<憑依>酔X女②~酒乱~

周辺地域で多発する”酔いつぶれた女”

他人の身体に憑依して”酔いつぶれるまで飲みまくる男”

”酔と憑依”第2話…!

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「---まぁ、そういうこともあるさ」
彼氏の久志は、そう呟いたー。

ようやく二日酔いの状態が解消されてきた美希は、
「本当に、心配かけてごめんね」と申し訳なさそうに言うー。

結局、二日酔いが回復するまで、
久志が家事から何までやってくれたー

同居しているわけではない二人ー。
久志にだって、自分の家の家事があるはずだー。

しかしー
夜遅くまで、迷惑をかけてしまったー

「いいよ。でも、そんなになるまで、飲み過ぎないように、気を付けような」
久志が優しく言うー。

「---うん 本当にごめん」
美希はそう謝りながらも
”酔った自分が男とラブホに行ってしまった”という事実は
言いだせなかったー。

今朝、美希と寝ていた男と、もしも久志が一緒にいるときに
再会してしまうようなことがあればーー

”最悪の事態”を考えてしまう美希ー。

「--じゃ」
久志は、”俺、明日も早いから、そろそろ帰らないと”と、笑いながら
「-もう、大丈夫だよな?」と心配そうに呟くー。

「--うん。ありがとう」
美希が言うと、久志は、にこっと笑って、そのまま美希の家から
外に出て行ったー。

久志はー
”父親が酒乱で暴力を振るう”タイプだったためー
”理性を失うほどまでに酔っぱらう”ことを嫌悪しているー。

久志自身も、お酒を飲めるが、
絶対に久志本人も”理性を失うほどの量を飲まない”ようにしており、
”自分が小さいころに味わった恐怖”を、他人に味合わせたくない、と
いつも言っていたー。

そんな久志に、最悪な姿を見せてしまったー。
美希はそんな風に思いながら”どうしてわたし、飲んじゃったんだろう”と
頭を抱えたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---おえええええええっ…」
道端で、眼鏡をかけた真面目そうな女が
嘔吐しているー

「--おえええっ… おええっ…」
何度も何度も嘔吐する女性ー

酒の臭いが近くにいるだけで伝わって来るー

その様子を通行人の男が笑いながら撮影しているー。
酔いつぶれた女を偶然見かけて、バズりそうだ!みたいな
感じなのだろうー。

「--やめておけ」
久志が、野次馬を注意しながら、嘔吐している女性の方に近づくー

「大丈夫ですか?」
久志が、そう声をかけるも、眼鏡をかけた真面目そうな女は
「-大丈夫なわけねぇだろ!クソオスが!」と、乱暴な口調で叫んだー。

”完全に酔っぱらってる”
久志は、イヤそうな表情をしながらも、
心優しい性格でもある久志は、
「とりあえず交番の人を呼ぶか」と考えるー。

最近は、特に酔いつぶれた女性をよく見かけるー。
この周辺一帯で、だー。

久志は”誰か女に飲ませて喜んでるやつでもいるのか?”と
一瞬考えたがー
最近見かけた酔いつぶれている女は、
全員、年齢層も違うー。

共通点があるとは思えないー

交番の警察官を呼んだ久志ー

交番の人は
「ご協力ありがとうございます」と言いながらも、
苦笑いしながら「最近多いんですよねぇ」とため息をついたー。

「--やっぱり多いんですか」
久志もため息をつきながら
「-触るんじゃねぇよ!ボケども!」と、叫んでいる眼鏡の女が
連行されていく姿を見つめたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---へへへへへへ!」
男は、笑みを浮かべたー

”酔った女は本性を露わにするー”
男は、それが見たかったー

急に泣き出す女ー
狂暴になる女ー
性欲を曝け出す女ー
ただハイテンションになる女ー

”酒におぼれた人間は、本性を露わにするー”

男は、それに興奮する性癖の持ち主だったー。

だからー
乗っ取った身体で、酔いつぶれるまで飲みまくりー
酔いつぶれた時点で、本人の身体から抜け出し、
本人の様子を存分に観察するー

”自分が憑依した状態で、あんなことやこんなことをする”のではなく
”酔いつぶれて豹変した本人”を見るー

そこに、男が求めている”光景”が、あるー。

「--ふひひひひひ」

男が、そんな性癖になってしまったのには、訳があるー。

男は、学生時代に何度も浮気されたり、
信じていた幼馴染が裏で自分の陰口を言っていたりー

”女の陰険な部分”に巻き込まれてきたー

世の中の女性が全てそうではないー
しかし、少なくとも”男”の周囲の人間はそうだったー

そんな状況が続きー
男はー

女性不信にーーー

は、ならなかったー。

男は、興奮してしまったのだー
”女が普段見せない本性を見せる”ということにー。

そして、その結果ー
男は”酔っぱらった人間は本性を曝け出す”という点に目をつけー
さらには憑依薬も手に入れた男は、
”女の本性を見て興奮する”という性癖と
”酔っぱらった女を見て興奮する”という新たな性癖が
ミックスされて、”乗っ取った身体で酔いまくる”という
迷惑な憑依人が誕生したのだったー。

「--へへへへ」
男は笑みを浮かべると
”次のターゲット”の姿を思い浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

