空腹になると性別が変わってしまう不思議な転校生ー。
そんな秘密を知られてしまった
彼の運命は…!?
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「----あ…」
「----…」
”空腹になると”性別が変わってしまう高校生・薫はー
持ち込んでいた軽食を盗まれてしまったことでー
空腹を解消することが出来ずー
”男”になってしまったー。
まだ昼休みー
”女子高生”から”男子高校生”になってしまった薫は戸惑うー。
ジャージ姿の薫を見て、
クールな男子高校生・孝志は少しだけ表情を歪めたー
「…桐原さん?」
孝志の言葉に、
薫は首を振ったー
「わーーわた、、わ、、ぼ、僕は、桐原さんじゃないので」
薫はそう言って足早に立ち去ろうとするー
だがーー
孝志は、薫のジャージを指さしたー。
「ーーー桐原って書いてあるけど?」
とー。
「---こ、、これは…あの…その…」
「---…桐原さんだろ?」
孝志の言葉に、薫は、顔を真っ赤にしながらー
「---…うん」
と、だけ呟いたー。
校舎裏の古びたベンチに座りながら
男になった薫が落ち着かない様子で語るー
自分は、生まれた時から、空腹になると
性別が変わる体質で、
原因は分からない、ということー
これまでも、学校でこの体質がばれないように
工夫しながら過ごしてきたけれど、
いつも何かトラブルが起きて、この体質がバレてしまって、
その都度、転校してきたことー
転校するたび、前の学校の生徒たちに少しでもバレにくくするためー
と、いう理由から、「男」「女」を切り替えていることー。
前回の学校では「男」として過ごしていたことー。
体質のことがバレてしまうと
周囲は薫を色眼鏡で見るようになり、
次第に耐えられなくなって、薫はいつも、最終的に
”転校”していることー
それらを、全て語ったー。
クールな男子高校生の孝志は
「そんなこともあるんだな」と、呟くー。
「--お、驚かないの?」
薫が言うー。
「---…ま、男の桐原さんも、イイ感じじゃん」
孝志はそれだけ言うと、
後は何も言わなかったー
「--早退」
孝志が言う。
「-え?」
薫の言葉に、
孝志は繰り返した。
「-今日は早退しろよ。
…先生たちは、このことを知ってるのか?」
孝志の言葉に、
薫は「校長先生は、両親が説明して、知ってると思う」
と、返事をしたー。
孝志は「じゃあ、俺が早退を校長先生に伝えて、校長先生から
なんとか他の先生には伝えておいてもらうようにするからー
今日はもう帰れ」と、周囲を確認しながら呟いたー
「え…でも…?」
薫の言葉に、
孝志は「-次に性別が変わるまで時間が掛かるんだろ?
桐原さんの言う通り、絶対に桐原さんを変な目でみるやつは
出てくると思うから」
と、”あとは俺が上手くやっとくから、桐原さんはこのまま下校したほうがいい”と告げたー
薫は迷いながらも頷くー。
5時間目と6時間目の授業が受けられなくなってしまうもののー
このまま自分の秘密が、知れ渡ってしまうよりはマシだー。
「---ごめん。ありがとう」
薫がそのまま慌てて正門から外に出るー。
孝志は、そんな薫の後ろ姿を見つめながら
少しだけ笑みを浮かべるー。
その”意味”を薫は、まだ知らなかったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
薫は、帰宅すると頭を抱えたー
「僕…どうしてこんな身体なんだろう…」
僕はー男なのかー
女なのかー
自分でも分からないー。
薫は、ため息をつくー。
孝志というクラスメイトのことは
まだ、そこまで深くは知らないー。
”目”を見て
薫のことをあざ笑っている感じではなかったため、
本当のことを打ち明けたものの、
やはり、彼だって、そのうち薫のことを
奇妙な目で見るに決まっているー。
「---はぁ…」
薫は、今一度ため息をつくー。
「--またお母さんとお父さんに転校をお願いしないと…」
両親にも申し訳ない、と思いながら薫は、頭を抱えたー
