<女体化>不思議な転校生①~彼女の秘密~

ある日、可愛い子が転校してきたー。

けれど、その子には重大な秘密が
隠されていたー…!

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「--今日は新しい仲間が、一人増えます」
担任教師が、教室の前に立ちながら、そう宣言するー

”転校生が来る”
数日前からそんな風に噂されていたが、
噂は本当だったのだ、と、
生徒たちがざわめくー

”かわいい子かな?”
”イケメンじゃないの?”
”いやいや、可愛い子とかイケメンが転校してくるとか
 アニメの見すぎだろ”

クラスの人間がわざめくー

そんな中ー
何事にも動じないクールな男子高校生・
藤本 孝志(ふじもと たかし)は、
騒ぐことなく、前を見つめていたー。

孝志は、小さいころからクールな性格で、
友達はいるのだが、
友達からも”お前は反応薄すぎ”と言われてしまうほどだったー。

「---!」
ガタッ!

そんな孝志がー
教室に入って来た転校生を見てー
思わず机から、半分立ち上がったー

おぉぉぉぉぉ!
男子生徒を中心に、声が上がるー

教室に入って来たのはー
”美少女”と表現するにふさわしいー
可愛い少女だったー

「--初めましてー
 桐原 薫(きりはら かおる)ですー
 よろしくお願いします」

薫が、頭をペコリと下げると、
先生が「桐原さんは、家庭の都合でこっちに転校してきて
まだまだ分からないことだらけだ。
みんな、仲良くしてやってくれ」と、
転校生の紹介を締めくくったー

”おい誰だ!かわいい子はアニメの世界だけって言ったやつは!”
男子のひとりが叫ぶー

笑い声が教室に響くー

薫は、先生に案内された座席に座るー

それは、孝志の隣の座席だったー

「--よろしくね」
薫がにっこりとほほ笑むー

「---よろしく」

薫のあまりの美少女っぷりに
机から思わず半分立ち上がってしまった孝志だったが
既に冷静さを取り戻していて、
動じることなく、薫に挨拶を返したー

「--あぁぁ~よりによって、なんで薄杉の横なんだよ~!」
男子のひとりが叫ぶー。

”薄杉”とは、
孝志のあだ名だー。

印象が薄いー、ではなく
”リアクションが薄い”からつけられたあだ名。

孝志も公認のあだ名で、
”上杉謙信みたいで渋いな”という謎の理由で
孝志も気に入っていたー

転校生の話題で盛り上がる教室ー

薫の元に色々話しかけに行く生徒たちー。
だがー
孝志は、その日のうちにあることに気づいたー

休み時間の度に、薫が隠れて
お菓子や、軽食を食べていることにー

孝志は、クールなだけではなく
鋭い洞察力も併せ持っていてー
その洞察力で、
薫が、隠れて定期的に何かを食べていることに
気づいたのだー。

「---ーー」

数日間ー
そんな生活が続いたある日ー

放課後ー
隠れて、栄養ゼリーのようなものを食べている薫を見かけたー

「-ずいぶん食べるんだな?」
孝志が背後から声を掛けると
「ぶふっ!」と、薫が驚いた様子で振り返ったー

「あ、、あ、、え、、えと、、薄杉くん…だったよね?」
薫の言葉に、
”それは本名じゃないけどな”と思いながら
「-よく食べてる気がするけど…そんなにお腹が空くのか?」
と、孝志が呟くー。

薫は
初日に、孝志が”薄杉”と呼ばれているのを聞いて
孝志の本名が薄杉 孝志だと思い込んでいるー。

「--え、、あ、、あぁ、、いや、そういうわけじゃないんだけど」
薫は苦笑いすると、
栄養ゼリーを恥ずかしそうにしまうー。

「---ーーわ、、わたしがこっそり色々食べてるの、バレバレ…?」
薫が不安そうに尋ねて来るー

孝志は、
「いや、俺でなきゃ見逃しちゃうぐらいには、うまく隠れられてると思うよ」
と返事をするとー
薫は「ならよかった!」と嬉しそうに微笑んだー。

大食いー
なのだろうか?
体格はとても華奢だが、
大食いの有名人にも、華奢な人間はたくさんいるー

休み時間の度に、何かを食べていないと、
気が済まないぐらい大食いなのかもしれないー

そんな風に思いながら孝志は、そのまま下校したー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「----」
帰宅した薫ー

