泥酔を繰り返す彼女ー
”憑依されて、飲まされている”ことを知らず、
彼氏は只々、困惑してしまうー。
怒りと酔いの最終回!
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”昨日…わたし…どうしてた…?
久志と会った…?”
美希が泥酔して、久志に暴力を振るった翌日ー
美希から久志に連絡が来たー
久志は思わずため息をついてしまうー。
昨日ー
男に憑依されて、散々酔っぱらわされてしまった美希は、
彼氏である久志に暴力を振るった挙句、
そのまま家から飛び出し、近くの路地のフェンスの前で
酔いつぶれて爆睡したー
そして今朝、パトロール中だった警察官に起こされて
目を覚ました時に、ようやく美希は、
自分の置かれた現状に気づいたのだったー。
慌てて帰宅した美希は、二日酔いに悲鳴を上げる身体を
抑えながら、久志に連絡を入れたー
そのメッセージを久志は受け取り、ため息をついていたー。
”あんなになるまで飲んで…
最近、どうしたんだよ?”
久志は、ため息をつきながらも、心配するメッセージを送るー
今まで、美希が泥酔するようなことは、なかったー。
お酒も毎日飲むようなタイプじゃないし、
その美希が、あんな状態になってしまっていたことに、
久志は心底驚いていたー。
しかも、美希は、先日も二日酔いで寝込んでいたー。
何か、悩みがあるなら、聞いてあげたいー
優しい久志は、心からそう思ったのだー。
”何か悩みがあるなら、相談に乗るよ?
俺が原因なら、遠慮なく言ってくれていい”
久志はそうメッセージを送るとー
再三のため息をついて、そのままスマホを机の上に置き、
職場へと向かったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ククククク」
”女に憑依して、酔わせている男”は、
笑みを浮かべたー
悪趣味な男は、
今日も、女を酔わせて、楽しんでいたー
泣きじゃくる子供ー
だらしなく路上に横たわって、意味不明な言葉を
呟く酔いつぶれた母親ー。
昼間ー
買い物にやってきていた子連れの母親に憑依して、
子供を”昼ごはん”と、居酒屋に連れていき、
そのまま大量の酒を飲ませたのだー。
憑依から抜け出した男は、笑うー。
酔いつぶれた母親を、見つめながら、笑うー。
男は、スマホを手に、酔いつぶれた母親を
楽しそうに撮影していたー。
昨日のように、”憑依する相手”の家で
乗っ取った場合は、スマホで撮影することはできないため、
霊体となって観察するがー
普段、男は”憑依”した対象を路上で酔わせてー
それを”中身で観察”するのが趣味だったー
野次馬のフリをして酔いつぶれた母親を笑いながら撮影する男ー
男の名前は
堀 康弘(ほり やすひろ)-。
一連の”泥酔女”を作り出している迷惑な憑依人だー。
彼は基本的に
同じ相手には”1回”しか憑依しないー
酔っぱらった時の反応には
”個人差”があるー
寝てしまう者ー
泣き出す者ー
暴れ出す者ー
欲望に溺れる者ー
おしゃべりになる者ー
特に変化のない者ー
本当に、多種多様だー。
だから、同じ相手には憑依しないー。
”同じ反応”を見ても別だからだー。
ニヤニヤしながら酔いつぶれた子連れの母親を
撮影し終えると、康弘は歩き出したー。
”美希”だけは特別だー
今夜”3度目”の憑依を行うー
康弘が、美希に執拗に憑依するのには、理由があったー
それはーーー
先週ー
泥酔した女を撮影していた時にー
美希の彼氏である久志に”注意”されたことー。
それを、康弘は逆恨みしていたー。
あの時の光景を思い出すー。
その様子を笑いながら撮影している野次馬の男ー
久志は、その近くに歩いていくと
「おい、やめとけ」とその男に声を掛けたー
舌打ちして立ち去っていく野次馬の男ー。
その時、一緒にいた女が、
”あの注意をしてきやがった男”の彼女だー
そう思った康弘は、美希にだけは、
何度も何度も、繰り返し憑依を行っていたー。
”復讐”のためにー
「--俺の楽しみを邪魔するやつは許さねぇ
お前の彼女をどんどん酔いまくらせてやるぜ」
康弘はそう呟くと、笑みを浮かべたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
仕事を終えた久志は、
美希と電話で話をしたー。
美希は”先日の泥酔も、今回の泥酔も、飲み始めた記憶すらない”と
説明したー。
久志はその言葉を聞いて、困惑するー。
通常であれば、記憶が飛ぶほど酔ったとしても、
少なくとも”飲み始めるまでの記憶”は残っていなければおかしいー
だが、美希の場合は
”飲み始める記憶すら”残っていないのだというー
言い訳だろうかー。
それともー?