久志が美希の家に呼び出され、
美希の家に向かっていたー

”先日、意識が飛んでいる間にお酒を酔いつぶれるまで
 飲んでしまったこと”を
やはり、相談しようと考えた美希は、
今日、こうして久志を呼び出したのだー。

”酔いつぶれた言い訳”にしか
聞こえないかもしれないー
それでも、久志なら信じてくれると思ったし、
何より、このまま黙っていることは、
美希にはできなかったー

大好きな彼氏である久志に、秘密を抱えたまま
生きていくことはできないー。

ラブホの件も、正直に全て打ち明けようと、
美希は決意していたー。

しかしー

「--えへへへへ」
美希の家にやってきた久志は、唖然とするー

美希は、完全に酔っぱらっていたー。

美希はーー
”男”に再び憑依されていたー。

久志を呼び出した時点では、憑依されていなかったのだが、
久志を呼び出した直後、美希は乗っ取られてしまったー。

偶然、”もう一度”美希に憑依して酔いつぶれようとしていた男が、
美希があの日のことを彼氏に相談しようとしていることを察知し、
美希を乗っ取り、久志が来るまでの間に、近くの酒店で、
酒を買いまくりー
そして、久志が到着する前に、美希の身体で酒を飲みまくったのだー。

「--うっめええええ~~!」
美希はそう叫びながら、焼酎をごくごくと飲んでいくー。

「ーーーみ、、美希…?」
久志は唖然としているー

美希は、久志が到着したことを確認すると、笑みを浮かべて、酔いつぶれたフリをしてー
そのまま美希に憑依していた身体は、美希の身体から抜け出したー

美希が正気を取り戻すー。
しかしー
既に美希は、完全に酔っぱらっていて、
憑依から解放されても、それは、”美希ではない”と
言えてしまうほどの、有様だったー。

「--美希!…ど、どうしてこんな、また飲んで…!?」
久志が慌てた様子で言うと、
美希は叫んだー

「うっせ~んだよ!わたしに触んな!」
美希がグラスを投げ付けるー。

「---ふぁぁぁ~ははは…あははは
 どいつもこいつも、わたしを馬鹿にしやがってぇ!」
美希が大声で叫ぶー

”酒乱”-
普段、”ほどほどに”しか飲まない美希は
自分が、酔いつぶれるぐらいに飲み続けると
どうなるかを知らなかったー。

しかし、美希は、完全に酔っぱらってしまうと、
暴れ出したり、性欲に支配されるタイプだったー。

普段、優しく穏やかな感じの美希は、
心のどこかで、色々なことを我慢しているのかもしれないー

「--ばーか!!ばーーーーか!」
美希が久志の方に向かって叫ぶー

久志は唖然とした表情で、
”美希の姿”をかつて、家で暴れた”父親の姿”と
重ねてしまったー。

「--み、、美希…」
戸惑う久志ー

「--少しはわたしを敬えっての!
 会社のやつらも、友達も!」
美希は、乱暴な口調で、近くにあった酒の入ったグラスを飲み干すー

完全に”酒”に溺れてしまっているー

”へへへへへへ”
霊体になった男は、その様子を見つめていたー。

”最高の瞬間”

憑依から抜け出す瞬間に
”酔い”が一瞬で覚める不思議な感覚を味わい、
さらには、酔っぱらって我を失った女を存分に見ることが出来るー。

男は、美希と戸惑う久志の方を見つめながら笑みを浮かべるー。
今は霊体だから、久志にも、美希にも気づかれる心配はないー。

もっとも、泥酔している美希は、霊体じゃなかったとしても、
気づかないかもしれないがー

「ーーー美希!近所にも聞こえるから!やめろって!」
久志が美希をなんとか落ち着かせようとするー。

だが、美希本人が絶対に飲まないような量の酒を
憑依により飲まされた美希は、憑依から解放されてもなお、
完全に正気を失ってしまっている状態だったー。

「---うるせぇなぁ!どけよ!」
美希が大声で、呂律が回らない様子で叫ぶと、
久志をグーで殴りつけたー。

殴り飛ばされた久志が頬を押さえながら
美希の方を見て唖然とするー

小さいころー
”酒に酔って暴れた父親”に殴られたことを思い出しー
久志は表情を歪めたー。

「---あぁぁ~~エッチしてぇええええええ!」
美希が大声で叫ぶ。

そして、ふらふらと家具にぶつかりながら、
家の外へと向かおうとするー。

だらしない格好のまま、外に出て行こうとする美希を見て、
唖然としていた久志は慌てて叫んだ。

「お、、おい!美希!どこに行くんだ!」
叫ぶ久志ー

美希は「-エッチぐらい、自由にさせろぉ!」と、
へらへら笑いながら、そのまま家の外に
出ていってしまったー。

普段、美希は性欲の強いほうではないー
浮気もしないー
だが、お酒に決して強くない美希は、
酔いつぶれると、暴力的になり、
しかも、性欲にもだらしない女になってしまうー。

本人がそこまで酔うことはないー
けれどー
憑依されて、乗っ取られて飲まされた美希はーー

「-----……」
久志は座り込んだまま、しばらくの間は唖然としていたー。

”美希を止めないと”
そうも思ったー。

でも、久志は、身体を動かすことができなかったー。
酒乱の父親に育てられたトラウマが、
身体を動かすことを許さなかったー

どうしても、美希を助けに行くことができなかったー

「-----美希…どうして…どうしてなんだ」
お酒におぼれ始めた美希のことで頭がいっぱいになってしまった久志は、
そのまま美希の部屋で悲しそうな表情を浮かべたー。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「--えへへへへへへ」
美希は、路上のフェンス際に座り込んで、笑みを浮かべていたー。

意味もなく家の外に飛び出した美希は、
酔いが完全に回って
ふらふらとして、その場に座り込んで、
うとうとし始めていたー。

だらしない格好で、涎を垂らしながら
眠りにつく美希ー。

路上で、完全に酔いつぶれた美希を見て、
偶然通りがかった通行人たちは
”哀れなモノ”を見る目で、美希を見つめるのだったー

③へ続く

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”憑依されて酔わされている”ことを知らない彼氏…

2度目にわたって憑依されてしまった彼女…

二人の運命は…?
次回が最終回デス~!

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