<憑依>ポゼチューバー①~配信者~

何をしても再生回数を伸ばすことのできない配信者ー。

彼が、思い悩んだ末にたどり着いたのが、
”憑依”で、あったー。

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「---くそっ!」
男は、パソコンの画面を見つめながら悲痛な叫びをあげたー。

柴田 輝明(しばた てるあき)-
動画配信サイトで、動画配信をしている男だー。

大学生の彼は、
就職したものの、うまく行かず、
”動画配信で食っていく”と宣言、
上司の顔面に辞表を叩きつけた上で、
コンビニバイトをしながら、動画配信者として成功しようと目論んでいたー

それから、1年ー

”再生回数199”

という数字がモニターに表示されている。

「うがあああああああああああああっっっ!!!!」
頭を抱えて悲鳴をあげる。

叫ばずには、いられない-

再生回数やチャンネル登録者数を増やすための
勉強もしたし、
色々な動画を作ったー

ゲーム実況もしたし、
多額の費用を使って、美少女キャラを作って配信したりもしたー。

一歩間違えれば”迷惑系”と言われてしまうような、
ちょっとやりすぎな配信もしたー。

それでもー、
それでも、再生回数は増えなかったし、
チャンネル登録者数も増えなかったー

それが、現実だー。

1年経った今でも、チャンネル登録者数は427人のままだし、
ついでに数字も不吉だし、
もう、ダメだー

と、彼は思い始めていたー

「くそっ!俺に足りないものはなんだ!?」
輝明が叫ぶー

動画の投稿頻度は、十分なはずー
動画の質も、輝明自身は悪くないと思っているー。
コメントに対する応対も悪くないはずだし、
ツイッターなどでPRもしっかりとしているー

それでも、それでも伸びない!

なぜ!
どうして?

自問自答を繰り返す彼。

そんな中ー
彼は、おもむろにピアノの演奏動画を検索してみたー。

輝明自身も、ピアノを高校生の時まで習っていたこともあり、
なかなかの腕前だ。
これは、輝明がそう思い込んでいるわけではなく、
客観的に見ても、ある程度の”腕前”があるのは事実だー。

しかし、ピアノ演奏動画を撮影しても、
やはり、伸びないー

流行りの列車の映画や、
流行りのドラマの主題歌などの演奏もしたが
やはり、伸びないー

やけくそになって、ベートーベンを演奏したが
やはり、それもダメだったー

「俺に足りないものはー」
うわごとのように呟くー

「俺に足りないものは、なんだ。」
「俺に足りないものは、なんなんだ」

ピアノの演奏動画を見つめる輝明ー

その中にー
ひときわ、再生回数が多いものがあったー

「---------!!!」
輝明は表情を歪めるー。

その配信者は、
コスプレ姿で、胸を強調するかのような格好で
ピアノを演奏していたー。

ピアノの音色は、確かに綺麗だー。

しかしー
輝明も腕前だけは決して負けていない、と
自分で思う。

「--これだ!!!!!!!!!!」
輝明は叫んだー。

「俺に足りないものは、、これだったんだ!!!」

どうして、動画の再生数が伸びないのかー。
単純に、輝明には才能がなかったのかもしれないー

けれど、輝明は現実を受け入れることは、できなかったー。

輝明はさっそく行動に移したー
同じように、ピアノを演奏しているのに、
同じような楽曲を、同じような腕前で披露しているのにー
それなのに、再生回数が伸びないのはー

「こういうことだったのか!!!!!!!!!」
輝明は、早速購入してきたメイド服を着て、
そのまま顔を写さないようにピアノを演奏したー

だがーーーー
再生回数は、ほとんど伸びなかったー

”男じゃん”

”何こいつ?”

”っていうか他の動画で男なのバレバレじゃん”

辛辣なコメントが並ぶー

「--男がメイド服着て悪いかああああああああああ!!」
輝明はパソコンの画面を殴りつけて、
指を骨折したー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

病院で治療を受けた輝明は、
怒りの形相で、家へと帰宅するー

男がメイド服を着ちゃいけないのか?
何故再生回数が伸びない?

いやー
”ニーズ”に俺が答えていないのかー。

「--胸か?俺に足りないのは、胸なのか?」

料理の動画の中で妙に再生回数が多いものを見つけて
輝明は首を傾げるー

「な、、ならー
 ぼー、、ボールで胸を演出して…!」

子供の頃に購入したボールを服の中に突っ込んで
それを胸に見立ててみたが
すぐに虚しくなって、輝明は膝をついたー。

「くそっ……俺に足りないのは…女体だったのかッ…」

輝明は悔しそうに歯を食いしばるー

だが、その時だったー。
偶然ー
パソコンに表示されている”とある広告”が
目に入ったのだー

その広告にはーー

”ポゼチューバーを目指そう”と
書かれていたー

「ポゼチューバー!?」
輝明はそう叫ぶと、何の迷いもなく、その広告をクリックしたー

そして、内容を読み終えると、
輝明は笑みを浮かべて頷いたー。

「これだーーー…
 これだ!!!!!!!!!!」

大声で叫ぶ輝明ー

表示されていたのは”憑依薬”の注文画面ー。

再生回数を増やすためにはー
チャンネル登録数を増やすためにはー

たくさんの人に見てもらうためにはっー?