久志は色々考えた末に
”俺は、酒乱は嫌いだ”と、返事を送ったー。
久志は、そのメッセージを送った直後、
寂しそうにスマホを握りしめたー。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
”へへへへへ 嫌われてやんの!”
美希に2度に渡り憑依を繰り返した康弘は、
再び霊体の状態で美希の部屋にやってきていたー
”3度目の憑依”をするためだー。
昨日、酔いつぶれて、今日は二日酔いの状態であるはずの美希に
再び、大量のお酒を飲ませたらどうなるだろうかー。
康弘は”ま、この女も彼氏に愛想を尽かされたみたいだし、
これで最後にするか へへへ”と笑みを浮かべながら、
美希に憑依しようと、美希の方を見つめるー
美希は、久志からの”酒乱は嫌い”という返事を見て
泣きじゃくっていたー
だがー
そんなこともお構いなしに、康弘は美希に憑依するー
美希が「ぁっ…」と、身体を震わせてスマホを落とすー
たった今まで、泣いていた美希が、凶悪な笑みを浮かべて、立ち上がるー
「っっ!」
美希はふらっとして頭を押さえたー。
美希に憑依している間、感覚は美希の身体を通じて伝わって来るー
”美希の二日酔い”が、
憑依している康弘の想像以上に、きつかったのだー
「--へっへへへ、だいぶキテるじゃん」
美希はニヤニヤしながらそう呟くと、
スマホを見つめながら、笑みを浮かべたー
「何が酒乱は嫌い、だ!へへへ
この女をまたまた酔わせてやるぜぇ」
そう呟くと、美希は、美希が持っている服の中で
一番色っぽい服を選んで、それを身に着けて居酒屋へと向かったー
”酔いつぶれたあと”に誰かにお持ち帰りされる可能性を
少しでも高めるためだったー。
美希はニヤニヤしながら、”おいしそうな居酒屋”を探すー。
乗っ取った身体で酔いつぶれるのも楽しみだが、
乗っ取った身体のお金で、酒を飲み、飯を食うのも、とても愉快だー。
まさにー
”他人の金で食う飯はうまい”
そんな状況と言えるー。
「---よし、ここにすっか」
美希はニヤニヤしながら、おいしそうな焼き鳥店を見つめると
そのままそこに入って行こうとするー。
美希の身体を、お酒で溺れさせるためにー。
だが、焼き鳥店の扉に手をかけた美希は
表情を歪めたー。
誰かが、美希の手を掴んだのだー。
「---!」
美希が表情を歪めると、そこには彼氏の久志が立っていたー。
久志はー
”あえて”美希に辛辣なメッセージを送ったー。
”美希に何が起きているのか”を突き止めるためー
美希を見放したフリをして、すぐに自分の家を飛び出して
美希の家の周りで、美希の行動に異変がないかを
ずっと見張っていたのだー
「---美希」
久志が言うと、美希が表情を一瞬歪めながらもー
「俺、いや、わたし、飲みたいの。離して」と
鋭い口調で答えたー。
康弘は”憑依した状態で、他人と話す”ことは
あまりしていなかったー
いつも、乗っ取った身体で店に行き、一人、飲みまくるだけだから
当然と言えば、当然と言えるー
だからー
つい”俺”と言ってしまったー。
その反応を久志は見逃さなかったー
「お前は、誰だ?」
久志がそう呟きながら、美希の腕を引っ張り、
焼き鳥屋の入口から美希を引きはがすー。
「---へ、、へへへへ」
うすら笑みを浮かべる美希ー
その様子を見て、
久志は”美希が美希ではない”と判断したー。
がー
当然、”憑依”などという現象には思い当たらずー
”二重人格か?”と、思いつつ、久志は叫んだー
「もう一度聞くぞ。お前は誰だ!?」
そう叫ぶ久志ー。
「--ーーーへへへへ…美希だよ!文句あっか!?」
美希が開き直った様子で言う。
久志は”美希を守りたい”という思いから咄嗟に
美希の胸倉を掴んで、近くの路地裏に引きずり込んだー。
「--美希から、出ていけ!」
”二重人格”-?
