<憑依>ポゼチューバー③~栄光と転落~(完)

乗っ取った身体で
成功者への階段を駆け上がった彼。

その先に、待ち受けている景色は…?

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「---ふぁぁぁぁ!すっげぇええええええええ!」
銀行の口座残高を見つめながら、
網タイツ姿の魅音が嬉しそうに叫ぶー

魅音を乗っ取っている輝明が
これまでの人生で一度も見たことのないような
金額が、そこには表示されている。

まさに”夢”と言ってもいいー。

魅音を乗っ取ってから半年ー
魅音の身体はすっかり輝明に馴染み、
輝明好みに完全にカスタマイズされていたー

最初は女の身体に戸惑ったこともあったけれど、
半年も魅音として生きていれば、
トイレにも、生理にも、胸にも、アレがないことも
何もかも、慣れてしまうー。
人間とは、そういう生き物だー。

魅音の身体での動画配信は大成功だったー。
程よい刺激と、甘い誘惑、そして魅音の可愛さを生かせば
大したことのない動画であっても、拡散され、
視聴数を稼ぐことが出来るー。

そして、一度軌道に乗ってしまえば、
なんてことのない雑談であっても、相当な視聴者がつく。

ツイッターもそうだ。

「おはよー!」とあいさつするだけで、いいねが100以上ついたりする。

輝明が「おはよー!」と言っても、いいねなどつかなかったのにも関わらず、だ。

”かわいいは正義”
魅音はその考えをさらに強めていたー。

「-こんなにお金が使えるなんて、へへ、夢みたいだなぁ」
魅音は口座残高を見つめながらニヤニヤとするー。
自分の網タイツをすりすりと触りながら、
ニヤニヤが止まらないー

動画配信による収益もー
コスプレ衣装を披露している有料サイトも、
とにかく、最高だったー

だがーー
問題が起きたー

「---え…あ、、はい、、はい、わかりました」
魅音が、玄関先で、アパートの大家に頭を下げているー。

”苦情”が入ったのだー
魅音の声がうるさい、とー

「チッ」
魅音が玄関を閉めると同時に舌打ちするー。

最近、右隣りの隣人が引っ越して、新しい男が入って来たー
そいつが、苦情を入れたのだろうー。

「--ケッ!かわいい女の声が家にいながらして聞けるんだから
 喜べよ!バカが!」
魅音の声でそう叫ぶー

思わず悪態をついてしまうー
しかし、すぐに「あ、いけないいけない♡」と、我を取り戻すと、
魅音は再び動画の編集を始めたー

しかしー
苦情が入るー

後日ー
再び大家から注意を受けた魅音は、
舌打ちをしたー

「くそがっ!」
壁を叩く魅音ー。
動画配信が、これでは十分に行えないー
ゲーム実況をするにも、やはり声がー
声が必要だー。

”引っ越すか?”
魅音は、そうも思ったが、それもできなかったー

何故ならー
魅音の世間での評価は”大学中退の無職”なのだー。
せいぜい、”大学中退の個人事業主”と言ったところかー

成功しているとは言え、
テレビにも出て来るような超有名動画配信者にはなっていないー

安定して何年も収入を稼いでいるのであれば、
良いのかもしれないが、
まだ魅音は、デビューしてから1年も経過していないー

そのため、世間の評価は、厳しいー。

仮に引っ越そうとしても、審査で落ちるのがオチなのだー
家を借りるにも、審査に通れないと、入居できないー。
そして、一軒家を買ってしまうほどの資金力はまだないし、当然審査に落ちる危険があるー