「---ただいま~!」
薫は母親にそう声を掛けると、
自分の部屋に戻っていくー

しばらくしてー
晩御飯の時間が近づいてくると
薫はお腹のあたりを触ったー

そしてー

みるみると胸がなくなっていきー
髪が短くなっていくー

変わりに腕や身体つきが
男らしくなっていきーーー

美少年ー
と言えるような男子に姿が変わったー

鏡を見つめる薫ー。

「----」

”僕”はー
小さいころからいじめられてきたー

最初は”違う”
どの学校でも、みんな、優しく迎え入れてくれるー

けどー

”僕”は、
空腹になると、性別が変わってしまうー

そんな、特殊体質だったー。
理由は分からないー

けれど、生まれる前の最初の段階で、
何らかの”普通は起こらないこと”が起きて
性別が上手く定まらなかったのではないか、と
医者の先生は言っていたー。

「ーーー」
薫が立ち上がってスカートを脱ぐと、ズボンに履き替えるー。

桐原 薫ー
名前は本名ー。
幸い、男でも女でも通じる名前だったー。

けれどー
彼は、性別が空腹になると切り替わってしまう体質ー

それ故に、学校でも、とにかく空腹にならないように
定期的に何かを食べているのだったー。

薫が転校を繰り返しているのはー
”秘密を知られてしまった”ためー。

性別が切り替わることを知られるたびにー
薫はつらい思いをしてきたー

最初は「すげー!」みたいな反応から始まり、
やがて”まるで宇宙人を前にしたかのように面白がって、性別を切り替えようとしてくる人”と
”化け物を見るかのような目で薫を見て、いじめはじめる人”と
”薫を避けだす人”に、分かれて来るー

人間なんて、そんなものだー

だからー
その都度、薫は転校を繰り返してきたー

前の学校では”男子”として過ごしていたがー
今度は”女子”

これもー
”なるべく素性が分からないように”
1回ごとに切り替えているのだったー

今の学校で失敗して、また転校することになったら
次の学校では男子として過ごすつもりだー。

「---ふぅ」
薫は疲れた様子で座り込むー

一度性別が切り替わると、次に性別が切り替わるまで
数時間あるので、空腹のままでも良いのだが、
学校で切り替わってしまうのは、さすがにまずいー

だから、おやつをこっそり食べたりすることで、
なんとかそれをカバーしている。

「---…」
薫は鏡を見つめながら不安そうに
「僕はー男でも、女でもないのかなー」と
寂しそうに呟いたー。

薫は、生まれた瞬間は男だったため
一応、”男”として、戸籍上などは登録されているー

だがー
本人からしてみれば”自分はどっちでもない”
そんな感じだったー。

「-----今度は、うまくやらなくちゃ」
薫はそう呟くー

翌日の学校でも、薫は楽しくクラスメイトたちと話をしていたー

時折、軽食を食べることを欠かさずー
クールな男子生徒の孝志は、その様子に、いつも少しだけ
心配そうな表情を浮かべていたー

薫は、クラスメイトたちと話しながらー
”もし、わたしの秘密がばれたらー”と、
時折、はかなげな表情を浮かべていたー

この学校の生徒たちも、本当にみんないい人ばかりー

でも、人は変わるー

薫は今までー
イヤというほどそれを見て来たー

薫の秘密を知ったとたんー

薫のことを”クラスメイト”として見る人間はいなくなるー

”奇妙なもの”
”おもしろいもの”
”好奇心旺盛で薫に近づいてくるもの”
”化け物として見るもの”
”避けるもの”