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日ー
「--あの…昨日はありがとう」
薫が孝志にお礼を言うと、
孝志は「うん?あぁ、いいよ、全然」とだけ答えたー。
周囲は薫の秘密に気付いた様子はなく、
孝志は、誰にも言いふらしていない様子だったー
「--あの、わたし…」
薫が、改めてお礼を言おうとするも、孝志は少しだけ微笑んでから
「いいさ。」と、だけ呟いたー。
薫は落ち着かない様子で座席に座るー
生まれた時から性別が変わる体質であるため、
薫は”自然と”女の姿をしているときは
女子として振舞うことが出来るし、
男の姿をしているときは”男子”として振舞うことが出来るー。
「---」
薫は孝志の方を横目で確認するー
”今のところ”
孝志は、誰にも薫のことを言いふらしていない様子だし、
噂が広まっている様子もないー
それからも、薫は”自分の性別が学校で変わらないように”
注意しながら学生生活を続けたー
薫はクラスの仲間ともすっかりなじみー
今日も、楽しそうに話をしているー。
孝志は、薫の”体質”を知ってからも
特に何も態度を変えることもせず、
驚くこともしなかったー。
孝志は友達もいるが、
いつも冷静な感じで、とてもクール…
そういう性格なのだろうと、薫はそう思いながらもー
そんな孝志のことが気になっていたー
”-っていうか、わたし、恋愛とかどうすればいいんだろう…”
思春期真っただ中の薫はそんな風にも思っていたー
自分は男子でもあり、女子でもあるー
この”曖昧”である自分は
男子として女子を好きになること
女子として男子を好きになることー
どっちにすれば良いのか、自分でも
よく理解していなかったー。
「----…」
転校してきてから3ヵ月ー
薫が下校しようとしていると、孝志から
呼び止められたー
「--順調か?」
孝志の言葉に、
薫は「うん。あの時は、黙っててくれて本当にありがとう」と
嬉しそうに答えるー。
孝志は「そっか。よかった」と呟くー。
薫は知っているー
薫が学校で男に戻ってしまった
あの日から孝志は、昼食を弁当ではなく、
コンビニで購入したおにぎりやパンに変えていることをー。
何故、急に変えたのかー
本人に聞いたことはないー
けれどー
クラスの他の友達が
”お前、最近弁当やめたのか~?”と揶揄っているのを何度か
見たことがあるー
と、いうことは、薫が転校してくる前から
孝志はずっと自宅から弁当を持ってきていたのだろうー
しかしー
何故だか、あの日から孝志はコンビニのおにぎりやサンドイッチ、パンが
中心だー。
しかもー
薫に事あるごとに「今日はちゃんと、食べ物あるか?」と聞いてきてくれるー。
きっとー
”もし、薫が食べるものが無くなってしまったときのため”に
いつでも薫に渡すことが出来るようにー、と
手作りの弁当から、コンビニで買ったものに昼食を変更したのだとー
薫はそう思っていたー
”わたし、自意識過剰かな…?”と
内心で苦笑いしつつも、
薫は、何故だかそうとしか思えなかったー。
「----…」
孝志は、”このあと、時間ある?”と
少しだけ笑うー。
「--え、あ、うん…」
薫は少しだけ不安そうな表情を浮かべたー。
やっぱりーー
この孝志からもー
何か、女体化・男体化のことを言われるのだろうかー
薫はそう思いながら孝志についていくー
「--桐原さんも、俺のこと、きっと無表情なやつだと
思ってるよな。
リアクションの薄いやつだってー」
孝志の言葉に、
薫は一瞬戸惑いながらも、
「え…そ、そんなことないよ?
クールでかっこいいなぁ~」って、と返事をするー
孝志はー
「ま、同じようなもんだろ」と苦笑いするー。
そしてーー
孝志は、薫を真剣な表情で見たー。
「---俺、桐原さんのことが好きだー」
孝志は顔を赤らめるー。
「--えっ!?」
薫は驚くー
自分を何故だか守ってくれるような孝志に
好意を抱いていた薫ー
しかし、まさか孝志から告白されるとは思ってもみなかったー。
「---え、、、わ、、わ、、わたしを!?