「--この女の実家に戻るか?」
魅音はそう呟くー
魅音の実家は裕福な家庭であることが分かっているー

魅音を乗っ取ってから、極力関わりを避けてきたがー
場合によってはー

「いや、だめだ」
魅音は胡坐をかきながら、ソファーに座ると
何度も何度も舌打ちを繰り返したー。

その日からー
隣人に配慮しながら動画を収録するようになったー。

だが、ある日ー

「--おい」
スーパーから帰宅した魅音に、背後から声が掛けられたー

振り返ると、
そこにはピアスをつけた茶髪の男がいたー。

右隣に越してきた隣人の、川藤(かわとう)だー。

「--え、あ、はい」
魅音が言うと、川藤は舌打ちしながら呟いたー

「テメェいつもいつもうるせぇんだよ 
 いい加減にしろよ?」
川藤が魅音を睨むー

壁ドンされるような形になってしまって、
魅音の身体は激しく震えたー

「ーー!?」
言い返そうと思ったが魅音の身体の震えが止まらず、
言葉すら吐き出すことが出来ないー

輝明自身も、人と争うようなことが得意ではなかったがー
こんな壁ドンもどきの状態で震えてしまうほど臆病ではないー

しかしー

「--はっ、、、あ、、、、あ、、、っ… う…」
動悸が止まらなくなって、魅音は川藤から逃げるようにして
部屋の中に駆け込んだー。

過呼吸のような状態になってしばらく苦しんだ魅音はー
自分の手を見つめるー

「なんだ…今の…?」
魅音は震えながら、そう呟くー

明らかに”自分の意思”と反した反応が身体に出たー
もちろん、魅音に憑依している輝明も
ある程度は驚いたが、過呼吸を起こすようなほど、
驚いてはいないー。

「-----!」
魅音はハッとしたー。

憑依する前のこの子ー
確か、魅音は、大学で男子から乱暴を受けて、
精神的なショックを受けて、退学したと聞いたー。

ニートになっていたのも、ボサボサ頭で引きこもり状態に
なっていたのも、それが原因なのだと思うー。

「----この子の身体が…無意識で反応してしまうのか…?」
魅音はそう呟いたー

今、魅音の身体と意識を完全に支配しているのは輝明だー

しかし”大学で男子に乱暴された”という強いトラウマが、
魅音の身体を乗っ取っている輝明の意識とは無関係に
魅音の身体が激しい拒否反応を起こしてしまうー

「くそっ!今は俺の身体だぞ!」
魅音はそう呟くと、ますます動画配信に制限がかかってしまう現状に舌打ちをしたー。

だがー
魅音の身体をフル活用すれば、そんなことは、
解決できたー

隣人の川藤が出かけている時間に動画を撮影し、
川藤が帰宅したあとは、声や物音を絶てない動画を撮影したー。

動画の投稿数が減った埋め合わせは
魅音の身体でかなりきわどいギリギリエッチな動画を投稿することで
埋め合わせたー

その結果ー
さらに、視聴数は伸びたー。

魅音のエッチな姿をギリギリ晒すような動画配信で、
爆発的に再生回数が伸びたのだー!

「あはははっ♡ あははははは!たまんねぇ」
魅音は笑いながら、動画配信による収益を確認するー

笑いが止まらないー
本当に愉快だー

けれどーーー

「----!!!!!」
魅音は、凍り付いたー

「---------------あ?」
しばらく、何が起きたのか理解できなかったー。

画面を見て、何度も何度も、現実逃避をする魅音ー

あまりにもエッチなことをしすぎた結果ー
魅音の動画配信チャンネルは永久凍結されー
動画配信による収入も、凍結されたー

「あ、、う、、、うああああああああああああ!?」
魅音が思わず叫んでしまうー。

魅音の収入の大部分がこれで失われたー

運営に問い合わせたが、
”規約違反”とバッサリ切り捨てられて反論できなかったー

誤凍結ではなく、
事実なのだからー。

川藤のことを気にして、配慮した結果、
動画の投稿数にどうしても影響が出たため
エロ方面に走ろうとしたのは事実なのだからー

魅音は焦ったー
だが、魅音にはコスプレ衣装を晒す有料のサイトが
まだ残っているー

ファンを増やせばー
さらにーーー

しかしー
それも続かなったー

魅音の焦りがツイッターに出てしまい、
やがて、ファンを失う結果になったー

魅音は、頭をイライラしながらかきむしるー。
動画配信者としての道は、ここで、終わったー

「くそっ!くそっ!」
魅音は怒り狂ったー。
輝明の身体はもう、とっくに死んでいて
戻る身体もないー

どうするー?
どうするーー?