そんな人たちしか、いなくなってしまうー

だからこそ、薫は恐れていたー
自分の秘密が知られることをー

「-----」
クールな孝志は、薫のそんな不安げな
表情を見逃さなかったー

「------……!」
ある日ー
薫は、鞄に入れていた食べ物が
一部、無くなっていることに気づいたー

この学校では最近、
私物の盗難が発生していて、
先生たちが躍起になって犯人捜しをしているー

それに、薫も巻き込まれたのだー

「--(どうしよう…)」
薫は妙にソワソワし始めるー。
このままだと、空腹になってしまって、
男になってしまうー。

「---……どうしたの?」
他のクラスメイトが薫に声を掛けるー。

「ーーーあ、、あの…なんでもない…大丈夫」
薫はそう言いながらも、青ざめ、震えていたー

”性別が変わるー”
そんな秘密を知られたら、
”また”学校にいられなくなってしまうー。

”奇妙なもの”を見て面白がる人ー
”化け物”を見る目で避ける人ー

そんな人たちが次第に増えてー
学校にいられなくなってしまうー

薫は、青ざめた様子で、授業を受けていたー。

それでもー
昼休みまでは、なんとか水筒の水と、
残りのお菓子で誤魔化し、空腹を耐えたー。

「----!」
昼休みー
薫は”限界”を感じたー

生まれた時から、自分のこの
”不思議な体質”との付き合いだ。

”どのぐらい”で限界を迎えるのかは
自分がよく理解しているし、
”あとちょっとで性別が変わってしまう”ことは
自分の感覚として、理解しているー

「----」
慌てた様子で教室から立ち去っていく薫ー。

昼休みになると、パンの販売などが業者によって
行われているー

それを慌てて買いに行ったのだー。

”間に合うかな”
薫は、”ギリギリ”であることを理解していたー

パンを購入している最中に男になってしまったら、おしまいだー。

薫は、体操着のジャージをロッカーから慌てて取り出して、
そのまま走ったー。

”ジャージ”を持ったのには、理由があるー。
薫のこれまでの人生の経験から、
”危ない時”はそうしているー。

万が一間に合わず、男になってしまった場合ー
女子の制服ー
つまり、スカート姿で男子になることになってしまうー。

周囲から見れば”完全に変態”になってしまうのだー。

だから、これまでの学校でも
”危ない時”は、体操着を入れた袋を必ず持ち歩くようにしていたー。

万が一、間に合わなかったときにー
ジャージに着替えれば、男女どちらでも対応できるからー。

「------」
慌ててロッカーからジャージを取り出して、早歩きで、どこかに向かう薫の
姿を見て、孝志は「-----」と不思議そうな表情を浮かべたー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「---早く…!早く!」
パンを購入しようとしていた薫ー。

しかしー
今日に限って生徒の列が出来ていたー

「---!!」
薫は表情を歪めたー

”もうだめ…男になっちゃう”
薫はそう思いながら、慌ててパンを諦めてその場を立ち去るー。

人目につかない校舎裏にやってきた薫は、
過呼吸を起こしかけながらー
そのまま髪が短くー
顔立ちや身体つきが変わりー
胸が無くなりー
アレが生えて来るー。

「---!」
薫は周囲を見渡すと、足早にスカートと制服を脱いで、
体操着を入れてあった袋に詰め込むと、
ジャージ姿に着替えたー

「--どうしよう…どうしよう…」
薫は頭を抱えるー

まだ、昼休みー

一度性別が変わると、
空腹のままでいても、次に性別が変わるまで
数時間ー
早くて2時間程度はかかるー。

「----どうしよう…」
パニックを起こしかけている薫ー

そこにーー

「---!」

クールな男子生徒の孝志がやってきたー

唖然とする薫と孝志ー

二人の時間は、
今、凍り付いたのだったー

②へ続く

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空腹で性別が変わってしまう体質の高校生のお話デス~!

果たして彼女(彼?)の運命は…?
続きはまた明日!

今日もお読み下さり、ありがとうございました!!

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