わ、、わたしなんて…ほ、ほら、
女子だか男子だかも曖昧だし…!
知らないならともかく、藤本くんは
わたしの体質のこと、知ってーーー
「--だからだよ」
孝志が薫の言葉を遮ったー
「--桐原さんだから…
俺、、桐原さんだから
好きになったんだ!」
顔を真っ赤にして叫ぶ孝志ー
いつものクールな様子は、
まったくと言っていいほど、
そこには存在していないー。
「--え、、えっ!?」
戸惑う薫ー。
「--あぁぁぁぁ、、もう、だめだーー」
「--!?」
薫は驚いたー
目の前にいる孝志の髪がみるみる伸びていきー
胸が膨らみー
体格が変わっていくー
声が高いものに変わっていきー
そして、苦笑いして、薫の方を見たー
「---これで、わかった?」
孝志が微笑むー。
「---え…もしかして…」
薫は唖然としたー
目の前にいる孝志が、
男から女に変わったー。
目の前で”女体化”したのだー
「--俺は、君と同じなんだ」
孝志がかわいい声で呟くー。
「---桐原さんとはちょっと違うけど、
俺は、感情が高ぶったりすると、、
その、、性別が変わっちゃうんだ。
だからー
その、、極力、学校では感情を表に出さないようにしてる」
孝志の言葉に、
薫は「え…、、、」と驚くー
自分と同じような体質の人間なんて、いないと思っていたー。
孝志は説明するー
「孝志」という名前は男体化している際の偽名で、
薫とは違い、孝志は、生まれた瞬間には女の子だったのだというー。
本名は藤本 貴恵(ふじもと たかえ)だがー
普段は男の姿で行動していることが多いのだとかー。
孝志もまた、薫と同じようにこれまで転校を繰り返してきていて、
自分の性別が変わらないように、
学校ではなるべく感情を表に出さないようにしているー
とのことだった。
「--それで…わたしのこと知っても…何も…」
薫は呟くー
孝志の反応は、今まで、薫の体質のことを知った人間とは
明らかに異なっていたー。
薫のことを一切からかうようなことも、好奇心を抱くようなこともせず、
その上、薫が万が一空腹になってしまったときのためにと、
薫でも食べられるようなコンビニで購入したものをいつも鞄に
忍ばせていたー
「---…俺には、桐原さんの苦労がよく分かるからさ」
孝志が言うー
可愛い声でー
男子の制服を着た女子が目の前で、微笑むー
ドキッとしてしまう薫ー。
「--俺と桐原さんならー
男であって、女であってもーー
問題ないだろ?」
笑う孝志ー。
薫は迷った末に、
「----よろしくお願いしますー」
と、孝志からの告白を受けるのだったー
・・・・・・・・・・・・・・・・・
数週間後ー
「--あのカップル、仲良さそうだな~!」
「しかも美男美女、リア充爆発しろ!」
薫たちの同級生である
男子高校生二人組が、休日に立ち寄った映画館で
見かけたカップルを見つめながらコソコソと笑いながら
話をしているー
「---あ~!楽しかった」
男の方が呟くー
「--じゃあこのあとはご飯にしようか」
女の方が笑うー
薫らの同級生二人は知らないー
このカップルが、薫と孝志であるとー。
「-今日は僕が男でー
孝志が女の子!」
薫が笑うー
「--そんな風に切り替えできるのすごいよなぁ」
女子の姿をした孝志が笑うー
孝志はどっちの姿でも、言葉遣いは男っぽいままー
「--ふふふ、僕の特技だからね~
来週のデートは逆で!」
”特殊な体質”
それに苦しんだこともあるー。
けれど今はー
”彼女”と”彼氏”両方の立場を楽しめる
この体質に
薫は少しだけ感謝したのだったー。
おわり
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コメント
特殊な感じの女体化(男体化要素も…!)のお話でした~!
今日もお読み下さり、ありがとうございました!
明日からは崩壊女(憑依)を書いていきますよ~!
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