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
輝明は、憑依薬を注文しながら、叫んだー

「--美少女の身体が、いるッー」

輝明は、そう呟くと、静かに笑みを浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

数日後ー

憑依薬が届いた輝明は、迷うことなく、
その憑依薬を服用したー。

「すげぇ…」
幽体離脱した輝明は、早速動画配信をするための”身体”を
探したー。

アカウントは新しく取得したー。

名前は”ポゼチャンネル”-
”色々な身体で、色々なことをします”と、いうキャッチコピーに
しておいたー。

「----!!」
幽体離脱して、ふわふわしていた輝明は、
胸の大き目な女子高生が、自宅の部屋でピアノを弾いている光景を目にしたー

「この子だー」
輝明は笑みを浮かべるー。

「ポゼチャンネルの動画配信第1号は、この子だっ!」

そう叫ぶと、輝明は迷わず、その少女に憑依したー

「んっぁっ!?」
ピアノを弾いていた少女がビクンと震えて、ピアノが無様な音を鳴らすー。

「--はぁっ…はぁ…ひ、、憑依できた…」
少女の声で呟く輝明ー。

「---ー」
輝明は、ふと、”でも、他人の身体に憑依すると、
自分の機材とかが使えないな”と、少し残念そうに呟いたが、
今回は”第1回目”ということで、この子のスマホで
動画を撮影することにしたー。

「どうすっかな~…ってか、この子、胸でかいな
 制服だから女子高生だと思うけど」
少女の声でそう呟くと、
生徒手帳を確認して、この子が高校生であることと、
名前が藤香(ふじか)であることを突き止めたー。

「-ま、今回はテストだー」

胸が見えるようなカメラアングルで
ピアノの演奏を始める藤香ー。

演奏前にわざとらしく足を組んだ状態から始めるー

”うあっ”
ピアノの演奏をしながら、藤香は思うー

”この子、綺麗な手だな…”
とー。

これならー
動画配信者として成功できるかもしれないー

色々な身体で、色々なことをすればーーー
もしかしたらーーー

藤香の身体でピアノの演奏を終えると、
輝明は満足そうに、藤香の身体から抜け出してそのまま帰宅したー。

動画の準備を早速終えて、
藤香の身体でピアノを演奏した動画を投稿するー。

チャンネル登録者数は増え、再生回数は
今まで輝明が投稿したどの動画よりも、
高い回数を記録していたー

「やったぜ!」
ガッツポーズする輝明ー

その日から、輝明は藤香の身体に定期的に憑依して、
ピアノの演奏動画を投稿したー。

だがー
問題に直面したー。

「---…」

このやり方では、”顔出し”はできないし
”声”も出せないー
ツイッターのアカウントなどで宣伝することもできないー

藤香のようなかわいい身体なら、
”顔だし”すれば、さらに上を目指せるはずなのだー。

「---”レンタル”じゃだめだー」
輝明はそう呟いたー

今のやり方では、動画を配信するときだけ身体を
乗っ取っているため、
それ以外の時は、乗っ取っている身体が意識を
取り戻しているー。

藤香の身体はあくまでも一時的にレンタルしている状態で、
藤香から輝明が抜ければ、
藤香は正気を取り戻すー。

輝明自身にも人生があるし、
バイトもあるからだー。
それに、ずっと藤香に憑依したままでは
輝明の身体が死んでしまう可能性もある。

だから、藤香に憑依して、動画を撮影して、投稿して、
藤香に気づかれないように部屋を片付けて、
そして、身体を返す、を繰り返しているー

しかしー
これでは再生回数の伸びに限界があるー

「もっと、もっと上を目指すためにはー」
輝明は歯ぎしりをするー

顔を出したり、
ツイッターのアカウントで大々的にPRをしたりー
一時的ではなく、もっと動画に時間をかける必要があるー。

「--レンタルではなく、貰う必要があるなーー
 ”身体”をー」

そう、自分の身体と乗っ取る身体を行き来しているだけではダメだー。
自分の身体を捨てて、身体を奪う必要があるー。

「---」
輝明は、その日から”物色”を始めたー。

藤香の身体で作った”スイートメロディーチャンネル”は、
捨てることにしたー。
輝明がやっていた”テルチャンネル”より十分再生数も
チャンネル登録数も増えたが、限界があるー

藤香本人にバレないような運用ー
自分の身体と行き来しながらの憑依ー
これでは、これ以上、伸びないー

「--俺が配信者として成功するためにー
 身体を、くれ!」
輝明はそう思いながら、霊体になって
宙を浮遊するー。

誰かの身体を、”借りる”のではなく、”奪う”-

そのためには、美人で、しかも、時間をたっぷり使える女がいいー。

輝明はそんな風に思いながら”物色”を続けるー

年齢はある程度若くー
美人か美少女ー
そして、できればフリーターか、ニートがいいー
もちろん、一人暮らしであることが前提だー。

動画配信者になるためには、
最適な身体をーー

「---んっ!!???」
輝明は、ある女性を目撃したー。

アパートのゴミ捨て場にやってきた、
ボサボサ頭の若い女ー。
服装も汚らしいが、顔はとても可愛い気がするし、
身体つきは、なんだかエロいー

「---!!」
輝明は、その女が部屋に入っていくのを確認するー

霊体のまま部屋に入りー
女が何者なのか確認したー。

女は、高校卒業後に一人暮らしを始めたものの、
大学を辞めて、現在はニートであり、
裕福な実家からの仕送りで暮らしている女だったー。

永橋 魅音(ながはし みおん)-

大学で乱暴され、心を閉ざし、今はニートになってしまっている
元女子大生ー。

今の容姿は、ボサボサ頭に汚らしい服、という容姿だったがー
輝明は笑みを浮かべるー

「かわいいじゃん…
 俺がカスタマイズしてやるよ」

輝明は、ニヤリと笑いながら、
”きみに決めた”と、”動画配信者としての新しい身体”として
永橋 魅音の身体を奪ったのだったー

②へ続く

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コメント

動画配信者の憑依モノですネ~!
今回は、本番の憑依対象を見つけるまで!でした!

続きはまた明日デス~!

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