”幽霊”-?
そんな、複数の可能性が頭をよぎるー。
”憑依”は、あまりにも非現実的すぎて、久志の頭の中には
浮かんではこなかったものの、
追い詰められている美希に憑依した康弘からすれば
”憑依がバレた”と焦っていたー。
康弘は、憑依して飲み歩いて、観察して楽しんでいただけー。
だからー
”憑依した身体で他の人と会話する”
ことに、壊滅的に慣れていなかったしー
その点の対応能力は低かったー
「--美希から、出ていけ」
鬼のような形相で、久志が美希を見つめるー
「ひぃっ…ひっ…」
美希は目から涙をこぼすー。
康弘はー
臆病な人間だったー
1対1の状態で、相手から睨まれればすぐにビビッてしまうー。
そんな人間だー。
「--お前は何だ?美希の中の別人格か?それとも幽霊か何かか?」
美希を睨みながら久志は言うー。
「---ひぃ、、、」
美希は震えているー
「答えろ!!!!!!!!!!」
久志の言葉に、美希に憑依している康弘はーー
ビビッて全部話してしまったー
”憑依している優位性を生かせない”ほどに、
康弘は、愚かだったー。
美希の身体で、全てを自白してしまう康弘ー
「--憑依…そんなことが」
久志は唖然としながらも、美希を睨むー
「--最近酔いつぶれてる女性が多いのは、お前のせいなんだな!?」
久志の言葉に、
路地裏で座り込んだ美希は、あまりの恐怖にその場でお漏らししてしまうー。
ぶるぶると震えている美希ー。
ここで”悲鳴”を上げれば、状況から、久志を撃退できたかもしれないー
けれど、美希に憑依している康弘には、そんなアイデアは浮かばなかったー
「---美希から、出ていけ。次、美希に憑依したらーー
ただじゃおかないー
いいやーー
他の誰に対しても、だ!
いいな!」
久志は、生まれて初めてここまで激怒したかもしれないー
そんな風に思いながら、美希を睨みつけると、
「うあぁああ… あぁ… は、、はひっ」
と、泣きながら美希に憑依している康弘は答えてー
そのまま、美希の身体から抜け出したー。
少しして、目を覚まして不安な表情を浮かべる美希に対して、
久志は、美希に憑依していた康弘から聞いた話を全て話したー。
その上で、「もう、大丈夫だから」と、久志は美希の手を優しく握りしめたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数日後ー
「うああああ…うああああああああ~~~!」
酔っぱらった男が、路上で悲鳴を上げながら、
ごみ置き場に向かって突っ込んで、醜態をさらしていたー。
憑依で、乗っ取った身体を酔わせていた迷惑な憑依人・康弘だー。
康弘は、久志に追い詰められたことに、強い恐怖を覚えて、
あの日から、酒に溺れるようになっていたー
「たすけて たすけて ひぃいいいいいいいいい!!」
毎晩のように、夢に久志が出てきて
康弘は怒鳴られているー。
ごみ置き場で酔いつぶれた康弘は、
うわごとのように「ひぃぃぃ 来るぅ くるぅ…」と、呟き続けるー。
本質的に小心者な彼にはー
もう2度と、憑依などすることはできなかったー
おわり
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
コメント
迷惑な憑依人は無事に(?)撃退されました~!
追い詰められたときも、美希の身体を生かして(?)
うまく立ち回れば、いくらでも何とかなった気がしますけどネ~笑
彼にはそれはできませんでした!☆
お読み下さりありがとうございました~~!
コメント
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あら、ここは恨みに思って久志に憑依して酔っ払ったまま強姦させて復習するとかいうエンディングじゃないの?w
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コメントありがとうございます~!
それも面白そうでしたネ!!笑
ダークで終わらせるなら、ぜひ書いてみたいエンドでした!☆
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ここまでチキンで小物な憑依人も珍しいです。
少し凄まれたくらいで何もかも自白するなんて。
いくら激怒していても、久志に美希を傷つけたりとかはできなさそうなんだから、逆に脅迫して言いなりにすることもできたでしょうに。
でも、康弘が小物で久志も美希もラッキーでしたね。
もし康弘が他の話みたいに狡猾で最悪な憑依人なら二人共地獄を見ることになったでしょうから。
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コメントありがとうございます~!
私の作品には、そういう憑依人があまりいなかったので
今回はあえてそうしてみました~!
自分が絶対有利な立場だったのに、彼は自滅してしまいましたネ…!