
 地球は我らの新たな星のひとつになった!」
嬉しそうに宣言する女性アナウンサー。

優しい語り口調が人気の彼女だったが
完全に支配されてしまった彼女は、もはや見る影もないー

「くそっー」
街は不気味なほど、人の気配がなかったー
元々”寄生虫・コアへの感謝の日”ということで、
人々は感謝するため、各々の場所に赴いていることもあり、
人通りが少なくなるのは当たり前のことなのだが…

そう思いつつ、達也は”どうにかして家族を救う方法”を考えながら歩くー

「まずは…まずは、誰か俺と同じような人間を見つけないとー」

達也はごく普通の一般人に過ぎないー。
自分だけが無事であっても”何か”を成し遂げられるとは思えない。

特別な力を持つ勇者でもなければ、ヒーローでもないー。
何も、できないのだー。

「ーーー」

寄生虫・コアは地球にやってきてから、
ずっとじわじわと人間社会を支配してきたのだー。
今日この日ー、すべての人類を一斉に支配するためにー。

そのために、少しずつ人間の意識をコントロールして、
自分たちを”奇跡の寄生虫”として崇めるよう、
差し向けていたのだろうー。

そうは分かっていてもー
今となっては、もはやどうすることもできないー。

達也が普段は歩行者天国となっている
交差点を歩いているとー
周囲から突然寄生虫を耳にぶら下げた大量の人が
姿を現したー!

「ーー!!」

サラリーマン
OL-
学生ー
子供ー
老人ー

色々な人々が、集まってきて、
達也は囲まれてしまうー。

「く…く、、くそっ!」
達也が周囲を見渡すー

四方八方、逃げ場はないー

「ーーくそっ!俺は、、俺はお前たちになんて支配されないぞ!」
達也が叫ぶー

しかしー
達也を取り囲んだ支配された人間たちはー
全員一斉に膝を折ったー。

「えっ…?」
達也が唖然とするー

まるでー
王に仕える臣下のように、全員が膝を折ったのだー。

「な…な…なんだってんだよ!?」
達也が叫ぶと、
膝を折った民衆が一斉に叫んだー

”長かったー”
達也の中から声が聞こえたー

「え…?」
達也が表情を歪めるー

”偽りの人格は、もう必要ないー”

その言葉に、達也は「ど、、どういう意味だ!?」と
頭の中から聞こえてくる言葉に耳を傾けるー。

”我はコアの”王”ー

「ーーーえ…?」
達也は意味が分からず聞き返すー。

彼はー、達也は”世界コア機構”の代表を務める男性でー
達也だけは完全にコアに乗っ取られているものの、
そのことには誰も気づいていないー。
世界コア機構の代表は表舞台に姿を現さないことから、
家族も達也が世界コア機構の代表とは、夢にも思っていないー。
普段は一般人として生活しており、
その間は、”偽りの記憶”を持った普通の人間として生活しているー

達也の身体はコアの王によって作り出された”人造人間”ともいえる存在でー
永遠の生を得ているー。
達也の人格も、コアの王によって作り出された”偽りの人格”だー。
人間を、監視するためにー。

周囲の人間は、寄生虫によって記憶を操作され、その都度達也は
適当な場所で生活しているー

達也自身の部屋の中に
隠し部屋が、存在しておりー
達也はモニターで世界各国の様子をいつも、見つめていたー

”ご苦労だったなー
 我が身を隠すための器として、貴様は最適だったぞ”

コアの王の声が頭の中から聞こえるー

達也がコアに疑問を抱くことができていたのはー
達也が一斉支配を逃れることができていたのはー
自分自身が、王だからー。

「ーーーは、、はは…お、、俺…俺って…?」

”そう。お前は我に作られた偽りの人格だー。
 お前は元々、存在すらしないー”

「ーーう、、嘘だ……嘘だ…嘘だ!」
叫ぶ達也ー

”嘘ではないー
 支配が済んだ今、お前は用済みだー”

「ーーーう、嘘だああああああああああああ!!」
歩行者天国のど真ん中で叫ぶ達也ー

”削除”

その言葉と共に造られた達也の人格は消えたー。

笑みを浮かべる”達也”だった、その男はー
歩行者天国の真ん中で叫んだー

「人類の支配、ここに成れりー!」

高らかにそう宣言したコアの王に対し、
寄生虫に支配されている人間たちは、一斉に盛大な拍手を送ったー

おわり

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コメント

救いようのないバッドエンド…!の寄生モノでした~!
寄生モノを書いていると
なんとなくバッドエンドに向かうことが私の場合は多い気がしますネ~!

お読みくださりありがとうございました!

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寄生<奇跡の寄生虫>

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