いやー
かわいいは正義だ!

魅音は、すぐに行動したー

”身体を売る”ことにしたー
この身体ならー、と
夜の仕事をはじめー
さらにはAVにも出演し始めたー

結果ーー

すぐに、収入は回復したー
慣れない仕事で大変だがー
夜の仕事も、AVも輝明からしてみれば
”興奮”したー

魅音にこんなことさせているなんて、と
激しく興奮したー

「あははは!あははははははは!」
輝明が、輝明であったことには得ることのできないような
収入を手に入れて、有頂天になる魅音ー

派手に夜の街で遊びー
AVに出演したり、夜のお店で働いたりー
身体を使った仕事を繰り返したー

魅音の両親からは絶縁されてしまったが、
別に、魅音を乗っ取っている輝明からしてみれば
”身体の血縁関係”はあれど、事実上、血縁関係でもなんでもない。

絶縁などされてしまっても、どうでも良いことだー。

その結果ー
ローンを組んで一軒家を購入、
引っ越しすることにも成功したー。

もう、隣人の川藤のことを気にする必要もない。
魅音は、自宅で動画配信も再開して、
既にAV女優としての知名度も広まっていた魅音は、
さらに収益を獲得することに成功したー。

「-ひゃっは~~~!♡
 ベリーイージーな人生だぜぇ!」
魅音は札束を手に叫んだー。

夜のお店では”深い事情”があって仕方なく働いている人間もたくさんいるー。

しかし、魅音は違うー。
”中身は男”である魅音からしてみれば、
夜の街で働くことや、AVでエッチなことをすること自体も
快感でしかなかったー

「はははははっ!はははははははっ!」

しかしー
それは長くは続かなかったー

数年後ー

「-うちの店をやめてもらいたいー」
働いていた夜のお店から、そう言われたー。

「---もう、魅音ちゃん、仕事ないよ」
AVの監督から、そう言われたー

動画配信の視聴者数も落ちていくー。

魅音を乗っ取った輝明は、
”女”を武器にー
いや、”それ”しか武器にしてこなかったー

”中身”を全く磨いてこなかったー

それ故にー
全盛期を超えて、”老い”が始まった魅音は、
各所から、簡単に切り捨てられたー

”若さと美貌”を利用することしか考えなかったー

その、ツケが回ってきたのだー

収入は一瞬にしてほとんどなくなりー
頼みの動画配信も、「若さ」と「アカウント停止にならないレベルのエロさ」を
利用していた結果ー
20代後半にして”ババア”と簡単に切り捨てられるようになってしまったー

ローンの支払いも、すぐにできなくなったー

「--くそっ!!!このババアが!」
魅音を乗っ取っている輝明はーー
それを”魅音の身体に魅力がないからだ”
と、魅音のせいにしたー。

何のスキルも磨いてこなかった輝明はー
”ローン”を払うことのできるレベルの仕事にたどり着くこともできず、
既に魅音の両親からは絶縁されておりー

打つ手なしーーーー

その数週間後ー
魅音は、家から姿を消したー。
以降、魅音の姿を見た人間は、誰もいなかったのだというー。

”女なら楽勝だぜ”
そう、甘い考えで他人に憑依してしまった彼はー
身を滅ぼしてしまったのだったー

おわり

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コメント

輝明くんも、うまく考えて立ち回れば、
成功できたかもしれませんネ~

お読み下さり、ありがとうございました★!

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